【完結】邪神系TS人外黄金美女が古代神話世界でエルフ帝国を築くまで   作:所羅門ヒトリモン

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とりあえずここまで書いてあるので投下します。
世界観ざっくり説明&ボーイミーツガール(偽)


プロローグ Ⅱ

 

 

 

 龍の國は、この世界で唯一のドラゴンを崇める大国だ。

 信仰の対象になっているのは天地開闢の時より存在すると云われる巨大な龍で、すべての獣の祖──すなわち、人間も含むありとあらゆる動物にとっての創造神──というコトで広く信仰を集めている。

 

 龍の名はプロゴノス。

 

 獣の祖の異名通り、その権能は生命の系統樹その始まりたるプロゴノス自身が存在し、生き続けている限り、あらゆる生き物が必ず『誕生・成長・進化』していくというもの。

 

 プロゴノスを神として崇め、その偉容に(かしず)き、日頃から感謝を忘れない。

 

 龍の國の人間たちは、自然、他のどの生物種よりも優れた生き物になる……

 

 高次存在から聞かされていた社会情勢。

 七つの国と七つの宗教が、百年もの間激しく争い合っておきながら、一つの宗教、一つの国が勢力を弱めることもなく延々と覇権を握り続ける意味不明。

 

 正直、人間が治め、人間が中心になっている以上、その隆盛と統治には必ずどこかで歪みが生まれるはずだと思っていたのだが、どうやら、龍の國にはとんでもないカラクリが眠っていたようだ。

 

 すべての生き物が必ず生まれ、必ず成長する。

 

 それすなわち、畜産や農耕、国の蓄えが永遠に尽きるコトなく、国力の低下が絶対に訪れない。

 安定した生活基盤の充足により、民は肥え太り、軍事に注力すれば屈強な兵士がいつでも量産可能。

 仮に万が一、疫病や流行病が国中を襲ったとしても、すべての生き物(・・・・・・・)には当然人間も含まれるため、滅亡すら克服している。

 

「なるほど。これはチートだ」

 

 異世界に転生してはや数日。

 雪の降り頻る北部の森をひたすらに練り歩き、昼も夜もなく人里を探して数十里。

 一向に人の気配を感じないため、いいかげん地味に歩き続けるのにも辟易してきた頃。

 暇潰しにジャラジャラと金貨を垂れ流し、何とはなしにコイン遊びをしていると、ようやく木立の奥から三十人程度の集団と出くわした。

 

「女! 女だァ!!」

「ヒィ──ヒャハハッ!」

「スゲェ! おっぱいでっけ!」

「こいつはツイてるッ!!」

 

 そいつらは如何にもな蛮族スタイルで如何にもなセリフを吐くと、寄って集って瞬く間に俺を取り囲み、ゲラゲラと下劣な笑みを浮かべて歩み寄って来た。

 

 異世界初の現地民との遭遇。

 

 一瞬、どんな人たちかしらと期待に胸弾ませた俺だったのだが、あからさまなゴロツキどもの登場に「あーね。そういう感じね」と速攻で気分が盛り下がった。

 

 神に転生したとはいえ、外見上はヒトガタの美女。

 

 古代の僻地ともなれば、こういうこともままあるんでしょうねと嫌な事実に落胆した。

 とはいえ、ようやく見つけた貴重な情報源。

 無駄にするには惜しいと、ひとまず黄金を対価に聞き出せるコトがないかと交渉を試みてみた。

 

「なぁ、黄金(これ)の価値は分かるか?

 お前たちにちょっと聞きたいコトがある。教えてくれれば礼は弾もう。どうだ?」

 

 すると、

 

「オイオイオイ、こいつは驚いた!」

「フハハハハ! 女! バカを言っちゃあいけねえ!」

「オレたちは龍の國の騎士だぜっ!?」

「偉大なるプロゴノス様に頭を垂れない異教徒どもと、マトモな取引なんかすると思うのか?」

黄金(それ)を見せたのは失敗だったな、女ァ!」

「ああ、なにしろ余計に見過ごすワケにゃいかなくなっちまった!」

「こんな美味しい(・・・・)獲物、逃すバカはいねぇもんなぁ!?」

 

 ギャハハハハハハ、と。

 筋骨隆々、身長二メートルを超える熊のような男たちが威圧も露に欲望を口にする。

 

 ──この時点で、俺の精神は氷点下を突っ切ったと言えるだろう。

 

 しかし、

 

「……にしても、見れば見るほどツラのいい女だな」

「ああ。北部先遣なんざロクな村落もねぇだろうし、つまらねえ任務だと思っていたが、まさかこんな上玉を見つけるとは」

「それに、手に持ってる金貨も……すげぇ。ありゃもしかして、王都の貴族どもでも滅多に持ってねぇ代物なんじゃねえか?」

「見たことのねえ意匠だが、遠目からでも精巧な造りなのが分かる」

「……なんか、おれ、目が、離せねぇ」

「お、おれもだ。な、なんだ、これ……? 吸い寄せ、られる……?」

「──なぁ、あの女をモノにすんのはいいけどよ、あの金貨はどうするんだ?」

「どうするってオメェ、そりゃ後で山分けにすんだろ」

「だ、だよなぁ! そうに決まってる!」

「──でも」

 

 ほんとうに(・・・・・)

 

 三十人のゴロツキたちは、そこで互いの顔を見合わせると──突如として押し黙った。

 そして、俺が事の成り行きを「ん?」と観察していると、次の瞬間!

 

「あの金貨はおれのもんだアアァァ!!」

「やらせねぇよォッ!!」

「ふざけんな──死ねぇぇぇぇッ!!」

「女も金もおれんだッ!」

「吐かせ! すっこんでろクソ野郎がッ」

「──ちょうどいい。おれは前々からアンタらが気に入らなかったんだよ!」

「殺すッ!!」

 

 ゴロツキたちは己の剣を抜いて殺し合いを始め、まるで俺のことなど忘れてしまったように仲間割れを起こした。

 

 その様は──まさに狂乱。

 

 黄金の魔力にアテられ理性を失った狗ども。

 誰にもあの金貨を渡さない。あの金貨が欲しくて欲しくてたまらない。奪われてなるものか。盗ませてなるものか。自分以外のゴミカスが、あんなにも美しいモノを視界に入れていると思うだけで吐き気がする。

 強欲に囚われた哀れなマリオネット。

 

 やがて、ゴロツキたちは最後の一人になり、俺の足元で地面に額を擦り付け、「どうか、どうかお願いします!」と懇願するほどの変貌ぶりを晒してのけた。

 

 俺は自分でも状況の変化にやや驚きながら、願ったり叶ったりの状況にこれ幸いと頷いて、今やすっかり黄金(おれ)の奴隷と化したゴロツキくんから聞きたかった情報を聞き出すことに成功。

 残念ながらゴロツキくんは戦いによってかなりの致命傷を負っていたため、すべての情報を聞き出した頃には無念にも事切れてしまっていたが、ともあれ、俺にとっては大変に有意義な時間だったと言えるだろう。

 どうやら、俺の生み出す黄金には魔力が宿っているようだ。

 

「人の心を強欲に掻き立てる神の黄金……そりゃ、人間にとっちゃ毒みたいなもんか」

 

 高次存在の端末である今の俺は邪神の化身(アバター)でもあるから、よくよく考えれば俺の生み出す黄金=邪悪な魔力が宿っていたとしても何ら不思議はない。

 

「うーん。大きさとか重さとか、何か関係あるのか……? あんな風に誰も彼もバカになられちゃ、この先、ちょっと困るんだが」

 

 俺は別に、この異世界に対して無闇矢鱈と混乱を巻き起こしたいワケではない。

 会う人会う人、皆を黄金奴隷に変えてしまっては、先ほどのように多くの血が流れてしまうだろう。

 そういうの、ちょっとグロいしスプラッタだしで嫌だ。

 だから、できれば黄金に宿る魔力か何かを、自分の意思で制御できたりすると楽なのだが……

 

「ま、その辺はこの先の課題かな」

 

 高次存在は俺に権能(チート)をただ寄越しただけで、詳しい性能については教えてくれなかった。

 長い神様生だ。無趣味でいるのはもったいないし、暇潰しがてらゆっくり研究していこうとも思っているが、やはり、想定以上のオーバースペックにビックリしてしまうのは変わらない。なので、ちょっとだけ恨みに思う。──ともあれ。

 

「北部先遣……龍の國の兵士たちか」

 

 出会い頭の女をオモチャか何かのように考え、品性に欠けた言動ばかりのクソ野郎だらけだったが、そんなヤツらでさえ黄金の価値を解し、貨幣の概念に戸惑うコトが一切無かった。

 

 大陸一の大国という評判は嘘ではないだろう。

 

 それに、あんなヤツらと実際に遭遇したおかげで、実感も出てきた。

 

 この世界──というか、この大陸。

 力のある国は異教徒を狩り、その人命や財産、権利等を含めて略奪、征服するのが当たり前らしい。

 

 俺の今いるこの森は、どの国の支配も未だ受けていない手付かずの『異境領域』のひとつであり、七つの国に該当しない小国や村落などが遠く点在している。

 

 大陸制覇を目前と控えた龍の國は、その余力から、とうとう未開拓地にまで手を伸ばし始め、現在、抗う力のない人々が各地で虐殺、奴隷化させられていると。

 

 まさに──暗黒時代だ。

 

 しかも、先ほどのゴロツキたちの武装と身体つき……どれも、古代とは思えないほどに常軌を逸している。剣など、これはもしや鉄でできているんじゃなかろうか? 普通、青銅とかじゃねえの?

 

「……まだ他の國を見てないから分からんけど」

 

 もし、これが龍の國だけの特権なのだとしたら、他六ヶ国は言うに及ばず、地方の村落や小国なども一溜りもあるまい。文明の進み具合が段違いでチートになっている。

 

 龍の國──要注意。

 

 俺は心のメモ帳にそう深く書き留めるコトにした。

 

 ──それにしても。

 

(やっぱ、この世界の神は人間と一緒に暮らしてるのが普通みたいだな……?)

 

 龍神プロゴノス。

 俺のような紛い物と違い、恐らくはこの世界純正の根っからの神なのだろうが、自分を崇める人間たちに惜しみなく祝福を授けていると見える。

 他の神がどうかは知らないが、少なくとも、龍の國以外の他六つの國が未だに征服されていない以上、それぞれの主神が自国の民にチカラを貸しているのは間違いなく明白だ。

 

 となると、俺も同じように自分の國を持って、たくさんの人間から崇められるのが正しいのだろうか?

 とりあえず、酒池肉林したいだけなのも大いにあるけれど、そうするには出来るだけ、多くの人からチヤホヤされるのが一番手っ取り早い……?

 

「わ、分からん。俺は接待することはあっても、誰かに接待された経験が一度もない……」

 

 悲しいが、それが平社員の運命(さだめ)

 休日接待ゴルフとか、せめて給料を支給してくれないものか。

 

「っ、と。思考が逸れたな」

 

 首を振り、忌まわしき記憶から背中を向けるように俺は気を取り直す。

 

 ──さて。

 

「とりあえず、歩くか」

 

 森の中は特段面白いものも転がっていない。

 古代とはいえ神話世界でもあるので、たぶんそのうち歩いていれば、それらしい怪物の一匹や二匹も唐突に出てくるかもしれないが、ぶっちゃけ、神である俺の敵ではないだろう。

 

 荒事に向いているチートなんか何にも無いが、それでも、神という時点で十分にチートだ。

 

 最悪丸呑みにされたって、腹の中から権能を使って内臓をおかしくしてやれば勝てる。なにしろ不死身だし。

 

「まだ使ってないチートも二つあるしな」

 

 文明叢書と閉塞打破。

 使い勝手的にはどちらもビミョー。

 まぁ、こういうのは考え方次第でもあるし、そのうちいいアイディアだったり相応しい状況が向こうからやってくるはずだ。

 

 スン、と肩を竦め、俺は森の中をさらに突き進んだ。

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 十日ほど歩いた。

 北部の森は予想以上に広いらしく、未だに目新しい風景とは出会えない。

 

 黒い木と白い雪。

 

 心なしか、うっすらと暖かくなってきたような気もしないでもないが、積雪の深さに変化は見られないので、恐らくはそうあって欲しいという願望だろう。

 こうまで変わり映えしない毎日だと、いいかげん痺れを切らして第二の権能を使いたくなってくる。

 

 文明叢書──黄金楽土と違い、名前だけではどんな権能なのかイマイチ分からない代物だが、俺に与えられた三つの権能(チート)は、結局のところ俺自身の魂に端をなしている。

 

 高次存在は言った。なぜ俺なのか。

 それは単に、魂の波長が合ったから選んだだけだと。

 

 そして、“黄金楽土(クリューソス・パラディソス)”が俺のどうしようもなく俗欲な部分を象徴しているように。

 

 第二の権能──“文明叢書(プロメテウス・アルキテクトゥーラ)”も、そのチカラの根源は低俗だ。

 

 ──黄金の海で溺れるほどの豪遊を。

 

 愚かな小人が次に望むものなど、古来よりタカが知れている。

 

 ──新天地にて、天上人のような生活(くらし)を。

 

 そう。だから、俺にはこんなコトさえ出来てしまう。

 文明という名の火。

 宇宙の記録を収めた大図書館にて保管される、人類文明、その遥かな歴史が詰まった猛火。

 その明るい影炎(かげろう)の中から、建築物に関わる叢書(シリーズ)──一部の情報を、俺という映写機を通し、具現化させる。

 

 ロマネスク、ゴシック、ルネサンス、バロック、ロココ。

 

 西洋の偉大な建築様式は元より、世界遺産に指定された遺跡や神殿、過去にあったかもしれない幻の城に塔……何でも問題ない。

 

 その気になれば、ピラミッドの上にエッフェル塔を乗せたり、パルテノン神殿に金閣寺を増設したりも自由。

 

 神の権能を以って行う違法建築。

 

 異世界の雰囲気というか空気感を台無しにしてしまうから(あと物によっては明らかにオーバーテクノロジーだから)、あまり使いたくなかったのだが、考えてみれば、転生初日に黄金楽土で神殿を作り変えたりしているので今更かもしれない。

 

 それに、持っているのに使わないのは宝の持ち腐れというものだ。

 

 いいかげん何も無い森の中を歩くのにも飽き飽きしてきたし、いっちょ拠点を創ってみるのもいいだろう。

 何も有名な建物を創らなくてもいい。

 適当なサイズの、ログハウスのようなモノから始めたところで俺は満足できる。

 

「そうと決まれば……開けた場所が必要だな」

 

 辺りを見回し、良さげな空間を探す。

 が、ここまで歩き通してきて開けた場所などひとつもなかった。

 探し歩いて見つかるとも思えない。

 

「……面倒だ」

 

 たとえ周辺の木々を薙ぎ払うコトになっても構わない。

 俺はフンっ、と鼻を鳴らすと、二つ目の権能を振るうべく、右の掌を前方へと翳した。

 

 ──その瞬間(とき)だった。

 

 

 

 

 

 

「お鎮まりを! いずこかより来たりしさぞかし名のある古の神と見受けまするが、何ゆえそのように荒ぶり、我らが森を脅かそうとするのか! 何卒、お鎮まりを……!」

 

 

 

 

 

 凛とした絃韻(つるね)のように高らかに響き渡る女の声。

 鎮まれと懇願しながら毅然とした態度で膝をつき、勇気ある眼差しで()を見上げる。

 それまで何の気配もなく、まるで降り積もった雪の中から、そのまま飛び出てきたかのように白い肌。

 冬の張り詰めた風に晒され、そっと吹き上がる前髪はこの上なく幻想じみて、触れれば消える雪の華のように儚い。

 

 率直に言えば──その少女はとても美しかった。

 

 狼の毛皮とクリスタルのような長弓。

 ともすれば野蛮な蛮族をも思わせかねない出で立ちでありながら、どこまでも気品溢れる騎士のような高潔さが滲んでいる。

 眩いばかりの白金(プラチナ)の髪、気負いなき碧眼。

 スラリと伸びた手足はしなやかで、雪豹のように軽やかだ。

 

 そして……何より、最も目を引いたのは──

 

 

 

 

 

「耳が、長いな。エルフか?」

「っ」

 

 

 

 

 少女は明らかに、人間ではなかった。

 

 

 






金髪黄金瞳自堕落人外
×
生真面目女騎士プラチナブロンド美少女エルフ


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