提督の憂鬱   作:sognathus

404 / 404
短いです
提督の転勤騒動の榛名との一場面


正直な気持ち

「ふぅ……」

 

「煙草ですか? って思ったら吸っていませんね」

 

「ん? ああ、最近は何故か特に吸いたい気分にもならなくてな」

 

「それは良いことです。榛名も嬉しいです」

 

「ん……」

 

「隣、宜しいですか?」

 

「何処でも」

 

「ありがとうございます」

 

「……」

 

「……」

 

二人してやる事がなかったので石の階段に座っているだけだったが、それだけでも目の前に広がる海の風景が二人の気分を癒やした。

 

「……なんか」

 

「はい?」

 

「いや、こうしてのんびりするのが久しぶりな気がするな」

 

「そうですね。お休み自体はちゃんと貰っている筈ですが、こうして落ち着いてみると何かそういう気分になりそうですね」

 

「ふっ、やる事がなくて心に余裕があると人はこういう気分になり易いのかもな」

 

「ふふ、そうですね」

 

「…………」

 

「…………」

 

再び耳に心地良い漣の音が二人を優しく包む。

雰囲気に流されて何となく喋り難い空間となっていたが、別にそれさえ気にしなければ居心地はとても良かった。

そんな時ではあったのだが、榛名は丁度思い出したとある事を確かめたくて提督に話しかけた。

 

「大佐……」

 

「うん?」

 

「不躾なことをお訊きして申し訳なく思うのですが……」

 

「いい、なんだ?」

 

「転勤、されるのですか……?」

 

「……一応辞令は来ているが、俺はできれば現在の配置のままを願い出てみるつもりだ」

 

「えっ、それは本当ですか?」

 

「今回は俺個人の意思を示すくらいはしないとどうにも承服しかねくてな。軍人にはあるまじき身勝手だが」

 

「そんな……! そうして頂けるだけでも榛名は嬉しいです!」

 

「ありがとう」

 

「それもこちらの台詞です」

 

「……」

 

「……」

 

再び気不味い沈黙が間が訪れたのだが、今度もその雰囲気を破ったのは榛名だった。

 

「……差し支えなければ」

 

「ん?」

 

「差し支えなければ、そうして大佐が残りたいと思われたのかお教え頂けますか?」

 

「……自分にもお前たちにも解り易く言ってしまえば、俺が去った後の此処がただただ気にかかったからだ」

 

「……なるほどですね」

 

それは提督の偽りのない答だったのだが、それを聞いた榛名は何処となくそれ以外にも他の言葉を求めてそうな瞳で提督を見る。

提督も彼女たちは長い付き合いである。

彼はその時彼女にどういった事を言えば良いのかくらいには気を利かせられるようになっていた。

 

「勿論、お前たちへの好意もある」

 

「むぅ……そこは、今だけでも『たち』は外して欲しかったです」

 

「え? っ、ははっ。すまん」

 

「ふふふ、いいえ。でも惜しかったですね」

 

「次はぬからないようにしよう」

 

「期待してますね」

 

 

それから更に小一時間ほど二人は取り留めのない会話をした。

そして提督がそろそろお暇しようかと立ち上がり、榛名に手を貸そうとした時だった。

「大佐」と俯き目を伏せながら遠慮がちに発せられた榛名のか細い声を提督は聞き逃さなかった。

 

「なんだ?」

 

「できれば……」

 

「ああ」

 

「もしできれば、いよいよ転勤せざるを得なくなった時は……」

 

「……」

 

「榛名も貴方に着いて行きたいと思います」

 

それは無理だと、叶わない事とは二人は解っていた。

それでも言葉に出さずにはいられなかった榛名の気持ちを理解した提督は、ただただ鼻をすすってぐずる彼女の柔な肩を黙って抱きしめるのだった。




ゲームに対するモチベは下がる一方ですが、依然としてプレイは続いてます
いつサービス終了しても構わないのですが、運営が変わればこの気持も変わる……のかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

艦隊これくしょん~“楽園”と呼ばれた基地~(作者:苺乙女)(原作:艦隊これくしょん)

パイロットだったが左脚を失ってしまい、地に降りた異色の提督が、一人の少女と出逢う▼好戦的だった彼は、たった一人、離島でその娘の面倒を見る事になった▼彼は、その一人の“艦娘”と出逢い、その心境が少しずつ変化してゆく…▼ここで書くのは初めてです▼面白くても、そうでなくても、感想&要望を送って欲しいです▼どうか温かい目で見て下さいね▼では、また後々


総合評価:1732/評価:5.95/連載:1101話/更新日時:2025年02月02日(日) 08:26 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>