提督の憂鬱   作:sognathus

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あまり出撃しない鎮守府ですが、いざ出撃となると備蓄した資材を湯水のように使います。
艦娘たちは日頃出撃できなくて溜まった鬱憤を晴らすかのように、のびのびと作戦対象海域を駆け回ります。


第4話 「出撃」

「今回は数か月ぶりにまともに出撃する。演習と遠征ばかりで退屈していただろうが、時間をかけた分お前たちは戦力としては申し分ない」

 

ワアアアアア!

 

提督の言葉に日頃から身体を動かしたくてうずうずしていた艦娘たちは歓喜の声をあげた。

提督は士気の高さを確認して続けた。

 

「皆、意気軒昂のようで結構だ。さぁお前たち、1日限りだが思う存分駆け回ってこい」

 

『了解!』

 

提督の号令に艦娘たちは一同に承諾の声を上げ、久方ぶりの大規模な出撃はこうして幕を開けた。

 

 

「ふぅ、これで暫く本部から出撃からの催促はこなくなるな」

 

提督は椅子に深く腰掛けて今までに本部から来た出撃を促す電文の数を思い出しながら言った。

 

「大佐、報告です!第四艦隊、南西諸島海域制圧完了とのことです」

 

その日の秘書艦の青葉が早速出撃した艦隊の戦果を報告してきた。

 

「いいペースだな。沖ノ島辺りをもう4、5週してくるように通達。資材、バケツ・は任意に使用することを許可」

 

「了解です!」

 

 

――数時間後

 

「第二・第三艦隊から報告です!北方・西方海域制圧完了とのことです」

 

「制圧してもまた現れるからな。暫く出てこないように制圧しても必ず索敵は3重以上するように通達。掃討は念入りにな」

 

「了解しました!」

 

 

――更に数時間後

 

「第一艦隊より報告!南方海域、サブ島沖までは制圧完了とのこと」

 

「やはりまだサーモン沖は攻略厳しいか。重巡の育成なんとかしないとな」

 

提督は表情には出していなかったが、まだこの海域を制圧し切れない事に対して反省しているかのような厳しい声で言った。

そんな彼に青葉もいつものようなノリの良さは控えて真面目な表情で言った。

 

「そうですね。利根姉妹は練度は高いですけど上位改装はまだできてませんし、衣笠も健闘してくれているのですが」

 

重巡の中でも最も練度が高い利根姉妹と唯一の改二である衣笠は、重巡組の中核的存在であり、青葉の報告から彼女達が奮闘している姿を想像するのは提督にとってそう難しい事ではなかった。

 

(あいつらにはまだ苦労を掛けてしまっているな。早く何とかしてやりたいものだ)

 

提督は心中で彼女達の労を労いながら青葉に指示を出す。

 

「中破による轟沈の可能性ありの場合は入渠優先は徹底。焦らなくても此処に戻ればいくらでも出撃できる。危険海域への強行はせず、余裕を持って制圧可能な海域のみに専念するように通達」

 

「了解です!」

 

 

 

そして作戦開始から数時間後、その日の終わりを告げる時計の秒針が、もう直ぐ0時を過ぎようとしていた頃――

 

「皆ご苦労だった。おかげで轟沈は無く、攻略対象の海域の制圧は全てこれを完了することができた。日付はもう変わる直前だがが、今日はゆっくり休んでくれ」

 

『了解!』

 

皆、戦闘で顔や身体が汚れていたが、一様に何か満足したようなスッキリした顔をしていた。

それなりに長い時間海原を駆けまわっていた筈だが、提督の言葉に応えた彼女たちの声は力強かった。

提督はそんな彼女たちを誇らしくも頼もしく思いながら最後に締めた。

 

「では、解散」

 

 

――それから数分後

 

「青葉もご苦労だった。もう休んでいいぞ、当直は俺がする」

 

「はい。了か……て、え? 大佐が当直をするんですか?」

 

「ああ」

 

秘書艦として執務室に最後まで残っていた青葉は提督の言葉に驚いた顔をした。

 

「でも大佐もずっと作戦の指揮を執っててお疲れじゃないんですか?」

 

「お前たちと違って俺は実戦に出ていたわけじゃないからな。大丈夫だ、体力は十分にある」

 

「でもそれでも一日作戦の指揮を一人でしていたんですから流石ににキツいんじゃ……」

 

「待機組に交代で警備はさせている。俺一人無防備というわけじゃないさ」

 

「いや、そういう事じゃなくて」

 

「青葉、気遣いは嬉しいが本当に問題はない。あと話は変わるが、今度時間がとれたら今回の作戦の成功のことで皆にちょっとしたお礼をするつもりだ」

 

「え、お礼?」

 

意外な言葉に青葉は目をパチくりさせる。

青葉は提督からそんな言葉を聞くのは初めてだった。

 

「そうだ。勿論、しっかり秘書艦として伝令の役割を果たしてくれたお前も例外ではない」

 

「あ、青葉もですか?」

 

「勿論だ。だからお前も今日は休め。どうせお礼を貰うなら万全の状態で良い気分で貰いたいだろう?」

 

「は、はい! 了解しました! ありがとうございます! 失礼します!」

 

バタン

 

 

「……」(でもいくら秘書艦の仕事をしていたと言っても、わたし報告しかしていないかったなぁ……。作戦中の他の執務は大丈夫だったのかな?)

 

青葉は部屋を出た後扉の前でそんな事を考えた。

そして浮かない顔をしながら自室へと戻っていった。

 

 

 

「......」

 

青葉が退室してから数分後、提督は外から彼女の気配が無くなった事を確悟ると、引き出しからその日にこなさなければいけなかった書類を出して片付いていた机の上に積んでいった。

あっという間に出来上がった紙の山を疲労した目でぼんやりと見ながら提督は思った。

 

(流石に多いな。ここに着任してから事務仕事には慣れたつもりだが、これは時間がかかるだろうな。あいつらと仲良くすると言った手前で未だにこんな事をしているなんてバレたら……)

 

「怒るだろうな」

 

提督は誰にともなく一人そう呟き、机の上の書類に意識を集中するのだった。




青葉可愛いですよね。
今回は筆者も意見は変えません。
年を取るごとに徹夜は結構応える様になるので皆さんは気を付けてください。

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