宇宙(ソラ)に輝く、星の守り手~Phantasy Star Online2外伝~   作:星野優季

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黒薔薇の騎士と吸血姫と守護輝士 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んむ、んむ……………やっぱりウサギのお肉とは言っても、あんまりおいしくない……」

 

『それ、まともに血抜きとかをしてないからじゃないですか?』

 

先ほど狩ったウサギの魔物のお肉を頬張りながら、私───────カエデは呟いた。

それに黒い物体───シエラが反応する。

 

何故私たちがウサギのお肉を食べているのか。

 

それは遡ること数時間前──

 

狼との発戦闘の後、私たちは更なる戦力強化に勤しんでいた。

 

シエラさんの協力も得られた。

 

なぜならあの後、ユウちゃんのマグを誤って神水の中にたたき落としてしまったのだが、それによりマグが復活、シエラさんとの通信も可能となり、全面的なバックアップを行うと言ってくれたのだ。

 

そのお陰で、ハジメくん達は銃を、キリトくんたちは剣やスキルを、私の場合はただ1人発現したフォトン適正を鍛えていた。

 

テクニックを使ったり、素手で、ナックルで扱うフォトンアーツを使うための訓練をしたり。

 

そこで培った技術を使い、あのウサギを狩ったのだ。

 

そして、今に至るわけだ。蹴りウサギの肉を食べている今に繋がる。かつて自分を見下し嘲笑あざわらった蹴り技の達人は、今やただの食料扱いになっている。ウサギということで多少はマシな味なのではと期待しはしたものの、所詮は魔物の肉。普通に不味かった。

 

それでも皆が丸一匹、ペロリと平らげる。

 

“胃酸強化”を手に入れてから食べようと思えばいくらでも食べられる気がする。特に固有魔法を使ったときは物凄くお腹が減って、この蹴りウサギを倒した時も使ったので収支はトントンと言ったところだった。

 

神水があれば死にはしないが、使いすぎると再び飢餓感に襲われそうなので考えて使わなければならない。

 

ちなみに、蹴りウサギは罠を張って倒した。スタート地点の川から水を汲んできて蹴りウサギを誘導、爆進して来た蹴りウサギが撒き散らした水の上を通った瞬間、〝纏雷〟の最大出力で感電させる。

 

全身から煙を噴き上げながらも、案の定、突進してきたので、電撃で鈍ったところを正面から盾で押しつぶし、《パララライズシャウト》で動けなくして《毒竜(ヒドラ)》のスキルで倒したのだ。

 

パララライズシャウトは音を出すことで敵を麻痺させるスキルで、毒竜は敵を“システム的な”毒で倒すスキルだ。

自身もそのスキルでその系統の毒に対しての完全耐性を持っているため、その毒に犯された魔物を食べられるのだ。

 

「さて、と……初めて蹴りウサギの肉を食べたわけだけど……ステータスは───」

 

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本条楓 17歳 女 レベル:9

 

天職:錬成師

 

筋力:190

 

体力:800

 

耐性:1000

 

敏捷:100

 

魔力:150

 

魔耐:1000

 

技能:アバター[+武器投影][+能力値補正]・フォトン適正・システムNWO・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][縮地+]・言語理解

 

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その後、キリトくんがこの技能を検証して頭から地面に突っこんだり、あの熊とも戦闘があり、苦戦しながらも倒したりしたのは、別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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本条楓 17歳 女 レベル:14

 

天職:錬成師

 

筋力:250

 

体力:1200

 

耐性:1500

 

敏捷:150

 

魔力:250

 

魔耐:1500

 

技能:アバター[+武器投影][+能力値補正]・フォトン適正・システムNWO・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・言語理解

 

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時は少し経ち、迷宮の第50層。

 

 

石化の光を放つトカゲとか燃えるタールのような物質の中に潜む気配を消せるサメだとか、、虹色で、毒の痰を吐き出す二メートルのカエルに、ハジメくん達曰く見た目モ〇ラの麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾に襲われた。

 

虹色ガエルの毒をくらったときは直接神経を侵され、一番最初に魔物の肉を喰った時に近い激痛を他のみんなもたらした。私は完全耐性が発動したお陰で大丈夫だったが、他のみんなはハジメくんが奥歯に仕込んだ神水がなければ死んでいただろう。ちなみに、奥歯に仕込んだのは噛み砕ける程度に薄くした石で出来た小さな容器だ。緊急用に仕込んでおいたのが幸いした。

 

そして第50層。変わらない迷宮の風景に、突然の変化が訪れる。

 

 

 

 

それは、なんとも不気味な空間だった。

 

洞窟そのものの通路の中、脇道の突き当りにある空けた場所。そこには高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉があり、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。

 

私たちはその空間に足を踏み入れた瞬間全身に悪寒が走るのを感じ、これはヤバイと一旦引いたのである。もちろん装備を整えるためで避けるつもりは毛頭ない。ようやく現れた〝変化〟なのだ。調べないわけにはいかない。

 

私たちは期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる。だが、しかし、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。

 

「さながらパンドラの箱だな。……さて、どんな希望が入っているんだろうな?」

 

「これがパンドラの箱だとしたら、その前に絶望がはいってるんじゃないのか?」

 

ハジメくんがそういい、キリトくんがツッコむ。自分達の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。全ての準備を整え、ハジメくんは“電磁加速リボルバー”のドンナーを、カオリちゃんは彼の作った拳銃“シュテル”を、キリトくんは“夜空の剣”を、ユウキちゃんは片手直剣“マクアフィテル”抜く。

私自身も、背中に括り付けているミーシェちゃんをチラリと見た後、大盾を実体化させる。

 

そして、そっと額に押し当て目を閉じる。覚悟ならとっくに決めている。しかし、重ねることは無駄ではないはずだ。私は、己の内へと潜り願いを口に出して宣誓する。

 

 

 

「「「「俺達/私たち/ボクたちは、生き延びて故郷に帰る。日本に、家に……帰る。邪魔するものは敵。敵は……殺す!」」」」

 

「私は──みんなを守る。絶対に、生きて、地球に帰る。そのために、目の前に立つ敵は──倒す!」

 

 

目を開けて振り返ると、みんなの口元にはいつも通りの不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

扉の部屋にやってきた私たちは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまでやって来た。近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかる。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかった。

 

「? わかんねぇな。結構勉強したつもりだが……こんな式見たことねぇぞ」

 

「ハジメ君でも知らない式………相当古いのかな?」

 

彼はかつて無能と呼ばれていた頃、自らの能力の低さを補うために座学に力を入れていた。もちろん、全ての学習を終えたわけではないが、それでも、魔法陣の式を全く読み取れないというのは些おかしい。

 

「たぶん、な……」

 

ハジメは推測しながら扉を調べるが特に何かがわかるということもなかった。いかにもなにかありそうなので、トラップを警戒して調べてみたのだが、どうやら今のハジメ程度の知識では解読できるものではなさそうだ。

 

「仕方ない、いつも通り錬成で行くか」

 

「気を付けてね」

 

 

 

一応、扉に手をかけて押したり引いたりしたがビクともしない。なので、いつもの如く錬成で強制的に道を作る。ハジメは右手を扉に触れさせ錬成を開始した。

 

 

 

しかし、その途端、

 

 

 

バチンッッッ!!

 

 

 

「うわっ!?」

 

 

 

扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。ハジメの手からは煙が吹き上がっている。悪態を吐きながら神水を飲み回復するハジメ。直後に異変が起きた。

 

――オォォオオオオオオ!!

 

突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。

 

全員はバックステップで速やかに扉から距離をとり、腰を落とし手をホルスターのすぐ横に触れさせいつでも抜き撃ち出来るようにスタンバイする。

 

雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。

 

「まぁ、ベタと言えばベタだな」

 

「扉の前の門番………ま、そう来るか」

 

 

 

 苦笑いしながら呟くハジメくんとキリトくんの前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。

 

一つ目巨人の容貌はまるっきりファンタジー常連のサイクロプスだ。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようとハジメの方に視線を向けた。

 

 

 

 その瞬間、

 

 

 

ドパンッ!

 

ズシャッ!

 

 

 

凄まじい発砲音と共に電磁加速されたタウル鉱石の弾丸が右のサイクロプスのたった一つの目に突き刺さり、そのまま脳をグチャグチャにかき混ぜた挙句、後頭部を爆ぜさせて貫通し、後ろの壁を粉砕、黒い刀身が閃き敵の頭部を切断した。

 

 

「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ」

 

いろんな意味で酷い攻撃だった。まあ、みんなの経験してきた修羅場を考えれば当然の行いなのだろうが、あまりに……あまりにサイクロプス達が哀れだった。

 

おそらく、この扉を守るガーディアンとして封印か何かされていたのだろう。こんな奈落の底の更に底のような場所に訪れる者など皆無と言っていいはずだ。

 

ようやく来た役目を果たすとき。もしかしたら彼(?)の胸中は歓喜で満たされていたのかもしれない。満を持しての登場だったのに相手を見るまでもなく大事な一つ目ごと頭を吹き飛ばされる。これを哀れと言わずしてなんと言うのか。

 

「まぁ、いいか。肉は後で取るとして……」

 

ハジメは、チラリと扉を見て少し思案する。

 

そして、〝風爪〟でサイクロプスを切り裂き体内から魔石を取り出した。血濡れを気にするでもなく二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。

 

ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光が迸ほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。

 

「なるほど……鍵になってたんだね」

 

カオリちゃんが呟き、ハジメくんは少し目を瞬かせ、警戒しながら、そっと扉を開いた。

 

扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。私たちの持つ“夜目”と手前にある部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。

 

中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

その立方体を注視していた私たちは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬、視界に砂嵐が走り、ノイズが聞こえる。

 

灰色で、殺風景な空間が映る。

 

『…………待っていた』

 

“それ”は、女性だった。

 

黒髪で眼鏡を掛けた、研究者の風貌の、女性。

 

『否、この表現は認識の相違がある。

待たせてしまった、だろうか』

 

『わたしの名は……シオン』

 

『わたしの言葉が貴方の信用を得るために

幾許かの時間を要すことは

理解している』

 

『それでもどうか聞き届けて欲しい

無限にも等しい思考の末

わたしが見出した事象を』

 

『わたしは、観測するだけ()()()存在。

今は()()、貴方への干渉は

行わない、行えない』

 

『だが、今動かなければ道は潰える』

 

『故にわたしは示す。

あらゆる偶然を演算し、計算し

ここに現す』

 

『偶事を拾い集め、必然と成す。

そのものを、マターボードいう』

 

彼女の手から光が現れ、わたしの手へと写る。

 

『わたしは観測するだけの存在。

貴方を導く役割を持たない。

だがマターボードは貴方を導くだろう』

 

『わたしの、彼女たちの後悔が示した道が

指針なき時の、標となることを願う』

 

『未だ信用も信頼も得られずと推測する。

貴方のその思考は正しく正常である。

わたしもそれを、妥当と判断する』

 

『しかし。

わたしはそれでも、貴方を信じている』

 

『わたしは……彼女は、貴方の空虚なる友。

どこにでもいるし、どこにもいない。

質問はいつでも受け入れよう』

 

『……あなたに、伝えるべき事がある。

それは一つの揺らぎである』

 

“女性”は告げる。

 

『因果が収束を見せている。

一つの事象を生み出しつつある。

その手で掴めるほどに』

 

『それは恐らく

運命という概念への冒涜だ』

 

『しかし、わたしとわたしたち、

そして彼女たちが渇望し

切望したものである』

 

 

 

 

 

女性は頭を下げた。

 

 

『…………わたしは謝罪する』

 

『曖昧な言葉では

貴方たちに伝わり難いことを

理解していたが、失念していたことを』

 

『思考を修正し、伝える。

これは、わたしから貴方たちへの

依頼である』

 

彼女は告げる。

 

『“彼女”を助け、“彼ら”の意思を、継いでほしい』

 

 

『難題であることは、識っている。

それでも、私は願う』

 

 

『理由は答えない。答えられない。

答えは貴方の未来にのみ存在する』

 

 

その姿に、ノイズが入る。

 

『私は観測するのみ。

観測しか、できない』

 

 

 

その姿が、ノイズと共にかき消える────

 

 

『────どうしました?ナニカ問題でも?』

 

「───あっ!い、いや何でもないよ!?」

 

『?────そうですか?』

 

気がつくと、もとの迷宮だった。

 

どうやら、足を止めていたようだ。

 

はっと我に返り、歩み始める。

 

 

 

ハジメくんが近くで確認しようと扉を大きく開け固定しようとする。いざと言う時、ホラー映画のように、入った途端バタンと閉められたら困るからだ。

 

しかし、ハジメが扉を開けっ放しで固定する前に、“それ”は動いた。

 

「……だれ?」

 

かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとしてみんなは慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

 

「………人間?」

「人……なのか?」

 

 

 

“生えていた何か”は人だった。

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間からは月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

流石に予想外だった私たちは硬直し、紅の瞳の女の子も私たちをジッと見つめていた。やがて、ハジメくんとカオリちゃん、キリトくんはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

 

 

「「「すみません。間違えました」」」

 

 

「「いやちょっと待って」」

 

 

 

 

思わず私とユウキは突っ込んだ。

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