宇宙(ソラ)に輝く、星の守り手~Phantasy Star Online2外伝~   作:星野優季

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ワクチンの副作用がキツい…………
続きを投稿します。

半ば怪文書です。


「どうか、我が愛娘をよろしく頼む。知っての通り、フォトナーとは、凄まじく悪辣なのでな」

E.C 1977/10/21/18:00

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を渡った時、300年前のこの場所で、わたしはディンリードさんに出会った。

 

わたしの正体、みんなのこと、そしてここのギミックなどを話した後、わたしは、この世界の………アレーティアちゃんの、“真実”と“秘密”を、教えて貰ったんだ。

 

 

 

 

 

「これは、私の慚愧。ただの独白。我が人生においての、ただ一つの後悔だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は、天才だった。

自動再生という技能を持って生まれ、魔法に関しては、天才そのものだった。

教えたことを凄まじい速度で飲み込んでいき、王としての素質やカリスマも持ち合わせている………自慢ではないが、彼女は天使だった。一歳の頃、よちよちとわたしの所に歩んできた時など、わたしは国を挙げて祝福を──

 

────親バカかあんた………娘さんをどれだけ可愛がってるかは分かったから……

 

………失礼。話がそれたね。

それで、守護輝士(ガーディアン)君、そんな彼女なのだが、とある一つの“問題”を抱えていた。それは、彼女の天職だ。

 

────天職?

 

そう。彼女の天職は、“神子”だった。君は、神子と聞いて、何を思い浮かべる?

 

────うーん…………神様にお祈りしたり、神託を受ける人、とかかな?

 

確かに、それも神子の一側面ではある。だが、彼女の場合、別の意味を持つ。

 

────別の意味?

 

そうだ。神子。すなわち、“神の子”。彼女の体は、神と成ることが可能だったわけだ。

 

────神になることが出来る?

 

そうだ。神に成るとはすなわち、彼女の体が、その魂の存在規模の上昇に耐え抜き、順応できる、と言うことだ。

“自己再生”の技能も、恐らくはそれを現したものなのだろう。

 

────それはつまり、体が丈夫で、凄まじい力を持つって事だよね?相当なことがなければ神様になるなんてないだろうし、問題はなさそうだけど………

 

その“神”が問題なのだ。奴────創世神を名乗る雑念、異なる世界より来たフォトナーなる存在、エヒトルジュエは、今()()()()()()()

 

────肉体を持たない?どうして?貴方の話が本当なら、そのエヒトルジュエとやらはフォトナーなんでしょ?フォトナーは自力で肉体くらい作れるんじゃ……

 

確かに、奴は肉体の錬成を可能とする。だが、()()()()()()()()()()のだ。

 

────耐えられないって………一体、何が原因で……

 

それは、奴の魂の特性にある。奴は、信仰を自らの存在の格を上昇させる要因へと変換する“魔法”を持っていたのだ。それを長年にわたり行使し続けてきたことにより、普通の生命の肉体では、通常の魂よりも上位の存在が持つレベルの魂となってしまった。それ故、肉体が耐えきれず、その器がすぐに崩壊してしまうんだよ。

 

────………つまり、アレーティアちゃんは………

 

そう。魂を引き抜けば………魂を取り込めば、その肉体は自らの器として利用できる。アレーティアは、奴にとって、最高の器だったのだ………

 

────それが故に、狙われた。だから、封印するって事?

 

………ああ。私としても、苦渋の決断ではあるのだがね。それしか、彼女を守る方法がなかったのだ。

奴は、アレーティアを手に入れるために、何度も戦力をこちらに向けてきた。

あるときは、天使の姿をした戦乙女を十万体。

一体一体の強さはたいしたことがなかった(常人なら瞬殺されていた)程度だったから、私1人でも事足りたのだがね。“クソ神絶対ぶっ殺す剣”を自作していたから、対処は容易だった。

 

────ん?今なんて…………

 

だが、問題は次だった。その次に襲ってきたのは、異様に堅い魔物だった。

足先が針のようになった人型のゴーレムのようなもの、傘のような形のもの、船のような形のものや四肢が異常発達したようなもの、四つ足の化け物に、巨大な杖を持ったもの………様々だった。

 

────それ…………閃機種……?

 

……ふむ。そちらでは閃機種と呼ぶのだな。

 

────うん。わたしたちが散々苦しめられてきた相手だからね。あなたたちは、アレをどうやって対処したの?

 

……私達では、アレをどうにかすることは叶わなかった。その時に、どこからともなく人が飛んできてね。確か……水に燃える水を浮かべた時のような髪色をした女性だった。

 

────……………

 

彼女があの閃機種をどうにかしてくれたお陰で、私達は何とか生き延びることが出来た。

だが、それはつまり、私達では彼女を守ることが出来なくなってきていると言うこと。

………故に私は、彼女を封印した。未来へ、運命を託すために。

 

────そうだったんだね。

 

ああ。そうだ。

…………………………………守護輝士よ。一つ、頼まれてくれるかな?

 

────?いいけど、何をすればいい?

 

……私はここに、メッセージを残す。だから、そのことを、彼女に伝えて欲しい。……………そこにいる人たちも含めて。

 

────了解だよ。貴方に代わり、その意思、継がせてもらうよ。

 

ああ、頼む。私はきっと、次の戦いでは、生きることは叶わないだろう。恐らくは、奴に殺される。

………いや、そうじゃない。

………………ただ、これだけは言わせてくれ。いや、伝えて欲しい。

 

────?

 

私が次に君たちと逢う事があれば、容赦なく殺して欲しい、と。

 

────それは、なぜ?

 

恐らく私は奴らの駒になるか、もしくは奴……雑念エヒトルジュエの眷属的存在、アルヴヘイトの依り代になっている。

奴もエヒトルジュエ(クソ神)と同じく、躰を持たないのでね。

 

…………どうか、それも含めて、頼む。

 

────オーケーオーケー。分かってるさ。

 

 

 

───────────任せてよ。そういうの、得意だからさ。

 

…………最後に。

 

 

────どうしたの?

 

未来に居るであろう“彼ら”の名前を、教えてくれ……。

 

────……………彼らの名前、ね。うん。みんなの名前は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして私は、彼から受け取った鍵になる“シュネー大迷宮”の攻略の証を封印席の後ろに隠して、アレーティアちゃんの前へと立つ。

 

「それじゃあ、また、三百年後。きっと、助けに来るから」

 

私は、彼女の頭を、髪を撫でる。

 

 

「どうか。気を付けてくれたまえ」

 

「もちろんだよ」

 

私は元気に答える。

 

「そして────どうか、我が愛娘をよろしく頼む。知っての通り、フォトナーとは、凄まじく悪辣なのでな」

 

私はフッ、と。その顔に笑みを浮かべ。

 

「識ってるとも。それは、この身でしかと味わってる。任せとけッッッ!!!」

 

次の瞬間、周囲に風が吹きすさび、花が舞った。

 

U.C 102/11/5/14:30

 

 

 

そして、その封印石の裏。

 

 

「私が目を覚ました、って事だよ」

 

私は皆への語りを終えた。

 

「なるほど、な。ユエの叔父さんがそんなことを……」

「叔父様………」

 

それが、彼の願いだというのなら。

私はただ、それを継いでいくだけ。

 

「だから、私はみんなを地球に帰し、エヒトとやらをぶっ飛ばす。あいつがここにいるのはもともと私たちオラクル側の不始末だもん。後始末くらいはつけないと」

 

きっとその過程で、ディンリードさんの躰を持ったアルヴヘイトとやらも出てくるだろう。だが───関係ない。

 

「そのために、私たちアークスは、守護輝士は、全力を以て、この世界を守る。それが、私に出来る唯一のことだから」

 

私は宣言する。

この世界を守ると。

 

「だから皆は、しばらく適当な場所で身を隠していて欲しい。その間に私たちが─────」

 

「そんなこと、させないよ」

 

ただ1人で世界を救う。そう宣言しようとしたとき、カエデから待ったがかけられる。

 

「もう、1人でなんて絶対に行かせない。あなたと離れ離れになるなんて、わたしは、いやだから………」

「カエデ………」

 

「俺たちのことも、忘れてないよな?」

「キリトくん………?」

 

「そうそう。まさかボクたちのことを忘れてたわけじゃないよね?」

「ユウキちゃん………」

 

「ハジメ君や私たちをこんな目にあわせてるんだもん。私たちだって、悔しくないわけじゃないんだよ?」

「カオリちゃんも…………」

 

「叔父様はわたしのことを愛してくれていた。叔父様はわたしのことを守ってくれていた。だから……わたしは叔父様の仇を討つ!」

「ユエちゃん、あなたまで………」

 

「まあ、なんだかんだ言ってたけどな、俺たちは故郷に……日本に帰りたいんだ」

 

ハジメくんは語る。

 

「だから、それを邪魔する奴は殺す。そう決めてたんだ。それに、エヒトとかいう野郎は、こいつ(ユエ)を攫おうとしてるんだろ?─────俺はそれが気に入らねぇ。だからこそ、ぶっ飛ばす」

「ハジメくん………」

 

「だから、だ。ユウ」

 

 

 

「「「「「「私たち/俺たち/ボクたちも、その旅に連れてってほしい」」」」」」

 

 

「みんな…………」

 

『どうするんですか、ユウキさん?』

 

シエラは少し芝居染みた声音で問うてくる。

分かってる癖に………。

 

「……………そこまで言うなら、付いてくると良い」

 

わたしは告げた。

未来を望む彼らに。

明日を目指す子供達に。

 

「この旅は辛いものになる。想像を絶するくらいには」

 

「「「「「「望むところ!」」」」」」

 

「求めるものの先には、貴方たちの望むものがあるとは限らないよ?」

 

「「「「「「だとしても!」」」」」」

 

「先に待つのは、ハッピーエンドとは限らない。もしかしたら、絶望かもしれない」

 

「「「「「それでも、俺たち/わたしたち/ボクたちは前に進む」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

…………ああ、彼らは、覚悟を決めたのか。なら私も、それに答えてやらねばなるまい。

 

 

 

「……………そっか。なら付いてくるといい。そして、その目で見るといい──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キミたちの求める、未来というものを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それを私に、見せてくれ」




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