宇宙(ソラ)に輝く、星の守り手~Phantasy Star Online2外伝~   作:星野優季

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大変遅くなりました。

幕間の物語、開始です。


幕間 幻創の剣士と絶望の獣~大変よく訓練されたアークス達を添えて~ 前編

ハジメ達がユエと出会い、ディンリードの意志を知ったその時。

 

勇者達は、聖教教会の本山たる神殿に居た。

 

オルクス大迷宮の攻略最中、数日前に、神エヒトより『新たなる使徒をそちらに送る』と、神託を受けたのだ。

 

そのため、歴代最高到達点である六十五階層目前で、新たなる使徒を迎えるため、勇者達はこの場に呼ばれていた。

 

「もうまもなくかと思われます。もうしばらく、お待ち下され」

 

新たなる使徒。一体、どのような人物なのか。

せめて、真面目な人物が来てくれると良いな、と。

“勇者”天之川光輝は誰に言うでもなく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

A.D 2028/6/30/17:30

 

 

 

所変わり、惑星地球の天星学園。

 

生徒会室に、彼女たちの姿はあった。

 

「お疲れさまー、ヒツギちゃん」

「うん。お疲れ、コオリ」

 

そこにいたのは、赤髪の少女と、黒髪の少女。

それぞれ、八坂火継(ヤサカヒツギ)と鷲宮氷莉である。

 

彼女たちは、かつて月や地球で発生した異変を解決した者達の1人であり、今はただの学生として、勉学に勤しんでいた。

 

そんな、ありふれた日常。それらは────────────前触れもなく、ぶち壊された。

 

「よーし、それじゃあそろそろ────ッ!」

 

帰ろう、と、言いかけた、その時だった。

 

────空間のエーテルがざわつく。

自分の足下に収束する。

 

「なにこれッ!?」

 

エーテルの収束した場所、足下に、謎の幾何学模様が描かれた。

 

「ヒツギちゃん!!」

 

足が動かない。

まるで、固まっているかのように。

 

「コオリッ!」

 

彼女たちは、お互いの名を叫ぶ。

次の瞬間、辺りが光に包まれた。

謎の光が収まった次の瞬間、その部屋には先ほどまで編集されていたであろう資料のみを残し、消失していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その現象は、同じ地球のラスベガスにある、〝アースガイド〟の本部、そして、オラクル世界の惑星アムドゥスキアでも発生し、アースガイドのメンバーである八坂炎雅(ヤサカエンガ)、そしてアークスの何人かが同じように消失したことが確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

U.C 102/11/5/14:30

 

ハイリヒ王国の神山。その頂に建てられた教会本部の最奥に存在する祭壇。その上に、幾何学模様が描き出される。

次いで、魔法陣の余剰魔力によって辺りが光に包まれた。

 

やがて壇上の光が収まり、視界が戻ってくる。そこにいたのは――――――

 

 

 

「――――――な、なに,ここ…………アンタ達、誰なの!?」

「ヒツギちゃん………!?大丈夫!?」

「なッ!?転移…?どうして……?」

 

地球にて行方不明になった3人と、

 

「チムマス、大丈夫っすか?」

「おう、こっちは大丈夫だ。お前らも無事か?」

「おっす。無事ですよ」

「こちらも問題なし」

 

オラクル側の惑星アムドゥスキアで通信の途絶したアークス達――――――――――ヒューマン、ニューマン、キャスト、デューマンの4人の姿があった。

 

 

 

「ようこそ、トータスへ。歓迎しますぞ、使徒様方。私は、この聖教教会で教皇を務めております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、よろしくお願いしますぞ」

 

イシュタルが軽い自己紹介を行った。

 

「ご丁寧にどうも。俺はアークス所属のバイス。バイス・オルテナウスだ。アンタ、今のこの状況に対して、手っ取り早く説明を頼む」

 

バイスと名乗る少女が、イシュタルへと返事を返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命は、ここに交差する。

 

オラクルを、地球を、全てを巻き込み、物語は紡がれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――なるほどー。つまり俺たちは、そのエヒト神に召喚された使徒で、そこにいる勇者君たちをサポートして、魔人族との戦争に勝利させてくれ、と。そう言いたいわけだ?」

「はい、その通りでございます」

 

教会本部の会議室。そこにて、アークスたちとアースガイド、そして聖教教会の教皇との問答が繰り広げられていた。

 

「なるほどなるほど。一つだけ言わせてもらう。────────────バッカじゃねえの?

 

「は………?」

 

バイスの突然の発言に、ポカンとする教皇。

 

「な、君は何を言ってるんだ!?この世界の人が困ってるんだぞ?なのにどうして助けないんだ!?」

 

彼女の発言に対して突っかかってきたのは、同席していた勇者、天之河光輝である。

 

「いやいやだってそうでしょ。いきなり召喚されたと思ったら戦争に参加しろって?なぜわざわざ関係ない人間の、惑星固有の問題に俺たち(アークス)が命賭けなきゃいけないんだって話じゃん。そういうのは、当人同士で解決しろっての。俺たちの仕事は惑星の調査と平定。惑星固有の問題に一々首突っ込んでたらキリがない。そんなとこまで面倒見切れんよ」

「だが!俺たちには力があるんだ!ならそれはこの世界の人たちの為に使うべきだろう!」

「バーカ、何が〝なら〟なんだよ。力があるから助けるなんてことにはならんだろうに。逆だよ逆。〝力があるから助ける〟んじゃなく、〝助けたいから力を得る〟んだよ。〝力がある〟のは〝助ける〟ことの理由たり得ないんだわ」

「だが!」

「第一、こちらにだって余裕がある訳じゃないんだよ」

 

「………どういう、こと?」

 

彼女の発言に、剣士、八重樫雫が声を上げる。

 

「そのまんまの意味だよ。俺たちアークスは、俺たちの居た世界には、〝ダーカー〟っつう、不倶戴天の敵がいるんだよ。宇宙全体にいるそいつらは、俺たちアークスの持つフォトンでないと浄化できないんだよ。奴らダーカーは生き物、機械、惑星、その他いろいろ。そう言ったものを浸食して乗っ取ってくんだ。そいつらを潰すのは、俺たちアークスの仕事の一つだな。それに、フォトンによる攻撃は、ダーカー以外にはあまり効果がないんだよ。そいつらを鍛えることは万歩譲っていいとしても、戦争参加はまっぴら御免だね」

「なっ!?君みたいな小さい子を戦わせるだって!?アークスはなんて組織なんだ!?」

「おいマテガキ。テメエ今私戦わせようとした癖に何言ってんだオイ。てか、俺は今22歳だわボケ」

 

 

 

 

 

 

 

 

勇者君のこともある。このままじゃ埒が明かない。バイスはそう考えた。

 

 

そこで、彼らは自身の衣食住を保証する代わりに、召喚された使徒の訓練をするという契約を結んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約一週間。

アークス達は勿論のこと、ヒツギやエンガ、コオリの戦闘能力が勇者を軽く超えることが分かり、光輝達勇者一行は、再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。但し、訪れているのは光輝達勇者パーティーと、小悪党組、アークス達のパーティー、ヒツギ達のパーティー、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人のパーティーだけだった。

 

理由は簡単だ。話題には出さなくとも、ハジメ達の死が、多くの生徒達の心に深く重い影を落としてしまったのである。〝戦いの果ての死〟というものを強く実感させられてしまい、まともに戦闘などできなくなったのだ。一種のトラウマというやつである。

 

 

そんな彼らに対し、当然ながら聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。

 

 

しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。

 

 

愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ希少な天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。愛子がいれば、糧食問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。

 

 

そんな愛子はハジメの死亡を知るとショックのあまり寝込んでしまった。自分が安全圏でのんびりしている間に、生徒が死んでしまったという事実に、全員を日本に連れ帰ることができなくなったということに、責任感の強い愛子は強いショックを受けたのだ。

 

 

だからこそ、戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

 

 愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。その愛子先生が、不退転の意志で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

 

 

結果、自ら戦闘訓練を望んだ勇者パーティーと小悪党組、永山重吾のパーティーのみがアークス達による訓練を継続することになった。そんな彼等は、再び訓練を兼ねて【オルクス大迷宮】に挑むことになったのだ。今回もメルド団長と数人の騎士団員が付き添っている。

 

 

今日で迷宮攻略六日目。

 

 

現在の階層は六十層だ。確認されている最高到達階数まで後五層である。

 

 

しかし、光輝達は現在、立ち往生していた。正確には先へ行けないのではなく、何時かの悪夢を思い出して思わず立ち止まってしまったのだ。

 

 

そう、彼等の目の前には何時かのものとは異なるが同じような断崖絶壁が広がっていたのである。次の階層へ行くには崖にかかった石橋を進まなければならない。それ自体は問題ないが、やはり思い出してしまうのだろう。特に、香織は、奈落へと続いているかのような崖下の闇をジッと見つめたまま動かなかった。

 

 

「アスナ……」

 

リズベットの心配そうな呼び掛けに、強い眼差しで眼下を眺めていたアスナはゆっくりと頭を振ると、リズベットに対して微笑んだ。

 

 

 

「大丈夫だよ、リズ」

 

「そう……無理しないでよ、アスナ?私に遠慮することなんてないんだから」

 

「えへへ、ありがと、リズ」

 

 

リズベットもまた親友に微笑んだ。アスナの瞳は強い輝きを放っている。そこに現実逃避や絶望は見て取れない。長い時間彼女を見てきたリズベットには、アスナが本心で大丈夫だと言っているのだと分かった。

 

(やっぱり、流石はアスナ。強いわね)

 

キリト達の死はほぼ確定事項だ。その生存は絶望的と言うのも生温い。それでも、逃避でも否定でもなく、自らの納得のため前へ進もうとするアスナに、リズベットは親友として誇らしい気持ちで一杯だった。

 

だが、そんな空気は読まないのが勇者クオリティー。光輝の目には、眼下を見つめるアスナの姿が、キリト達の死を思い出し嘆いているように映っていた。仲間の死に、優しいアスナは今も苦しんでいるのだと結論づけた。故に、思い込みというフィルターがかかり、微笑むアスナの姿も無理しているようにしか見えない。

 

そして、アスナがキリトと恋仲で、まだ生存の可能性を信じているなどと露ほどにも思っていない光輝は、度々、アスナにズレた慰めの言葉をかけてしまうのだ。

 

「アスナ……君の優しいところ俺は好きだ。でも、仲間の死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、桐ケ谷もそれを望んでる」

 

「ちょっと、光輝……」

 

光輝の本人のことを考えない発言に、彼の近くにいた八重樫雫が声を上げる。

 

「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、仲間である俺が言わないといけないんだ。……アスナ、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。アスナを悲しませたりしないと約束するよ」

 

「はぁ~、何時もの暴走ね……ごめんなさいね、アスナ……」

 

「あはは、大丈夫だよ、八重樫さん。……えっと、天之河君も言いたいことは分かったから大丈夫だよ」

 

「そうか、わかってくれたか!」

 

 

光輝の見当違い全開の言葉に、アスナは苦笑いをし、リズベットは顔を顰めた。

 

 

おそらく、今のアスナの気持ちを素直に話したところで、光輝には伝わらないだろう。

 

光輝の中でキリト達は既に死んだことになっている。故に、アスナの訓練への熱意や迷宮攻略の目的がキリト達の生存を信じてのものとは考えられない。自分の信じたことを疑わず貫き通す性分は、そんなアスナの気持ちも、現実逃避をしているか心を病んでしまっていると解釈するだろう。

 

自身の家の都合上、人付き合いに関して機敏である故に、光輝の思考パターンを何となく理解したアスナは、だからこそ何も言わず合わせるのだった。

 

ちなみに、完全に口説いているようにしか思えないセリフだが、本人は至って真面目に下心なく語っている。光輝の言動に慣れた(近くに無自覚天然女たらしがいた)彼女たちは普通にスルーしているが、他の女子生徒なら甘いマスクや雰囲気と相まって一発で落ちているだろう。

 

「アスナ、私達は、応援している。だから、出来ることがあったら言ってくれ」

 

「はい!私たちは何時でもアスナさんの味方です!」

 

 

 

光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのはカスミ───港沢香住(ミナザワカスミ)、そしてメイとマイ────烏丸萌衣(カラスマメイ)烏丸雅衣(カラスママイ)だ。

 

烏丸姉妹の方は、NWOで出会い、共に冒険をしたこともあり、本条楓──────メイプルとは対照の、STR(攻撃力)極振りの実力者だ。

 

 

 

カスミは、黒髪長髪の大和撫子といえる美貌の持ち主で、NWOでは侍のような姿の剣士である。

 

そんな二人も、キリトたちが奈落に落ちた日のアスナの取り乱し様に、その気持ちを悟り、アスナの目的にも賛同してくれている。

 

 

 

「うん、みんな、ありがとう」

 

ゲームを通じて出来た親友三人に、笑みを浮かべるアスナ。

 

何時も通りの光景を見せる姦しい二人に、楽しげな表情を見せる香織と雫。ちなみに、光輝達は少し離れているので聞こえていない。肝心な話やセリフに限って聞こえなくなる難聴スキルは、当然の如く光輝にも備わっている。

 

 そんな女子四人の姿を、正確には香織を、後方から暗い瞳で見つめる者がいた。檜山大介である。あの日、王都に戻ってしばらく経ち、生徒達にも落ち着きが戻ってきた頃、案の定、あの窮地を招いた檜山には厳しい批難が待っていた。

 

 

 

 檜山は当然予想していたので、ただひたすら土下座で謝罪するに徹した。こういう時、反論することが下策以外のなにものでもないと知っていたからだ。特に、謝罪するタイミングと場所は重要だ。

 

檜山の狙いは光輝の目の前での土下座である。光輝なら確実に謝罪する自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのである。

 

その予想は功を奏し、光輝の許しの言葉で檜山に対する批難は収まった。香織も元来の優しさから、涙ながらに謝罪する檜山を特段責めるようなことはしなかった。檜山の計算通りである。

もっとも、雫は薄々檜山の魂胆に気がついており、幼馴染を利用したことに嫌悪感を抱いたようだが。

 

また、例の人物(中村恵里)からの命令も黙々とこなした。とても恐ろしい命令だった。戦慄すべき命令だった。強烈な忌避感を感じたが、一線を越えてしまった檜山は、もう止まることができなかった。

 

しかし、クラスにごく自然と溶け込みながら裏では恐ろしい計画を練っているその人物に、檜山は畏怖と同時に歓喜の念も抱いていた。

 

(あいつは狂ってやがる。……だが、付いて行けば香織は俺の……)

 

言うことを聞けば香織が手に入る、その言葉に暗い喜びを感じ思わず口元に笑みが浮かぶ檜山。

 

「おい、大介? どうかしたのか?」

 

檜山のおかしな様子に、近藤や中野、斎藤が怪訝そうな表情をしている。この三人は今でも檜山とつるんでいる。元々、類は友を呼ぶと言うように似た者同士の四人。一時期はギクシャクしたものの、檜山の殊勝な態度に友情を取り戻していた。

 

もっとも、それが本当の意味での友情と言えるかは甚だ微妙ではあるが……

 

「い、いや、何でもない。もう六十層を越えたんだと思うと嬉しくてな」

 

「あ~、確かにな。あと五層で歴代最高だもんな~」

 

「俺等、相当強くなってるよな。全く、居残り組は根性なさすぎだろ」

 

「まぁ、そう言うなって。俺らみたいな方が特別なんだからよ」

 

檜山の誤魔化しに、特に何の疑問も抱かず同調する三人。

 

戦い続ける自分達を特別と思って調子づいているのは小悪党が小悪党たる所以だろう。王宮でも居残り組に対して実に態度がでかい。横柄な態度に苦情が出ているくらいだ。しかし、六十層を突破できるだけの確かな実力があるので、強く文句を言えないところである。

 

もっとも、勇者パーティーには及ばないので、彼らも光輝達の傍では実に大人しい。小物らしい行動原理である。

 

 

 

 

 

そして、橋の下を見る者がもう一人。

深遠卿遠藤浩介と同じ、二人目の暗殺者である白峰理沙である。

 

あの日、この場所から自身の親友が落ちた。

橋の崩落と流れ弾(何者かの悪意)により。

 

だからこそ彼女はそこに立つ。

絶望を持ち、奈落に堕ちた彼女を救うが為に。

 

それは、彼女の持つ力と装いにも影響を与えていた。

 

_____________________

 

白峰 理沙 17歳 女 レベル:50

天職:暗殺者

筋力:400

体力:523

耐性:200

敏捷:973

魔力:462

魔耐:395

フォトン:182

技能:双剣術・気配感知・魔力感知・気配遮断・超加速・アバター[+封印]・フォトン適正[+フォトン操作][+身体強化]・解式フォトンアーツ・言語理解

__________________________________________

 

この通り、ステータスは軒並み上昇し、更に新たな項目や技能も生えてきた。現在の衣装も、ユウが予め預けて置いた、黒色に青の線が入ったレイドスフィーダを着用し、武器もアークスの装備、『ノヴェルツインダガー』を使用していた。

 

「待ってて、楓。必ず助けに行くから」

 

少女は独り言つ。

全ては、友を助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一行は特に問題もなく、遂に歴代最高到達階層である六十五層にたどり着いた。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。

 

しばらく進んでいると、大きな広間に出た。何となく嫌な予感がする一同。

 

その予感は的中した。広間に侵入すると同時に、部屋の中央に魔法陣が浮かび上がったのだ。赤黒い脈動する直径十メートル程の魔法陣。それは、とても見覚えのある魔法陣だった。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

光輝が額に冷や汗を浮かべながら叫ぶ。他のメンバーの表情にも緊張の色がはっきりと浮かんでいた。

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

龍太郎も驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

龍太郎も不敵な笑みを浮かべて呼応する。メルド団長はやれやれと肩を竦め、確かに今の光輝達の実力なら大丈夫だろうと、同じく不敵な笑みを浮かべた。

 

そして、遂に魔法陣が爆発したように輝き、かつての悪夢が再び光輝達の前に現れた。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

 

全員に緊張が走る中、そんなものとは無縁の決然とした表情で真っ直ぐ睨み返す少女たち。

 

 

 

アスナたちである。彼女たちは誰にも聞こえないくらいの、しかし、確かな意志の力を宿らせた声音で宣言した。

 

「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、私は彼のもとへ行く」

 

「また逢ったわねクソトカゲ………さ、リベンジの時間よ!」

 

今、過去を乗り越える戦いが始まった。

 

 

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