宇宙(ソラ)に輝く、星の守り手~Phantasy Star Online2外伝~ 作:星野優季
エピソード“7”、開幕です。
月光の下、語らう旅人(アークス)
CHAPTER 1
子供達は奈落で眠る
ハイリヒ王国王都より南東方向へ40km。
“オルクス大迷宮”と呼ばれる巨大な地下迷宮の入り口に作られた町、“宿場町 ホルアド”に来た
彼女らは、明朝より行われる、“オルクス大迷宮”での実践訓練のために、王国直営の宿にて、休息を取っていた。。
オルクス大迷宮とは、この世界─────惑星トータスに存在する、“七大迷宮”の一つであり、全百階層からなる“迷宮”である。
その特異性は、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現するようになるというもの。
にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に人気がある。
何故なら、階層によって強さが分かり易く、どの程度ならば潜っていいのか分かるからだ。
なぜなら、この迷宮に出現する魔物は地上にいる魔物と比べて、良質な魔石を体内に抱えているからだ。
魔石とは、魔物を魔物たらしめる力の核のことを言う。
強い魔物程、上質で大きな魔石を備えており、それらは魔方陣を作成する際の原料として使われる。
魔法陣を普通に描いた場合も発動はする。
が、魔石を粉末状にし、刻み込んだり染料として使った場合と比較すると、その効果は三分の一にまで落ちてしまう。
つまり、魔石が魔力の通りをよくしているのである。
他にも、日常生活のいたるところで魔道具が使われており、それの原動力としても魔石は使われる。
ちなみに、良質な魔石を持つ魔物程強力な固有魔法を使うらしい。
言うなれば、魔物版技能ということだと言えば分かり易いだろう。
だが、その性質には差異があり、魔力を持っていても詠唱や魔法陣を使えない魔物が使う魔法のことで、一種類しか使えない代わりに詠唱も魔方陣も無しに発動することが出来るのだ。
ーーーーーside ハジメ
自身に割り当てられた宿の一室、今まさに眠りに落ちようとしていたハジメの耳に、コンコンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
すわっ檜山達か!?と身構えるハジメだったが、訪問者は檜山たちではなく──────────
『ハジメくん、白崎です。ちょっといいかな?』
ノックしたのは、白崎香織だった。
起き上がったハジメは、寝ぼけ目をしながら扉に近づいていき、鍵を外して扉を開ける。
そこには、純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。
「……………なんでや」
「えっ?」
「あ、ああいや、なんでもないよ………。どうしたの?明日のことで何か連絡事項でもあるの?」
「あ、ううん。少し、ハジメくんと話がしたくて………だめ、かな?」
悲しげな表情をする香織。
「いえ、そんなことはないです。どうぞ…………」
あんな表情されたら断れないじゃんっ!と、気付けば自分の部屋に彼女を招いていた。
無警戒で中に入っていく香織。ハジメは、部屋に備え付けてあった、“青紅茶”なる紅茶なのか何なのか分からない青色の飲み物を入れ、香織に出す。そして向かいの席に座った。
「それで、どうしたの?明日の打ち合わせとかかな?」
「それはね……」
話を振ってみると、香織の表情が少し暗くなる。地雷を踏み抜いたか、と少し身構える。自分が悪いことをしたのならその非を認めて謝罪するべきだと考えていたからだ。
だが、その口から放たれた言葉は、想像とは全く異なっていた。
「明日の迷宮だけど……南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」
放たれた言葉が意外なものであったハジメは少しばかり驚く。
例の“訓練”で鍛えられており、今の彼は無能どころかその実力は一線級である。
それに、ただ足手まといだからだというには少々必死すぎる気もする。
「えっと…………確かに僕は足手まといだけど……流石にここまで来てそれは流石に認められないんじゃ……」
「ちがうの!足手まといとかそういうことじゃなくて!」
香織は、ハジメの誤解に慌てて弁明する。自分でも性急すぎたと、思ったのか、胸に手を当てて深呼吸する。
落ち着いたようで、「いきなりごめんね」と謝り、静かに語り出す。
「……あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……南雲くんが居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」
「最後は?」
香織は今にも泣きだしそうな表情を浮かべながら、ぽつりと言葉を零す。
「……消えて、しまうの……」
「……そっか」
涙を零しそうになっている香織のことを見つめるハジメ。
確かに、不穏な夢だとは思う。しかしそれが現実に起こる確率なんて正直言ってないに等しい。それに、そんな不穏な夢を見たからと言って戦力として最高峰であるハジメが休んでいい理由にはならない。故に、たとえその先が地獄であるとしてもハジメは進むことしかできないのである。
「夢は夢だよ、白崎さん。僕だって確かに弱いけど、“あの”ゆ…………ミーシェさんに鍛えてもらったんだ。それに本人もいるし、周りのみんなも全員チートだし。敵がかわいそうなくらいだよ。───────それに、僕には“これ”がある」
ハジメは、机の上に置いてある「拳銃型のナニカ」を指し示す。
それは、特殊訓練5日目、ハジメの課題としてユウキに作成を指示されたもの。
魔力を撃ち出す、“魔弾”という魔法のみが行使できる、威力も弱いが、
─────ただ、これにはユウキが手を加えており、空間中のフォトンを吸収して撃ち出すように改造されているが、この時のハジメには知るよしも無い。
不安そうな表情で見つめてくる香織。こんなことを言うのは、正直柄じゃないのだが。ハジメは独り言ちながら、香織の目を見つめる。
「それでも、不安なら。僕のことを、守ってほしいな」
「……私が、南雲君のことを?」
慣れないことを言っているのは分かっている。自分にこういう役柄は似合っていない。
それでも、ここでこれを言わないといけないような。そんな気持ちに取りつかれたハジメはその一言を告げた。
「白崎さんは"治癒師"だよね?その力があれば、きっとみんなのことも、僕のことも守れると思うんだ。それがあるなら、きっと僕は大丈夫だから。白崎さんが……僕のことを守ってくれないかな?」
「女性の人に守られるなんてプライド的にあれなんだけどね。……でも、そっか。香織が守ってくれるなら、安心かな」
そう言い終えると、どちらからかは分からないが互いが笑っていることに気づいた。
恥ずかしいセリフを連呼したことに気づいた時には時すでに遅しではあったが、その場は少し落ち着いた雰囲気に包まれていた。
それからしばらく雑談した後、香織は帰っていった。
初めて会った時にあったこと、皆と出会っていく中で変わっていった自分のこと。駆け回り続けたあの夏の日香織を純真無事を話していた。そこに重苦しい雰囲気はなく、あったのは優しく落ち着く風景なのであった。
ーーーーーside ユウキ
宿ののバルコニーで私は歌う。
感じているさみしさを紛らわせるために。
どこかに感じる嫌な予感を忘れるために。
「ユウキ、起きてたんだ」
背後から声が掛かる。
「あなたも、でしょうが。────恵里」
私に声を掛けてきたのは中村恵里。かつて、橋の上から投身自殺を図り、私によって止められた、少女である。
「ボクも、眠れなくて。────なんか、胸騒ぎがするんだ」
「恵里も、か」
そう。私は先ほどから妙に胸騒ぎがして眠れないのだ。
それはまるで、かつて世界を滅ぼそうとした【終の女神 シバ】と対峙したときのような。
『我が名は終の女神、シバ。
かつて世界のために、贄となった者』
『……無念だ。ああ、無念だ。私の勝利は叶わなかった。
歴史はやはり、繰り返してしまうようだ。』
『私と貴方が、記録してきたものを、再び最初から繰り返すのみ』
『最後に問おう、
選べと言われたら、どちらを選ぶ?』
『…………どういう、こと?』
「どう、したの?怖い顔、してるよ?」
「…………ぁ、…………ううん、なんでもないよ」
終の女神、シバ。
かつてフォトンを───世界を滅ぼそうと画策し、そして、私たちに打ち倒されたもの。
そんな彼女と対峙する前のような、言葉に表せない悪寒と、迷宮の奥地から感じるプレッシャー。
明日は、確実に
それを感じ、眠れなかったのだ、私は。
「─────大丈夫だよ」
「へ?」
恵里は言う。
「あなたなら、きっと大丈夫だって、信じてる」
「恵里…………」
「だから──────
「……………うん!」
ーーーーーside ??????
ああ。私は何故まだ生きているのだろう。
それなのに。
なぜだろう。
私の下には
私が殺してしまったようなものなのに。
なぜだろう。
なぜ、なぜ─────
「こんなにも、辛い気持ちになってしまうのでしょうか……………」
フォトナーの気配。
かつて、
私を犠牲にして、生き延びた存在。
当時マジックユーザーと呼ばれた、奇跡にも等しい能力を行使し、異世界へと生き延びた、歴史に語られぬ裏切り者を。
「この世界にいるのですね、愚かなフォトナーよ」
「それでは、始めましょう。命を賭けた、
従者二人を従え、女神は笑う。
かつて、総てを失うことになった元凶へと。
「勇者、ですか。さて、どの程度の実力なのか、確かめてみる必要がありそうですね」
運命とは、いつの日も、
「……なんで、あいつが…………あいつなんかが香織と仲良くしてるんだよ……」
自らに課せられた使命が、お粗末な悪意か、という差はあれど。
神は嗤う。
自らが
女神は笑う。
再び手に入れた命、それを“悪役”としてしか使えないことを。
愚者は踊る。
粗末な悪意を手に、その欲望をぶちまけるため。ただ、すべてが掌の上でしかないことを知らずに。
少女は
彼の地での思い出を。過去に歩んできた物語を。
かくして。
役者は揃った。
物語は動き出す。
全知存在ですら識らない未来が。
星における刹那の瞬き。
人にとっての永き時。
ここに、運命の歯車は動き出す。
否応なく、未来へと。
これは、“私”の物語であり、誰かの物語。
────────とある、旅の物語。
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