宇宙(ソラ)に輝く、星の守り手~Phantasy Star Online2外伝~   作:星野優季

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大迷宮、再臨するは閃の悪夢 前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

U.C 102/10/17/8:00

 

 

ーーーーーside ユウキ

 

翌日。

 

私たちは、オルクス大迷宮の入り口の前にいた。

 

その入口はRPGのダンジョンにありがちな薄暗い陰気なそれではなく、博物館の入場ゲートの様な整備された物であり、制服を着た受付嬢らしき存在がいる窓口まであった。

 

どうやら日本における登山計画書の様にステータスプレートをチェックし、出入りを記録するとのこと。

 

とはいえ日本のそれみたいに対象者が行方不明になった時の捜索に役立てる訳では無く、死者・行方不明者を正確に把握する為、さらに戦争を控えているため、無駄なな犠牲を出さない様、注意を喚起することも目的だろう。

 

他にも七大迷宮と言う危険地帯でありながらその特性故に人気が高いオルクス大迷宮、殊に浅い階層は魔石等の良い稼ぎ場所として人も集まりやすく、嘗ては命知らずな輩がノリで挑んで命を落としたり、犯罪の拠点とする人間が多く存在したりで不穏な空気が漂っていたらしく、魔人族がいつ襲い掛かって来るか分からないのにそんな内憂を抱えていられるかと思った王国が、冒険者ギルドと協力して設立した経緯から、現地の警察的な役割も担っている様だ。

 

尚、ゲート脇の窓口では素材の売買もしているらしく、迷宮に潜る者たちの金回り関係で重宝しており、事実その周囲では露店等も所狭しと並び立っており、それはまるでお祭りの様である。

 

そんな広場の喧騒を他所に私たちはメルド達騎士団の後を追う様に迷宮へと入って行った。

 

 

お祭り騒ぎの様相の広場とは打って変わって、迷宮の中は静寂に包まれていた。

 

縦横5メートル以上はありそうな通路は明かりを持っていないにも関わらず薄ぼんやりと発光しており、松明や光を発する魔道具が無くてもある程度の視認性は保証されている。

 

どうやら緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているため、光源が尽きる事無く冒険者の視界を確保してくれているそうだ、このオルクス大迷宮はその緑光石の鉱脈を掘って作られたらしい。

 

そんなことはさておいて、一行はそれぞれのパーティー別に分かれて集まっていた。

 

パーティーとは、戦闘における集団のことで、通常の冒険や戦闘では殆どがパーティーで行動し、大型のエネミーなどを狩る際に、レイド───パーティー同士で徒党を組み戦うのだ。

 

ちなみに、この世界のパーティーは、一つのパーティーごとに多くても7人8人位なのだそう。

 

オラクルのパーティーは最大4人、レイドを組んでも12人である。

 

キリトくんは、アスナちゃん、リズベットちゃん、シリカちゃん、ユージオくん、アリスちゃん、アルゴちゃんにリーファちゃん、さらにユウキちゃん。

楓ちゃんは、理沙ちゃんにマイちゃんメイちゃん、カナデくん、それからカスミちゃん。

 

私とハジメくんはソロ、恵里、香織ちゃん、雫ちゃんは勇者パーティーの方に行っている。

 

そんな彼らは、隊列を組みながら騎士団の先導に従ってぞろぞろと進む、すると暫くの時を経てドーム状の広間に出た。

 

その気配を察知したのだろう、騎士団は動きを止める。すると、辺りを見回していた一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出て来た。

 

「よし、まずは光輝達からだ、他は後ろで待機!交代で前に出て貰うから準備はしておけ!あれはラットマンという魔物、すばしっこいが大した敵じゃない。冷静に行け!」

 

 

その正体はラットマンという魔物、見た目はその名の通り二足歩行のネズミ、と此処まで書くと某夢の国のマスコットキャラクターを思い起こさせるがあんなファンシーな姿じゃない、リアルなネズミがそのまま直立し、尚且つ上半身が筋肉モリモリマッチョマンの変態チックな姿だった、ご丁寧に筋肉の発達した部分だけ毛が生えていない、見ろやこの筋肉!と言いたげである。キモいが、変態(アークス)よかマシだ。

 

その異様な姿に、出撃している天之河達の顔が引きつるが実戦で唖然としている場合じゃないと切り替え、前線の天之河くんと坂上くんが迎撃態勢をとり、後方の鈴ちゃんと恵里が詠唱を開始した。

 

まず天之河くんが純白に輝くソード型のアーティファクトである『聖剣』を振るい、その光を浴びて動きが鈍っていたラットマンを纏めて葬り去る。

あの聖剣は常に光っており、その光を浴びると敵は弱体化するが、自身の能力は上昇するという、『聖なる』と言うには実にいやらしい代物だ。

………若干創世器に近いような、何処ぞの創世神に近いような雰囲気をあの剣から感じるのは気のせいだろうか?

 

次に坂上くんは、衝撃波を放つ事の出来る籠手等のアーティファクトを身に着け、元は空手部に所属していた為か堂に入った構えから正確無比な打撃で一体の打ち漏らしなく確実に仕留める。

 

前に立つ男子2人が守っていたのでラットマンの襲撃に晒される事無く己の仕事を遂行できた女子2人は詠唱を完成させ、魔法を放つ。

 

「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ “螺炎”」」

 

螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるかの如く巻き込み燃やし尽くしていく。

 

「キィィィッ」というネズミらしい悲鳴を上げながらラットマンは細かい灰と変わり果てた後には、広間にいた敵は全滅していた。

 

「あぁ、うん、良くやったぞ!次はお前達にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

初めての実戦とは思えない戦いぶりに、大したことないと言っていたラットマン相手とはいえ圧勝と言って良い戦果に苦笑いしながらも褒めつつ、気を抜かない様に注意し、

 

「それとな、今回は訓練だから良いが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

細かい灰になるまで焼き尽くした後衛の2人を、魔石等の換金出来る素材すらも焼き尽くしてしまった鈴達を窘めたメルド団長、2人もやり過ぎた自覚があったのか思わず恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「よし、次は────ユウキ(ユウ)!出てこい!」

 

その名前が呼ばれた瞬間、檜山達がニヤニヤし始める。

 

「おいおい、ずっと訓練をサボってたやつがなんかできるのかよ?」

 

「そうそう、もう俺たちの方が絶対に強いって」

 

なんか大声で言っているが気にしない。

 

ずっとPAとテクニックで空飛んでた私をなめんなよ?

 

私は《光跡剣 ディメシオン》をヒーロークラスの持ち方───片手で持ち剣の切っ先を下に向ける─────で構え、隠れた敵を見据える。

 

そのまま前方へ小さくステップ。剣の軌道上に出てきたエネミーをササッと切り捨てる。

 

そのままの勢いで背後を向き、さらに数体を切り裂く。

 

更に遠くに現れたサル型のエネミー、()()()()()()()()()()()であるウーダンに向かって突進、突きを入れる。ヒーロークラスのPAである“フラッシュオブトリック”だ。

 

タリスに持ち替えそうになるが我慢する。

 

後ろもザワザワしているが気にしない。大方「何で訓練もろくにしていない私がこうも戦えるのか」とかだろう。

 

 

…………ちょっと待て。

 

あれ?なんでだ?ついサラッと流しちゃったけど、なんでナベリウスの原生種(ウーダン)がいるの?

 

…………ナニカが原因で、オラクルと繋がった?

 

………分からない。何が原因でこうなったのか。

 

「………シエラ、シャオ。調査は任せた。」

『ええっ私たちですか!?』

「だって出来そうなの2人しかいないじゃん。もう私にはお手上げだから後よろしく」

 

あとはシエラとシャオに丸投げしとこう。わたしにはどうしようもない。

 

『…………シャオ、お願いします』

 

 

 

 

 

 

 

その後もアレがこの世界にて元々確認されていない種類のものだとバレることなく進み、20層までたどり着いた。

 

この階層は、トータスの人間族基準で一流の冒険者か否かを分けると言われている。

 

「よし、お前達。此処から先は一種類の魔物との戦闘だけじゃない、複数種類の魔物が混在したり、連携を組んで襲い掛かったりして来る。今までが楽勝だからと言ってくれぐれも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!」

 

その探索前に発せられたメルド団長からの掛け声に改めて気を引き締めた一行だったがやはりと言うべきか何の滞りも無く進み、やがて次の階層に繋がる階段がある部屋へと辿り着いた。

 

魔物(エネミー)が連携してくる、か。興味深い。

 

オラクルでは、エネミーが連携して襲いかかってくることはあまりなかった。あったとしても単一種類で原生種の群れがあるかないかくらいだったからね。

 

 

 

次階層へ繋がる階段のある場所は、鍾乳洞の如くツララ状の壁が飛び出したり、或いは溶け出したりと複雑な地形、奇襲されたら対応に梃子摺りそうなフィールドである。

 

此処を探索し終えたら今日の実戦訓練は終了だと言われたのもあってか一行の大半は何処か弛緩した様な心持ちの中、せり出した壁の為に隊列を横に広げる事が出来ず、一列になって進んでいた。

 

すると先頭を行く天之河くん達のパーティとメルドが立ち止まった。

 

 

 

「擬態しているぞ!周りを良ーく注意しておけ!」

 

お、見つけたっぽい。

数は………3…………いや4か。

 

いきなり立ち止まった事に訝しんだ一行にメルド団長がそう忠告した直後、前方にせり出していた壁が変色しながら起き上がった。

 

壁と同化していた身体は褐色に変化し、二本足で立ち上がり、ゴリラがドラミングするかの様に胸を叩き周囲を威嚇し出した。

 

カメレオンの如き擬態能力を有するゴリラ型の魔物の様だ。あまり隠れてなかった気がするが。

 

EMERGENCY CODE

[ATTACK]

 

ロックマウント全てを討伐せよ!

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ、剛腕だぞ!」

 

メルドの声が響くと同時に飛び掛かって来たのは、ナベリウスの原生種であるゴリラ型の大型エネミー、ロックベアそっくりの魔物――ロックマウントの剛腕が振り下ろされるも坂上がそれを弾き返し、その隙を突いて天之河くんが回り込もうとするが地形が地形の為に足場が悪く、上手く囲めない。

 

だがそれは相手側も同じ、坂上くん達を突破出来ないと判断したロックマウントは後ろに下がり、仰け反りながら大きく息を吸い込んだ次の瞬間、

 

 

『グゥガァァァァァァァァァァァァァァァァ!』

 

「ぐっ!?」

 

「うわっ!?」

 

部屋全体を震動させる様な、強烈な咆哮が発せられ、それをまともに食らってしまった天之河くん達の身体にビリビリとした衝撃が走り、ダメージこそ無かったが身体が一瞬硬直してしまった。

 

これこそロックマウントの固有魔法『威圧の咆哮』、咆哮に魔力を乗せる事で、相手の動きを少し止める────すなわち、スタンさせる効果を生み出したのだ。

 

こうして最前線で戦う天之河くん達の身動きを封じたロックマウントはその隙を突いて突撃する、と見せかけてサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ、砲丸投げの手本になりそうなフォームで、後方で詠唱を行っていた鈴達に放り投げた。

 

だがそれに反応出来ない彼女達では無い、避けるスペースはほぼ無いため回避は出来ないと判断し、準備を終えた魔法で迎撃せんと杖を向けるも、

 

 

「「ヒィ!?」」

 

 

衝撃的な光景に思わず悲鳴を上げて、威圧の咆哮を食らっていないのに固まってしまった。

 

なんと、投げられた岩も擬態していたロックマウントだったのである。

 

空中で見事な一回転を決め、両腕を一杯に広げ、どういう訳か目を血走らせ鼻息を荒くして飛び込む様は正に何処ぞの怪盗顔負けのル○ンダイブ、気色悪いと言うしかないその光景を前に魔法の発動も中断してしまったのだが、

 

「こらこら、戦闘中に何をやっている!」

 

そのまま飛び込まれる事は無かった、飛び込まんとするロックマウントをメルドが切り捨てたからだ。

 

思わぬ所で失態を犯してしまったのは分かっていたのか「す、すいません!」と謝る鈴ちゃん達だったがやはりあの光景は気色悪かったのか、未だに顔が青ざめていた。

 

それを見てキレる者が1人、そう、

 

 

「貴様、良くも鈴達を…許さない!」

 

 

鈴ちゃん達が青ざめていたのを死の恐怖だと勘違いしたらしい天之河、方向性を間違えた怒りに呼応するかの如く装備していた聖剣が輝き、

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ──“天翔閃”!」

「なっ!こら、馬鹿者!」

「な、ちょ、バカッ!」

 

メルド団長の制止も無視して大上段から振り下ろした。

 

その瞬間、詠唱によって強烈な光を纏っていた聖剣から、巨大な光の斬撃が放出された。

 

だか、それを見逃す私じゃない。

 

ファントムクラスの特殊な立ち回りを以て、天翔閃の斬撃の前に瞬間移動。攻撃をフォトンを纏わせたディメシオンである程度相殺してから、崩落の危険性がない場所に放り込む。ついでにその勢いでロックマウントも刻む。

 

CODE [ATTACK]

 

COMPLETED     

 

天翔閃の当たった箇所はボロボロに砕け散り、私に気付いていない天之川はふぅと一息ついて鈴達へと振り返った天之河、鈴ちゃん達を殺そうとした魔物は自分が倒した、もう大丈夫だと声を掛けようとしたが、その前には目の笑っていない笑顔で迫ったメルド団長からの拳骨を食らう事となった。

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が、気持ちは分かるがな、こんな狭い所で使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうするんだ!今回はユウキ(ユウ)が逸らしてくれたから良かったものを!」

 

至極もっともなお叱りには流石にバツが悪かったのか、声を詰まらせながら謝罪する天之河。

 

そんな天之河を、勘違いとは言え自分達の為に憤ってくれた為か鈴ちゃん達が慰める中、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、何かな?キラキラしている…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

崩れた壁から何かを見つけたのだろう、香織ちゃんがその方へ指さした。

 

 

それに全員が振り向くと其処には、青白く発光する鉱物が花咲くかの如く壁から生えていた。

 

その輝きは、まるでオメガでよく砕いていた大型魔晶石のようだった。

 

「ほぉ、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ、珍しい」

 

 

 

グランツ鉱石とは、所謂宝石の原石らしき物である。

 

特に魔力的な効果がある訳では無いがその輝きが貴族のご婦人・ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪やイヤリング、ペンダント等にして送ると大変喜ばれるとの事。

 

求婚の際に選ばれる宝石トップ3に入るそうだ。

 

「素敵…」

 

 

 

砕きたくなる衝動を抑えつつ、香織ちゃんの方を向くと、ハジメくんの方に視線を向け、うっとりとした表情でそう呟いていた。

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 

 

そんな香織達の微笑ましい様子はさておき、グランツ鉱石を見て何を思ったか前方にいた檜山がその方へと向かい、軽戦士ならではの身のこなしを活かしてひょいひょいと壁を登って行った。

 

「こら、勝手な事をするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

その行動に慌てたメルド団長が檜山を注意しようと声を上げたが、それが聞こえないふりをしながら登っていく。

 

「団長、トラップです!」

 

その声が聞こえたときには、グランツ鉱石には、既に手が触れていた。

 

「な!?総員、この部屋から出ろ!」

 

 

 

檜山が鉱石に触れた瞬間、部屋の中に光が満ちた。

 

まるで、あの時、召喚された時の再演。

 

足下に魔法陣が描かれ、視界を白く塗りつぶす。

 

ああ、これ、間に合わないな…………

 

 

 

U.C 102/10/17/14:30

鉱石から発せられたであろう光によって視界が真っ白に染まると共に身を包む浮遊感、自らを覆っていた空気(フォトン)の流れ方が変化した感じからして、どうやら何らかの転移魔法(マジック)によって別の場所へと飛ばされた様だと私は気づいた。

 

そうと分かれば次に移すべき行動は決まっている、視界が効かない状態でありながら、地面に衝突する直前のタイミングでいつものように着地、油断なく周囲を見回し、感覚を研ぎ澄ます。

 

妙な悪寒がする。

 

視界を染めていた光が晴れると其処にはやはり先程の魔法で転移して来たであろう、今日の訓練に参加しているメンバー全員がいた、どうやらハジメくんの様に尻餅をついてしまったのが殆どだが、メルドを始めとした騎士団の面々、天之河達等の一部クラスメートは立ち直りが早く、私と同じく周囲を警戒していた。

 

転移先はどうやら巨大な石造りの橋らしい、全長100m近く、今いる場所から天井までは50m位、橋下に川は見当たらず、代わりに奈落への入り口だと言わんばかりの闇が広がっていた。中央近く、すなわち私たちの立っている場所には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ナニカ嫌な予感が────────

 

なっ!?

 

何だこれ…………マザーシップ・シバの中枢にあった足場そのものじゃないか!

 

嫌な予感とはこれのことか………?

 

橋の幅は10mとかなりの広さだが手すりはおろか縁石も無く、端の方で足を滑らせたら最後、奈落の底へ真っ逆さまなのは言うまでもないだろう、そんな橋上の中央部に私達はいる。

 

そんな橋を渡り切った先は、一方は上階へ繋がっているであろう階段が、もう一方がこの階層の奥へと繋がっているであろう通路が見えた。

 

「お前達、直ぐに立ち上がってあの階段の場所まで行け。急げ!」

 

周囲の状況を確認したメルド団長は、今すべきことはこの場所から、と言うよりオルクス大迷宮からの脱出だと判断し、雷の如く轟くような声で指示を飛ばした。

 

それを受けて慌てながらも動き出す生徒達だが、

 

「───ん?…………何か来る!」

 

その予感が的中した。

 

階段側の入り口に魔法陣が出現、其処から大量の魔物が発生した。

 

それだけではない。

 

更に通路側の入り口にも魔法陣が出現、然しこれは階段側のそれとは比較にならない程の大きさであり、其処から現れたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、ベヒモス、なのか…」

 

直径10m位の魔法陣に見合った巨体、頭部に兜を取り付け、赤黒い光を瞳から放ち、鋭い爪と牙を打ち鳴らし、兜から生えた角から炎を放つ、巨大な───

 

「いや、違う…………この感じは………!」

 

『ユウキ!まずい、その近く………君たちの上だ!転移反応………これは、ダーカー、それに………あり得ない。これはっ!』

 

「な…………あ…………」

 

ある意味で見慣れた“その光景”。

 

黒い穴から飛び出す四足歩行のバケモノ。

 

地面からにじみ出るダカン達。

 

「なんだ、アレは…………」

 

誰かも分からぬ声。

 

呟かれた、絶望の言の葉。

 

それは、何に対してのものだったか。

 

きっと、ダーカー達に向けたものだった。

 

だが、絶望の瞬間は始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、オラクルにとっては数ヶ月ぶり。

 

私にとっては十数年ぶり。

 

赤と銀色の、無数の三角形で構成された正八面体。

 

巨大なそれが一つ、人くらいの大きさのそれが八つ、人の3倍はあろうかというそれが二つ。

 

そこから出てきたのは───────

 

『間違いない。この反応は──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閃機種だっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞きたくなかった。

 

だが、現実に起こった事である。

 

 

シャオから告げられた絶望的な事実。

 

現れたのは、四角いコアとそれを守る緑色の装甲らしきものだけで構成された、シンプルな造形のソレ(バリール)

ビームの剣と小さな盾を持った騎士のような風貌のフォトナーの兵器(ディゾルセイバー)

 

4つの脚部型ブースターを持つ、重力を自在に操り、防御力の高い頑強な形態、攻撃力の高い高機動な形態の2つの形態を駆使して私たち(アークス)を翻弄してきた、蟹の怪物(グラーブエグゼクル)

 

 

それはまるで、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運命が、私たちを嘲笑しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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