白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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ずっっっと書きたかった方々、登場


13.狂った刃と泡沫

 数ヶ月後……リハビリも終え、セアとラルアは完全に復活していた。

 

「今日のクエストも余裕だったね」

「うん。でもまだ難しいのは選んでないからね……」

 

 集会酒場に戻り、休息をとっていた。

 

「ねー」

「わうっ!?」

 

 突然、ラルアの尻尾が軽く引っ張られた。完全に気を抜いていたラルアは驚き、おかしな声を出してしまう。

 

「わ……わうって……」

「セア! 笑わないでよ! ていうか誰!?」

 

 振り向くと、そこに居たのは幼い少女だ。モコモコのワンピースに膝まであるブーツ、所々赤や白に染まってる青い髪をロングのポニーテールにしている。

 

「こんにちは。あなたもモンスター……でしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあじゃあ、お願いしたいことあるんだ」

「その前に、あなたの名前……」

「あ、ごめんなさい。私ガムート」

「ガムート……え!? ガムートってあの!?」

 

 ガムート、寒冷地に生息する大型の牙獣種。別名巨獣。ハンター達が「四天王」と呼ぶモンスターの一角で、その中では一番体格が大きく、ティガレックスの爪牙をものともしない耐久力を誇る。

 しかし、ラルアの目の前に居るのは、人間の年齢で言えば十歳くらいの見た目の幼女だ。

 

「……幼体?」

「違う! 立派な成体だよ!」

「にしたって小さ……はっ」

 

 ある事を思い出した。少し前、異常に小さいガムートの狩猟依頼が届き、ハンター達の間で話題になったことがあるという話をセアから聞いた。そのガムートの大きさはハンターより少し小さい程度でとても可愛らしかったとか。

 

「なるほど。極小個体か」

「違う! 普通に大きい個体だったよ!」

「はぁー? じゃあなんで今そんなに小さいのさ」

「わかんないよ。というか、そんなのどうでもいいでしょ。私のお願い聞いてよ」

「あ、あぁ……」

 

 ガムートは椅子に座った。

 

「あのね、あるモンスターの調査をして欲しいの」

「あるモンスター? どんな?」

「四足歩行で、背中から翼みたいなのが生えてて、角がこう……ニュッて生えてて、体の色は黄色で……」

 

 身振り手振りを交えながら容姿を説明していく。

 

「うーん……そんなモンスター居たかな?」

「居ないよ」

「じゃ新種?」

「多分。私も初めて見たから」

「なら、調査する必要があるかもね。セア!」

「んふっ……わうって……」

 

 セアはまだ、テーブルに顔を伏せて笑っていた。どうやらツボに入ったらしい。

 

「いつまで笑ってるの!!」

「いいよ。これはハンターさん達にはあまり関係ないことだと思うし」

「え? それってどういう……」

 

 聞こうとしたその時、クエスト出発口の方に何かが勢いよく降り立った。どよめくハンター達の間から見えたのは、透き通る翠色の翼を備えた少女。暗い金色のショートヘアで、大きなアホ毛が立っている。服装は黄緑色のパーカーとホットパンツ。髪色に近い色の甲殻に覆われた尻尾は先端が二股に別れており、黄緑色に帯電している。

 

「ゼクスちゃんだ」

 

 ガムートがぼそっと呟く。そう、集会酒場に降り立ったのは飛竜種のモンスター、雷竜ライゼクスのようだ。ライゼクスは視界にガムートを捉えると、息を切らしながら走ってきた。

 

「ガ……ガムちゃん……」

「どうしたの? 見張りは?」

「それが……ディノとミツネが……大変な事に」

「……! そんな……」

「早く行こう! 何とかして大人しくさせないと!」

「うん……! ねぇ、あなたも手伝ってくれる? 数は多い方がいいから」

 

 ガムートは再びラルアの方を向き、訊ねた。

 

「わかった。深刻そうだし手伝うよ」

「ありがとう。じゃあ、塔の秘境に来て。私達は先に行ってるから」

 

 ライゼクスとガムートはクエスト出発口の方へ走る。そして、ガムートがライゼクスの背中に飛び乗ると、出発口から飛び立った。

 

「……セア」

「聞いてたよ」

「本当に?」

「うん。行こう、塔の秘境に」

 

 ラルアは小さくため息をつくと、席を立ち、クエストカウンターへ向かった。

 

 

「待ってたよ」

 

 塔の秘境のベースキャンプに、ガムートは居た。

 

「あ、ハンターさんも来たんだ」

「来るよ。一応保護者だし」

「ふーん、そうなんだ」

「とにかく、今の状況を知りたい」

「わかった」

 

 ガムートは崖の方に歩いていった。

 

「今、下でゼクスちゃんがミツネとディノと戦ってる。ミツネの方は大丈夫だと思うけど、問題はディノ。ゼクスちゃん、ディノに勝ったことないから……」

「じゃあ、私達はディノバルドの方を相手すればいいってこと?」

「違う。保護に回って」

「保護? 加勢しなくていいの?」

「これは私達の問題だから。仲間を止めるのは仲間の役目。だからあなた達は、応急処置をお願い。回復薬とかあるでしょ?」

「わかった」

「あと最後に伝えなきゃいけない事がまだあって……もし二人の身体に金色の粉が付いてたら……それを口にしないで。特にあなたは、絶対ね」

 

 ガムートはラルアを見て言った。

 

「金色の粉……? わかった」

「ありがとう。さ、行こう」

 

 三人は一緒にベースキャンプから飛び降りた。

 

 

「くぅ……目を覚ましてよ! ミツネ、ディノ!!」

 

 空中を舞うゼクスに、火球と泡が迫る。二対一で戦い続けた結果、ゼクスの体力も底を尽きそうだ。そんなゼクスに、ミツネの水ブレスが迫る。

 

「っ! いや……もらった!」

 

 レーザーのような水ブレスは、威力は高いが本体は無防備になる。ゼクスはミツネに向かって滑空。そのまま頭を掴むと、放電しつつ地面に叩きつけた。元から雷に弱いミツネは、そのまま気絶した。

 

「次っ!」

 

 ゼクスは地面を蹴って飛翔すると、ディノの方を向く。正直勝てる気はしないが、やるしかない。

 

(理性が無いからかな……尻尾が錆びたままだ。ならブレスの元になる錆の補充も出来てない。空中から仕掛ければ有利に立てる!)

 

 ゼクスは攻めに転じ、空中からディノを攻撃し始めた。ゼクスの読み通り、空中からなら有利に立ち回ることが出来た。ブレスもやがて放たれなくなり、尻尾による攻撃もリーチに限界がある。

 

(いける……!)

 

 ゼクスはミツネにやったように、滑空してディノの頭を掴もうとした。しかし、頭を下げてかわされ、その上尻尾に噛みつかれてしまった。

 

「なっ!?」

 

 人間の姿になったとは言え、尻尾を歯で研磨し、摩擦で赤熱化させる習性は変わっていない。強靭な歯と強い咬合力が合わさり、ゼクスの甲殻を砕いていく。

 

「ぐ……やめ……」

 

 ディノは尻尾を噛んだままゼクスを地面に叩きつけ、振り回す。頭を強く打ち、意識が飛びそうになる。

 

(こんなの……ディノじゃないよ……)

 

 朦朧としていた意識は、激痛により呼び戻された。ゼクスの背中を足で踏み、尻尾をちぎろうとし始めたのだ。

 

「やめて……ディノ、お願い……!」

 

 ゼクスの声も、今のディノには届かない。尻尾の肉は徐々に裂けていき、遂に骨が顕になる。

 

「ディノ……。お願……」

 

 ゼクスの懇願を遮るように、咆哮が響く。よく聞き慣れた咆哮だ。

 

「ガムちゃん……」

「お待たせ……」

「遅いよぉ……」

 

 ディノは尻尾から口を離し、ガムートを睨んだ。ゼクスの尻尾は目も当てられないような状態になっている。

 

「……ここからは私が相手だよ」

 

 ガムートはゆっくりとディノに歩み寄る。

 

「だ、大丈夫かな? あんな小さな娘が……」

「一応元はガムートだし……それより、私達は私達の役目を果たすよ」

 

 セアとラルアはディノにバレないように、気配を消しながらミツネとゼクスの保護を試みた。

 

「本心じゃないとは言え、ちょっと暴れすぎだよね」

 

 ガムートが強く地面を踏む。大きな揺れと共に、踏んだ場所に亀裂が入る。

 

「……おいで」

 

 ディノが咆哮をすると、錆び付いた大剣のような尻尾をガムート目掛けて振り下ろした。しかしガムートはそれを片手で(・・・)受け止める。

 

「!?」

「ちょっと痛いよ。我慢してね!」

 

 尻尾を両手で掴むと、背負い投げをするようにしてディノを地面に叩きつけた。そして今度は横に振り回すと、ハンマー投げのようにして壁へ投げ飛ばした。

 

「な、なにあれ……」

「ガムちゃん、あたし達の中で一番力強いんだよ……」

「ひぇ……」

 

 ガムートは気絶したディノを抱えてセア達の方へ歩いてきた。

 

「手当、進んでる?」

「「順調です!!」」

「なんで敬語なの?」

「ビビってるんだよ」

「そう……なの?」

 

 ガムートはこてんと首を傾げた。

 

「別にあなた達にやる訳じゃないのに」

「まあまあ、それより、早く帰ろうよ。尻尾痛いし……」

「そうだね。ハンターさん、手配できる?」

「はい。大丈夫です!」

(まだ敬語……)

 

 四人は気絶したディノとミツネを保護し、龍歴院へ戻った。

 

 

 手当を受けた二人は無事に意識を取り戻した。

 

「本当に何も覚えてないの?」

「あぁ、あのモンスターの粉を浴びてからの記憶が全く無い……」

「そっか」

 

 ガムートはリンゴの皮を剥きながら話を聞いている。

 

「ところで、なんか口の中から黒い欠片が出てきたんだが……これは一体?」

「……ディノ、知らない方が幸せな事もある」

「なんだよ気味悪いな……俺は虫でも食っちまったのか?」

「そうなんじゃない? カブトムシ辺りを食べたんだと思う」

「うぇ」

 

 ガムートは切ったリンゴが乗った皿から一つリンゴを取って咥えると、ディノに皿を差し出した。ディノもリンゴを一切れ齧る。

 

「ミツネは?」

「別室。ゼクスちゃんが見てるよ」

「そうか。しかし……アイツなんなんだろうな」

「まだ謎が多いよね……。ディノの口内からとれた粉が何かの手がかりになってくれるといいんだけど」

 

 同じ頃、研究室にて……

 

「これは……多分鱗粉の一種だね。でも、今まで見た事が無いよ」

 

 ディノの口内から採れた金色の粉、それが鱗粉であり、二人を狂わせていた可能性がある事がわかった。

 

「鱗粉ってことは、ゴア・マガラみたいに撒き散らしてる根源が居るって事ですよね。それがあの娘が言ってた……」

「おそらくそうだね。彼女達にはより詳しく話を聞く必要がありそうだ」

「なるほど。じゃあ、私達は……」

「いや、まだ不確定要素が多すぎる。君たちハンターに依頼はまだ出さないよ。ただ……一応、ゴア・マガラ達の調査だけはお願いしたい」

「わかりました。では……」

 

 セアは研究室を後にした。

 

「なんて?」

「まだ不確定要素が多いから、大元の調査はまだ。でもゴア・マガラ達の調査はお願いしたいって」

「そっか。なら、早く済ませちゃおうよ」

「えー。少し休みたい……」

「む……じゃあ、明日ね!」

「はいはい」

(なんだろ。やけに焦ってるように見えるな……)

 

 その日は活動を終え、ゆっくりと休む事にした。




擬人化した方々の容姿まとめたのを後日上げようと思います。とりあえず、X四天王については、ディノバルド→デカい尻尾のお兄さん タマミツネ→可愛い可愛い男の娘 ライゼクス→ちょっとやんちゃな女の子 ガムート→クソ強幼女 という認識で良いです。
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