白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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今回少し短めです


18.白海竜の夢

 さざ波の音が聞こえる。それで目が覚めてしまった。

 

(あれ……ここは?)

 

 体を起こすと、そこは洞窟の中だった。近付くには大きな水溜まりがある。そこから外に出れるようだ。

 

(出てみようかな)

 

 水に潜って洞窟から出る。体を撫でる水は冷たく、心地よい。

 

(なんだろ……すごく懐かしい感じがする)

 

 水面から出て陸に上がる。辺りは真っ暗で、月明かりだけがうっすらと夜を照らしていた。波の音と、自分の足音以外、何も聞こえない静寂な空間。

 

(これも、覚えてる。落ち着くくらい、懐かしい……でもなんで?)

 

 ふと、他の何かの足音が聞こえた。視線を送ると、そこにいたのは一人の人間。龍歴士装備に身を包み、デスレストレインを携えたハンターだ。

 

(セア……セアだ)

「……見つけた」

 

 ハンターは武器を手に取ると、青色の刃薬を武器に塗った。

 

(セア……な、何してるの?)

「ここで狩る……ハンターの誇りにかけて!」

 

 盾と剣を擦り合わせ、摩擦で点火。剣は淡い青色に輝いている。

 

(セア! な、何で!! 私が何をしたって言うの!!?)

「グルアァァァァァ!!」

 

 訴えかける声は、竜の咆哮となって辺りに響く。ハンターは思わず耳を塞いでしまう。

 

(え……)

 

 思わず、足元を見る。水に映ったのは、白い甲殻に身を包んだ一匹のモンスター。そう、白海竜ラギアクルス亜種だ。

 

(な、なんで……?)

「はあぁっ!」

 

 顔を上げると、そこには武器を振り上げたハンターの姿があった。

 

 

「…………っ!!!??」

 

 ラルアは布団から飛び起きた。周りは真っ暗で、明かりはついていない。自分の呼吸は荒く、汗が額から落ちるのがわかる。

 

「ゆ……め…………?」

 

 恐る恐る自分の手を見る。人間の少女の手がそこにあった。夢であった事の安心感から、大きなため息が出た。

 しかし、不安感はまだ拭いきれていない。セアが眠っているであろうベッドを見てみたが、そこにセアは居なかった。

 

「セア……まだ帰ってないの……?」

 

 ラルアは布団にくるまった。妙にリアルで、現実味のある夢。あの光景ははっきりと頭の中に残っていた。

 

(もし……もし元の姿に戻ったら、私は……セアに狩られちゃうのかな……)

(セアは……私だってわからなくなるのかな……)

(そんなの……そんなの…………)

「いや……だよ……」

 

 零れた声は震えていた。視界が滲んでくる。ラルアは枕に顔を埋めて静かに泣いた。この日常が壊れる可能性だってある。それを知ってしまったようで、怖くなった。そもそも、この生活自体、モンスターにとっては異常なことだ。人間と同じ姿で同じ生活を送る。この生活を知った上でまた野生に帰れるかなんて、そんなのわからない。

 

(怖い……怖いよ……誰か……)

「はぁー……疲れたぁ」

 

 玄関の方から声がする。聞き慣れた、安心する声。

 

「ラルア、寝たかな?」

 

 間違いなく、セアだ。ラルアは布団から飛び出すと、セア目掛けて走った。

 

「あ、ラルア……」

 

 そして強く抱きついた。

 

「!? ど、どうしたの?」

「セア……怖い、怖いの……」

「怖い? 何が怖いの?」

 

 責めるような言い方じゃない、柔らかく優しい問いかけだ。でもラルアは、何が怖いか答えられなかった。ただセアに抱きついて泣く事しかできなかった。

 

「……大丈夫。無理に話さなくてもいいよ」

 

 セアはラルアの頭を撫でながら宥めた。

 

(怖い夢でも見たのかな? とにかく、落ち着かせなきゃ)

「よしよし、もう大丈夫だよ。怖かったね……」

「うん……」

「一緒に寝よっか。ね?」

「うん……」

 

 セアは防具を脱ぎ、ラルアをなだめながら一緒にベッドに入る。少し窮屈だが、気にしてられない。

 

「セア……」

「ん、何?」

「これからもずっと一緒……?」

 

 潤んだ目でセアを見る。その目から、不安と恐怖が読み取れた。

 

「勿論。何があっても一緒だよ」

「……ありがとう」

 

 ラルアは微笑むと、安心したのか、眠りについた。セアも眠りにつこうと目を閉じる。

 

(ずっと一緒……か。本当、どんな夢を見たんだろ……)

 

 

 翌日。ラルアは昨晩よりはマシになったが、いつもと比べると少し元気が無かった。

 

「ラルア、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

 

 そう言って見せた笑顔も、無理やり作っているように見えた。セアだってやりたくなかったが、ラルアに元気が無いことについて、追求してみた。しかし、返ってくるのは「大丈夫」「気にしないで」だけ。追求し過ぎるのも可哀想になってくるから、セアも諦めた。

 

(限界になる前に、誰かしらに相談して欲しいんだけどなぁ……)

 

 セアはラルアを研究室に送ると、再び痕跡の調査に出かけた。遠ざかるセアを見送りながら、ラルアは考え事をした。

 

(……私はこの生活をずっと続けたい。セアとずっと一緒に居たい。でも、もし夢と同じ事になったら、その時は…………)

 

 セアの姿が見えなくなると、ラルアは研究室に入っていった。なるべく普段通りに、悩みを隠すようにして。

 




そろそろ本編は終盤です……
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