白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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大詰めってやつです


19.緊急クエスト、発令

 メタドラスに関する調査は続き、生態についても段々と明らかになってくる。

 

「ねぇ、ちょっと前に洞窟内で大量の血痕が見つかったって報告あったじゃん」

「あぁ」

「それに加えて、メタドラスは眠らないって報告が最近入ったの」

「睡眠に耐性があるって事か?」

「違う。おそらく睡眠に耐性はない。でも……あいつは時々岩や木に体をぶつける自傷行為を行うんだ。それで眠気を飛ばしてるんだと思う」

「……なんでだ?」

「多分、睡眠が何かに関係している。じゃなきゃ、眠らないなんて……異常だよ」

「だよな……」

「ガムート! 獰猛化ドリンクの試験終えたよ!」

 

 研究室にミツネと、疲れ果てた様子の渾沌ゴアが入ってくる。

 

「お疲れ様。どうだったの?」

「もって十五分ってとこ。副作用の、強い疲労感はなんともならなかったよ……」

「そっか。でもこれ以上は改良は利かないかも……」

「なら奥の手って事で」

「その薬……神に等しき力を手にする代わりに……体の自由を奪うか……。面白い……面白い薬ではない……か……」

「ブレないね」

「最早尊敬に値するよ……」

 

 そんな会話をしていると、研究室の窓が勢いよく開いた。いや、突き破られた。

 

「ゼーゼー……はぁー………」

「ゼクス! どうだった?」

 

 床に寝転がるゼクスは、黙って親指を立てた。

 

「ひぃ……怖かった……」

 

 続いてゴア・マガラも窓から入ってくる。

 

「うんうん、ゼクスちゃんもゴアちゃんも頑張ったわね。さぁ、少し休みましょうか」

 

 疲れ果てた二人とは対照的に、ピンピンした様子で入ってきたのは、光沢のある白い鱗に包まれた翼と尻尾をもち、頭から黒い二本の触角を生やした古龍、天廻龍シャガルマガラだ。

 

「お疲れ様です。根城は特定できたみたいですね」

「えぇ、バッチリよ。少し傷を負わせたから、しばらくそこから動くことはないと思うわ」

「ありがとうございます」

「例には及ばないわ。さて、私は可愛い妹達を愛で……労わないとね」

「ゼクスは私達でやりますから……」

 

 ガムートはゼクスを抱えて部屋の奥に向かった。

 

「さて……そろそろか」

「だね。時は満ちた……ってね」

 

 ミツネは机の上にあった依頼書を手に取った。

 

「私達が動けるのはきっと後半だし、もうクエスト出してハンターさん達には先に動いてもらおっか」

「だな。それがいい」

「オッケー。じゃ出してくるよ」

 

 ミツネは依頼書を持って部屋を出ていった。

 

「さて……後はどれだけ集まるかだな」

 

 

「緊急クエストだ……」

「いよいよなんだね」

 

 クエストボードに張り出されたクエストの要項を確認する。内容はメタドラスの討伐。場所は……

 

「孤島奥地……って?」

「そのまんま、孤島の奥地にある窪地だって。やつはそこを根城にしているらしいよ」

「なるほど……」

(孤島……か)

 

 孤島と言えば、セアとラルアが出会った場所でもある。そこで人化症の原因と相見える。単なる偶然ではあるが、運命のような何かを感じた。

 

「ただ、あまり広くはないみたい。だからハンターの同士討ちも考慮して、参加できるハンターは最大二名。どうする? 私達で狩る?」

 

 レープが依頼書を手に取ってセアに差し出す。セアの返事に迷いは無い。

 

「そうだね。行こう!」

 

 セアが依頼書に手を伸ばしたその時、横からもう一人が手を伸ばしてきた。

 

「ラルア?」

「……セア、一緒にいこう」

「え?」

「わかってる。私にはリスクが大きいって。でも、お願い……一緒に行かせて」

 

 ラルアの目からは覚悟が見て取れた。心配ではあるが、一緒に生活してきたのに最後の最後で置いていくのも酷だ。それに、セア自信も本当はラルアと狩りに行きたい気持ちがある。

 

「わかった」

「……!」

「レープ、良い?」

「勿論。じゃあ私達は周りのモンスターの対応にまわるよ」

「ありがとう。じゃあ、ラルア」

「うん……行こう!」

 

 セアとラルアはクエストカウンターで緊急クエストを受注した。

 

 

 孤島奥地。緑豊かで静かな場所だ。風が木々を揺らす音と、水が流れる音だけが聞こえる静かな場所に、変異龍メタドラスは居る。住処を囲むように、ハンターと人化症のモンスター達が包囲する。

 

「配置につけてた?」

「バッチリだよ。しかし、結構来たね」

「あぁ。これだけいればきっと大丈夫だ」

 

 四天王はまとまって行動する事にしている。

 

「名乗りを上げたのはラギアクルス亜種の娘と、一緒に居るハンターだったか」

「なんていうか、やる気に満ちてたね」

「あの娘、獰猛化ドリンクの用法ちゃんと守って使ってくれるよね……」

「ガムちゃん、心配するとこそこ……?」

「一応劇薬だから……」

 

 そんな話をしていると、少し離れた場所から爆発音が聞こえた。

 

「なんだ!?」

「あっちの方向は……ブラキとガルルガの班か……」

 

 爆発音のした場所では、深い紫の道着を着た少女と、紫の軍服を着た少年が喧嘩をしていた。

 

「初めてだよ。俺の尻尾を生身で弾いたやつは」

「半端な鍛え方してないからな。さぁどうする? お前の搦手は全部弾いたぞ」

「ブラキちゃん、準備運動なの忘れないでね……」

「ガルちゃんもね〜……」

「「わかってる!」」

 

 と言いつつ、二人は再び睨み合った。ブラキの拳とガルルガの脚が再びぶつかり合う。

 

「うぅ……どうしてガルちゃんはこんなにヤンチャなのかしら……」

「ま、まぁまぁ……これだけ強いなら頼もしく感じるよ」

 

 二人の準備運動(?)はまだまだ続く。その様子を雷光虫が見つめていた。雷光虫は主の元へ戻ると、今見た事を報告した。

 

「あの爆発音はブラキディオスのものらしい。案ずるな。まだだ」

「そっかそっか」

「ふぅ……安心した……」

 

 オウガ、ナルガ、ペッコの三人もこの場に来ていた。

 

「いやぁ、しかしいい場所だね。すっごく癒されるなぁ……。ね、アイツ居なくなったらここを新しい住処にしようよ」

「いつから共に生活する話になったのだ?」

「いいじゃん。三人仲良く自然豊かな土地で暮らす、最高だよ。ね、ペッコくん?」

「うぇ!? あ、あぁ……?」

「急に話を振ってやるな。可哀想だろう」

(って言ってるけど、緊張を解すために話しかけろって言ったのはオウガだからね……)

 

 ペッコが緊張し過ぎないように、三人はたわいない会話をしながら待っていた。

 

 

 一方、二人は簡易的に設置されたベースキャンプで最後の準備をしていた。

 

「いい?」

「うん」

「何が起こるかわからないからね。覚悟決めていくよ」

「うん……。これ以上、凶暴化と人化症は広げられないからね」

 

 セアは腰に収めているデスレストレインの柄に手をかけた。

 

「行こう……」

「……絶対、無事で帰ろうね」

 

 二人は倒木で出来たトンネルをくぐり、ベースキャンプを離れた。

 トンネルの先には広大な空間があった。自然豊かで、花が咲いている場所には蝶が舞っている。サラサラと流れる小川の瑞は、木漏れ日を反射して光っている。そして、奥に鎮座する黄金色の生物。小柄な体躯、左右に伸びた角、翼のような部位。間違いなく、メタドラスだ。あちらもセア達に気付いたのか、立ち上がって二人を見つめた。

 

「……」

 

 セアは会心の刃薬を刃に塗った。ラルアも、いつでも動けるように構える。そして

 

「コオォォォォォ!!」

 

 メタドラスが咆哮をあげる。それが戦闘の合図となった。

 

「いくよ、ラルア!!」

 

 刃薬を着火、刃が淡い赤色に染まった。

 

「セア、頑張るよ!」

 

 ラルアも背電殻に蓄電する。討伐戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

「咆哮……」

「来るか!」

「お兄ちゃん、お姉ちゃん! 来る……それも沢山!」

 

 鱗粉により生物の気配を察知していたゴア・マガラが声を上げる。同時に、触角を伸ばし、翼脚を展開する。

 

「よーし、頑張るわよ!」

「ふふ……いざ、混沌の宴の始まりだ!!」

 

 

 

 

 

「来るか」

「も、もう……!?」

「ペッコ、下がれ。ここは拙者達が前に立つ!」

 

 鳴り響く無数の足音を聞き、完全にすくみ上がったペッコの前にオウガとナルガが立つ。

 

「案ずるな。主には爪の先すら触れさせん」

「落ち着く為の時間は稼ぐから、落ち着いてきたら援護、頼むよ!」

「……わかった!」

 

 茂みの中からリオレイアとホロロホルルが表れる。

 

「狩るか狩られるか……いざ尋常に!」

「さぁ、渓流の疾風迅雷コンビの腕の見せどころだ!」

 

 

 

 

「なぁブラキ、どっちが多くアイツら黙らせられるか勝負しようぜ」

「乗った。ただ、殺せとは言われてないからね。殺したら減点だ」

「良いぜ。ギリギリで追い返してやるからよ」

 

 ガルルガは翼を広げ、ブラキは拳を舐めた。

 

「私達は……」

「援護だよ。取りこぼしとかはこっちで処理しよう」

 

 ガンキンもハンマーを構える。クックもとりあえず構えておく。

 茂みを掻き分け、ドボルベルクとガノトトスが表れる。

 

「オラアァァァッ!!」

「セヤアァァァッ!!」

 

 小柄な戦闘狂と武闘家は、大型モンスターにも臆すること無く攻めかかる。

 

 

 

 

「……私、アイツやるね」

 

 翼と尻尾を電荷させながら、ゼクスが呟く。

 

「無理するなよ。援護には回れないから」

「おっけー」

 

 ゼクスが向かったのは空。上空に居たリオレウスを落としに向かったのだ。

 

「俺たちもやるぞ」

「うん」

「了解」

 

 ディノは尻尾を噛み、一気に振り抜く。強靭な歯と刃が擦れ、摩擦熱により尻尾が赤熱化した。ガムート、ミツネも臨戦状態に入る。

 現れたのはナルガクルガ亜種、ラギアクルス、テツカブラだ。

 

「俺はナルガクルガ亜種をやる」

「じゃ、私ラギアクルスで」

「なら私はテツカブラね」

 

 狙いは決まった。

 

「っしゃいくぞォ!!」

「黙らせる……!」

「さぁ、舞踊ろうか〜」

 

 

 

「レープ」

「わかってる」

 

 ハンター側もモンスター達の襲来を察知していた。

 

「フーちゃん、どれくらい来そう?」

「んー……色んな匂いがするから、多分たくさん」

「だよね。よし、気合い入れていくよ……」

 

 柄を握る手に力が入る。やがて、ハンター達の前に多くのモンスターが現れた。

 

「いくぞぉ!」

 

 リーダー格のハンターの掛け声と同時に、他のハンター達も動き出す。

 

「いくよフーちゃん!」

「うん。ここは通さない!」

 

 二人もモンスターに迫る。友が狩りに集中できるように、二人は今やれる事に全力を尽くす。




 メタドラス討伐戦、開始です。セアとラルアが討伐を、周りのみんなは狩場にモンスターを近付けない&メタドラスが逃げないように包囲する役割があります。確かアトラル・カの時も、周りで他のハンターがモンスターを寄せ付けないようにしていた……はず。それ参考にしました。
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