白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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討伐戦再終幕。まずは窪地周囲の方からです


21.ハンター陣営崩壊寸前

「だぁりゃぁぁぁぁ!!」

 

 ゼクスは黒炎王の真上をとると、急降下しつつ蹴りを放った。徐々に高度が下がっていく。

 

「今だね……」

 

 ミツネは落下地点を予測し、そこに大きく円を描くように滑り、滑液で満たした。読み通り、滑液の真ん中に黒炎王は落ちた。

 

「はっ……やったよミツネ!」

「おめでとう、かっこよかったよ」

 

 黒炎王は体制を整えようとするが、滑液で滑って全く立ち上がれない。

 

「コゥ……コアァ……」

「黒炎王は空中にいる時間が長いから、脚力は少し弱い。だからこうなれば、立ち上がるのすら困難なはずだ。立ち上がれなければ、飛ぶこともできない」

「なるほど」

「さて、あとは楽にしてあげよっか」

「……あぁ!」

 

 ゼクスは翼を、ミツネは尻尾を振り上げ、黒炎王の頭を潰した。

 

「コアァァ…………」

「……仕留めたね」

「うん。ゼクスのおかげだよ」

「えへへ……」

 

 一方、紅兜との戦いも決着がつくところだ。

 

「うぉらぁぁ!!」

 

 ガキン、と爪と尻尾がぶつかり合う。戦闘中、あえて錆びさせる事で強度を増した尻尾は、紅兜の爪すら弾く程固くなっていた。

 

「決めろ!」

「うん!」

 

 ディノの肩を踏み台にし、ガムートが飛ぶ。

 

「はぁっ!!」

 

 そして全力の鉄槌打ち。紅兜の頭骨が砕けるのを感じた。間もなくして、紅兜は地に伏した。

 

「よし……」

「何とかなったな」

「うん。ゼクスちゃん達も片付いたみたいだし、ここはもう大丈夫かな」

「だな。あとはやつが逃げないように留まるだけだ」

 

 

「お姉ちゃん、右!」

「はいっ!」

 

 ゴア・マガラの探知を活かし、不可視状態の朧隠にも攻撃を与えていく。

 

「ギュウゥ……」

「そろそろ終わりだね……」

「ならば最後は我が!」

 

 渾沌ゴアの翼爪が、朧隠に迫る。

 

「冥界に堕ちよ!!」

「ギュアァァァ……」

 

 そして朧隠の胸を貫いた。朧隠は弱々しい声を上げ、そして倒れる。

 

「さらばだ……」

「ふぅ…………疲れた……」

 

 探知に全身全霊を尽くしたからか、ゴア・マガラは特に疲れた様子だった。

 

「ゴアちゃんも渾沌ちゃんもお疲れ様。二人は少し休んでて」

「うむ……そうしよう……」

「お姉ちゃん、疲れないもんね……」

「古龍だからね。ほら、膝枕してあげる」

 

 そう言ってゴア・マガラの頭を膝に乗せる。

 

「後はここを守るのみ、か」

「そうね。他は大丈夫かしら……」

 

 

 爆発音が、絶えず鳴り響いていた。

 

「ぐうぅ!!」

「キュイィ……」

 

 拳を舐め、防御状態の矛砕の全身を殴る。鋏、脚、背中の骨……。その小さな体躯を活かし、素早く動き回って殴り続けた。

 

「防御状態の矛砕はかなり硬いはず……あんな戦い方無茶ですよ……」

「大丈夫、ブラキちゃんはちゃんと考えて戦ってるから。信じて」

 

 粘液が付着し、爆発する。矛砕には全くダメージが入っていない……ように見えた。

 

(……そこか!)

 

 ブラキは見逃さなかった。度重なる爆発により、背中の頭骨にヒビが入ったことを。そこが狙い目だ。

 

「砕け散れっっ!!!!」

 

ブラキは鋏を踏み台にして大きく跳躍、落下の勢いそのままに頭骨を殴る。そこを中心に頭骨にヒビが走り、バラバラに砕けた。矛砕の最強の守りを破り、そのまま本体に拳を叩き付ける。巨体が地面に沈む程の衝撃を受けた矛砕は、そのまま動かなくなった。

 

「ギュ……ギュイィィ……」

「過信しすぎたな……自分の守りを」

 

 一方ガルルガの方は、飛び回りつつ、岩穿の隙を付いて攻撃を与えていた。毒によるダメージも重なり、既に虫の息だ。

 

「だいぶ地味な戦いだったが、これで終わりだ……!」

 

 トドメのサマーソルト。全力のそれは岩穿の体を後ろに倒す程の威力だった。仰向けになった岩穿は、そのまま絶命した。

 

「やるじゃん……」

「そっちもな……」

 

 ブラキは拳を突き出してきた。合わせろ、という事なのだろうが、その拳は血で真っ赤に染まっていた。所々、矛砕の甲殻の破片等が刺さっているのもわかる。

 

「……無茶したな」

「少しな。でも、この黒曜石の拳は……簡単には砕けねーよ。安心しろ」

「……別に、心配なんかしてねーよ」

 

 ガルルガは突き出された拳に、軽く自分の拳を合わせた。

 

「っし。あとはここを守るだけだな」

「その前に手の治療して貰え」

「大丈夫だって、ほらっ!!?」

 

 手を開こうとした瞬間、激痛が走った。

 

「……バカか。自分の体の状態くらい把握しとけ」

「なんだと!?」

「ほら、さっさと行けバカ」

「コイツ……」

「お前って戦闘中は頭冴えるのに、こういう時はバカなんだな」

「バカバカうるせぇ……」

 

 

「ひいぃ……どこが安全地帯なの……」

 

 ペッコはナルガを抱えたまま、木や岩の影を走り回っていた。オウガと白疾風の戦いの流れ弾がこっちまで飛んできて、遮蔽物を壊すものだから、全く休まらない。

 

「早く……そろそろ限界だよぉ……」

「ペッコ!!」

「ひゃいっ!」

「トドメを刺す! 力を貸せ!」

「え? あ、うん!」

 

 ペッコは咳払いをした後、歌声を辺りに響かせた。それは、力をあげる歌。オウガの一撃が、必殺の威力になる。オウガも右手に雷光虫を集め、帯電。構えを取り、白疾風の隙を伺う。そして……

 

「ハッ!!!!」

 

 刃翼で切りかかろうとした白疾風の頭に掌底打ちを放つ、全力以上の威力となったそれにより白疾風は墜落、さらに追い討ちとして、帯電した右手で思いっきり頭部を叩き潰した。

 

「……逝ったな」

「ふ……ふいぃ……怖かった」

「すまぬ。奴め、やたらめったらに攻撃をするものだから……」

 

 オウガはペッコに抱えられたナルガの様子を見た。血は止まっているようだ。

 

「体はどうだ?」

「だいぶ良いよ。ありがとう……」

「何、当然のことをした迄よ」

「これで僕らの仕事はおしまい?」

「いや、まだ奴が逃げないよう見張っておく必要がある。もう少しだ」

「そ、そっか……」

「案ずるな。また拙者が叩き潰してやる」

 

 オウガはペッコに笑いかけた。ペッコも、少し安心したような顔を見せた。

 

 

 一方、ハンター側は苦戦を強いられていた。群れの勢いは弱まる様子はない。このままでは、ハンター達は全滅、空いた空間からメタドラスが逃げ出してしまう。

 

「はっ……はぁっ!」

 

 レープ含め、ハンター達にも疲労の色が見え始めた。

 

(大剣が重い……身体が思うようにうごかない……。でも、セアも頑張ってるから……!)

 

 ヘトヘトになりながらも大剣を振るう。しかし、大したダメージは与えられず、逆にイビルジョーのタックルで大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「いっ……!」

 

 身体が動かない。更に、落とした大剣がイビルジョーに踏まれ、砕けてしまった。

 

「レープ……」

 

 まだ気分が悪そうな様子のフーが、倒れたレープに駆け寄る。

 

「フーちゃん……。いや、まだ私、諦めないから……!」

 

 体を起こし、最後まで足掻こうとしたその時だった。

 

「……やむを得ない。全ハンターに告ぐ! 今回の討伐戦は失敗だ! 総員、撤退準備に入れ!!」

 

 リーダー格のハンターからの声だ。被害の大きさ、状況の悪さから、犠牲を増やさないために撤退の判断をしたのだろう。

 

「そんな…………」

 

(ごめん、セア……ダメだったよ……)

「………………! 風……」

 

 自分の力不足を心の中で嘆いていると、フーがぼそっと呟いた。

 

「え?」

「……来てくれたんだ」

 

 直後、強い追い風が吹き、イビルジョーの群れが大きく後退した。更に、強風で怯んだイビルジョーに無数の雷が落ちる。

 

「なっ……!」

「まだ、諦めないで」

 

 レープの前に強い稲光が走る。直後、白いコートを羽織った少女が現れる。

 

「言ったでしょ? またいつか会うかもって」

「キリン……!?」

 

 キリンの横に、風を纏った鋼が降り立つ。クシャルダオラだ。

 

「クシャルダオラも……」

「……言っておくが、人間の為に来たんじゃないぞ。私をこんな姿にしたやつを叩きのめしに来たんだ」

 

 二人はイビルジョーの群れの方を向く。

 

「後は、私達に任せて」

「でも……いくら古龍でもこの数は……」

「大丈夫。私達だけじゃない」

「え?」

 

 突然、辺りの空気が一気に冷えた。直後、尖った氷の波がイビルジョー達を貫く。

 

「やっほーハンターさん、久しぶり! 元気……ではないよね」

 

 レープの傍に、深い青色のマントを羽織った少女が降り立つ。ギルデカランで出会ったキリン亜種の少女、コオリだ。

 

「あなた、確かライダーの……。な、なんでここに!?」

「加勢に来たの。みんなも一緒だよ!」

 

 そう言ってコオリは空を指さす。見上げてみると、何かオレンジ色の物体が降下してくる。

 

「「スカイハイフォール!!」」

 

 物体は群れの中心に落下。大きな火柱が上がり、イビルジョー達が吹き飛んだ。

 

「決まったな、相棒」

「うん。上出来だ!」

 

 ライダーの少年、ワスレナとそのオトモン、レウスだ。

 

「ギリギリかな。でも、間に合ってよかった……」

「相棒、戦闘は俺らに任せてくれ。相棒は負傷したハンター達の手当てを頼む」

「レウス、一人で大丈夫?」

「正直一緒が良いが……仕方ないだろ。こうした方が今は良いからな」

「……わかった。頑張ってね」

「おう」

 

 レウスとの会話を終えると、ワスレナはレープに駆け寄った。

 

「とりあえず、後ろの方に下がろうか。ここはこれから大変な事になるので」

「う、うん……」

 

 ワスレナの肩を借りて動こうとしたその時、一匹のイビルジョーがこっちに向かって勢いよく走ってきた。

 

「あっ……!」

 

 食べられる、そう思ったその時、イビルジョーの巨体が急に持ち上がった。地面から生えた骨まみれの何か。それから放たれた龍属性のビームは、イビルジョーの体を貫き、焦がした。

 

「……流石」

「ワスレナ、イビルジョーってこんな不味いっけ?」

「生の血肉の味を忘れたからそう感じるんじゃない?」

 

 茂みの中から現れたのは、口の周りを血で汚した少年。腰からは骨を纏った二本の触腕が生えている。

 

「お、オストガロア!?」

「あ、ハンターさん久しぶり!!」

「良い子になったよ。あ、名前は『ムクロ』。そう呼んであげて」

「お、おぉ……」

 

 あまりの豹変っぷりに、レープもフーも言葉が出ない。

 

「丁度いい。ムクロ、護衛お願い」

「はーい!」

 

 レープ達も撤退を始めた。

 前線から退くハンター達を背に、キリン、クシャルダオラ、レウス、コオリは戦闘態勢に入る。

 

「リオレウス、足引っ張るなよ」

「安心しろ。俺はそんな弱くない」

「うん。レウスは強いよ。めちゃくちゃ強いよ」

「皆、お話終わり。来るよ」

 

 四人はイビルジョーの群れに攻撃を始めた。幻雷が、暴風が、絶対零度が、希望の炎が、飢えた捕食者の群れを穿つ。

 

 

 レープ達は無事に陣営の後方にある簡易ベースキャンプまで戻ってきていた。負傷したハンター達が大勢居る。

 

「ここまで来たら大丈夫か。ありがとうムクロ」

「どういたしまして!」

「君にもすぐ手当てするからね……。あ、ムクロはここの防衛をお願い」

「任せて!」

 

 ムクロはベースキャンプの入り口の方へ駆けていった。

 

「さて……。うん、傷は浅い方だよ。安心して」

 

 そう言いながら、ワスレナはレープの傷口に何か液体を垂らした。

 

「これは?」

「幽明エキス。幽明虫から採れる体液だよ」

「……! じゃあ……!」

「うん。彼女……ジンオウガ不死種も来てる」

「……すごい。人脈が広いね」

「いやいや、彼女はここに来る途中で合流したんだ」

「幽明虫なら……気持ち悪いの治る……?」

 

 フーが呟く。まだ顔色は悪い。

 

「それは……わからない。とりあえず、横になって深呼吸してな? 戻したいなら戻してもいいし」

「うん…………」

 

 ワスレナはフーに袋を渡した。今まで堪えていたのか、袋を受け取った直後、フーは袋に戻した。

 

「う……ゲホッ……」

「よしよし、辛かったね」

 

 ワスレナは背中を擦りながら話した。

 

「おや、ワスレナさん。前線の方は大丈夫なのですか?」

 

 ワスレナに声をかけたのは、ジンオウガ不死種だった。

 

「うん。彼らなら大丈夫さ。そっちは治療進んでる?」

「はい。今ここに居るハンターさん達の治療は大方終わりました」

「ありがとう。まだ運び込まれるハンターも居るだろうから、その手当もお願いね」

「わかりました」

 

 ジンオウガ不死種は、治療の為にまた別の場所に行ってしまった。

 

「とりあえず、ハンター側もこれで大丈夫かな。空から見た感じ、他のとこは片付いてたみたいだから」

「そっか」

「後は……無事に討伐が終わるのを待つだけだね」

「うん……。二人とも、無事で帰ってきて……」

 

 今のレープに出来るのは、ただ祈る事。セアとラルア、二人の無事を、生還を祈った。




 もうちょい細かく書きたい気持ちはあったのですが、そうするともっと長くなっていたので、端折りました
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