龍歴院前集会所。下位、上位のハンターが集う集会所だ。
「手始めに……何か簡単なクエストから受けようか」
セアがクエスト一覧を眺めながら言った。
「そうだね。ところで、なんか前と格好違うね」
セアは今龍歴士装備一式の見た目に合成された防具を装備している。ラルアと出会った時はネセト装備だったのだ。
「ん、こっちが普段の装備だからね。あれは採取用」
「あーそういうことか」
「そういうこと。クエスト、ホロロホルルの狩猟で良い?」
「知らない奴だけど、全然良いよ」
セアはホロロホルルのクエストの紙を受付に提出し、ハンコをもらう。これで受注完了だ。
「じゃあ、出発前にご飯食べていくよ」
「ご飯?」
「ついてきて」
セアはラルアの手を引いて席についた。テーブルの真ん中にはチーズが流れている。
「何にする?」
「何がいい?」
「だよね、わかんないよな。うーんと……これがいいかも」
セアが指さした先には「肉盛りマグマ丼」の文字が。
「肉盛り……うん、それがいい!」
「おっけー。じゃあ、肉盛りマグマ丼のふんばりソース【スパイシー】と、ドンドル納豆イカソウメン和えのいけいけソース【芳醇】で」
セアが注文を通し、料理が来るまで待つ。その間二人は取り留めの無い話をしていた。なんとなく、後ろが騒がしいと思い、振り向くと、あるパーティーがクエストに送り出されているところだった。
「随分と盛大に送り出すね」
「確かに……。あーねぇちょっと。あのパーティー何のクエスト行くの?」
近くにいたハンターに聞いてみた。
「ん? あぁ、オストガロアの討伐に向かうんだってさ」
「へぇ、オストガロア。また出たんだ」
「そうらしい。で、上位ハンターで優秀なヤツらが集められて向かうんだってさ」
「なるほどねぇ。そりゃ盛大に送り出すか……」
なんて話をしていたら、料理が来た。
「じゃあ、食べようか」
「え……ちょっと待って」
「何? 苦手なヤツ入ってた?」
「いやいや、私頼んだのって何だっけ?」
「? 肉盛りマグマ丼」
「だよね」
「うん」
「じゃあこれは何?」
ラルアが指さしたのは野菜や肉が刺さった金属の串。
「これはなんと言うか……お通しみたいなもの」
「どういう……こと……?」
「ここの料理長チーズに魅入られててね、料理の前にチーズフォンデュ食べさせるんだよ」
「えぇ……」
「料理の方はお弁当として別に出されるから、行く途中に食べるのがいいよ」
セアは同じく自分の前にあった食材が刺さった串を手に取り、チーズにつけた。ラルアも真似して食材をチーズにつける。その後、それぞれの料理が入った包みを渡され、クエスト出発口へ向かった。
「よし、行こうか」
「はーい」
二人は飛行船に乗り、クエストの目的地へ向かった。
*
「プー……プーホー……」
「何してんの?」
飛行船の中で、ラルアはひたすらに角笛を吹いていた。
「ん? さっき出発前に吹いてた角笛、良くなかった? ポー↑へー↓ってやつ」
「あぁ、あれか。気に入ったの?」
「うん。だから練習してる」
「そっか。それもいいけど、せっかく作ってもらった料理も食べておきなよ?」
「わかってる〜」
*
着いた場所は古代林。ここにいるホロロホルルを狩猟することが今回の目的だ。しかし、これは上位クエスト。下位に比べて危険なモンスターが多いため、ハンターをベースキャンプまで運べないことがある。
「さて、私はベースキャンプに降りたが……」
ラルアの姿が見当たらない。どうやら別の場所に降ろされたようだ。
「……合流できるかな?」
セアはラルアに渡すために、支給品ボックスの中から地図を持ち出してベースキャンプを後にした。
一方ラルアは
「ここどこ……? セア、どこ……?」
洞窟のような場所に降ろされていた。地図で言うと3番のエリアだ。
「まさかはぐれるなんて……早く合流しないと」
ラルアはセアと合流をするために、土地勘の全くない古代林の中を歩き始めた。洞窟を抜け、森を抜け、崖のあるエリアに着いた。
「おぉ……綺麗……」
空には綺麗な白い満月が浮かんでいた。かなり大きく見える月を前に、目を奪われてしまった。そしてそのせいで、背後にジャギィが近付いているのに気が付けなかった。
「あっ……!?」
完全に包囲されてしまった。前にはジャギィの群れ、後ろは崖。前の体では気にならなかったジャギィが、今は結構大きく見える。
「こうなったら、やるしかないよね……!!」
ラルアは背電殻に蓄電し、戦闘態勢に入った。
*
「ラルア……何処にいるんだろ」
「キョアァァァァァァ!!」
「うるっさいなぁもう!!」
ホロロホルルにダメージを与えながらラルアを待ったが、一向に来ない。
(大丈夫かな……迷子になって泣いてたりしないかな。元モンスターだし……いやでもなぁ……)
*
「よゆー! 双界の覇者を舐めるなよー!」
ラルアは焦げたジャギィに背を向け、咆哮のした方へ歩き始めた。咆哮が聞こえたという事は大型のモンスターが敵と戦っているということ。ここで大型モンスターが争うなら、それは縄張り争いかハンターに攻撃されているか、だ。
「早く行かなきゃ……セアが怪我しちゃう」
ラルアは駆け足で咆哮のした方へ向かった。
予想通り、向かった先では、セアとフクロウのような姿のモンスターが戦っていた。
「セアーー!」
「来た……遅いよ!」
「ごめんごめん、土地勘なくって……」
「あぁ、そっか。いや、話は後、今は早く構えて。来るよ!」
ホロロホルルは二人の頭上へ舞い上がり、落下攻撃を仕掛けてきた。それに対し、横に転がって回避する。二人のすぐそばに、金色の鱗粉が舞う。
「それ吸い込んじゃダメだよ。前後不覚状態に陥るから」
セアは減気の刃薬を刃に塗りながら伝えた。
「つまり……どういうこと?」
「思ったように動けなるってこと!」
そして盾と刃を擦り合わせ、摩擦熱で刃薬を着火させる。
「わかった、気をつけるよ!」
「私が拘束するから、ラルアはその隙に重い一撃くらわせちゃいな!」
「おっけー!」
セアは慣れた動きで、ホロロホルルの頭部を斬っている。ラルアは少し離れた場所で背電殻に蓄電をしている。程なくして、ホロロホルルは大きく体勢を崩した。
「今!」
「任せて!」
ラルアはホロロホルルに向かって走ると、勢いそのままにタックルをかまし、同時に放電する。ホロロホルルは力ない声で鳴き、絶命した。
「一撃……もしかして私、強い?」
「ラルアが来る前に私がいくらか削っておいたからね」
「あー……そうなんだ……」
ホロロホルルの遺体を見る。ラルアがタックルを当てた辺りは羽が黒く焦げていた。元白海竜の放つ電撃の威力は人の姿になっても健在なようだ。
「さ、帰るよ」
「剥ぎ取りはいいの?」
「うん。上位個体だし」
「ジョウイ???」
「うん、そこら辺も後で教えるよ」
二人はベースキャンプ目指して歩いた。ラルアの初狩猟は特に大きなトラブルも起きないまま終えることが出来た。
wikiに書いてあった、Xシリーズで料理が全てチーズフォンデュになるやつの解釈が好きなので、参考にしました