白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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4.調査・遺跡平原編

 龍識船が物資の補給や点検を終えて再び飛ぶことになった。研究員だけでなく、多くのG級ハンターも搭乗し、船は空へ向かう。当然、セアとラルアも乗ったのだが……

 

「…………」

「……大丈夫?」

「い、いや……あの……高すぎる……」

 

 ラルアはセアにしがみついて離れない。セアはもう慣れたが、確かにこんな高いところに立っているのは厳しいだろう。空とは無縁だったラギアクルス亜種なら尚更。

 

「……早く酒場に入ろうか」

「酒場?」

「集会酒場ホーンズ、隣の船の中にある酒場だよ。そこなら室内だし、幾らかマシかも」

「じゃあ行く……」

 

 二人で集会酒場の方へ歩いた。船と船を繋ぐ橋の前に来たところで、ラルアは思いっきりセアにしがみついた。

 

「ま、待って」

「何?」

「ここ……渡るの?」

 

 目の前の掛橋は風で微かに揺れている。

 

「渡らないと酒場に行けないよ?」

「う、うぅ…………」

「大丈夫だから。ね?」

「…………」

 

 ラルアはセアにぎゅっと抱き着き、背中に顔うずめた。

 

「……離しちゃダメだよ?」

 

 ラルアを無理矢理引っ張る形で、二人は集会酒場に入った。

 

 

「グスッ……うぅぅ……」

「もう大丈夫だから、ね? 泣かないで」

 

 準備エリアの奥。ベッドに腰掛けてラルアを慰めていた。相当怖かったのか、酒場に入った途端に泣きだしてしまったのだ。

 

(ガッツリ視線集めたの辛かったな……)

 

 ラルアを宥めていると、こっちに近付いてくる足音が聞こえた。

 

「あー、やっぱセアちゃんだったか」

「ん、レープか」

 

 フィリア一式で真名ネブタジェセルを担いでいる女ハンター、レープが立っていた。セアの友達だ。レープは手に持っている箱の中のカステラを食べながらセアの横に座る。

 

「さっきみんなに見られてたね」

「他人事みたいに……結構精神的にくるんだよ?」

「わかってる。災難だったね」

 

 はい、とレープはセアにカステラを一切れ渡した。セアはそれを受け取り、口に運ぶ。

 

「で、その子は?」

「実は……」

 

 レープにラルアの事を話す。

 

「ラギアクルス亜種が人化症で人間になった姿、か。へぇーラギアクルス亜種。レアじゃん」

「そうなんだよね。研究員さんもレア中のレアだ、って」

「で、今は一緒に生活してるんだ」

「うん。ラルアが一緒に居たいって言ってたから」

「へぇ、私と同じだね」

「……はい?」

 

 どういう事か、聞こうとした瞬間

 

「居た……」

 

 入口の方からした声に遮られてしまった。そこには、白いロングパーカーを着た人が立っていた。パッと見て普通の人間じゃないのは分かった。肌が異様に白く、フードから覗く髪も白髪。決定的な点が、前腕に付いている畳まれた翼と、腰から生えているであろう白い尻尾。

 人化症のモンスターであることは分かった。そして、これらの特徴から導き出される元のモンスターは……

 

「……フルフル、だった子かな?」

「お、正解〜」

「レープ……遅い。すぐ戻るって言ったのに……」

 

 フルフルだったという子はレープの方に近付くと、彼女の膝に座った。

 

「置いてかないって約束して」

「はいはい。フーちゃんは寂しがり屋だね〜」

「フーちゃん?」

「そう、フルフルのフーちゃん。フーちゃん、この人は私の友達のセアちゃんだよ」

「レープの友達……」

(フルフルな見えてない……よね。わかるのかな?)

 

 フーは虚ろな目でセアを見た(?)。そして顔を近づけ、匂いを嗅ぎ始めた。

 

「ん、覚えた。よろしく、セア」

「え? あ、あぁ、よろしく、フー」

「凄いでしょ。すごく鼻が利くんだよ」

「そこは引き継いだんだね」

「うん。視力が無いのも引き継いでる」

「……首を伸ばすのは?」

「それは無理みたい」

「よかった……」

 

 フルフルの首を伸ばす行動は、自身の首の関節を外すことで可能としている。それを人間体でやられたら、体に負担がかかるだろうし、何より怖い。

 

「後はね、発電器官もそのままだし、飛行能力もある」

「うんうん」

「その上性別が無い」

「え?」

「まぁ、体付きは女の子寄りみたいだけどね」

「へぇ……」

 

 二人が会話に花を咲かせている間に、フーはパーカーを着直し、ずっと気になっていたもう一つの匂いの元へ近付く。そこには、さっきまで泣いていたラルアが居る。今は泣き疲れたのか、体を丸めて眠っている。フーは彼女の匂いをしきりに嗅いでいる。

 

「…………」

「ん……?」

 

 ラルアはゆっくりと目を開けた。そして大きな欠伸をする。その様子を見て、フーは少しだけ距離を離した。

 

「あ、起きたねラルア」

「ん……おはよう……」

「おはよーラルアちゃん。私はレープ、こっちはフルフルのフーちゃん」

「よろしく」

「うん……よろしく」

 

 目を擦りながら体を起こす。

 

「あ、そうだセア、さっき面白いクエスト見つけたんだけどさ、一緒に行かない?」

「良いよー。どんなの?」

「まぁ、あっちで話すよ。さ、ラルアちゃんももう大丈夫みたいだし、早く酒場に行こう」

「はいよ」

 

 四人は準備エリアを後にした。

 

 

 遺跡平原。黄金色の平原や山岳、遺跡群が存在する色鮮やかな場所。四人はあるクエストのためにここを訪れていた。

 

「しかし、なんで遺跡平原の調査を?」

「最近ウワサのおかしな死体について」

「おかしな死体……?」

「知らない? 腹部を中心に食べられた痕跡があって、かつ水辺に多いらしい」

「その調査……か」

「そうそう。明らかに異様だからって、各地にハンターを派遣して調査しているんだって。まだ決定的な痕跡は見つかってないけどね」

「レープ……確かに、血の匂いがする……」

 

 フーが呟いた。

 

「どこら辺?」

「……こっち」

 

 フーを先頭にし、四人は遺跡平原を歩く。そしてたどり着いたのは遺跡平原の東側。アイルー達の巣の前だ。辺りには、巣を追い出されたのか、多くのアイルーとメラルーが居る。

 

「この先?」

「うん。すごく濃い血の匂いと……腐った匂い……」

「何が居るかわからない……気を引き締めて行こう……」

 

 アイルーの巣の中に入る。中には腹を食い破られ、臓物を晒しているケルビの死体がいくつも転がっている。

 

「う……」

「これは……」

 

 いくらハンターであってもこの凄惨な光景を直視することは出来なかった。

 

「ケルビ……なんでここにこんなに?」

「ラルア、見てて大丈夫?」

「大丈夫だよ?」

「そう……私はちょっとキツいな……」

 

 ラルアは死体の周りを眺めた。明らかにモンスターの仕業である事はわかるが、それだけだった。

 

「ここって他に水辺は? もっと深い感じの……」

「あるっけ?」

 

 レープの方を見て言う。

 

「いやー……無いかな? ベースキャンプにあるやつぐらいだけど、そこは何もなかったからね」

「だよね。んー原因の痕跡も無いんじゃ、ここでの調査は終わり?」

「フーちゃんが他に何も見つけなければ……あれ? フーちゃんは?」

 

 巣の中に姿がない。外に出て見ると、大勢のアイルーやメラルーに囲まれているフーの姿があった。

 

「ふふっ……ふわふわ……」

 

 メラルーを撫でながら幸せそうな表情をしている。

 

「あー……フーちゃん?」

「ん、レープ?」

「お楽しみ中のところ申し訳ないんだけど、他に何か匂うとこない?」

「特にない」

 

 即答だった。

 

「そ、そう……。じゃあ、一旦帰ろ?」

「もう少し……」

「私のオトモも居るでしょ?」

「でも……」

「ほら行くよ」

 

 レープはフーの腕を引っ張る。

 

「あぁ……バイバイ……」

 

 フーは名残惜しそうに手を振りながらアイルー達に別れを告げた。

 

「さ、私達も行こう」

「りょーかい」

 

 セアとラルアも二人の後に続いた。遺跡平原での調査は空振りに終わった。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、聞いたか? オストガロアの討伐に赴いたパーティと音信不通だとよ」

「別にオストガロアなら、殉職だって有り得るだろ」

「そうなんだけどさ、おかしな点もあるんだよ」

「何が?」

「調査船が上空から龍ノ墓場を観察したが、オストガロアの姿は確認できなかったらしい。しかも何日も。おかしくないか? オストガロアくらいの大きさのモンスターを確認できない……しかも奴の住処である龍ノ墓場で……」

「確かにおかしいな……。オストガロアの死体が水中に沈んだ……で、ハンター四人は何らかの理由で帰還が困難な状況にあるとか、か?」

「まだその辺は全くわからないらしい。とにかく、今度調査のためにハンターが派遣されるらしいから、良い知らせを待つしかないな」

「だな……」

 




今回新たに登場したキャラの紹介↓
レープ
セアの友達で、ブレイヴ大剣使い。真名ネブタジェセルを使い、防具は合成で見た目がフィリア一式になっている。食べることが好きで、狩りの前の食事以外にも何かしらつまむ。特に甘い物が好きで、フルーツやお菓子なんかをよく食べている。体型維持が出来ているのは、狩りの時にカロリーを沢山消費するから……らしい。

フー
レープが保護した人化症のフルフル。アルビノではあるが、元モンスターだからか、体の弱さは目立たない。しかし、長時間日光を浴びると体調を崩すため、普段は白いロングパーカーに身を包んでいる。放電や飛行能力、発達した嗅覚、無性等の要素を引き継いでいる。一方、モンスターの時には確認できなかった紅い目が存在する。しかし視力は無く、やはり嗅覚を中心に周りからの情報を得ている。
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