ある日の孤島。水辺でキレアジを食べる人化症のクルペッコが居た。
「んー、ヒレが邪魔だけど、キレアジも美味しいなぁ。……もう一匹、他のやつ食べようか」
水面を覗き込む。様々な魚が優雅に泳いでいる。
「どれにしようかなぁ〜。サシミウオか、大食いマグロか、骨か……んっ!?」
思わず二度見する。魚達の中に骨の怪物が紛れていたのだ。それは青い瞳でクルペッコを見つめた。直後、水面から顔を出し、クルペッコの右足を狙って噛み付いてきた。
「なっ……!? や、やめろぉ!!」
クルペッコは両手で頭をつかみ、離そうとする。が、離れようとしない。ふと、さっき食べたキレアジのヒレが視界に入る。キレアジのヒレは武器を研げるくらいには硬い。クルペッコはヒレを持つと、角を怪物目掛けて振り下ろした。僅かに顎の力が緩み、なんとか離すことができた。
「は……はぁ……な、何あれ……」
右足からは血が流れている。ろくに動かせそうにない。また襲われるんじゃないかという恐怖心から、クルペッコはすぐさま飛び立ち、その場を離れようとした。
しかし、急に体が重くなり、そのまま落ちてしまう。
「何これ……」
体には青色の液体がまとわりついていた。粘性が高く、なかなか落ちない。
「うぅ……これじゃ飛べないじゃないか……」
「逃げないでよ……」
「ヒィッ!?」
背後から声と共に、水の音がした。恐る恐る振り向くと、そこには人の姿があった。頭に大きな骨を被り、深い青色のワンピースを身にまとっている。そして何より、先程骨の怪物だと思っていたもの……骨を纏い、龍の頭を模した触腕が二本、背後から伸びている。
「ねぇ、なんで逃げるの?」
「え……え……?」
「ボクさ、まだ食べたことないんだよね……人化症のモンスター」
サッと血の気が引いた。目の前の存在は自分を捕食する気だと知ったからだ。
「い、嫌……寄らないで!」
火打ち石を打ち合わせて威嚇する。しかし、粘液に濡れてるせいで上手く火が起こらない。
「何してるの?」
「う……」
「ほら……黙ってて」
触腕が両腕に絡みつく。ろくに抵抗できなくなったクルペッコの脚の上に、少年は座った。
「じゃ、いただきます」
「や、やめ……!」
少年はなんの躊躇も無く、クルペッコの左腕に噛み付いた。骨を砕きながら、肉を噛みちぎる。
「ーーーーーっっ!!!!」
「ん……やっぱり、人間やモンスターとは違った味がする。もっと食べてもいいよね?」
「あ……やだ……っっ!!!!」
痛みと恐怖心で頭の中がごちゃごちゃになったが、生存本能が働いたのか、彼は最後の抵抗を試みた。得意の声マネだ。
「……っ。ゴガアァァァァッッッ!!」
「んぐっ!?」
耳元で叫ばれ、流石に怯む。しかし、それだけだった。
「……うるさいよ」
「……」
「わかった。次はその喉噛みちぎってあげるね」
「…………」
少年はクルペッコの喉元へ口を運んだ。その時……
「ゴガアァァァァァッ!!」
「な、何……?」
大きな咆哮が辺りに響いた。見ると、そこには恐暴竜イビルジョーの姿があった。クルペッコは声マネでイビルジョーを呼び込む事を試みた。声マネと、自身の血の匂い、これがあれば貪食なイビルジョーなら間違いなく誘い込める、そう思ったのだ。
「っ! 邪魔を!」
少年はクルペッコの脚から離れると、イビルジョーの方を向き、戦闘態勢をとった。クルペッコは右腕と左足を使い、その場を離れようとした。どういう訳か、脚のあたりは粘液が溶けており、動かしやすい状態になっていた。背後から激しい戦闘の音が聞こえる。気付かれないように祈りながら、這ってその場を後にした。
*
どれくらい這っただろうか。気が付けば、ハンター達が使うベースキャンプの辺りまで来ていた。クルペッコは迷わず進む。ここに行けば、ハンターに助けを求めることが出来ると思いながら。
ベースキャンプのテントの中まで移動した。
(ここなら目につくはず……。とりあえず、少し休もう……)
クルペッコは体力を回復するために休眠についた。
「あれ、居ない」
クルペッコが居た場所を見て一言呟く。そこには粘液と血が混ざったものが残されているだけだった。
「ま、いっか。あの傷ならそう遠くへは逃げれないだろうし。……それより、お腹いっぱいになったら眠たくなってきたな……少し寝よ」
少年は近くの水辺へ向かうと、そこから水に潜り、休眠についた。
オストガロア、孤島で活動開始……