「全ハンターに告ぐ! 骸龍オストガロアが活動を開始したとの知らせが入った。至急各地に赴き、オストガロアを探しだして無力化せよ!」
骸龍オストガロアが人化症により姿を変え、様々な地域へ出向いていると告げられた。報告が相次いだ奇妙な死体についても、オストガロアの仕業であるとする説が有力となった。人化症で人間の姿を得た事により、内陸へ行動範囲を拡大したこと、姿が変わっても衰えない食欲から、生態系が崩れる可能性があるとして、ギルドから全ハンター向けの緊急クエストが出されることになった。
セアとラルアは孤島の探索へ名乗りを上げた。孤島へ向かうパーティは他にもいたが、セアがG級ハンターである事と、ラルアが水中でも活動でき、万が一逃げられた時に追跡が可能という要素から、二人が先陣を切って孤島に降り立つ事になった。
「……そろそろだよ」
「わかってる……」
孤島が見えてくる。上空から見た感じでは特に変化はみられない。飛行船は二人をベースキャンプに降ろすと、安全のためにすぐに飛び立った。ベースキャンプだろうと油断はできない。今のオストガロアならここにも侵入可能だからだ。
「気を付けて……もう出てきてもおかしくないからね」
「うん……」
警戒しつつベースキャンプを出よう……としたその時、背後から自分達以外の呼吸が聞こえてきた。
「何かいる……!」
「えっ……?」
「ラルアは周りを見てて。私はテントの中を見てくる」
「わかった……」
セアはデスレストレインの柄に手をかけながら、ゆっくりとテントに近付く。そしてテントに入ると同時に抜刀。中では人化症のモンスターが眠っていた。実際に出会ったことは無いが、翼や火打ち石等の特徴から、クルペッコであることはわかる。その左腕は肉が抉られ、骨が見えている。骨は砕かれており、筋肉だけで繋がっている状態だ。そして、体中に青い液体が付着している。指で触れてみると、粘性がある事がわかった。
「……オストガロアのか……? ねぇ、ちょっと! 起きて!」
セアはクルペッコを起こした。
「ハンター……さん?」
「そう。寝起きで悪いんだけど、ここで何があったか……」
セアの言葉はクルペッコの泣き声で遮られてしまった。クルペッコは怯えた様子で涙を流している。
「どう……したの?」
「ハンターさん……助けて……」
「な、何があったの?」
「助けて……骨の怪物に食べられる……」
「……間違いないね。ラルア!」
テントの外に居るラルアに声をかける。
「何?」
「恐らく、ここに居るよ。粘液が乾いてないから、そんなに時間は経ってない……間違いなくここのどこかに居る!」
「……! わかった!」
「よし……。あなたは今手当するからね」
休眠を取り、回復に専念したからか、出血は止まっている。しかし、傷口が大きく、塞がりきっていない。
「これ、飲めそう? いくらか回復は促進されるはずだから」
「うん……ありがとう……」
クルペッコは回復薬グレートの瓶を持つと、片手で開け、飲み始めた。セアは続けて、ポーチから銃のような物を取りだした。オストガロアの痕跡を発見し次第打ち上げろと渡された発光信号弾を打ち上げるものだ。テントから出て、空に打ち上げる。
「これでよし……。…………あれ? ラルア?」
さっきまでベースキャンプに居たラルアの姿が見当たらない。海を見ても、姿が見当たらない。
「どこに行った……?」
「セア! こんなに早く痕跡見つけたんだ」
「お手柄。すぐ皆来るよ」
後ろからレープとフーの声がした。二人とはパーティーを組んでいるため、ここで降りたが、他のハンター達はベースキャンプ以外の場所へ飛行船を進めていた。
「キャンプの中に居た人化症のクルペッコにまだ新しい青い粘液が付着してたからね。それより、ラルア見なかった? さっきまでここに居たんだけど……」
「えー? 見てないよ? フーちゃんなら匂い辿れるんじゃない?」
「うん。確かにラルアの匂いはある。でも……ここら辺で途切れてる。多分、水中行ったかも?」
「なんで水中に……ま、まさか……!」
嫌な予感がする。恐らく、二人も同じことを思っているだろう。
「一人で……オストガロアに?」
「それしかないでしょ……」
「無謀すぎ……」
「とにかく、早く探さなきゃ……」
三人がベースキャンプを離れようとしたその時、空に向かって赤い光が放たれた。その光は空に浮かぶ飛行船を次々と薙ぎ払っていく。
「あれって……」
「間違いない。オストガロアのだ!」
「……先に行ってて。私、準備したいことあるから」
「わかった。行こう、セア!」
「うん!」
二人がベースキャンプから離れる。
「ねぇ」
「ん? 君は?」
テントの中のクルペッコに声をかける。
「手伝って欲しいの。オストガロアの沈静化」
「僕が?」
「うん」
「……ちょっと、怖いんだけど」
「大丈夫。私もサポートするから。やられっぱなしは嫌でしょ?」
少しの沈黙。その後、クルペッコは答えを出した。
「だね……。わかった。僕にできることなら、なんでもやるよ」
覚悟のこもった声だった。
「ありがとう。後、あなたはこれ持ってて」
「……これは?」
フーは背負っていたライトボウガンを手渡した。少しホコリを被っているベルダーバレットだ。
「レープの装備箱の奥にあった。動作に支障はない」
「でも、僕ライトボウガンなんて触ったことすらないよ」
「撃ち方は教えるから大丈夫」
「う、うん……」
クルペッコは恐る恐るベルダーバレットを受け取った。
「よし、行こう」
「あ、待って……」
「何?」
「知り合いが二人、ここに来てるんだ。今二人を呼ぶから、合流してから行こう」
「……わかった。人数は多い方が良い」
「ありがとう」
クルペッコは綺麗な歌声のような鳴き声を響かせた。
「少し待てば来ると思う」
「ん、わかった」
*
孤島北西部の洞窟。海と繋がっている水辺から、ラルアは姿を現した。
「あ、誰か居る」
「……!」
声がした方を見ると、飛竜の巣がある方から洞窟に入ってくる人影が見えた。黄色い瞳で深い青のワンピース。そして、骨を纏う二本の触腕……。
「オストガロア……」
「お、よく知ってるね。ボク有名人?」
表情が明るくなる。見るだけなら幼い子どもだが、数多の命を奪ってきているのは間違いない。
「わざわざ食べられに来たの?」
「いいや、倒しに来た」
「へー。確かに、適度な運動は大事だからね。よし!」
オストガロアは触腕から龍ブレスを放ち、洞窟の天井を削った。崩れ落ちた岩は、海側を除く全ての入り口を封鎖してしまった。
「これで邪魔は入らないね」
「……タイマン、か」
「そうだよー。怖い?」
「全然?」
「へー」
ラルアは小さく深呼吸をした。ああは言ったが、全く怖くないと言ったら嘘になる。しかし、この状況になった以上、負けることはできない。
「じゃあ、始めようか。君はどのくらいもつかな?」
次回、オストガロア戦です。