白海竜と歩む道   作:よっしー希少種

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8.妖星遊戯

 オストガロアが咆哮を放つ。それが開始の合図になった。咆哮後、間髪入れずに触腕から粘液を飛ばしてくる。ラルアは隙間を縫うようにして動き、距離を詰めていく。

 

「やるね! じゃあこれはどうかな?」

 

 今度は、触腕を地面に潜らせ、地中から粘液を放った。

 

「おぉ……!」

 

 思わず前進を止め、回避に専念する。

 

「避けてばっかじゃつまらないよ?」

 

 オストガロアは不満そうな顔をしながら言った。まだまだ余裕がある様子だ。

 

「なら……これでもくらいな!」

 

 オストガロアに向かって雷の球を複数発放った。オストガロアは最小限の動きでそれらを回避し、避けきれなかったものは触腕で受けた。

 

「それで良い。もっと楽しくいこ?」

 

 無邪気に笑っている。

 

「はっ……その余裕な表情、すぐに崩してあげるよ」

「へー。やってごらん?」

 

 ラルアは再びオストガロアへ向かって走った。余裕を感じたのか、さっきよりも迎撃が甘い。

 

(古龍だからって……油断してると足元すくわれるってのを教えてやる)

 

 再び触腕を地面に潜らせたが、そこでラルアはさらに速度を上げた。

 

「!? 本気じゃなかったか」

 

 地面からの攻撃が出る前に、ラルアはオストガロアの目前に近付くことに成功した。触腕を地面に潜らせているから動けない。さらに、ここに粘液を放てば自分も巻き添えになる。

 

「油断したね!」

「油断したのはどっちかな!?」

 

 オストガロアは大きく口を開け、ラルア目掛けて噛み付こうとした。ラルアはそれを左腕で受ける。激痛が走るが、今は怯んでられない。

 

「うあぁぁぁぁっ!!」

 

 そして、オストガロアの左肩に全力で噛み付く。同時に、蓄電していた電気を全て口内に集め、放った。

 

「うっ……がァッ!?」

 

 流石のオストガロアにもこれには怯んだ。零距離から放たれた電撃により、オストガロアの左肩は焦げ、左腕は力なく垂れてしまった。

 

「どうよ……」

「あぁ……確かに油断してたのは僕の方だった……。………………だから!」

 

 ラルアの腹に蹴りを放つ。避けることが出来ず、大きく後ろに吹き飛ぶ。

 

「う……」

「もうやめた……本気で殺すから!」

 

 触腕を地面から引き抜く。青かった斑点は赤く変色しており、右の触腕の先には刃のようなものが付いた頭骨が装着されている。

 

「絶対に殺す……」

 

 左の触腕から龍属性のビームが放たれる。咄嗟に立ち上がり、回避するが、ビームは薙ぐようにしてラルアを追ってくる。

 

「逃げ回るな! 雑魚が!」

 

 ビームを止めたと思えば、今度は右の触腕に付いている刃で攻撃を仕掛けてきた。体の近くを掠める度に、熱が伝わってくる。必死に避けて攻撃の機会を伺うが、全く隙を見つけられない。

 

(このままじゃまずい……)

 

 オストガロアの攻撃は大振りで一撃が重い。それ故に大きく動いてかわさなければならないのだが、それがラルアの体力をじわじわと削っていった。やがて攻撃を掠める事が多くなり、避けきれなくなってきた。

 

「う……はぁ……はぁ……」

 

 肩で呼吸をしながら、攻撃を避け続ける。気を抜けば足がもつれて倒れてしまいそうだ。その様子を見て、ラルアの限界を察したのか、オストガロアはニヤリと笑った。

 左の触腕から龍ビームを天井に向けて放つ。天井から崩れ落ちた瓦礫はラルアの目前に落ちてきた。ラルアは少し後退して瓦礫を回避、オストガロアの次の攻撃へ備える。

 

(どこ……どこから来る……?)

 

 直後、ラルアの腹部に激痛が走った。同時に、体の中を焼かれる感覚も覚えた。

 

「え……」

 

 恐る恐る視線を下ろす。見えたのは、自分の腹を貫く刃付きの頭骨だった。触腕はそのままラルアを持ち上げる。自重のせいで、刃はより深く刺さっていく。

 

「あ……あぐ……」

「わかった? お前じゃボクには勝てないんだよ? それもわからないでボクに勝負を挑んでさ、バカなの?」

 

 怒りの籠った声で話す。まだオストガロアの怒りは治まっていないようだ。

 

「はぁ……いっぱい動いたらお腹すいた。お前、殺すついでに食べるね」

 

 触腕を思いっきり振り、ラルアを壁へ飛ばした。

 

「う……」

 

 朦朧とする意識の中、ラルアは今までの行動をひどく悔いた。

 

(セアと一緒なら……こうはならなかったかな……? みんなを待ってれば……勝てたかな……?)

 

 オストガロアはラルアの前に座ると、服を無理やり破いた。そして大きく口を開け、ラルアの腹部に噛み付く。肉も内臓もまとめて食いちぎられる。

 

「………な……い……」

「……ごめんなさい…………セア……」

 

 薄れゆく意識の中、抵抗もせず、ただ自分を捕食するオストガロアを見ながら、死を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!? なんだ!?」

「ラルアから……離れて!」

 

 突如、何か白いものがオストガロアにしがみついた。それを振り払おうと、オストガロアはラルアから口を離し、暴れ始めた。

 

「なんだお前は! 邪魔するな!」

「大人しくして……これ以上ラルアを傷付けないで!」

 

 よく聞きなれた声だ。

 

「………………フー……?」

 

 間違いなく、フーだった。唯一塞がっていない、海側から空を飛んで入ってきたのだろう。オストガロアを抑え込もうと必死にしがみついている。

 

(よかった……誰か来たなら……もう大丈夫だよね…………)

 

 ラルアの意識は段々と遠のいていき、やがて途切れた。

 

 

「あぁー!」

 

 オストガロアはフーを振りほどき、壁へ吹き飛ばした。その時、頭に被っていた骨も同時に飛ばしてしまったが、そんなことは気にしなかった。

 

「あのさ……ボク今本っっっ当に気分悪いの! わかる!? お前も死ぬ!?」

 

 オストガロアは怒りを顕にしつつフーに歩み寄った。しかし、フーは小さく笑った。

 

「何が……何がおかしい!」

「だって、もう時間だから」

「はぁ?」

「そろそろ……お終い」

 

 直後、轟雷が岩を砕いた。飛竜の巣に繋がる方の入り口だ。

 

「な……!?」

 

 続いて、その入り口から黒い影と青い球体がオストガロア目掛けて飛んでくる。

 

(速い……!)

 

 青い球体はオストガロアに当たると、弾けて電気を放った。影は赤い残光を引きながら、すれ違いざまにオストガロアの触腕と脚を深く斬り、フーを抱えて入り口へ飛んだ。脚に大きな傷を負ったオストガロアは、立っている事が出来なくなり、その場に膝をついた。

 

「流石……ありがとう」

「拙者にかかれば造作もないこと。しかし……少し遅かったか?」

「いやー、結構急いだけどね。あの娘、まだ死んでないと良いけど」

 

 土埃が晴れ、姿が見えてくる。一人は、前腕に刃のような翼がある忍者服の少女、もう一人は笠を被り、白い毛で装飾された青緑の和服を着ている男だ。

 

「何者だ……お前ら……」

「おっと、自己紹介がまだであったな」

 

 男の方が笠を外す。白い髪と、黄色い二本の角が顕になる。

 

「拙者の名はジンオウガ……オウガで良い」

「私はナルガクルガ。ナルガって呼んでね〜」

「ジンオウガにナルガクルガ……何故ここに!?」

「友人と釣りに来ていた。そしたら、中々面白そうな事に遭遇できてな」

「古龍と戦うのはいつぶりかなぁ……頑張らなきゃだね」

 

 洞窟内に轟音が響く。同時に、入り口の岩が吹き飛び、二人のハンターが入ってきた。セアとレープだ。

 

「ラルア! 無事!?」

 

 セアは視界を巡らせてラルアを探す。そして、腹部を抉られて動かないラルアの姿を発見した。

 

「ラルア……!?」

「セア、今は目の前の敵に集中して! あいつ、まだやれそうだよ!」

 

 レープは先に大剣を構える。

 

「……そうだね。ラルア、すぐ終わらせるから!」

 

 セアも片手剣を構えた。

 

「お……お前らぁ……!」

 

 オストガロアは大きく咆哮を上げる。

 

「フーちゃん、作戦変更。治療に使えそうな素材集めといて」

「ん……」

 

 フーはナルガの指示通り、コソッと飛竜の巣の方へ向かった。

 

「雑魚が何人増えたって変わらないんだよ! お前らもこいつと同じように……腹から抉って食ってやるよ!」

「やってみなよ、私達はそう簡単に食べられたりしないよ!!」

「ラルアの受けた痛み……そっくりそのまま味わわせてあげるよ!!」

「……『狩人』と肩を並べて戦えるか。面白い……ゆくぞナルガ」

「言われずとも。さっさと狩ってまた釣りしようよ」

 

 オウガとナルガも構える。

 

「さぁ、渓流の疾風迅雷コンビも相手するよ!!」

「狩るか狩られるか……いざ、尋常に!!」




次回、オストガロア戦決着です
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