天に立つ?ええ、ぜひお立ちなさい!   作:きりたん

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全てはアタクシの手の上にありますわ!

 

 

瀞霊廷は変わった。これが死神たちが昨今抱いている率直な気持ちである。それも良いほうにではなく、悪いほうへと…

 

 

瀞霊廷にて活動する隠密機動・鬼道衆・護廷十三隊等の死神たちは次々に訪れる命令に振り回され疲弊しているのが現状だった。ただ忙しいのならばまだ良い…だが彼らは今、大勢の仲間を失うという事態へと陥っていたのだ。

 

そんな瀞霊廷内が変わったのは「1人の女が中央四十六室に現れた時からだ」という噂も流れているが、本当のところは誰にもわかっていない。絶対的な権力を持つ中央四十六室への確認など、普通の死神にできることではないからだ。

 

かつて護廷十三隊でも隊長含む数人が姿を消した事もあった。それを首謀したという浦原喜助、そしてその浦原喜助の逃亡を幇助した四楓院夜一を含め護廷十三隊の隊長格たちが一気にいなくなるというが非常に揺れた事件だった。

 

だが今回は違う。仲間が仲間を殺すという意味では同じかもしれないが、その中身は大きく異なっている。ある日突然中央四十六室より出された命令…

 

 

『護廷十三隊十席以下の死神はその立場を同じくする者と一騎打ちを行い、勝者のみが死神として在ることを認める。敗者は処刑とし、軟弱者としてその首晒すべし』

 

 

これにより護廷十三隊は大いに揺れた。十席以下の死神は上の席に比べて非常に数が多い。その数が中央四十六室の命令によって半分になろうとしているのだから…当然各隊の隊長は一部を除いてこの命令を良しとせず、一番隊隊長であり護廷十三隊の総隊長でもある山本元柳斎重國へと陳情を申し立てた。当然、護廷十三隊や尸魂界を時には苛烈に、時には見守ってきた山本元柳斎重國も見かねて中央四十六室を諌めようとしたが、その場に現れたのは中央四十六室の面々だけではなく1人の見知らぬ女が同席していた。誰もその事に対して口を挟む事もなく、それどころか格好からして自分が頭だとでも言わんばかりのその女に全員が付き従っているかのようにさえ見える。そして本来ならば口を開くのは四十六室の権力者たちであるはずなのに、山本元柳斎重國へと語りかけてきたのは扇子で口元を隠しながらも微笑む女のほうだった。

 

「はじめましてですわね、護廷十三隊の総隊長さん。アタクシは織田真姫と申します。ここにいる方々のお友達だとでも思って頂いて構わないですわ」

 

「中央四十六室が友達じゃと?それでは此度の四十六室からのあの発令は貴様の仕業か」

 

「うふふ…何か勘違いなさっておられるようですけれど、アタクシはただお友達に少しばかり助言をして差し上げただけ。命令書はきちんと中央四十六室からのものだったはずですわ」

 

「…確かにのぅ。それでは今回の死神を減らすような命令の意図はお主が説明してくれるのかの?」

 

「総隊長さん、アタクシは今のこの世界を憂いておりますの。今いるのは死神とは名ばかりの烏合の衆ばかり。貴方が今までもずっと最強の死神としてその座におられるのが停滞の証拠…一死を以って大罪を誅す、申されている事は立派ですけれど、もし貴方と同じだけの実力を持った外敵が現れた場合、今の死神の皆さんはどこまで戦えますの?肉壁どころか障子紙にすらならないような者たちが死神などと、おへそで緑茶を沸かしてしまいますわね」

 

「ぬぅ…」

 

「おわかりになりまして?中央四十六室は護廷の戦力を削ぎたいのではなく、質を高める方向へと舵を切っただけですの。貴方も総隊長という重責を担う身なればご理解しておられるでしょう?」

 

「死神の質を高める…この事に関して異存はない。じゃが、なぜ敗者を処刑しその首を晒す必要がある?その者もいずれ成長し護廷の礎となれるかもしれぬじゃろう」

 

「それを見極めるのは真央霊術院のお仕事ではなくて?これより行われるのは未来を憂う中央四十六室による試練とお思い下さいませ。これを乗り越えた時には名ばかりではなく、名実ともに死神として相応しい者たちによる護廷となるのです。総隊長さんには心苦しいかもしれませんが、黙して語らず()()()()()()()()()()()()()()()()()()…それでは皆様、お話も終わりましたし戻ることに致しましょう。総隊長さんも下がって頂いて構わなくてよ?」

 

「…よかろう。今は大人しく見守ろうぞ。じゃが…徒に瀞霊廷を、そして尸魂界をかき乱すような真似をすれば容赦はせんぞ」

 

そして話は終わりだとばかりに女と共に退室していく面々を見送りながら、山本元柳斎はその女の言葉に一定の理解を持ちながらも訝しむ気持ちは消えなかった。なぜならその場にいたのは中央四十六室の面々なのだ。例え山本元柳斎重國に対してであろうと傲慢な物言いの者たちが一言も発さずに従っている。勝手な憶測で敵対行動と思われるような言動をするわけにもいかない山本は、ひとまず静観することとし各隊長たちへの説明のため一番隊隊舎へと戻っていった。もしも瀞霊廷に、ひいては尸魂界に害をなすのならば、その時は焼き尽くしてくれよう…という思いを秘めて…

 

 

 

 

 

 

うふふ…これで一番厄介な総隊長さんが簡単に動く事はないでしょうね。最後に随分と物騒な圧力を出しておられましたが…アタクシのような見目麗しくもか弱い存在に脅しとは、総隊長さんは老いた見た目とは裏腹に随分と短気なのかしら?

 

それにしても抗う力もなく権力のみで生きる貴族という生き物は操りやすくて助かりますわ。藍染さんに虚圏からこの瀞霊廷へと送られてから、持ち前の美貌を活かしてある貴族の屋敷へと招かれることに成功し、その屋敷の書庫へと入り浸ることで様々な知識を得る事ができましたの。それによってアタクシに相応しい場所はどこかと考えるまでもなく、中央四十六室という人形たちを操れば全てがアタクシの思いのままというここしかないとしか思えない便利な場所がありましたわ。このあたりが野蛮な悪霊さんたちと大きく違うところですわね。あちら(虚圏)は権力ではなく実力の世界でしたからなんだか新鮮に感じますわ。

 

今回発令させた死神の一騎打ち命令…これにもちゃんとした理由がありますのよ。総隊長さんにはああ申しましたが、本当のところは死神に質を求めてなどおりませんし。もしかしたら結果的にそうなる事があるかもしれませんが、アタクシにとってはどうでも良い事ですもの。1つの行動でいくつもの効果を引き出すなんて、やはりアタクシの策士としての才能は素晴らしいですわね。

 

 

「姫様、護廷十三隊より藍染隊長がお越しになっております。なんでも『姫様が探していた書物が見つかったから持ってきた』との事ですが如何されますか?」

 

「あら、そうなんですわね。お通しして構いませんわ。お茶も必要ありませんから人払いだけしておいてくださる?」

 

護廷十三隊から予定通り死神の数が大幅に減り、最初の一騎打ち命令から更に新しく別なものを出そうかと思っていたのですが、そんな考え事をしていた時に身の周りの世話をしている下僕の1人から来客を告げられましたわ。それにしても藍染さんがわざわざいらっしゃるなんて何かあったのかしら?

 

「やぁ、なかなか面白い試みをしているね」

 

「楽しんでいただけたなら何よりですわ。そろそろ次を予定しておりますし、この程度では終わりませんからもっともっと楽しませてご覧に入れますわ。それで…本日はわざわざお越しになったということは、このようなお話だけではありませんのでしょう?」

 

「その通りだ。まさか中央四十六室を手中に収めるとは予想外だったが、これは私にとっても都合の良い状況になっていてね。お互いにとってより良い展開にするために今後の考えを少し聞いておきたかったんだ」

 

あら、藍染さんにとっては中央四十六室という場所は手を出すつもりのない場所だったのかしら?こんなに便利なのに…それにわざわざアタクシの予定を聞きたいだなんて、もしかして先回りしてアタクシを楽しませるための仕込みでもするつもりですわね。藍染さんもアタクシのために行動する意識が芽生えているようで何よりですわ。

 

「そうですわね…わざわざいらしたのですからお伝えしておきましょう。次は護廷の副隊長さん方あたりが無様に踊るところを見て楽しむつもりですわ。なんでしたら隊長さんたちが直接手を下す…なんていうほうがより面白いかもしれませんわね」

 

「ふむ…それでも構わないが、せっかくだからもう少し工夫してみないかい?実は今、観察している1つの試みがようやく形になりそうでね。手に入れたい物があるから水面下で動いていたんだが、結果的に貴女が()()にいるというのなら都合が良い。そしてその結果、貴女が行う予定だった計画(遊び)のほうもより楽しめるものになると思うんだが…」

 

「それは楽しみですわ!藍染さんも楽しんでいらっしゃるようですし、アタクシもしっかりと悲劇と喜劇で彩ってご覧に入れないといけませんわね」

 

それからお楽しみは分かち合うほうが良いと少々お互いの企てを明かし、1つの計画となり動き始めましたわ。その際に藍染さんの斬魄刀の能力を教えて頂きましたが、とっても素晴らしい能力でしたわね。藍染さん曰く「本来ならば視覚や感知の追いつかない者を補助したり負傷者に怪我を感じさせずに戦わせたりと使い勝手は良いんだが、瀞霊廷ではせいぜい愚者を踊らせる程度にしか使い道がないよ」との事でしたが、むしろ有象無象の無様に踊る様を見て楽しめるなんて羨ましい限りだと思いますの。

 

思わぬところで藍染さんとの共同計画となってしまいましたので、アタクシも考えていた『副隊長を隊長に殺させよう』計画も変更することになりましたの。きっと隊長が手塩にかけて育てたであろう副隊長を、可愛がっているであろう副隊長をその隊長自ら手にかける…とても大きな感情が生まれると期待していたのですが、藍染さんの計画を組み込むことでより壮大な物語(ドラマ)が生まれるに違いありませんわ!

 

そのためにしっかりと下準備を行わなくては…例え実際はアタクシの傀儡人形であろうと、表向きは腐っても中央四十六室…その貴族たちの権力を存分に奮うことで、準備は着々と進んで参りましたわ。とはいえそれだけでは退屈…いえ、遊び心が足りませんし護廷十三隊ばかり数が減るのは不公平だと思われる方もいらっしゃるでしょうね。ですのでアタクシの公平公正な判断から、隠密機動や鬼道衆の方たちもきちんと減って頂いておりますわ。護廷の二番隊が隠密機動も兼ねているとか誰かが仰っていましたが、きっとそれだけ大人数の部隊だったのでしょうね。つまり所属する死神の数が減って少数精鋭になったことで、きっと今までよりも職務に励んで頂けることでしょう。

 

藍染さんが仰るには「幕が上がる合図は既に用意している」ということですので、アタクシはもうすぐ来るであろうその日を期待に胸を膨らませてお待ちしておきますわ。既に傀儡人形(四十六室)の権力を使い資料を集め、そして藍染さんからも護廷内の情報を頂くことで悲劇の主人公になれるであろう候補は幾人か決めてありますの。

 

アタクシの斬魄刀である環さんは「餌として良いのは出される感情の波が大きければ大きいほど良い。そしてそういった大きい感情とはまったく力のない者か、より大きな力を持つ者ほど発する傾向にある」とアドバイスを下さいましたの。つまり数多の死神の中で隊長ともなれば上質で良質な感情を発して下さるということ…一騎打ちさせたりして恐怖を煽りアタクシの力の贄とした死神たちとは比べ物にならない力となってくれる事を期待しておりますわ。

 

 

 

「真姫さん、随分と待たせたね。いよいよ苦労して準備してきた寸劇の幕が上がる。後は演者(死神)たちがこちらの求めている動きを行ってくれれば茶番劇とはならないだろう」

 

「うふふ…アタクシは茶番劇でも楽しめますわよ。もちろん舞台がアタクシと藍染さんの手のひらの上にある以上、駄作にはならないと確信しておりますしね」

 

「その通りだ。これから行うのは瀞霊廷という舞台と、死神という人形によって演じられる余興でしかない。だが()()()の事を考えれば、この余興は私たちにとって意味のある事でもある」

 

藍染さんは『余興』とは言ってみても、本心ではそうは思ってはおられないのでしょうね。元々単独で計画していたほどですし、そこにアタクシがいる事でより現実的で余計な手間のいらない計画となった事が余裕として現れているのでしょう。とはいえ物事にはハプニングが付き物ですし、もしかしたらアタクシたちの予想を超えた突発的な事態が起きるかもしれませんわね。そんな事が起きるなんて期待するだけ無駄かもしれませんけれど…

 

藍染さんは欲しい()を、アタクシは欲しい()を手に入れて終わるだけですわ。そういえば一度だけ藍染さんが求めている()()を「欲しいと思わないのかい?」と聞かれた事がありましたが、アタクシの能力は周囲から力を取り込んで自らの力に変えるものですので欲しいとも思いませんでしたわ。藍染さんであっても玩具を用いて力を得るしかないのですから、周囲の有象無象の感情という供物で強くなれるアタクシはやはり全てをこの手に収めるに相応しいというわけですわね。

 

 

 

 

現世にて任務に当たっていた死神が、人間へ力を譲渡し自身の業務をその人間に行わせていた。

 

そんな報告が中央四十六室へと上がって参りましたわ。そしてそれが舞台の幕開けを示すものでもありますわ。これは瀞霊廷にとって重罪であり、既に護廷十三隊の六番隊の隊長と副隊長が捕縛に向かいこちらに連行しているそうですの。

 

ふふっ…現世に赴任したのは十三番隊の死神なのに、捕縛しに向かったのはわざわざ六番隊の隊長副隊長だなんて可笑しな事もあったものですわね。重罪を犯してしまっている事を理解して、最後に顔を見ておきたかった…とかなのかしら。アタクシでもその辺りの事情は把握している事ですから当然護廷の死神たちはご存知でしょうし、あるいはそういった情けをかけた方がおられるのかもしれませんわね。

 

「姫様、報告のあった罪人が連行されて参りました」

 

「ご苦労さま。四十六室の皆様方は()()()()()()()()から、アタクシがその方にお会い致しますわ。既に皆様は報告を受け罪状に対する大筋の判断をお決めになっておられましたので、その結果を告げるだけならアタクシだけでも問題ないとの事でしたわ。でも、そうですわね…万が一がないとも限りませんし、念の為護衛を付けて頂けます?確かもうすぐ五番隊の藍染隊長がいらっしゃるはずですから、彼に護衛をして頂きましょう。それまで罪人は牢獄にでも入れておいてくださいな」

 

「はっ!では罪人はひとまず収監し、藍染隊長が到着次第こちらへお連れ致します」

 

藍染さんは表向きはアタクシに珍しい本を届けたりしていると思われておりますし、護廷の中でも小間使い扱いされていると同情を集めているそうですわ。こうしておけば秘密裏にコソコソする必要もなくなりますし、アタクシの方から堂々と呼び出すのに毎回理由を付ける手間も省けますしね。いずれは事実となるとはいえ、アタクシに振り回されているという噂を流してくださっている藍染さんはよく理解してらっしゃいますわ。

 

現世で人間に能力を譲渡した罪によって捕縛され、斬魄刀を取り上げられ投獄されている罪人…朽木ルキアさんと仰る方でしたわね。藍染さんの目的はすぐに達成することができるのでしょうけれど、アタクシのほうは彼女をどう扱えばより都合がよろしいのでしょうね。すぐに処刑して首を晒すのでも構わないのですが、既に行った事と同じ事を繰り返しても芸がありませんし迷うところですわ。もうすぐ藍染さんもいらっしゃいますし、何か良い案がないか相談してみましょうか。あら、ちょうど藍染さんもいらっしゃったようですわね。

 

 

 

「少し待たせてしまったかな?」

 

「いいえ、むしろ藍染さんのほうがお早かったですわね。まるで誕生日の贈り物を期待している童のような顔をしてらっしゃいますわよ?」

 

「そんな表情をしていたかい?どうやらここに来るまでに少しばかり高揚してしまったようだね」

 

「ふふっ、それでは意中の方にお会いしに参りましょうか。あちらもきっと|アタクシたちが来る()()()()()()()()のを首を長くしてお待ちになっておられるはずですわ」

 

藍染さんたら、随分と楽しみにしてらしたようですわね。既に目的のお方はアタクシたちの手中にあるわけですし、邪魔をする者もいないわけですから「早く手に入れたい」という気持ちが珍しく表情に出ておられますわ。ふふふっ、アタクシは優しいので焦らしたりは致しませんわよ。

 

藍染さんと一緒に罪人が控えているという場所へと移動する合間に、当の彼女をどう扱えばより良いかを藍染さんへと相談してみましたの。アタクシの知っている事はあくまでも紙の上での情報であって、護廷という組織の中で死神たちをつぶさに観察していた藍染さんならばアタクシを楽しませる案を出して頂けると思っておりますわ。そしてそんなアタクシの期待の通り、藍染さんはいくつかの助言をして下さいましたわ。どうやら藍染さんはここへ来る前にアタクシのためにいくつかの布石を打ってからいらしたようで、それならばアタクシはその布石を利用して差し上げたほうがよろしいですわね。

 

 

 

 

うふふ…それでは喜怒哀楽が入り乱れるとっても素敵な劇の始まりですわぁ。

 

 

 

 

 

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