「いや〜久々に人が多く居るところに来た気がする」
「お前、今までどんな生活を送ってたんだ?」
ギルダーツに連れられてやって来たのはマグノリア。フィオーレ王国随一の商業都市と知られる街であり、活気が溢れ出ている。
転生してから修行の日々に明け暮れていたので街とか村に立ち寄らずに山とか人があんまり住んでいない土地に足を運んでいたから、こういう感じの街に来るのはなんだかんだで初である。マグノリアって意外と敷居が高い。因みにだがギルダーツから敬語はやめろと言われてるのでやめるように心掛けている。
「ギ、ギルダーツだ!」
「ギルダーツがやってきたぞ!」
「ヤベえ、急いでギルダーツシフトに変えろ!」
街を歩いているとギルダーツに反応するマグノリアの人々。
そういえばギルダーツって悪い意味でも有名人だったなと思い出しながらギルダーツをチラッと見ると不貞腐れた顔をしていた。
「ったく、毎回毎回オレが街を壊すわけないだろう」
クラッシュの魔法を無意識の内に使ってしまうギルダーツ。
その為にマグノリアがそれ専用に改造されている……よくよく考えたらヤバい。たった1人の為に街を大掛かりに改造するとかヤバい。ギルダーツは愚痴るがマジで無意識でクラッシュを発動されると困るので若干距離を保ちながら歩いている。
オレが居るせいで意識しているのかクラッシュの魔法は使ってこないが、本当に油断はならない。
「おーぅ、今帰ったぞ」
少しの緊張感を保ちつつ妖精の尻尾の酒場に足を踏み入れる。
ギルダーツが帰ってくるのがギルダーツシフトにより分かっていたので、周りは大きな声で「ギルダーツ!」と歓迎の声をあげる。オレは物凄く部外者な感じがあるな。
「ギルダーツ、おかえり。勝負しろ!」
「おいおい、帰ってきたばっかだし文脈もおかしいだろう」
おぉ、あれは主人公ことナツ・ドラグニルだ。
右手に炎を纏った拳でギルダーツに襲いかかるが、簡単にナツをあしらう……ギルダーツ、半端じゃないな。
「今回は随分と早かったのぅ」
バーのカウンターに座る小さな老人、
ギルダーツが今回思ったよりも早く帰ってきた事を気にしているとチラリとギルダーツのすぐ近くにいるオレを見る。
「それが依頼を先にこなされちまってよ」
「そいつが関係しておるのか?」
「ああ。こいつは鎧……面白そうだが拾った」
「ギルダーツ、その言い方はちょっと」
そんな犬や猫を取り扱うみたいに言うのは困る。
マカロフに見られるのでビクリと萎縮してしまうが優しい慈愛に満ちた目で見守られたので少しだけ緊張が解れていく。
「銀杏鎧です……東の方の国の出身です」
「鎧か……ワシはマカロフ・ドレアー、よろしく頼むぞ」
「は、はい」
ギルドのマーク、何処に入れようか……。
「ギルダーツ、そいつ強いのか!」
オレが入ることが分かると嬉しそうな顔で聞いてくるナツ。ギルダーツはニヤリと笑みを浮かべて包帯を巻いた肩を見せる。
「コイツは強いぞ。このオレに手傷を負わせたぐらいだからな」
「嘘だろ!」
「ギルダーツにダメージを与えたのか!?」
やっぱりと言うかギルダーツにダメージを与えた事は物凄い事の様でギルドの中年連中はざわめく。
強くはなりたいし力を使いこなせる様になりたいとは思っているが強いことを自慢したいわけじゃない。自分が守りたいと思った守れる程度の力さえあればそれでいい……しかし、それを世間や周りは許してはくれない。
ナツが目をキラキラと輝かせて俺を見ており、ギルドのまだ子供な面々からもあのギルダーツをと言った視線を向けてくる……ああ、なんか胃が痛くなってきた。
「お前、鎧だったな。オレ、ナツ・ドラグニル……オレと勝負しろぉ!」
「ふん!」
「ぐふぉ!?」
「瞬殺!?」
ナツが右手に炎を纏って殴りかかってきたので、ゴーカイスピアを取り出して反対の石突の方でお腹を叩いて飛ばす。勝負をしろって言ってきたのにいきなり殴りかかるだなんて勝負もクソもあったもんじゃないが挑んでくるならばやるしかない。ナツを瞬殺したことを恐らくは裸の氷の魔道士ことグレイは驚く。
「早速やるじゃねえか」
ニヤリと笑みを浮かべるギルダーツ。
ギルドの連中と打ち解けてると思っているから別にそんなんじゃない。ナツが挑んできたから対処しただけだ。
「む、私と同じ魔法を使うのか?」
ゴーカイスピアを異空間から取り出した事で首を傾げるは未来の
オレの使っているのは一応はこの世界仕様に合わせて魔法に変化してるらしいけどエルザと……被っているか……。
「面白え、エルザと同じ魔法を使うってなら私が相手をしてやるよ!」
ボキボキと腕を鳴らしながら出てきた可愛らしい女の子……多分、ミラジェーンだと思う。
弟のエルフマンと妹のリサーナが若干あたふたとしているところからなんか大変そうだが、多分オレの方が大変な状態だ。
ミラジェーンから物凄くメンチを切られていて、その形相から思わず目を背けそうにする。
「へ、平和的な解決は」
「んなの、あると思ってるのか?」
ですよねぇ。
周りもなんだかミラと戦うのかとか言う感じの視線を向けており、今更降参ですとは言えない。
「とりあえずここで戦うと周りに迷惑になるから」
「おう、表に出な」
やだ、ワイル道。ナツの時とは多少話が通じるのかいきなり襲ってくることはしなかった。
出来れば戦いたくはないのだが、やらなければならない空気である。
「お前、あんまり乗り気じゃないな」
「そりゃまぁ」
「オレとやった時はノリノリだったじゃねえか」
「オレは戦闘狂じゃない」
ギルダーツとやった時は今の自分がどれぐらい出来るか試してみたいと思ってやったが、オレは基本的に平和主義なんだ。
自分から勝負を挑んだりすることなんて早々にない……ギルダーツと戦って今の自分がどれだけやれるか分かった以上は無理に戦う必要なんてない……なんて言ったら怒るんだろうな。
「おい、さっさと出てきやがれ!」
「はいはーい」
先に出ていたミラはオレを外に呼び出す。
オレが出ていくと酒場にいた面々も物見遊山でゾロゾロと出ていく……なんかこう、緊張をするな。
吉良吉影とは言わないけども転生するまではヒッソリと暮らしていて、転生してからも人目につかずに生きていたから、周りからの視線は気になる。
「先に言っておく、ナツ程度をボコボコにしても自慢にはならねえぞ」
「ナツ程度って……」
「あたしはナツより強いんだよ」
ギヒヒと見るものが見れば怖い笑みを浮かびあげているミラジェーン。
「ちゃんとした自己紹介がまだだったな……銀杏鎧、鎧って呼んでくれよ」
「鎧か……あたしはミラジェーン、ミラでいい……今からお前をぶっ倒す女の名前だ!覚えておきな!」
「勝つのはオレだ!豪快チェンジ!」
『ゴーカイジャー!』
「真っ赤な太陽背に受け」
「おらぁ!」
「うお!?」
ゴーカイシルバーに豪快チェンジしたので、例のあの口上を言おうとすると悪魔の身体を奪う
「おおい!人が折角カッコつけようとしたってのに攻撃するか普通!」
「んなもん喋ってる暇があるならかかってこいや!」
っく、ぐうの音も出ない正論だ。
殴りかかってくるのでゴーカイスピアを盾代わりにして攻撃を防ぐが、一撃が重い……けど、ギルダーツの時とは違いなんだかいける気がする。
「ゴーカイスピア・ガンモード!」
悪魔の肉体にやっている奴と真正面からまともにやり合っても不利だ。
少しミラから距離を取るとゴーカイスピアを短くしてスピアモードからガンモードに変形し、ミラに向けて弾を撃つ。
「はっはっは、中距離以上の攻撃には弱いと見える」
ゴーカイスピアの弾を受け、耐えているミラ。
なにか攻めてくるかと思ったが、一向に攻めてこない……悪魔の肉体での肉弾戦は得意に見えるが、中距離以上の攻撃は出来なさそうだ。
「ナメんじゃねえ!」
両手に魔力をかめはめ波の様に集めていくミラ。
これはぶっ放してくると直ぐに攻撃の手をやめてゴーカイセルラーを取り出す。
「くたばりやがれぇ!」
今から仲間になろうとしている奴等に言う台詞じゃねえ。
ミラは魔力の塊をオレにぶっ放してきた
『ジューウレンジャー!』
ので、素早く豪快チェンジをする。
恐竜戦隊ジュウレンジャーに登場するドラゴンレンジャー。ドラゴンアーマーを装備しており、無敵の防御力と攻撃力の2つを誇る。現にミラの魔力による攻撃をまともに受けてもダメージが皆無だ。
「姿が変わった!?」
「オレはスーパー戦隊の、いや、パワーレンジャー達の力を使えるんだ」
この力はオレ一人のものだから戦隊と呼ぶことは出来ない。だったら戦隊の海外名称を、パワーレンジャーを名乗るのがいい。
オレの使っている魔法の名称は今日から
「ドラゴンレンジャー、ブライ!」
よし、今度はちゃんと例の口上を言うことが出来た。
ゴーカイシルバーからのドラゴンレンジャーへのカッコいい豪快チェンジにミラだけでなく、周りも驚いている。
「獣奏剣!」
ドラゴンレンジャーの専用装備である獣奏剣を取り出し、ミラへと向かって突撃をする。
「そっちが姿を変えたならこっちも姿を変えてやる!」
魔法陣を出現させて姿を変えるミラ。
先程までとは異なる悪魔の姿をしているがそんなのを気にするほどドラゴンレンジャーは弱くはない……と言うか大体の追加戦士はぶっ壊れて強いのが定石だ。
「どうらああああ!」
先程よりもパワーがある拳を振るうミラ。さっきよりもスピードがあるか……見切った!
「ふん!」
ミラの拳を完全に見切り、掴み取った。
渾身の一撃だったのかミラは驚いた顔をするがオレは掴む手を緩めはしない。
「う、動かねえ」
「腕のパワーには自信があるんだよ」
距離を取ろうとするミラだがオレが手を掴んでいるので距離を取ることは出来ない。
必死に手を動かそうとするがそれ以上の力で身動きを取れなくするとミラは諦めたのか、攻めに転じてくる。
「これでも」
「くらわん!」
くらいやがれと空いている足で蹴りを入れようとするミラだが、その蹴りをもう片方の手で受け止める。
するとそれを待っていたんだと言わばかりに笑みを浮かびあげる。
「これで両手は封じた、おしまいだ!」
「エンシェントブレス!」
「なぁ!?」
両手を封じて身動きが取れない様に見えるが、まだ動ける部分が残っている。
完全に無防備なのはミラも変わらずブレスを吐いてぶつけるとオレが掴んでいた手や足の力は弱まった。
「く、そ……」
ボロボロになったミラは元の姿に戻る。
獣奏剣を吹かずのブレスだったから、威力は多少軽減したがそれでもダメージは受けており元の姿に戻っても若干だが怪我をしている。
「まだやるか?」
獣奏剣をミラに構える。
地面に膝をつけたミラは今にでも泣き出しそうなくらいに悔しい顔をして声を出す。
「私の、負けだ……」
「そうか」
勝負をしていたけど勝利条件は決めていなかった。ミラの口から降参が出たので一安心する。
これで負けてないって負けを認めてくれなかったら上手い具合に気絶させないといけない。上手く出来るかどうか不安なのでよかった
「新入りがミラに勝ったぞ!」
「しゃあ!大穴を当てたぜ!」
戦いが終わるとオレ達で賭けていたギルドの面々は騒ぐ。
オッズはミラの方が遥かに有利だと出ていたのでミラに賭けた奴は破産。オレに賭けた奴は大穴を当てて配当金を受け取ってゲヘヘと汚い笑みを浮かべる。どうせならばオレもオレに勝つとギルダーツから貰った報酬を使って賭けとけばよかった。これから何かと実入りでお金が出ていくんだから。
「負けた……負けちゃった……」
「おいおい、泣くな……じゃないな」
オレと本気の勝負をして、その上でミラは負けたんだ。悔しい気持ちを軽々しく扱ったらいけない。
ここで頭を撫でるなんてイケメソなテンプレ主人公みたいな真似をオレはすることは出来ない……ので、手を差し伸べる。
「お前の拳、結構痛かったぜ」
ドラゴンレンジャーに豪快チェンジしていても尚結構痺れる強さだった。
最初は嫌々で勝負を受けたけども、誰かにバトルで勝利するってのも案外悪くはないもんだ。
「んだよ……同情なんていらない」
「同情じゃねえよ」
安くてぬるい友情ごっこを見せるほど、オレは演技は上手くは無い。膝をついているミラの手を掴んで立ち上がらせる。
「私、負けちまった……この力をやっと制御できる様になったってのに」
ミラの魔法は悪魔の体を乗っ取り使う接収の魔法、サタンソウルだ。
ある日突然教会にいた悪魔をやっつけた表紙で無意識に魔法を発動して接収をしてしまった様で悪魔に取り憑かれたと勘違いをした。その後は妖精の尻尾に入って自分は悪魔に取り憑かれていない事を知ったり、弟のエルフマンと妹のリサーナに励まされて前向きになったりと色々とあった。
「これじゃあエルフマンもリサーナも守れない」
「守るか……その2人は守られたいのか?」
2人を守れない事を悔やんでいるミラだが、本当にそれでいいのか聞く。
どういうことだと言いたげなミラにリサーナとエルフマンがさっきからずっとこっちを見てきている事を伝える。
「姉ちゃん、大丈夫!」
「エルフマン」
「怪我してるじゃん。早く治療しないと」
「リサーナ……」
負けてしまった姉の身を何よりも心配するエルフマンとリサーナ。
まだまだ小さい彼等だが、胸に抱いているミラに対する思いやりは誰よりも大きい。守るべき存在だと見ていた分な。
「悪いな、情けない姿を見しちまって」
「ううん、そんな事はないよ」
「ミラ姉は何時だってカッコいいよ……負けちゃったけど、ミラ姉は私の中じゃ一番なんだよ」
「お前等……」
負けた事に落胆するんじゃないかと何処か恐怖を抱いていたがそんなことは無かった。
ミラは頑張った凄かったとエルフマンとリサーナから言われて嬉しそうにする……
「俺、何時か姉ちゃんみたいに全身を接収出来るようになった姉ちゃんの敵を討つ」
何時の間にやらオレが物凄い
「そこまでやられるほど私は弱くわねえよ……
2人は守るべき存在だけど、2人からもまた自分は守られるべき存在だと再認識をするミラ。
さっきまで流していた涙は完全に消え去っていて何処か嬉しそうな表情を作る……可愛い女の子の笑みは心が癒されるな。
「礼なんていいんだ、それよりも笑え……可愛い顔が台無しだぞ」
「か、可愛い!?私が可愛いっていいのか!?」
おいおい、なんかテンパっておかしなことを言っているよ。
可愛いと言われて顔を真っ赤にするミラはもう少し見ていたい気もするが、あんまり余計な事をすると拳が飛んでくる恐れがあるのでこれ以上はなにも言わずに振り向いてギルドの面々に挨拶をする。
「オレは鎧、銀杏鎧……今日からよろしく頼むな!」
ギルドの面々はオレを手厚く歓迎してくれた。
因みにだがギルドのマークは銀色にして胸の真ん中に押してもらった
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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