「さて諸君、と言っても今回は二人だけじゃがS級試験の内容を説明する!」
カナとの特訓から数日後、定例会が行われる場所ことクローバーの街にやって来た。
オレとラクサスは定例会が行われる会場を前にオレはラクサスと並びゴクリと息を飲み込む。S級試験……クローバーの街でなにをする……なんだか人の気配は多々ある……なんだろう
「知っての通りS級クエストを受けるにはS級の魔導士にならなければならん。S級の他にもSS級や10年、100年クエストを受ける資格もだ」
「ジジイ、前説はいい……そんな説明、耳にタコが出来る程聞かされてんだよ」
「ラクサス、こういうのはお約束なんだから言ってもらわないと」
前説を鬱陶しく感じるラクサス。
こういうのを聞くのを今回はじめてなので最後まで聞きたい……仮に何度聞いたとしても大事な説明なので言ってもらわないと困る。
「お前達……まぁ、よいか。それではS級の試験をはじめる。複数名以上での試験ならば幾つかは試験を用意しているが今回は1つだけ……合格者は1人のみ!」
マスターが今回の合格者の数を発表するとラクサスはチラリと見る。
「鎧、お前には悪いが先にS級に上がらせてもらうぜ」
「まだオレが負けたって決まったわけじゃない」
バチバチとラクサスとの間に火花を散らす。
やるからには全力でやらないといけない。最初は記念受験みたいなノリだったが今はもうS級になりたいと思っている。
「2人とも燃えておるの……では、最初で最後の試験……街外れの山で山菜をありったけ取ってこい!」
「「……は?」」
マスターが出した試験内容に思わず固まる。このジジイ、今なんつった……山菜を取ってこいだと
「ジジイ、ふざけんな。S級が掛かってる試験で山菜を取ってこいってどういうことだ」
「どういうこともなにも、今回参加しているお前と鎧は既にS級に相応しい強さを持っている」
「だったらこんな感じのじゃなくてもっとこう、バトル的な感じのを」
「既に一定以上の実力を持っている奴には必要は無い!それにだ……お前さんら普段から討伐系の依頼ばかりをこなしていてこういった採取系の依頼を全くと言ってやっとらんだろう!」
文句を言うオレ達に一喝するマスター。確かに報酬が安いから危険があんまり伴わない採取系の依頼はこなしていない。
あんまりピンと来ないのもあるし討伐系の依頼が報酬が高いので受ける気がしない。
「S級クエストは凶悪なモンスターを倒す依頼だけでなく難解な依頼も多々ある。この程度の仕事もこなせぬ様ではS級なんぞ夢のまた夢じゃ」
「ふぅ〜……分かったけど、どうやって採点するんだ」
もっとこう他にも引き際とかの大事なところを見ておかないといけない気もするがオレ達はその辺りが分かってると判断している。
ちゃんといい感じに評価をしてくれているのでこれ以上は文句の言いようが無いので真面目に試験を受ける。山菜を取ってこいって言われても、オレとラクサスでどうやって競うんだ。山菜鍋でも作れと言うんか。
「山菜自体に得点を与える。どれがなんポイントかは秘密じゃが1番ポイントがあるのはこの椎茸じゃ!」
普通、そこは松茸じゃないのか。椎茸を高々と見せるマスターは何処か興奮をしている。
美味そうだなと見ている……この後、これ食べるんだろうな。
「日没までに山菜を多く集めて来るんじゃ!ほれ、山菜を入れる籠じゃ!」
竹で出来た昔話でよくある背負うタイプの籠を渡すマスター。
ラクサスは不満そうな顔をしているがS級に上がる為には通らなければならない道で、わざと負けるなんてことは出来ないと籠を背負ってさっさと町外れの山に向かっていった。
「ほれ、鎧、お前も早く行かんか……山菜を多く取らんと今日の夕飯はなしじゃぞ」
夕飯とまで言い出したぞ。山菜が食いたいから今回こんな感じの試験にしたのか?
いや、ラクサスとオレが討伐系の依頼ばかりをこなしていてこういった採取系の依頼をあんまりやっていないから……だよな?
人間向き不向きがあるので依頼を全てこなせる系の魔導士なんて早々に居ないんだがなと思いながらもゴーカイセルラーを取り出す。
「マスター、オレが討伐系の依頼しか出来ないと思ってるだろうが大間違いだ。豪快チェンジ」
『ボーウケンジャー』
「眩き冒険者!ボウケンシルバー!」
「サガスナイパー、探すモード」
『サーチスタート』
椎茸にサガスナイパーを翳し、椎茸を解析。解析が完了すると籠を背負って街外れの山に向かっていく。
街外れの山に到着すると早速サガスナイパーの力を使い椎茸を発見する。椎茸が1番のポイントならなるだけ多く採取しておかないと。と言うかこの試験地味に難しいぞ。山菜と言われればキノコが浮かぶが、キノコにも沢山種類があって間違えて毒キノコを持って帰って殺してしまった死んでしまったじゃ笑い話にもならない。
ちゃんと食べれる山菜かどうかの知識も必要で……残念ながらその手の知識は皆無で、サガスナイパーで見つけるか目に入ったキノコを採取しなければならない。
「よぉ、どうやら順調そうじゃねえか」
キノコをポイポイと籠に入れているとラクサスが現れた。
日没にまでまだまだ時間があるのにキノコを探さずになにやってんだと思ったが、背中の籠には沢山のキノコが入っていた。
「お前、どうやってそんなに」
「こんなもん匂いを嗅げばどうにでもなる。お前の方こそ大層な道具を使ってやっとってところじゃねえか」
「まだまだキノコはあるんだからここから挽回していく」
「そんなんじゃつまらねえだろう」
まだまだはじまったばかりなので逆転のチャンスは幾らでもある。
サガスナイパーで探すのもいいがラクサスの方が多く山菜を取っているので本腰を入れて探す。
「豪快チェンジ!」
『キョーウリュウジャー』
「雷鳴の勇者、キョウリュウゴールド……で、なにが言いたいんだ?」
「ジジイはあんな事を言って今回こんな形になっているがオレは納得はしてねえ……どっちが強えか決めようじゃねえか」
「う〜ん……嫌だね」
「なに?」
オレならば確実に乗ってくると思っていたのか驚くラクサス。
手っ取り早く殴り合って決めたいようだがオレは普通に嫌である。
「戦う強さはもう充分だってマスターは認めてくれてる。それ以外を今回は見ているんだ……強いってのは色々とある力だけじゃないんだ」
オレが1度は求めていた力はそういう感じの力だけどギルドに入ってからは少しだけ変わった。
力だけなのも悪くは無いけれど、それだけ……もっとこう絆とか友情パワー的なのがあってマスターはそういう感じの強さを試している、多分。
「優しさや思いやり、自分だけじゃない誰かの為に戦ったりすることが出来たりする心の力……想いの力ってのも大事だ」
そしてそれを多く持っているのはナツだろう。
自分の為じゃない、なにかの為に誰かの為に戦おうとしているナツは通常よりも遥かに強い……友情パワー的なのが発揮されている。
「絆だ友情だ、くだらねえ……そんなもんがあったら変な色眼鏡掛けられるだろう」
「正当に評価出来る人間はこの世には誰もいない」
「ふざけんな!だったらオレは一生ジジイの孫だからとなにをやっても言われ続けるのか!」
マスターの孫だからとなにかとコンプレックスを抱いているラクサスにとって正当な評価は喉から手が出るほどに欲しい。
そんなもんは無いとマスターも似たような事を言ったりしていたけどもラクサスは納得は行かない。
「だったらお前はなにが欲しいんだ?金か?地位か?名誉か?」
S級の仕事だから貰える高額な報酬か、大陸の中でも十本の指に入る魔導士の証である聖十魔導士か、それとも国からの褒章か?
マスターの孫であることにコンプレックスを抱いているラクサスが本当に求めているものはなんなのかを問いかける。
「最強の称号だ……オレはジジイよりもあのオヤジよりも、鎧、お前よりも強いと証明してみせる」
「最強の称号を手に入れた後はどうする?」
「そうだな、
「今の時点で充分最強だろう」
「いいや、全然だ……オレの
オレの妖精の尻尾か……ギルドの事を本当に大好きだと思っているからバカにされるのが嫌なんだろう。
マスターの孫からくるコンプレックスとか重圧とか色々な感情に押し潰されて本来の自分が見えていない……バトル・オブ・フェアリーテイルみたいな馬鹿騒ぎを一回起こして自分の気持ちと向き合わないといけないんだろうな……ああ、クソ、こういうのを考えるタイプじゃないんだけどな……やるしかないか。
「ラクサス、勝負だ……オレが負けたら今回のS級は諦める」
「そうこなくっちゃ……が、その前にその姿からさっさと違う姿に変わりな。雷はオレには効かねえ」
「そりゃやってみなくちゃ分からない……雷電砲!」
ガブリチェンジャーから雷撃を放つ。
ラクサスはというと攻撃を避ける素振りすら見せずに雷を受け止める……雷って物質的な感じのエネルギーじゃないのに、なんつーチート。
「どうした、こんなもんか?」
「ザンダーサンダー!」
雷は効かねえぞと言わんばかりに余裕を見せるラクサス。
ならばとザンダーサンダーを出現させて6番と16番と17番の獣電池を装填する。
「お前は雷に対してはそれなりの耐性があるようだが、それは雷だけ!雷炎獣電臭撃!」
雷を纏った橙色の炎をザンダーサンダーから飛ばす。
「雷を纏った炎だ、っが!?」
雷は対処することは出来ても炎は対処することは出来ない。
ラクサスは避けようとするがその前に橙色の炎からする凶悪な悪臭に反応をして顔を顰めて避ける事が出来なくなった。
「キノコが何処にあるか分かるぐらいの嗅覚がいいお前にはオビラップのオナラの臭いはキツかったようだ」
「コスい手を使いやがって……いや、お前を相手に欲張ったのが悪かったか」
ニョキッと歯が八重歯に切り替わるラクサス。
これはマジでマズイと背中の翼を羽ばたかせる。
「雷竜の咆哮!」
雷を思わせるかの様な強烈な雷のブレスを放つラクサス
雷を扱う事が出来るキョウリュウゴールドでもあんなのをマトモに受けたのなら一溜りもない。
「っち、避けやがったか。流石のお前も滅竜魔法には弱いか」
「オレの竜は竜でもドラゴンじゃない、
この世界にまだドラゴンが存在している事をオレはちゃんと知っている。
しかし恐竜は既に絶滅をしている……一説じゃ鳥は恐竜が進化したものとか言われたりしているが、ともかくドラゴンよりも古い種族の筈だ。
「恐竜ね……っておい、お前のそれプテラだろ。恐竜じゃねえだろ」
「そこはツッコミを入れちゃいけない事、ブレイブイン!」
『ガブリンチョ!フタバイン!』
「てやっ!」
ガブリチェンジャーにフタバインの獣電池をセットし、ラクサスに向けて放つ。
ラクサスは攻撃かと思い避けようとするがこれは攻撃でなく雷の弾は5つに分裂をして5人のキョウリュウゴールドが出現する。
「史上最強のブレイブ!」
「獣電戦隊キョウリュウジャー!」
「荒れるぜ〜止めてみな!」
「……1人でなにやってんだ、お前?」
「一回やってみたかったんだよ」
なにせこっちは追加戦士で戦隊と呼べるもんじゃない。名乗りとかゴレンジャーハリケーン的な技は使えない。
「キョウリュウジャーは全部で10人……11人、どっちか分からないけどいるんだよ」
「赤とか黄色とかいるのか」
「残念だがイエローはいない」
グレーとかイマイチ分かりにくい色とかはある。
因みにだが一番最初にイエローが無い戦隊がキョウリュウジャーで次がパトレンジャー、その次がリュウソウジャーだったりする……ルパパトはノーカンか。
「6対1か」
「勘違いをするなよ、1つの力を6分割してるんだ」
「弱体化してるじゃねえか」
「お前を倒す準備は既に整っている!」
『ガブリンチョ!オビラップ!』
「くらえ!」
強烈な雷撃……ではなく黄土色の煙が見える程に強烈な悪臭を飛ばす。
こんなスーツを着ているから臭いを感じないけどもアレってどれぐらいの臭さなのか……犬並みに嗅覚に優れている滅竜魔導士には地獄だろう。
「雷竜の
「なに!?」
臭い匂いが充満している中でダブルスレッジハンマーをするラクサス。
分身のオレはあっさりと撃退をされる……嘘だろ、ここには激臭が充満してるのに、なんでだ。我慢してるのか?
「鼻で呼吸をするから臭いんだ、だったら口で呼吸をすればいい」
「おいおい……」
確かにその理論ならオビラップの激臭に耐えられるけど、口での呼吸をずっとし続けないといけないのは辛い
呼吸なんてもんは意識してするものじゃないのにそれを意識しながら分身とはいえオレをぶっ倒すとかどれだけ規格外……いや、これがラクサスの本当の実力か。
「とっとと他の姿になれよ。まだギルドの連中にも見せたことのねえのがあるだろう」
クイクイと指を動かして挑発をするラクサス。
リュウコマンダーとかのキュウレンジャー系のレンジャーキーとかギルダーツにも使っていないレンジャーキーはあるにはあるがこれで勝てると思ってるから豪快チェンジをしないんだ。
「ブレイブイン!」
『ガブリンチョ!グルモナイト!』
「ファイヤ!」
「そう何度も同じ手はくらうか!」
螺旋状に回転をする雷の弾を喰らおうとするラクサス。
雷って食えるものなのかはさておき雷の弾を口に入れて飲み込んだ途端に口を抑える。
「滅竜魔道士は優れた視力と普通の三半規管を持っていて、それがズレを起こして乗り物に弱い」
「雷は、乗り物じゃ、ねえだろ……」
「グルモナイトは相手の平衡感覚をズラす獣電池、更に言えば、アンモナイトの魂が宿っている」
「通りで貝の味がする……うっ……」
「悪いなラクサス」
本当はもっとカッコいい勝ち方をしたいが今のオレにはこれが限界だ。
ザンダーサンダーにプテラゴードンの獣電池を3つ装填して更にはゴールドザンダーサンダーを取り出して二刀流になる。
「雷電双竜斬!」
電撃を纏ったザンダーサンダーとゴールドザンダーサンダーによる一閃。ラクサスは真正面からマトモにくらいぶっ倒れる。
「お前がこの程度で倒れる奴じゃないだろ……」
まだ意識があるが立ち上がる事が出来ないラクサス。
変身を解除するとオビラップの激臭とグルモナイトの渦巻きが消えて顔色の悪かったラクサスの容態が徐々に良くなっていく。
「……っち……」
「ったく、全然堪えてねえじゃねえか」
顔色がよくなるとひょっこりと上半身を起こすラクサスは舌打ちをする。
割と本気で二刀流の雷電斬光で斬ったってのにダメージはあれどもまだ立ち上がるとか滅竜魔導士ってなんてタフ……いや、今のがナツだったら確実に倒れているから流石のラクサスと言うべきか。
「どうする、まだやるか?」
オビラップとグルモナイトはもう使ってしまったのでラクサスは警戒して攻撃を避けようとする。
タネが割れている以上は他の追加戦士に豪快チェンジするしかない……その場合はリュウソウゴールド、いや、大して変わらないか。
「……オレの負けだ」
俯いた顔でラクサスは負けを認めた。
「オレの取った分の山菜も持っていけ……それだけあれば飯には困らねえだろ」
「……ラクサス、弱いことはそんなに嫌か?」
ゆっくりと立ち去っていこうとするラクサスを止める。
「オレ達は基本的には一人かもしれない。けど、誰かの手を握ることは出来るんだ。そこに必要なのは圧倒的な力と言う強さじゃない」
オレはラクサスに手を差し伸べる。
握手だ……よくよく考えれば倒れた誰かに手を差し伸べるなんてミラにしかやったことがない……オレも偉そうに言うほどの人間じゃないか。
「……それでもオレは強さが欲しいんだよ」
ラクサスはオレの握手を拒んだ。
申し訳無さそうな顔をしていてオレの手と自分の手をジッと見ている……いきなりこんな事を言っても気持ちの整理が追い付かないか。けど、今までよりラクサスとの心の距離が近付いた気がする。
「S級クエストは通常のクエストより遥かに難易度を凌駕してる……しくじって死ぬんじゃねえぞ」
このツンデレめ。
ラクサスは負けたからにはここにいるわけにはいかないとクローバーを去っていく……多分、来年のS級試験でラクサス、合格するだろうな。今回はラクサスが実は滅竜魔導士だった事を逆手に取った戦いをして勝ったけども、次は普通に勝てるようにならないと。
「って、ラクサス勝手に帰っちゃったけどいいのか」
日没までに山菜をありったけ取ってこいとの事でラクサスは負けを認めて勝手に去っていった。
マスターには事情を話せば理解してくれるだろうが、オレはラクサスが集めておいた山菜も持って帰らないといけない……この籠、地味に大きいんだよな。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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