誕生日プレゼントとしてパソコンを購入してもらった。
普通のパソコンじゃなくてクリエイターが使っているパソコンで思ったよりも値段が高くて母さんが「小学校卒業祝いも兼ねてるから」と言ってきたのは色々な意味で思い出だ。現代を知っている身としては古くさいが最新式のパソコンで、漫画を描くことが出来る。
パソコンなので原稿用紙の代金とかインクの代金とか余計な事は考えなくてもいいって素晴らしい……地味に掛かるお金が減ったのはとても喜ばしいことだ。
「ええっと……【時には心の栄養を取る為に思いのままありのままに過ごすことが大事だ】……うん、いい台詞だ」
パソコンを購入して貰った僕はとりあえず紙の原稿をデジタル化する事にした。
紙の原稿と言っても既に漫画として完成しているやつは手を付けない。流石に二度手間だから。ネタを纏めたノートを一気に圧縮している、そんな感じ。文字を書くのと比べてパソコンでの入力は一瞬だからホントに今までの苦労は何だったんだろうとなる。
特に背景と人物の絵を合成出来るの超便利。人物を描いて周りに背景を描いてモブを描いてってやったけども、先に背景を描けるのホントにスゴい。
「あ、くそ、ミスった」
とはいえこれもこれで大変だ。
おじさんが川口たろうで漫画家だった為にアナログな漫画の描き方は教わることが出来た。漫画の描き方(アナログ)は割と有名だし、覚えるのは苦じゃなかったけどこのデジタルな描き方は1から覚えないといけない。機械音痴じゃないけども、これはこれで一苦労。世の同人作家達や絵師さん達はポンポンと使っていると考えると本当に尊敬する。
「あ〜……心がピョンピョンするんじゃ」
僕の進行状況はともかく、原作が始まると思う。兄が中学3年生、僕は中学1年生になった。中学3年生の一学期で今日は午前だけの授業と来たもんだ。それはもう原作がはじまるというもの……けどまぁ、深く原作に関わるぞ!的な感じの作品じゃない……今更ながらなんで弟なんだろう……まぁ、漫画の知識を深めれてるからいいけど。
「ん……電話だ」
漫画のネタを纏めていると兄から電話が掛かってきた。
多分、今日原作開始なんだろうが僕に電話をかけるのはなんの用事なんだろうかと携帯電話(ガラケー)を手に取る。
「もしもし」
『最良……お前、漫画家を目指してるよな?』
「……いきなりどうしたの?」
電話に出ると唐突に聞いてくる。今まで漫画家になる云々について全く触れてこなかったのに今日に限って触れてきた。
本当にいきなりどうしたんだろう。
『原作家になりたいって奴が居るんだよ』
ああ、やっぱり今日が原作開始日だったみたい。
相棒である秋人に漫画家になろうと誘われた感じで、漫画家を目指すんだったら僕が居るって紹介をしようとしているんだな。
「高兄、僕は自分で全部やるタイプだよ」
僕を紹介してくれる事は非常にありがたいけど、原作が始まらないと兄の結婚云々が無くなる。
秋人の原作は非常に魅力的だけど僕的には原作も自分で作りたい……まぁ、読み切りとかならばコラボしてみたいと思っているけど。
「漫画家になりたいならその人は高兄が組んだ方がいいよ」
『お前、なに言ってるんだ!』
弟とか原作とか云々にして兄は普通に絵が上手い。が、話の作りは微妙なところがある。
漫画担当で秋人と組んでいくのがなんだかんだで一番しっくりくる……原作云々を置いておいてもだ。
『ちょっと変われよ』
『あ、おい』
僕の勧めに驚いている兄とは別の声が聞こえる。
若干のノイズが走ったかと思えば聞こえた別の声が電話越しに聞こえる。
『もしもし、真城の弟……で、いいのか?』
「ええっと……原作家になりたい人ですか?」
『原作家じゃない、オレは漫画家になりたいんだ』
おっと、失礼な事を言ってしまった。
「すみません、間違ってしまって」
『構わない……それよりお前も漫画家を目指してるんだろ』
「僕は原作と漫画、両方をやります……誘うなら兄の方が良いと思いますよ。暇ですし」
『お前の弟、変なところでドライだな』
「それに賢いですよ」
聞こえてますよー。原作が一切開始しないのは本当に洒落にならないので兄は勧める。兄は勝手な事を言うんじゃないと電話越しで言ってはいるが、原作家が必要かなんて急に言い出す兄の方が勝手なところはある。僕は原作も漫画も自分でやると言うのをハッキリと伝えることは出来たので
「最良、お前なんて事を言い出すんだ!」
原作よ、上手い具合に開始しやがれ。そうやって祈っていると兄は学校から帰ってきて僕の部屋にやってきて詰め寄ってきた。
「なにって言われても、原作者になりたい人が漫画家を探してるんだよ。高兄が素質あるのは確かなんだよ」
「俺は漫画家になるつもりなんてない」
「じゃあ、なんになるつもりなの?」
質問を質問で返すことはあまり良くはない事だけど、あえて聞いてみる。
兄はとても絵が上手い……しかし、それ以外は何処にでもいる極々普通の男子であり、ルックスに優れてるわけでも歌唱力が優れてるわけでもなんでもない普通の人だ。
「それは……」
僕の質問に返す言葉を持っていない高兄。
生き方に関して悩んでいる青春ど真ん中な状態でその質問の答えを返すのは酷な事だ。
「やる事が無いなら、とりあえず手を貸してみたら?」
「そんな事が出来るわけないだろう。漫画家は博打打ち、生半可な気持ちで力を貸すことは出来ない」
「高兄……原作家になりたい人が真剣な気持ちなんだって分かるんだね」
「っな!?」
秋人がマジでやろうとしているから簡単なノリで受けてはいけない。なんだかんだ言って優しいところはある。
顔を真っ赤にして僕になにを言ってるんだと叫ぶ。全く、変なところで素直じゃないんだから……だからこそ背中を押したい。
「逆に聞くけどなんで漫画を描きたくないの?」
「……」
また黙りの兄、さっきとは違って表情が微妙に変わっている。きっとおじさんの事を考えている……おじさんが死んだことってやっぱり重い。
けど兄はおじさんが死んだから漫画家になりたくないとは言わない。逆に漫画家になりたいと言い出したいのに言うに言えない、そんな感じ……要するにきっかけが必要だ。
「僕はおじさんに憧れてたよ」
漫画家ってだけで充分にスゴい。それで食ってたって事実も本当に半端じゃない。
「今はまだ落書きだけど、何れはちゃんとした漫画を集英社に投稿する」
まだ中学1年……いや、もう中学1年と言った方がいいか。
目の前にいる兄は赤マルだけどジャンプに15で掲載されたとんでもない鬼才の持ち主……そんな兄より上の新妻エイジってなんだろうな。
「高兄はおじさんの仕事をどう思ってた?」
「……おじさんは……カッコよかった」
「でしょう……だったらさ、その原作家目指してる人にとりあえず力を貸してみたら?俺はこれぐらい出来るけどお前はどうだって……おじさんがギャグ漫画家やってたからジャンプでやってくのどれだけ厳しいのか僕達は他の人達より知ってるんだ」
それだけでも充分な武器になる。兄は僕の言葉を聞いておじさんの事を思い出し、おじさんに憧れていた事も思い出す。
おじさんみたいに何時か漫画家になりたい。小学生の頃に自由帳に自作の漫画を描いていた事もある……自分の気持ちに嘘をついちゃいけない。
「……最良、俺はジャンプでやってけると思うか?」
「んなこと僕が知るわけないし、僕が聞きたいぐらいだよ」
毎日描いて描いて、描きまくってる。それでもゴールが見えない。
これでジャンプの掲載が出来るぞなんて合格基準みたいなものがないからある意味、毎日が地獄だよ……まぁ、楽しいからいいけども。とはいえ絵を描くことと漫画を描くことを一緒にしちゃいけない。
「漫画に限界は無いんだから、やりたいようにやってみなよ」
「……」
僕の言葉を聞いて、じゃあ漫画家を目指してみるとはいかない。
けど、何時もと違う感じの眼をしている。今まで特に目標もなにもなくなんとなく生きていた感じじゃなく、やる気に満ちた眼をしている。ぶっちゃけこの後に告白のイベントがあるから僕の存在は必要じゃない気もするが後押しをすることが出来たのでそれでいいか。漫画家になりたいと言う気持ちが出てきた兄だが、最後の踏ん切りがつかないまま兄は自分の部屋に戻っていき、少し後に家から出た。
「最良、相談がある」
その後、僕の部屋に兄はやって来た。
「漫画家になりたいかどうかの話だったら、そんなの勝手だよ」
「違う……漫画家になろうと思うんだ」
「……え、じゃあなんで相談に来たの?」
漫画家になろうという1つの目標が出来た。それならばその夢に向かってひた走ればいい。
僕に相談しに来ることなんてなにもないんじゃないだろうか?
「家のルール、忘れたわけじゃないだろう」
我が家のルールは相談事とか基本的には母に相談する。そして母から父へと話が通るシステムとなっている。
「母さんが漫画家になりたいって言ってもはいそうですかと話が通らないだろ」
原作ではとりあえずは父さんに話を通してくれと言っている。冷静に考えれば強引過ぎるところもある。
僕というイレギュラーな存在がいるから母さんを通す前に僕に話が来た。子供が漫画家になるなんて言い出したら、誰だって困惑するし反対もする。叔父が死んでいるならば尚更だ。
「う〜ん……とりあえず条件かなにかを出してみたらどうかな」
そのまま行けば問題は無いのだけど、相談に乗ってきてくれるなら真面目に答えないといけない。なにかをしたいと言うならば条件かなにかを提示する。交渉をする上ではよくある事だけど、これほど効果的なものはない。
「漫画家は物凄く過酷な仕事だし定期的に健康診断を受けるとか大学卒業までに商業誌に掲載されなきゃ普通に就職とか使えそうなカードを探してみよう」
健康診断に関しては僕も何時かは出来る立場になりたい。大学卒業まで爪跡を残せる様にしておかなければ漫画家としては大成する事は出来ない。僕自身が勝手に決めている誓約を教えるとそういう手もあるのかと納得をする。
「とにかくさ、一旦気持ちを整理してみようよ……ついさっきまで悩んでたけど高兄は漫画家になりたいって決めたんでしょう?大事なのは気持ちだと思うし……最悪、母さんを無視して父さんと話し合った方がいい」
原作通りに事が進んでいるから、多分普通に漫画家になることの許しは貰えると思う。
「そうだよな……お前はどうするんだ?」
「……え?」
「え?じゃない。お前、漫画家になりたいんだろ……お前も母さんから許可を貰わないと」
あくまでも趣味の範囲内で描いている感じで、母さんにハッキリと言っていない。
漫画家になりたいと言う気持ちこそあれども最後の一歩を踏み出す事が出来ていないところがある。
「お前も一緒に言わないか?漫画家になりたいって」
「……僕、高兄に便乗する形で言うんだけどそれでいいの?」
さっきまで自分が漫画家になりたいのをどうすべきかとの相談だった。何時の間にか僕も一緒に言う感じの流れになっている。
まさかとは思うけども僕も一緒に漫画家になりたいと言ってほしいなんて言わないだろうか……いやまぁ、別にいいんだけども。僕も何時かは面と向かい合って漫画家になりたいと言わなきゃいけないけど……
「お前も漫画家になりたいんだろ……俺もなりたい」
「意見は一緒だね……」
「手、組むか」
「それが1番だね」
僕の夢の後押しもとい自分の夢の後押しをする兄。一緒の目標を持ってるからとガッチリと握手を交わす……2歳違いの兄弟がなにをやってるんだろうね。とはいえ、1つの目標が定まった。やるならば早いことに越したことはないんだと一階に降りて母さんに声をかける。
「母さん、話があるんだ」
「なに、2人で急にどうしたのよ」
「僕と最良のこと……ちゃんと聞いてほしいんだ」
何時になく真剣な顔の高兄。母さんは真面目な話なんだと椅子に座ると僕達も椅子に座ってと言うので座る
「……僕と最良、漫画家を目指そうと思ってるんだ」
「はぁ……2人して改まってなにかと思えば、駄目よ」
兄が言えば案の定、却下されてしまう。
やっぱりと兄は一瞬だけやっぱりと言った顔をするが直ぐに気を持ち直す。
「僕も最良も高校と大学にちゃんと行く」
「それって適当な学校に行って漫画を描くって事でしょ。駄目よ」
「おじさんみたいな事にならない様に定期的に健康診断も受けるよ」
「そのおじさんは大学在学中に漫画家になったのよ。これで認めたらおじさんと同じよ」
「だったら、大学卒業するまでに商業誌に掲載されるかどうか賭けない?」
「賭けっ……自分の人生をなんだと思ってるの!?」
あ、やべ、間違えた。母さんは僕の発言に対して物凄く怒り、高兄はなにやってんだよと僕を強く睨む。
交渉するのにカード云々を言っていたのに博打だなんだと言ってしまったのはまずい。
「漫画家になるなんて言う暇があるならちょっとは勉強しなさい。特に最良、貴方は中学に入ったばかりで勉強に追い付けなくなるなんて事になったら大変よ!今までは漫画を描いている事はなにも言わなかったけどそれが原因で成績を落としたなんて絶対に許さないわ」
最もらしい事を言ってくる母さん。僕は転生者になる為に訓練をしていて一般高校卒業できるぐらいの学力は持っている。成績を落とす事は基本的には無いとは思うけれども、そんな事を言えない。絶対の保証は無いし。
「この話はこれで終わり」
「父さんに話を通してみてよ!」
話はここで終わりだが、兄は食い下がらない。何時もならここで終わるとこだが、食い下がらない兄を見て話を通す事だけは承諾をしてくれる。これでいい……これで父さんからの許可は貰える筈……。
父さんからの許可が降りないかもしれないと万が一に怯えていたが、割とあっさりと許可が降りた。
「最良、昔お前が描いたおじさんの漫画を見せてくれ」
お祖父ちゃんに兄が漫画家になると言っている頃、父さんは僕の部屋にやって来た。
昔描いた超ヒーロー伝説の同人誌を読みたいと言うので僕は原稿が入っている袋を取り出し、見せる。過去に1度父さんも見て面白いなと言ってくれたキリだったけど。
「信弘の漫画……確か、同人だったな」
「うん……」
「お前も漫画家を目指すんだったな……信弘と同じギャグ漫画を目指すのか?」
「まだ決まってないよ」
自分がいったいどういう漫画を描くのかまだ見定まってない。ギャグを描いたり王道を描いたり色々とやっている。
日常系のギャグ漫画は一応は描いている。一発ネタみたいなところがあるから長期に渡っての連載が出来るかどうか……最初の投稿、これにしてやろうかな。
「そうか……お前達の漫画がジャンプに載るの、楽しみにしてる……息子の漫画だって自慢できるからな」
意外とお茶目なところがあるな、父さんは。ともあれ両親からの許可は降りたので、本格的に漫画家を目指せる……とはいえ、僕は既にデジタルに移行しているの兄の様に漫画を描く為に今から準備をしよう的な感じじゃない。
「最良、お祖父ちゃんからおじさんの部屋を貰った!」
父さんが出ていくと今度は兄が部屋にやって来る。
超ヒーロー伝説の主人公が変身した姿のキーホルダーが付いた鍵をこれみよがしに見せてくる。
「良かったじゃん。おじさんの部屋って事は漫画に必要な物、全部揃ってるよ」
「今から行こう!」
「時間を見て……もう直ぐ7時だよ」
僕も兄もまだ高校生で外に出るのには遅い時間帯だ。
今から夕飯が待っているんだから、わざわざ食べずに仕事場に行かなくてもいい。
「ところで高兄……原作を作りたいって言ってた人とはどうなの?」
「あ……」
忘れてたんだね……いや、違うか。
仕事場を貰うのは本来ならば漫画家を目指すと決めた翌日で、僕がそれを進めてしまった。だから、翌日の昼頃にあるコンビ結成的な話を省いてしまってる。
「そうだった……」
「先ずはその人と漫画家が出来るかどうかを相談したらいい……今の時代、原作と漫画を分けてるなんて珍しくもないし」
そもそもでバクマン。自体が漫画と原作をべっこにしてるし。僕の言葉が通じたのか秋人と組むべきなのかと真剣に考えつつ、鍵とにらめっこをしている。早くおじさんの仕事場に行きたいけども、時間帯的に行くに行けない……いやでも、原作だと10時ぐらいだけど飛び出してたな。
もしかすると僕と一緒に行きたいのかな。それだと申し訳ない事をしちゃった……けどまぁ、1日だけ漫画家になる許可が早まったんだからこれぐらいは仕方がない。
とにかくバクマン。の原作ははじまったわけで兄よ、頑張ってリア充を目指すんだ。
……最終的にバクマン。って主人公sが結婚してるからリア充なんだよね。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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