アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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漫画家にすゝめ 3 

「おはよう……なんか目の下に隈があるよ」

 

「昨日、徹夜したんだよ」

 

 おじさんの仕事場を貰った翌日のこと、何時も通り学校に行く着替えを済ませて部屋を出ると目に隈が出来た兄がいた。

 徹夜って明日からテストがあるから勉強でもしていたのかと思ったが、違う。そういうキャラじゃない。

 

「キャラの絵を描いてた……授業以外でちゃんとしたの久し振りに描いたけど、俺の漫画の絵じゃなくてデッサン画になってたよ」

 

「そりゃ長い間、漫画向けな絵を描いてこなかかったんだから仕方ないよ」

 

 兄の当面の目標もとい悩みは漫画の絵だろう。

 鬼滅とかマッシュルみたいに絵がそこまで上手じゃなくても面白い漫画は存在するには存在するが、あくまでも先の話なので言わないでおく。絵だけで人気を取っている漫画だって逆に存在するからね。

 

「最高、高木くんって子が迎えに来てるわよ」

 

「はぁ!?」

 

 朝食のパンを一口噛じっていると母さんからの知らせが届き、兄は驚く。相棒になろうと言ってきた翌日に家に迎えに来るとなれば誰だって誰だって驚く。急いで自分の部屋に戻った兄は自分の部屋の窓越しで秋人(シュージン)が来ているのを見に行っている。

 

「最良、お前も漫画家を目指すらしいな」

 

 そんな兄は放っておいても問題はなさそうなので朝食をいただく。

 朝は米ではなくパン派の僕はパクリと食パンを齧るとお祖父ちゃんが漫画家になることについて聞かれる。

 

「うん……」

 

「信弘の部屋は一個しかない、喧嘩をするんじゃないぞ」

 

「僕はパソコンを使って漫画を描くから仕事場はそんなに困らないよ……けど、漫画家として必要な物が彼処には詰まってるから頻繁に出入りはすると思うけど」

 

 とはいえ何時かは自分の仕事場を持ってみたいとは思っている。

 

「なら、最高とライバルになるな……友と書いてライバルだな……頑張れよ」

 

 お茶目なお祖父ちゃん。応援をしてくれるのはとても嬉しいことだ。

 

「最良、いくぞ!」

 

「え、ちょ」

 

 朝食を食べ終えた頃に慌てて学校に向かう為に腕を引っ張る兄。急に何事だと思いつつ、家を急いで出てみると兄の相棒になる高木秋人(シュージン)がスタンバっていた。

 

「サイコー、待ってたぜ……って、そいつは?」

 

「弟の最良、昨日電話で話しただろう」

 

「ああ、お前がか!」

 

「どうも、真城最良です……貴方が兄の相棒になる人ですか?」

 

「相棒ってそんな、照れるな」

 

 相棒と言う言葉に露骨に反応を秋人(シュージン)。お前はなにを言っているんだと兄は強く睨んでくる。

 

「お前、なに言ってるんだよ。まだ高木と組むとは決めてない」

 

「ええっ!?一緒に漫画家を目指すんだろう!」

 

 まだ若干ツンケンしている兄。秋人(シュージン)を強く突き放すとそんなとかなりのショックを受ける。

 

「そうは言うけど、高兄は物語を書くことが出来るの?」

 

「そ、それは……」

 

 兄の絵は上手いけれども話作りはそこまでじゃない。今、漫画にしたら面白いネタが浮かんでいるから組むことは出来ないとバッサリと断れない。

 

「今の時代、原作と漫画を分けている漫画家なんて珍しくもなんともないし高木さんにネームを描いてもらってからでもいいんじゃない」

 

「……ま、そうだな。漫画家なんて博打打ちになりたいなんて言い出すんだ。高木、これこそ俺の作品だってあたためたネタってあるだろう」

 

「いや……無いけど」

 

「はぁ!?」

 

 あ、ヤバい、間違えたかもしれない。

 自分と組みたいと思っているならば面白いネタがあると思うのは当然の事だけど、残念な事にそんな物は無い。

 

「お前、あんだけ言っておいて無いのかよ」

 

「いや、待て、待ってくれ……少し時間をくれよ。直ぐに面白いネタを考えるから……ところでネームってなんだ?」

 

「最良……高木と組んで大丈夫だと思うか?」

 

 ネームの存在すら知らない、漫画家を目指そうと思っているならばネームぐらいは知っておいた方がいい。

 その存在すら知らないとなると心配をするのは当然の事だ……けどまぁ、この人は本当に面白い漫画を描くことが出来る。

 

「とりあえず漫画家になる為に必要な物はおじさんの部屋に揃ってるし、連れてって描いてみろって出したら?」

 

「そうだな……高木、放課後、暇か」

 

「暇って、今お前が漫画のネタを考えてこいって言っただろう」

 

「だったらおじさんの仕事場に連れてってやるよ。あそこだったら漫画に必要な物が全部揃ってるし、ネーム置いてる筈だし」

 

 兄はとりあえず原作を用意してみてくれと言ってくるので秋人(シュージン)は物凄く悩んで物語を必死になって考えている。

 一瞬だけ原作と異なる事になってしまうのかと焦ったがなんだかんだで元に戻ろうとしている。現に名字じゃなくて秋人(シュージン)呼びになっていっている。

 

「なぁ、サイコーってどんな感じの話が好きなんだ?」

 

 原作通りに話は進んでいっていると心の中で微笑んでいると、秋人(シュージン)が僕にコッソリと聞いてきた。

 原作と違い兄はとりあえず面白い物語を作ってこい、そうじゃないと組まないとか言っている。

 

「うちの兄はあれでも目が肥えてますからね……ちょっとやそっとの話では面白くないってボツにされます」

 

「そうだよな〜川口たろうの甥っ子だからギャグ漫画が好きなんて都合の良いことはないよな」

 

 はぁ、と大きなため息を吐いて露骨に落ち込む秋人(シュージン)……あ〜……

 

「高木さん、兄が好んでる漫画を描いてどうするんですか。面白い漫画を描いてくださいよ」

 

 兄が好んでる話を描いて兄の心をハートキャッチしようとしている。この人なら簡単に出来そうだけど、それじゃあ意味はない。描かないといけないのは面白い漫画なんだ。

 兄には最高に面白い漫画を描こうとしている事に気付いた秋人(シュージン)はなにやってるんだと落ち込むが、直ぐに兄を納得させる面白い話を描いてみせると燃え上がる。アオハルだなぁ……って、僕も頑張らないといけない。

 学校に登校すると学年が違うので自分の教室に向かい、使えそうなネタを考える……僕の苦手なジャンルはスポーツもの。描くことが出来ないわけじゃないけど、どうしても王道的なものは描くことは出来ない……でも、邪道なスポーツ漫画もありかもしれない。

 色々と考えてみてみるけど、スポーツ物の漫画のネタは浮かばない。代わりに浮かんできたのはスケットダンスみたいな日常系の純情やギャグの漫画のネタ。近年若者がテレビ離れをしているので色々な人達に受けるテレビ番組を作る為にスペシャルチームが生まれてそこで様々な番組が繰り広げられたりする日常やギャグ、シリアス等、色々と描ける……けど、日常系って直ぐにネタが尽きそうだから、これは一発のネタにする。

 

「うおっ!ヒーローのフィギィアがいっぱい!」

 

 授業が終わり、放課後。家に帰ることはせず、そのままおじさんの職場へと足を運んだ。

 超ヒーロー伝説をはじめとする様々なヒーロー漫画を描いていたおじさんはヒーローのフィギュアを沢山買っている。(経費で)古いヒーローのフィギィアで保存状態もいいのでマニアに売ればかなりの値段がある。

 

「おじさんがヒーローの漫画を描いてたからね、経費で落ちたみたい」

 

「川口たろうの職場でこれだから……鳥山先生とか岸本先生とか空知先生とかの職場ってどうなってんだろう」

 

 鳴かず飛ばずの一発屋だったおじさんでスゴいと思う仕事場。

 レジェンドと呼ぶに相応しい漫画家達ってどういう感じの環境で漫画を描いてるんだろう……真島先生は化け物じみた早さで描いてるらしいけど。

 

秋人(シュージン)はおじさんの生原稿よりこっち、ネームを描いてくれよ」

 

「これがネーム……」

 

「漫画の下書きの下書きみたいなもので、打ち合わせをする時はこれを使うんだ……おじさんはギャグ漫画家だったからこれで許されてるけど、普通の漫画を描くんだったら最低でもこれ以上の物を描かないと」

 

 ドッサリとおじさんの超ヒーロー伝説のネームを机の上に置いた。

 秋人(シュージン)はこれがネームなのかとゴクリと息を飲み込み、おじさんの超ヒーロー伝説のネームを読み始める。

 

「……秋人(シュージン)は多分、面白い原作を作ってくる。だったら、その間に絵を磨かないと」

 

「あれ、ネームを描いてきたらコンビを組むんじゃなかったの?」

 

「あれは秋人(シュージン)のやる気を出させる為の方便だよ……アイツのやる気は知っているから」

 

 まぁ、自分の漫画がアニメ化されたら声優をやってくださいとか言ってくる時点で覚悟は半端じゃない。その一方でアニメ化したら結婚をしてくださいってとんでもない事を言うのがこの兄で無駄なところがロマンチストだったりする。

 

「それよりも問題は絵だ……キャラを描くだけじゃなく風景や効果線を描いたり、何処になんのスクリーントーンを貼るか見極めないと」

 

 絵に関しては何処までも上達することが出来る。綺麗な絵じゃなくても作品に合う絵が描ける様になれば尚の事。

 兄はペンを手にする……僕は過去に何度も握っているけど何気にはじめてのペンであり、適当な画用紙を手に取りペンにインクを浸けて線を描いてみる。カブラペンは線の強弱は出ない一定の線が描けるけどもGペンは違う。一直線を描いてみせるのだが途中でゴリッと言う嫌な音を立て、線が歪な形にズレてしまう。

 

「最良……パソコンで描いた方がいいのかな?」

 

「いや、そこは人次第だよ」

 

 パソコンで描けばインクの問題をあっと言う間に片付ける事が出来る。

 けど、パソコンが絶対というわけではない。生の原稿だから描ける世界ってのもあり、キャラクターを生原稿で背景なんかをデジタルで描いたりする人もいるらしいから……ケースバイケース。僕の場合は完全にデジタルだけど。

 

「高兄はとりあえず絵の練習あるのみだよ。ほら、ここに背景の資料とかあるし」

 

 今はまだ絵の上達あるのみなので絵の資料を渡す。

 高兄は漫画の描き方を既に知っているので、今から新しい漫画の描き方を覚えるのは難しい……デジタルって意外と難しいんだよ。デジタルは何時か暇な時に覚えればいいことで、今は生での漫画の描き方を覚える。自分がなにをすべきか兄は理解をしているので原稿用紙を取り出して適当に選んだ背景を描き始める。

 

「っと、僕もネームを描かないと」

 

 やる気を出している2人に見惚れている場合じゃない。

 空いている仕事机に腰を掛け、自由帳を取り出して学校で書いていたネタを確認する……ツバサ・クロニクルみたいな漫画を描いてみたいな。

 色々な世界に巡って戦う漫画……でも戦う理由が必要で、色々なところに行く……イナイレのクロノ・ストーンみたいな時空最強のメンツを探すみたいな物語を合わせる感じで……ああでも、パクリみたいなのなんか嫌だな……でもまぁ、描いてみるのが1番だ。

 

「最良、どのジャンルで行った方がいいと思う?」

 

 僕がスラスラとネタが浮かんでいる横でネタが浮かんでいない秋人(シュージン)、僕なんかにアドバイスが欲しいと言ってくる……言ってみた方がいいよな。兄の結婚、早まるのいいと思うし。

 

「先ずは自分の得意なジャンルを探してみたらどうですか」

 

「自分の得意なジャンル?」

 

「一口に漫画と言っても色々とあるじゃないですか。推理物、恋愛物、ファンタジー物、異世界物、スポーツ物って……無理に新しいネタを作るよりも先ずは1つの型組に嵌め込むのもいい手……因みにですが僕はスポーツ漫画が苦手です」

 

 死んだ原因が部活動がブラック過ぎたせいだからスポーツ系の漫画のネタを考えてしまえば、過去を思い出してしまい強い憎しみの感情を出してしまう。そのせいか王道的な主人公を描くことが出来ず、鉄鍋のジャンみたいな主人公がクソ野郎なものしか描けない

 1度だけ真面目に描いたことがあるが酷かった。どんなスポーツでも出来る天賦の才能を持った主人公が様々なスポーツの選手兼監督になって様々な部活に挑戦するんだが、主人公が【努力はして当たり前】とか【勝ったから正しくなる】とかあんまり王道的な物じゃないし、何よりも描いていて楽しくない。まだプロじゃないんだから無理に楽しいものを描こうとするなんてしなくていい。

 

「苦手なジャンルか……よし、オレも一回一通りのジャンルを描いてみるよ」

 

「自分の得意と苦手を見つけてみてください……ああ、後、漫画じゃなくてもいいと思うんです」

 

「……え、それはどういう意味だ?」

 

「ほら、最近月刊誌とかでラノベを漫画家にしたり色々とやってたりするじゃないですか。だったら若干ラノベとか小説っぽくてもいいと思うんです。ジャンプ作品だって時折小説化したりすることもありますし」

 

「成るほど。小説にしても面白い話か」

 

「でも、小説寄りにしまくってもダメですよ。それをやったらアニメ化じゃなくて実写化のオファーが来そうですし」

 

 僕は漫画の実写化はあんまり好かない。

 将太の寿司みたいなリアリティに溢れる感じの世界観だったら文句はない。デスノートやカイジも成功しているからいい……ただドラゴンボールとかジョジョの奇妙な冒険みたいな王道的なバトル漫画を実写化をしてコケまくるのは許せない。

 一時期の安易な実写化ブームは本当にウンザリする。少女漫画みたいなある程度はリアリティに溢れるタイプの漫画ならいいけども……。

 

「最良って意外とこだわりがあるんだな」

 

「まぁ、漫画で育っているみたいなところがあるからな……にしても実写化か、その線もあるな」

 

「やめとけって、コケたら一大事だぞ」

 

 兄達がなにかヒソヒソと話しているがなんかロクでもなさそうな気がする。

 実写化に関してはオファーが来ない事を祈る……原作をヘタに弄ってくる監督は物書きをしているので嫌だ。

 

「とにかく漫画家になる以上はアニメ化は夢だけど実写化は地獄みたいなものです……あ、いいネタ浮かんだ」

 

 メモ帳を取り出し、思い浮かんだネタをメモする。やっぱりこういう時に思いついたネタは後々見返しても面白いのが大体だ。

 二郎系のラーメンを通称、豚の餌とか地味に笑える。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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