アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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漫画家にすゝめ 4 

「最良、どうだ」

 

「ええ、僕を通すんですか……」

 

 間もなく夏休みに突入するかしないかの頃、新妻エイジの出現で燃える兄と、兄と組む為に必死になる秋人(シュージン)

 兄が絵を上達させる一方でおじさんの仕事場にある漫画を読みながら思いついた面白いアイデアを纏めていた。

 

「いやほら……最良で面白いなら最高(サイコー)も面白いと思うだろう」

 

 そんな纏めたネタを見せてくる。

 兄は既に秋人(シュージン)と組む算段でいるからやる気を起こす口実で、僕に見せたとしてもなんの意味も無い。僕が面白かったら兄が面白いというわけじゃない……いや、違う。この人、面白い作品を作ったから見てほしいって感じなんだろう。

 兄と組む以上は僕は読者として作品を見てほしい……う〜ん……。

 

「高木さん、文字だけで読ませようとしないでくださいよ……」

 

 漫画なんだから絵が必要だ、描いたと言ってもネームでもなんでもない文章だけの漫画。

 小説家になろうと思えばなれるぐらいに賢い作品を描ける人だから文章の時点で引き込まれる作品を描いたんだろうが、僕達が目指しているのは漫画だ。

 

「なんの為に兄がいるんですか」

 

「そ……そうだよな……」

 

「……プレッシャー、感じてるんですか?」

 

「まあな」

 

 面白いものを書かなければならないと圧迫感に圧されてるのかもしくは自分が描いている作品は本当に面白い作品なのかと心配をしている。

 その心配を解消するには第三者の目で見て面白いか面白くないかのどっちかの言葉を欲しているんだろうけど、僕はその言葉を持ち合わせていない。なにせ僕も漫画を作る側の人間で、漫画を見る側の住人じゃない。

 

「だったら何処かに持ち込みに行ってきたらどうです?」

 

「何処かって集英社にか」

 

「もしくはネットに上げてみるとか……やり方は色々とあります」

 

 自分の漫画の評価が欲しいならば第三者の意見しかない。

 不特定多数の人間から意見を貰いたいのならばネットに上げればいい……ただ問題はネットに上げたなら、そのネタは使えなくなる可能性がある。ネットになにがいるか分からないからパクられる可能性だってある。けど、雑誌編集者じゃなくて読者の本当の意見が聞ける。

 

「高兄、漫画、描くことが出来る?」

 

 頭を悩ませている秋人は置いておき、兄に漫画を描く準備が出来ているかどうかの確認をする。デッサンによる絵の上手さじゃなく漫画としての絵の上手さに日を追うごとに変わっていく。背景とか効果線とか擬音の練習とかもしていて、今の調子なら描けるかどうかの確認をする。

 

「多分……何処かで練習の成果を発揮してみたい」

 

「だったら一本描くしかないね」

 

 今の自分が何処まで出来るのか試してみたいなら、描くしかない。

 チラリと秋人に目を向けると、兄は椅子から立ち上がって秋人に近付く。

 

秋人(シュージン)、原作なにかないか?」

 

「おぉ……今、出来てるのはこんな感じ」

 

 使えそうなネタを纏めたノートを兄に渡す。兄はパラリとノートを開き、面白い話はないかと探す。

 パラリパラリと無言でノートのページを捲っている……特になにも言わないでいるので秋人は冷や汗をかいている。

 

「面白いよ、これ」

 

 パラリと捲ったページの話を指差す。面白い、その一言だけで秋人は救われたようで大きくホッと一息つく。

 何処のなんの話が面白かったのか目を向ける……いったいなんの話って、これって……。

 

「2つの地球、こんな話は見たことない……どっかからパクったのか?」

 

「いや、パッとコピーとかクローンとか面白そうだなって考えてたら浮かんだ内容」

 

 兄の目に止まったのは2つの地球(仮題)と、原作で2人が一番最初に描いた漫画だった。

 僕が色々とあれこれしてるけどこういうところは原作通り、バタフライエフェクト的な事を期待しない方がいいの……いや、どっちでもいいか。そんな誰かが死ぬとか悲劇の過去とか漫画でよくある中二的な展開や設定はなんも無いんだから。

 

「これ、描いてみたい。ネームにしてみてくれよ」

 

「あ……ああ!じゃあ、頼んだぞ最高(サイコー)

 

 ちゃんとしたコンビになった、認めてくれたと分かると喜んだ秋人(シュージン)

 早速ネームを描いてやるとネーム用の原稿用紙を取り出して、早速2つの地球(仮題)を取り掛かる。

 

「……」

 

 頭の中にノートに纏めたものが入っているので秋人はノートを見ない。

 なので僕がコッソリとノートを見る。2つの地球以外にどんな話が気になるけど、それは見ないでおく。1番気になる2つの地球の内容。

 アニメでも少し掘り下げられていたが1から10まで、最後の内容しか描かれていない。最終的にはどっちが正義とか正しいとかなんとも言えない感じのオチだった……

 

「高兄、これでいいの?」

 

「なにが?」

 

「これ……漫画じゃないよね」

 

 改めて2つの地球の大まかな内容を見て、わかる。この2つの地球(仮題)は漫画向けの内容じゃない。設定が凝ってはいるが明らかに漫画向きじゃない。小説にしたら面白い内容だけど。原作でも兄は小説っぽいとか思ってたりした。

 

秋人(シュージン)は原作を作る側だし、俺がああだこうだ言うよりも一回好きなだけやらせてみる」

 

「そっか……次からはなんか言ったほうがいいよ」

 

「そうするつもりだよ」

 

 今回はあくまでも試し、本気で漫画を描くつもりはない。絵は真面目に描いたりするとしてその辺りの線引はしている。

 しかしこれ、仮に兄が口を出す場合何処を出せばいいんだろう。普通に面白いから何処を直した方がいいかの指摘は僕は出来ない……漫画家を目指す者としてまだまだ未熟者だな。

 

「てか、俺の事よりも自分の事を心配しろよ」

 

「僕はまだまだ力を溜める期間があるから」

 

 既に原作ははじまっているみたいだけれど、僕はまだ中学1年生でまだまだ余裕がある。

 無理に焦る必要は無い……けれども、努力を怠る必要は何処にもない……ここらで新しい新作を描いたほうがいいか……てか、僕も挑戦してみよう。

 

「面白いネタ、面白いネタ……」

 

 おじさんの仕事場で描いた漫画のネタを見てみるがあまりパッとしたものはない。

 なにか面白そうなネタ……こういう時にパッと浮かんだりしない……家に帰って使えそうなネームを探すってのは……ダメだよな。新しい漫画……刀が出る漫画は人気があるって言うけど、カッコいいモンスターが出てきたりする漫画も面白い。

 

「遊戯王……」

 

 転生してみたかった世界、遊戯王。

 バクマンの世界にあるけども元いた世界となんも変わらない……時代が時代だけにペンデュラムやリンク召喚が存在せず、ラッシュデュエルなんて生まれていない……よくよく考えたら遊戯王ってすごいよな。漫画としてじゃなくカードゲームとして完成されている……ペンデュラム召喚がリンクマーカー先にしか召喚できないルールはちょっと嫌だけど。

 

「遊戯王……カッコいいモンスターが登場して暴れる話がいいな」

 

 一人一体の固有のモンスターを持っていて、それ以外に人工的に作られたり古代のモンスターを操る戦い。伝説の5体のモンスターがいて、その内の1体がドラゴンで、自分のモンスターを上手く出すことが出来ない主人公がそのドラゴンを手に入れて、様々なバトルを繰り広げる。アニメのポケモンみたいな戦い方をするんじゃなくて魔法で色々とサポートしたり、主人公と融合して新しいモンスターになったりモンスターを特殊能力を持った武器に変えたり……なんか、面白そうだな。

 

「タイトルは……マジカルサーヴァンツ」

 

 パッとネタは浮かんだので、ネタ帳に纏めてみる。普通に面白そうな話……でもなんだか、打ち切りをされそうな感じの話でもある。

 連載を目指しての漫画じゃないし、一先ずは自分がどれぐらいの腕があるか試すのに……サンデーもとい週刊スリーに投稿……いや、駄目だよね。僕も折角の才能を持っているんだし、男だったら1番に……ジャンプに載るぐらいじゃないと。おじさんだってジャンプの漫画家……やっぱジャンプに載ってたのスゴいな……っと、真面目に描こう。

 

「高兄、ペン入れとかベタとかスクリーントーンとか手伝える事があったら言ってね」

 

「ん、もう出るのか?」

 

 椅子から立ち上がると反応する高兄。

 

「うん……まだまだ充電する期間だと思うけど、今どれぐらい自分がやれるか試してみたいんだ」

 

 今の自分がどれぐらいの実力を持っているか分からない。兄や秋人(シュージン)に何回か漫画のネタを見せたりしたことはあるけども、ハッキリとした漫画は見せた覚えはない。だからこそ自分が何処までやれるか試してみたい。

 

「僕はまだゆっくりでいいけど、高兄……中学卒業するまでに結果を残しておかないと……必要になったら呼んでね」

 

「ああ……お前も頑張れよ」

 

「じゃあ、高木さん、頑張ってくださいね」

 

「ああ……一緒にジャンプ漫画家目指そうぜ」

 

 絶対にジャンプの漫画家になってやる。

 

 

────────────────────────────

 

 

「お前の弟、滅茶苦茶良いやつだよな」

 

 最良が去っていき、漫画制作に勤しむ最高と秋人。

 一段落したのでボスのブラックコーヒーで一息つくと秋人は最良の事を話題に出す。

 

「そうか?」

 

「オレ達の漫画作り変なアドバイス入れてこずに頑張れって言ってくるし、漫画の絵の方も手伝ってくる」

 

「そりゃあ彼奴自身も漫画家を目指してるから少しでも経験値が欲しいからやってるんだよ」

 

「滅茶苦茶雰囲気柔らかいし」

 

「秋人が他人だからだよ……俺の相手をしてる時はもっと砕けた喋りをしてる」

 

「……お前、弟に厳しいな」

 

 男の兄弟ってそんなもんである。

 とはいえ次男である秋人から見ればあんな弟が欲しかったと思うのも仕方がないってものだ。

 

「アイツもジャンプで漫画家目指してるんだろ?どんな漫画を描いてるんだ?」

 

「色んな漫画描いてるよ……一通りのジャンルは描いてみたいって、ああ、でもスポーツ物の漫画は描きたくないって言ってた」

 

「え、なんで?スポーツ物なんてバリバリの王道なジャンプ漫画じゃん」

 

「体育会系のノリが大嫌いなんだよ……体育の授業でワン・オン・ワンやって負けた方が腕立て伏せとか腹筋10回やるとか言うだけでも嫌なんだとさ」

 

「うわぁ、筋金入りだな……でも、分かるかも」

 

 最良が苦手なジャンルはスポーツ漫画なのは一応の原因はあるが、それはそれ、これはこれである。

 それはともかくとしてどんな漫画を描いているのかは気になる……親しくしているが何れはライバルになる存在。どんな面白い漫画を描くのか、もしかしたら自分に描けないものを描けるかもと秋人はチラリと見る。

 

「恋愛漫画も描いててタイムスリップ恋愛コメディを描いてた」

 

「タイムスリップ恋愛コメディ……それだけで充分に面白そうだな」

 

「結婚式の夢を見た中高一貫校に通う女子学生が結婚相手とキスをする瞬間で目を覚まして、今までの学生生活は夢だったのかって思ったらそれが正夢で結婚相手になる男が転校生としてやって来て、その子と恋愛をするんだけどギャルゲーみたいに他の人と付き合ってる世界線もあって最終的に5人くらい夢を見たヒロインがいて、壮絶な恋愛バトルを繰り広げるんだ」

 

「なんだそれ、滅茶苦茶面白い設定じゃん!なんでそれ描かないんだ!?」

 

「恋愛漫画は性癖がバレるとか、自分の推しのヒロインじゃなくてサブヒロインが人気が出てくっつかないと炎上するのが怖くてあんま描きたくないんだよ」

 

 ぼくたちは勉強ができないみたいに全てのルートをやればいいじゃないかとは言ってはいけない。あれはあれでありだったかもしれないがちょっと昔のジャンプ編集部が許してくれるかどうかは分からない。

 ともあれ最良がどんな漫画を描いているのか知った秋人。ちょこっと聞いただけでも充分な魅力を持つ面白さがあるのは原作者を目指そうとしている身としてはちょっと羨ましい。

 

「最高が見た中で1番、面白かったのってなんだ?」

 

「タイトルが決まってなかったけど、色々な異世界を巡って技術とか人材とかスカウトして自分達の世界を発展させたりする話かな。本人はCLAMPのツバサ・クロニクルに設定が若干似てるからちょっと浮かない顔してた」

 

「あ〜色々な世界を回るってのは確かにな……あ、最高、こんな話を描いてみたいとかあるか」

 

「そんなのあれば秋人はいらないだろう」

 

「違うって、ジャンルを聞いてるんだよ」

 

 パッと思いついたネタは幾つもあれども、漫画担当からの要望はまだ聞いていない。なにかジャンル的な要望があったらそれに集中して描くことが出来る。今まで好きな漫画を聞いたことはあるけど描きたい漫画を聞いたことはなかったのでこれを気に聞いてみた。

 

「そうだな……スポーツ漫画はちょっと考えるな」

 

「最高も最良みたいに体育会系のノリが嫌いなのか?」

 

「そうじゃない……スポーツ漫画ってもうやり尽くされてる気がするんだ」

 

 スポーツ漫画がちょっと考える理由を最高は語る。

 スポーツ漫画と言えば弱小部活が努力して強豪校に勝ったり、天才的な主人公が入ってきたり、才能があるけど素人が入部して段々と強くなると言うのが定番であり、スポーツのジャンルもサッカー、バスケ、野球と比較的メジャーなスポーツを題材としている。そうなるとどうしても過去に出たキャプテン翼やSLAM DUNKといった名作と比較される。

 

「確かに言われてみればジャンプのスポーツ物って王道っちゃ王道だけど連載されては打ち切りが多い……他誌だと1個はあるけど設定とかはもう出し尽くした感が強いよな」

 

 尚、この時代はまだギリギリ、黒子のバスケはない。ハイキューも火ノ丸相撲もまだ先の話。

 そして火ノ丸相撲もハイキューも黒子のバスケも他には無い設定とか織り込まれており、過去の同じジャンルのスポーツ漫画と比較しても面白い……腐女子人気とか言っちゃいけない。一部は腐女子に人気がある絵だけども。

 

「日本に漫画雑誌は沢山あって小説家になろうなんてサイトもあるぐらいなんだから今更新規の設定を考えるのは難しいから2つの地球はそう考えたら斬新だよな……けど……」

 

「けど?」

 

「いや、なんでもない……」

 

 2つの地球(仮題)は面白いには面白いが、漫画っぽくない。最後にどっちが勝ったのか分からないオチが待ち受けている。

 少年漫画なら勧善懲悪物の方が良かったりするし、もうちょっと設定とかオチとか変えた方がいいとは思うが今回は秋人が実際のところどれだけやれる等の腕試しも兼ねているので口出しはしない。

 

「そういや、前に最良がキン肉マンが滅茶苦茶好きだって言ってたな」

 

「キン肉マンか……確かにあれ色々と滅茶苦茶だけど面白いよな」

 

「それもあるけど、世界観が好きって言ってた」

 

「世界観?」

 

「ほら、キン肉マンって超人とか宇宙人が認知されてるけど昭和の地球が物語の舞台じゃん。真島先生のRAVEとか尾田先生のONE PIECEみたいに独自の世界観じゃなくて現代の地球が舞台で超人的な存在が認知されてたりするって時点でスゴイってなってる……シャーマンキングとか日朝の特撮みたいに地球が舞台のファンタジーって大体秘密の組織とか世間に公表されてるとか少ないじゃん」

 

「キン肉マンをそんな風に捉えるなんてお前の弟、やっぱすげえな」

 

 普通はキン肉マンをギャグかプロレス(笑)かバトル漫画として見るぐらい。

 改めてキン肉マンの世界観を考えると確かにと頷く秋人。最良がかなり身近に思えるライバル……まぁ、実際のところは未来知識的なのがあるからだけども。

 そんな事は人には言えないので最良スゲエとなるが、褒める暇があるなら自分の腕を磨けと最高に言われると直ぐにネームの続きを描き始め、最良の手伝いもあり8月の中頃には2つの地球が完成した。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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