アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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漫画家にすゝめ 5 

「どうだった?」

 

 8月某日、兄と秋人はジャンプを作っている会社こと集英社に持ち込みに行った。

 僕はと言うとおじさんが使っていた部屋で一本漫画を描いている。まぁ、ネームだけど

 

「どうだったって言われても……なぁ」

 

「ああ……あ、名刺は貰えてメールアドレスまでは貰ったぞ」

 

 僕が色々と介入した事で原作通り2人の漫画である2つの地球を読んだ担当が服部さんじゃ無くなる可能性があるんじゃないかと思ってた。

 しかしそれは杞憂に終わり、秋人から編集者の名刺は貰えたと服部哲の名刺を自慢気に見せてくる。

 

「人によっては無言で突き返される時もあるのに、やったね」

 

「だ、だよな」

 

「……どうしたの?」

 

 原作云々は置いておいて、編集者からメールアドレスを貰えたのは大進歩だ。

 それなのに何故か浮かない顔をしている秋人……なにかショックでもあったのだろうか?

 

「いや、その人にコレじゃあ漫画じゃなくて小説っぽいって言われてさ……アレって今思い返しても漫画っぽくないなって」

 

「ああ……まぁ、そうだよね」

 

「そうだよねって、最良も気付いてたのか!?」

 

「あれ、勧善懲悪でもスポーツ物でもなんでもないジャンルがイマイチ分からないヒューマンドラマみたいな内容じゃないですか」

 

 どっちが正しいのか、どっちが正義なのかイマイチ分からない終わり方をしている2つの地球。

 悪役をぶっ倒すとか誰かに勝利するとかの王道的な展開が見当たらない、少年漫画っぽくない感じ。その事に関しては気付いてた事を言えば秋人は僕を強く睨んでくる。

 

「最高といい最良といい、気付いてたのなら言ってくれればいいのに」

 

「まぁまぁ……兄が組んでも大丈夫な相手かどうかの確認の為なんで意見出来なかったんですよ」

 

「そうだよ……次からは俺も色々と意見をするから、頑張ろうぜ」

 

「はぁ……そうだな……最高、改めてよろしく頼むよ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 改めて握手を交わす兄と秋人。

 名コンビ誕生の瞬間を見られて感激だと思いつつもふと疑問に思った事を聞いてみる。

 

「次、考えてるんだね」

 

 今回の持ち込みはあくまでも試しの様な感覚なのは知っているけど、万が一があるかもしれない。

 もしかしたら月例賞に受賞する可能性だってあるかもしれない。その可能性を考慮せずに次を見ている。

 

「あの作品じゃ掠っても変な賞だ……俺達が欲しいのはちゃんとした賞や入選だ。だろ?」

 

「ま、そうだよな。変な賞に受賞してジャンプにちょこっとだけ名前が載るのってなんか恥ずかしいし男ならカッコよく受賞だ」

 

「じゃあ、今から次のネタを考えておかないと……漫画家は年を食うと相手にしてもらえないからね」

 

 あの作品で駄目だと分かっているなら、さっさと諦めをつけるべし。

 2つの地球が編集の人から色々と言われているのならば、それを直した物を出すよりも新しい物をさっさと出していた方がいい。

 

「新しいネタか……やっぱ2つの地球と違うジャンルがいいのかな?」

 

「ジャンルって高木さん、苦手と得意なジャンルを見つけたんですか?」

 

 新しい漫画ならネタは被らないほうがいい。前の漫画とどうしても比べようとしてしまうのは当然の事で、比べられない様に別のジャンルを描くのがベターだけど、今の段階では高木秋人はどんな漫画が面白いとかどうとか言う評価は一切受けていない。

 

「いや……全然だ」

 

 まだ自分が得意なジャンルが分かっていない。

 それを僕が教えてもいいけど、具体的にハッキリと言えない、そこまで僕には力が無いから……でも、言うことは言っておかないと。

 

「高木さんはこう、人間のドロッとしたところとか人間ドラマとか上手くて、カッコいいと言うよりも考えて作られてる感じですね」

 

「え、漫画って考えてつくるものだろ?」

 

 なにを言ってるんだコイツは?と首を傾げる秋人。僕からすればなにを言っているんだというものだ。

 

「漫画は確かに考えて作る物ですけど……閃きですよ」

 

「いやいや、確かに閃きも大事だけど何処をどうすれば面白くなるって考えるのが普通だろう」

 

「いや……キャラって割と勝手に動きますよ」

 

「秋人、やめとけ……最良は天才と努力の両方のタイプで噛み合いにくい」

 

 最初に設定とか色々と考えて決定さえしておけばある程度は勝手に動く、いや、勝手に動かせてしまう。

 王道的な展開を否定する邪道的な展開をやってみたいと思えば、それをやってくれる……普通な筈なのに兄から遠回しの否定が入る。

 

「僕が天才とか冗談でも言わないでよ……未だに原稿に苦戦中だ」

 

「手伝おうか?2つの地球、予定よりも何日か早く仕上がったのお前のお陰だし」

 

「いいよ。読み切りとか持ち込みに使うタイプの漫画はアシスタントとか無しで自分で作りたい」

 

「最良、その気持ち分かるぞ……自分の作品なんだから1から10、全部やりたいんだよな。自分の作品って足跡を残してえよな」

 

「そりゃあね……僕は絶対にペンネームは使わない」

 

 漫画家として歴史に名を刻みたい。男に生まれた以上は、転生者として二度目の人生を送る以上は出来るだけスゴイことをしたい

 故に僕はペンネームを使わない。漫画家として悪目立ちする可能性はあったとしても、それはいい意味で有名になったと捉えるつもりだ。

 

「で、どんなの描いてるんだよ!見せてくれよ」

 

「いや、そんな高木さんに見せる程のもんじゃ」

 

「いいから、見せろって!」

 

 あ、取られた!僕は何個か秋人のネームを見たことあるし、これを見せないのは不公平っちゃ不公平かもしれないので奪い返そうとはしない。

 僕が描いているのはこの前浮かんだ主人公がカーディアンと呼ばれるモンスターを使役してバトルをする漫画で主人公は自分自身のカーディアンを出すことが出来ないけど伝説の5大カーディアンの1体である龍神王ジグルムを手に入れて様々なライバルと戦ったりする漫画。

 

「……面白いな……」

 

「あ、ありがとう」

 

「俺にも見せて!」

 

 出来たネタを人に見せて面白いと言ってくれるのは正直な話、嬉しい。

 兄も見たいと言っているので見せるとマジマジと見てくれる

 

「……なぁ、これって遊戯王っぽくないか?」

 

「あ……確かに言われてみれば、遊戯王の記憶の世界編で出てきたディアディアンクと魔物とかそっくりだ」

 

「あ〜……真似したって言われたら否定は出来ない」

 

 流石は高兄、僅かな隙も見逃さない。

 この漫画の世界観では人の魂にはそれぞれモンスターが宿っていて、それを具現化して使役するとか遊戯王の記憶の世界編で出てきたディアディアンクの設定とそっくりだ。

 

「モンスターと融合したり、モンスターを魔法でパワーアップさせたり、モンスターを武器に変化させて装備したり……やれそうな事は色々とやってるんだけどね」

 

「……まぁ、遊戯王は遊戯王の方が有名過ぎて他のところは知名度が低いしいいんじゃないか?……遊戯王が頭にチラつくってところ以外は全体的に面白いよ」

 

「……ありがとう」

 

 やっぱりチラつくのは遊戯王か。世界一のカードゲームなんだから当然といえば当然……そう考えると高橋先生は恐ろしいな。

 いや、高橋先生だけじゃない。カイジの福本先生もすごい。ギャンブル系の漫画を描いている先生達は色々とオリジナルのゲームを作ってきて、その裏技や必勝法なんかを作ってきているんだから。

 

「遊戯王っぽくなくするかぁ……」

 

「やっぱ主人公がドラゴンはまずい……青眼(ブルーアイズ)白龍(ホワイトドラゴン)をイメージしてしまう」

 

「それ言ったら大体の〇〇アイズ系のドラゴンはアウトだろ。最良のは遊戯王がチラつくけど、原作の方でカードゲームは一切チラつかない」

 

「そりゃ遊戯王ばっかやってる奴の意見……ああ、そっか。最良、遊戯王が好きだからこうなるのか」

 

 何処か遊戯王っぽさがある僕のマジカルサーヴァンツ。

 遊戯王っぽさを消すにはどうすればいいのか聞いてみるけど秋人的にはこれでも充分に面白い。兄からしても遊戯王みたいな斬新な漫画は今ジャンプに載っていないから載せても問題は無さそうという。僕的にもこれをお蔵入りにするのは心が痛い。将来的に超人気漫画家になる亜城木夢叶から面白いと言ってくれるならばある程度は安心できるけど……まだ2人は漫画家として完成されていない。漫画家の卵にすらなっていない漫画家志望だ。完全に信頼してはいけない。

 

「やっぱり僕も持ち込みした方がいいかな?」

 

 1番ハッキリとした評価を得る方法は持ち込みだ。

 兄達が今日やった様に集英社のジャンプ編集部に持ち込んで編集者達からの評価をしてもらうことだが、僕は若干というかかなり怖い。漫画家になれば日本中の人達が作品を読むことになるんだからたった1人の人の評価に怯えてしまってどうするんだってなるんだけど、編集者と赤の他人だと編集者の声の方が遥かに重い。

 

「お前はまだ俺と違って時間があるんだから、そんなに気にするなよ」

 

「充電期間があるって言うけど、高兄と2年違うだけで2年なんてあっという間だよ」

 

 むしろ今だから焦らないといけない。

 

「俺との2年の間は絶対に埋まらないだろう」

 

「埋まらないって、忘れたの母さんとの約束……大学に行っている間に成果出さないと漫画家やめて普通に就職しろっての」

 

「……そういえばそんな約束したっけな」

 

 素で忘れてた兄。結構大事なことなのになんで忘れてるんだろうとチラッと秋人の事を見ると何故かニヤニヤしていた。

 

「最高、亜豆との結婚18にしたいもんな」

 

「ばっ、最良に言うんじゃない」

 

 ニヤニヤとしている理由はヒロインこと亜豆の結婚を望んでるのを知っているからだった。

 原作上では知っているが現実的な意味では知らないので素知らぬフリで聞いてみるとペラペラと語ってくれる秋人。流石に実の弟に結婚云々を聞かれるのは恥ずかしいのか兄は顔を真っ赤にする。公開プロポーズを相棒の横でやって退けた癖に今更なにを恥ずかしがってるんだか。

 

「……18じゃキツくない」

 

「バカ。だから今こうして必死になってるんだろう」

 

 今年15でアニメ化目指しての持ち込みからのスタートで3年ってどう考えても無謀である。

 3年以内に連載とか読み切りをやったってよくよく考えるととんでもないよな亜城木夢叶は……でもやっぱ20歳とかの方が良いんじゃないかと思う。互いに酒を飲める年齢になってるし、多少の酸いも甘いも噛み分けれる様になってるし。

 

「ヒロインの声優をその亜豆さんにするなら主人公の声優は阿部さんにしてもらったらいいよ」

 

「阿部?」

 

「高兄と声がそっくりな人……男の声優も目を向けたほうがいいよ」

 

 てか、メタい話をすればアニメ版のバクマン。のあんたの声優だよ。

 ヒロインを気にするのならば主人公の方にも……いや、声優全体に目を向けたほうがいい。鬼滅の刃って言うアニメでバカみたいに大ヒットして社会現象を巻き起こす一例があるんだから、適当な声優とアニメ会社を選んじゃだめだ。

 

「アニメ化アニメ化って言うけど、適当な会社を選んだら駄目だからね。京都アニメーションと他のアニメ会社だったら作画が圧倒的に違うとかもあるし……」

 

「あるし?」

 

「制作会社によっては放送話数の都合上、原作を弄って来るパターンとかアニオリとかやろうとする」

 

「た、確かに言われてみればNARUTOもONE PIECEもドラゴンボールも全部アニメオリジナルとかやってる……最高、アニメ化はいいけど複数から指名を受けたら制作会社は見て決めようぜ」

 

 火ノ丸相撲という題材はそこまで悪くないのに尺とか登場人物の都合上で一気に設定を変えまくる一例はある。

 FAIRY TAILだって無限時計編とかいう完全にアニメオリジナルあるし、一話完結だけどアニメオリジナル回とかもある……一話完結で一話だけのアニメオリジナルだったら許されるけど、長編をやると原作との帳尻が合わせれなくなって困る。

 

「アニメ化もいいけど、その前に先ずは連載だろう……多分、2つの地球じゃなんの賞にも掠らない。仮になにか賞を貰っても審査員特別賞とかの賞で価値は無い……新しい話を服部さんにぶつけるぞ」

 

「おう!今度は最高の意見も取り入れて作ってみるぜ」

 

 アオハルだなぁ。燃え上がる2人を見ているとこっちも頑張らないといけないと使命感を抱く。

 兄の様に将来の結婚を約束している誰かはいないし、後の秋人みたいに彼女が出来るわけでもない……まだ中学1年生だからいいけども彼女は欲しいな。前世では童貞で彼女のかの字も無かったし……漫画家は出会いってあるのかな。

 

「っと、僕も頑張らないと」

 

 30ページ以上ある原稿を1人で作り上げないといけない。

 ネームとかプロット以外は完全にデジタルでやっているので兄にペン入れを手伝ってもらうこととか出来ない。まぁ、自分の作品だって証明したいからあんまり手伝ってほしくないんだけど。

 それはそうとして新しい話を描くと決めた兄達に負けずにマジカルサーヴァンツを描く、描く、描く。ネームが描き終えるとおじさんの職場には行かず、家に引きこもって漫画を描く。

 兄達はあいも変わらずおじさんの職場に向かって、新しく1億分のと言う原作にも出てきた漫画のネタが浮かんだのか、前回の小説っぽいところを訂正していき、面白い漫画を作り上げる。

 

「最良、やっぱ2つの地球はダメだった」

 

「やっぱりか」

 

 引きこもってマジカルサーヴァンツを仕上げる日々を送っていると兄から報告を受ける。

 原作通り、予想通り2つの地球が月例賞でなんの賞も掠ることは無かった。あの内容じゃ無理なのは元々分かっていた僕は驚かず、兄もそんなに落ち込んではいない。

 

「悪いな。モブとかスクリーントーンとかベタとか色々と手伝ってもらったのに」

 

「僕が手伝ってなんかの賞を入賞したらそれはもう2人の作品じゃないっぽいし、そっちの方がいいと思う……今作っている作品、面白そうじゃん」

 

 僕からの評価も欲しいのかチラリとは設定文だけ見せてくれた1億分の

 原作じゃどんな内容か細かに語られていなかったけど、いざ読んでみると実に引き込まれる世界観だった。やっぱあの人、天才かなにかだと思う。もしかすると原作より早く作っているから本来よりも面白くなるんじゃないかと少しだけ可能性に賭けつつも僕もペンを走らせる。

 目指すは月例賞、でなく手塚賞……僕はギャグはどちらかと言うと苦手だから、赤塚賞は目指せない。新妻エイジを意識してる兄達も月例賞でなく手塚賞を目指して1億分のを描きあげて、互いにこれ以上が無いぐらいに完成した。

 

「せめて掠ってくれ」

 

 集英社に持ち込むの怖い。いざと言う時になんで勇気を出すことが出来ないんだと思いながらも封筒に入った原稿をポストに投函する。

 持ち込むのが怖いので集英社に向けて投稿する……大丈夫、新妻エイジも同じことをしていたから……。もう既にポストにぶち込んだので後戻りは出来ない。当たって砕けろと祈るばかりで、兄達は9月30日に集英社に足を運んで1億分のを投稿した。

 

「……誰だろう」

 

 中間テストで秋人が3位になった事以外は特に変わったことは無かった。

 やっぱりあの出来じゃなにも掠らないだろうと思っている10月21日、見知らぬ番号が携帯に掛かってくる。

 

「はい、もしもし」

 

『もしもし……私、集英社のジャンプ編集部の内田太樹と申します。こちら真城最良くんのお電話で間違いないでしょうか』

 

 !

 

「はっ、はははは、はひ!わたくしが真城最良その人でごごご、ごぜえます」

 

『そんなに緊張しなくていいですよ』

 

 僕は意外とあがり症だ。こういうのがあるから人前に出られないし、集英社に行けない。

 兄と同じく服部さんを一瞬だけ期待したけども流石にそれは無理だったかと身体中をブルブルと震わせながら電話に耳を傾ける。

 

「あの……ダメ、だったんですか?」

 

 あの遊戯王もどき、面白くなかったのかな

 

『逆です、現時点で最終候補まで行ったのでその連絡をしました……13歳て書いてあるけど本当なんだね』

 

「は、はい!しょうがきせいの頃から漫画を描き続けてましたぁ!」

 

『落ち着いてください……とにかく、最終候補以上には決まったことだから本誌に名前が載ることは決まってるんですけど………大丈夫ですか?』

 

「は、はひぃ……大丈夫とはどういうことですか?」

 

『まだ中学生みたいだし名前が載ると大変じゃないかなって』

 

「いえ、是非とも載せてください……真城最良ここにありって証明したいですから」

 

 漫画家なんて大丈夫なのかと心配をする母を納得させるにはとにかく成果が必要だ。

 まだ本誌掲載を夢見るには早いけども、少しでも本誌に名前を残せるのならば残しておきたい。そうすれば母さんも漫画家を頑張れって言ってくれる。まだ手塚賞の最終候補までだから正式な決定は決まっていないけど、名前自体は載るから誇った方がいいと内田さんは言ってくれる。

 

「っと、自惚れたらダメだ」

 

 亜城木夢叶はここでコケてしまったから、僕も自慢げになってはいけない。手塚賞の最終候補の8本に入ったことを兄や母さんに自慢したくなったけども、こういうのは正式に決まってから。あの作品は手塚賞向けに作っている作品だから新しい作品を作る。

 僕の記憶が正しければ今回も新妻エイジが投稿してきて入選は無理なんかじゃないかと思って少しだけ項垂れる。

 

「え……すみません、もう一度お願いします」

 

『おめでとう、手塚賞準入選です』

 

 11月10日、僕は新妻エイジの作品を1つ抑えて準入選を果たした。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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