「え、え……本当ですか?」
手塚賞の最終候補に入っただけでも充分にスゴい。それなのにまさかまさかの手塚賞に準入選にした。
あまりの事にもう一回僕は内田さんに聞き直す。
『はい、本当です……手塚賞に入賞した最年少の記録を更新して、編集部も大盛り上がりで』
「あの……遊戯王っぽかったとかそういう感じの批評な意見とか無かったんですか?」
盛り上がってくれているところありがたいけど、遊戯王っぽい漫画を描きたかったりしたからマジカルサーヴァンツが出来た。
カードゲームによるバトルはしていないけどモンスターを使ってのカッコいいバトルをしているのには変わりはない。
『そうですね。モンスターを使役してバトルする系はカードゲーム系のアニメとかがよくやっていて、漫画でやっているところは少ないんです。巨大なモンスターを使役して攻撃するとかは幾つかあるんですけど、遊戯王はカードゲーム漫画な部分があるので少しだけチラつくぐらいで編集部や手塚プロダクションの人達はあんまり気にしていませんでした』
「そ、そーですか」
遊戯王は色々なゲーム物で、途中からデュエルモンスターズによるバトル主体になった。
カードゲームを漫画家にしたものを成功していてKONAMIがカードゲームとしてちゃんと成立をさせた。遊戯王と言えばあのカードゲームだと世界中に浸透させていている。その辺りを気にしてみるとあんまりその辺りは上の人達は気にはしていない。
『それでですね、手塚賞に準入選しましたので受賞式に参加の方を……住所からして集英社に1度足を運ぶ事は可能ですか?』
「は、はい……明日にでも集英社に行けます」
『じゃあ、明日の17時にお待ちしております』
「……ふぅ、胃の痛みから開放された」
携帯の電源を切ってホッと一息をつく。自分の漫画がどうなるのかで心臓がバクバクと鳴っていた。
キリキリとしていた胃が今日やっと開放された。手塚賞の最終候補に入っただけでも立派なのに、手塚賞に準入選……つまりNo.2に入ったという事……半端じゃないな。
「あ……他に誰が入ったのかを聞くのを忘れてた」
僕の上に誰が行ったのか聞くのを忘れていた。佳作と入選が誰で最終候補に残った人達が誰かも聞き忘れた。
兄の1億分のはネームだけ見たが非常に面白い漫画に仕上がっていた……けど、今回はなんの手も貸していない。
モブや効果線、背景なんかをやっていないので原作よりもパワーアップしているなんて事は一切無い。あの時点で面白いってのにそれがちゃんとした絵になるなんてもうワクワクが止まらない……それでも手塚賞に掠る事はしなかった。新妻エイジが入選と準入選に入っていて本来ならば手塚賞に入っているぐらいらしい。
「はぁ〜……僕が手塚賞に準入選か……」
兄の事も気になるけど、気持ちが少しだけ落ち着いたのでベットに寝転ぶ。
前世じゃ田舎暮らしで東京に足を運ぶことすら一生無さそうな人生を送っていたのに今あの手塚賞に準入選する程まで成長している……地獄でバトル物の世界に転生しても問題が無いように鍛えていたの圧倒的に無駄になったけども。
「っと、高兄に報告を……した方がいいのかな?」
今頃兄も手塚賞に入ったか落ちたのかの報告を受けているはず。
原作以上の事はしていないので多分、最終候補に止まっただけで佳作や準入選はしていない。最終候補止まりのところで今ここで兄達に手塚賞に準入選した事を報告していいものだろうか。どちらにせよ本誌に名前を載ってしまうのは決定事項でジャンプ好きのあの二人には隠し通すことは出来ない。
「どちらにせよ母さんには報告しておかないといけないし……」
ちゃんとしたハッキリと目に見える成果を上げることができた。
漫画家になるんなら大学までに成果を上げてみろという母さんに報告したら喜ぶ……何時言う?……今すぐに報告してもいいけども、どうせならば兄を驚かせたい。今頃仕事場で項垂れている二人に電話をしようと悩みに悩んでいると母さんが夕飯が出来たと言う。
「母さん」
「なに?」
「その……集英社に漫画を送ってみたんだけどさ……」
「どうだったの?」
「それが……手塚賞に」
「ただいまー」
準入選をした。
そう言おうとした途端に高兄が帰ってきた。
「最高、貴方おじさんの職場で根を詰め過ぎてないかしら……この前の中間で成績は良かったからいいけど無理は禁物よ」
夜遅くまでおじさんの職場に入り浸っている事に対して母さんはあまりいい顔をしない。
前のテストで秋人がテスト対策をしてくれたからそれなりに成績は良かったようだから色々と言いづらいんだろうな。
「ごめん」
「ごめんじゃないわよ、漫画を作るのもいいけど程々にしておかないと本当に体を崩すわよ」
母さんの言葉を言い返すことは出来ない兄。
漫画を描き始める前には無かった目の隈が兄の不健康さを物語っているのだから僕からはなにも言えない。1度マジでぶっ倒れるから……う〜ん、本当にどうしようか。漫画家になったら定期的に健康診断を受ける約束してるけど、この兄が守るだろうか……まぁ、今はいいか。
「最良、手塚賞に応募した漫画のデータ残ってるか?」
「残ってるけど、見たいの?」
「ああ……俺との違いを確かめたい」
「貴方達、こんな時も漫画だなんて……はぁ。夕飯が冷めちゃうから先に食べなさい」
漫画熱が冷めない僕達二人に諦めたのか母さんは大きなため息を吐いた……。
「高兄、知ってるの?」
「なにがだ?」
夕飯を頂くけど、なにも言ってこない兄。
僕の漫画をもう一度読みたいと言ってきたので、担当編集こと服部さんに色々と伝えて貰っているかと思ったそうじゃないみたいだ。兄は持ち込みで僕は投稿だから接点が無いと思ってしまった……なんで編集部に兄弟だと気付いてほしいと思ってるんだろう。兄弟で漫画家とか珍しいとか思われるのなんか嫌だな。
「僕が投稿したやつ、手塚賞に準入選した」
「んぐぅ!?」
「ちょ、喉に詰まらせないでよ」
やっぱり僕が手塚賞に準入選していた事を知らなかったのか驚く兄は白米を喉に詰まらせる。
ドンドンと胸を叩いて米を胃の中に入れようとするので僕はお茶が入ったコップを兄に渡すと兄はグイッと一杯飲み干す。
「手塚賞ってアレでしょう。漫画のコンテストかなにかのやつよね……貴方が準入選したって本当なの?」
「ホントだよ……母さん、ちゃんとした成果を作ったよ」
「……」
まだ本当の意味で成功は納めていないけど、漫画家として一発当ててやった。
手塚賞を貰うことはとても難しい事で母さんは一瞬だけ疑いの眼差しを向けてくる。ここでジャンプを出して準入選の項目を見せれればカッコいいんだけど、正式な発表はまだ先だから見せることは出来ない。
「最良が準入選……」
「準入選したら100万円入るらしいから銀行口座を作りたいんだけど」
「え、ええ……」
いきなりの準入選に母はイマイチ、ピンと来ていない。
兄はと言えば固まっている……きっと僕が手塚賞に準入選した事について驚いていて受け入れる事が出来ないんだろう。
「それと受賞式が平日だったら学校を休ませてね」
「まぁ、貴方なら1日休んだ程度なら問題は無いと思うけれど……最高?」
「……クソっ!」
母さんからの許可を頂くと兄はやっと現実を受け入れたのか本気で悔しがる。
1億分のは本当に出来の良い作品でこれなら手塚賞に入ると思っていただけになにも掠る事なく終わったのは、はいそうですかと受け入れる事が出来るほど兄はまだ大人じゃない。
「こら、最高!最良だけが賞に入ったからって悔しがらない」
「母さん、いいんだよ……高兄は本気でやって本気で悔しがってるんだ。それを否定したら駄目だよ」
兄の態度を叱る母だが、兄がやっていることは当然のことだ。
兄は結婚云々を置いても本気で漫画家を目指していて、自分の漫画が入選しなければ悔しがるのは……実の弟に先を越されて悔しがるのは普通だ。
「最良、マジカルサーヴァンツを見せてくれ!」
「いいけど、1億分のコピーがあるんだったら見せてよ」
「おじさんの仕事場に置いてあるから後で取ってくる」
「コラ!家に帰ってきたんだから、もう一回おじさんの仕事場に行こうとしない」
「いいんじゃないか……」
おじさんの仕事場に戻ろうとする兄にやめろという母さん。
しかしずっと黙っていたお祖父ちゃんが口を開いていってもいいんじゃないかという。
「今、最良と最高は一番燃えてる。それをわざわざ水を差す様な真似は出来んよ」
「お祖父ちゃん……」
「じゃが、夕飯はしっかり食べろ……飯をちゃんと食っておかないと力が出ん」
「そうだね……高兄、最近はおじさんの仕事場に籠もりっぱなしだしちゃんと栄養を取らないと」
兄は料理は出来ないし、ちゃんとした物を食べれる時に食べておかないと栄養失調かなにかで何時かマジでぶっ倒れる。
お祖父ちゃんに飯はしっかりと食えと言われたのでガッツいて素早く食べようとはせずにモグモグと夕飯を頂く兄と僕。ご飯を食べ終わると兄は1億分ののコピーを持ってきたので僕は自分の部屋に兄を招き入れて手塚賞に準入選した作品であるマジカルサーヴァンツを見せる。
「……面白いな……遊戯王がチラつくって思ったけど、改めて見ると全然遊戯王がチラつかない」
「多分だけど遊戯王はカードゲームの側面で強いからマジカルサーヴァンツと内容が被ってない様に見えるんだよ」
僕のマジカルサーヴァンツを改めて読み返す兄は漫画を面白いと評価してくれる。
普通に嬉しいことだが、兄は自分の漫画と比べたりするのだが比べたって意味は無い。兄の漫画と僕の漫画では圧倒的に内容が違う。秋人の漫画は色々と設定に凝っていて少年向けの漫画じゃない。
「俺の作品と比べてどう違う?お前の作品と違ってなにが悪いと思う!」
「ちょ、ちょっと待って……まだペン入れした高兄の作品見てないんだから分かんないよ」
落ちたことが堪えているのか自分の作品と比べ出す兄。持ってきた1億分のをまだ見ていないのでなんとも言えないと一旦落ち着かせて、コピーしてきた1億分のを見る。人間がランク付けされる世界でそれを止めさせようとする主人公達が実は裏で世界を扱っていたコンピューターとの戦いに発展していく話で、話は実に作り込まれていて面白い……面白いには面白いけど
「……絵じゃないな」
「っ、やっぱり俺の絵が漫画の絵じゃなくてデッサンなのが」
「そうじゃない。作品と絵は合ってる……問題は作品の方だよ」
「どういう意味だ!?秋人の話、滅茶苦茶面白いじゃないか!」
「設定が色々と凝っていて全体的に暗い作品で子供向けじゃないよ」
1億分のは確かに面白い。けど、いざこれがジャンプに載ってるとなると違和感をおぼえる。
「例えばこれがジャンプじゃなくてヤングマガジンとかヤングジャンプとかの青年誌に載ってるって言われたら、違和感を感じる?」
「違和感……確かに言われてみれば、載っててもおかしくはない」
「高木さんの話は面白いんだけど全体的に見て大人っぽくて青年誌に載ってるちょっと考えさせられる漫画なんだと思うんだよ」
「子供向けじゃないって言うのか?」
「多分、それに近い……けど、面白い事には変わりないんだよな」
この作品が手塚賞に後一歩のところまでなのは新妻エイジが原因なのあるけど、単純に難しすぎる。
勧善懲悪物のバトルにしては色々と設定とかキャラの描写に凝ってて、面白いけど少年漫画では中々に見ないジャンル…邪道と言われているだけの事はある。
兄と1億分のとマジカルサーヴァンツの違いを比較したり、何処をどうすれば良かったのだろうかという漫画談義が熱くなり気付けば夜中の2時を過ぎており、珍しく僕は夜更しをした。
「すみません、17時でジャンプ編集部の内田さんでアポを取ってるんですけど」
「ジャンプ編集部ですね。こちらにご記入の方をお願いします」
「あ、学生なんですけど」
「でしたら職業の欄に学校名をお書きください」
学校が終わり、家で制服から私服へと着替えてやって来たのは天下の集英社。
昨日にアポは取っているので受付で軽く手続きを済ませると受付嬢の人が内線でジャンプ編集部に繋いでくれた。
編集部に上がることは出来るかなと少しだけ期待はしてみたが、そんな事は無く待合室っぽいところの4番で待っていてくださいと言われた。
「すみません、おまたせしました。ジャンプ編集部の内田太樹です」
「は、はは、はじめまして真城最良です」
「はは、そんなに緊張しなくていいです」
出てきたのは確かにKOGYだかなんだか忘れたけどもアーティストから漫画家になると発表した馬鹿野郎の担当さん。イマイチパッとしていないけども序盤から終盤まで一応は出ていた人だ。例えパッとしていない人でもジャンプで編集をしている人でどうしてもあがってしまう。
「これ、僕の名刺です」
「ありがとうございます」
緊張が中々に解れないけど話は進む。内田さんは電話番号とメールアドレスが手書きされている名刺を渡される。
兄達はメールアドレス止まりだったけど僕は携帯電話の番号もくれる……よっしゃ。一歩前進したぞ。
「なにか飲む?」
「じゃ、じゃあアイスコーヒーを……」
「アイスコーヒーですね。すみませーん」
茶が出た……ヤバい、興奮が納まらない。
「マジカルサーヴァンツ、読ませていただきました」
「は、はい」
「昨日の電話でも言っていた様に若干遊戯王っぽいところはある。設定のところで遊戯王と被ってるっと言う人と全然被ってないと言う人の2つに分かれたんだ……あ、僕は遊戯王に被っていないと思います。あれは最初はホビー漫画だったけど最終的にカードゲーム物になりましたから、どうしてもそう見えないんです」
「そ、そうですか……」
「マジカルサーヴァンツは遊戯王が被ってるのを除けば編集部からも大好評で、それが無かったらもしかしたら入選に入ってたかも」
「あの……入選ってどんな人の作品か分かりますか?」
僕のマジカルサーヴァンツを褒めに褒めてくれる内田さん。だけど、僕のマジカルサーヴァンツは準入選でNo.1じゃなくNo.2だ。
原作知識があるとはいえもしかしたら万が一があるかもしれないので聞いてみた。
「入選した子は君の3つ上の新妻エイジって子で、入選だけじゃなく佳作も入っていて……この前の手塚も彼が入っています」
「新妻エイジ……僕の作品と何処が違いがありましたか!」
ここまで来たのならば知りたい。兄には申し訳ないけど、準入選でなく入選を取りたかった。
「絵構成は負けてません。けど、モンスターを使役して戦うが遊戯王と被っていて、主人公の相棒がドラゴンなので他のカードゲームのアニメと被っていたりするんで。今回審査をしてくれたのは稲垣先生、尾田先生、鳥山先生、岸本先生、SQの編集長とうちの編集長で、編集長達が遊戯王と被っている意見でした」
「オリジナリティが無さすぎる、ですか?」
「いえ、これでも充分にオリジナリティ溢れてます……真城くん、君には才能があります」
「……ありがとうこざいます」
「手塚賞に準入選したけれど、これからはどうするつもりで?」
「週刊少年ジャンプでの連載を目指します……高校に行きながらでも、絶対に」
僕には充電期間が兄よりも2年長い。けど、そんな事は大したことじゃない。ここまで来たのならばやれるところまでやってやる。
幸いにもアナログじゃなくてデジタル原稿な僕は1人で描けば17〜19日ぐらいで読み切りや短編の原稿が仕上がるからアシスタントをつければもっと短く出来る。
「高校行きながらの連載ですか……なにも良いことはありませんけど」
「それが親が漫画家を目指すことをあんまいい顔をしなくて……短期でもなんでもいいですから成果を上げておかないとやめろって言われてるんです」
既に手塚賞に準入選した事を伝えているので母の顔色を伺う必要は無くなっているけど、一応は使える嘘なのでついておく。
編集にとって僕は金の卵なのでその事を伝えると内田さんはギョッとした顔をする。
「分かりました……じゃあ、次は本誌に読み切りか赤マルを目指して頑張りましょう。今度からはネームでいいです」
「は、はい!よろしくおねがいします」
「それで手塚賞に関して話しますね」
一先ずの方向性は決まったので手塚賞の受賞式に関しての説明を受ける……よく考えれば手塚賞の受賞式で新妻エイジとか福田真太に会ったりするんだ……ああ、なんか胃がキリキリとする。多分だけどこの胃がキリキリとするのは漫画家になる上では一生の付き合いになるんだよな……でも、嬉しい悲鳴な気もする。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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連載見てみたい
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短編集にだけしとけ