アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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主人公が描く漫画を考えないといけないのが意外とキツい


漫画家にすゝめ 7

 3年の秀才こと高木秋人が同学年の生徒を殴ってしまい停学になった。この辺りは原作通り……原作通りになって良かったのだろうかと思うが、別にそこまで気にする所じゃないからいいや。

 

「なぁ、どれが面白い?」

 

 手塚賞に準入選して受賞式が迫っている。本気で漫画家を目指している僕には遊んでいる暇は何処にもない。

 おじさんの仕事場で新しい話でも作ろうかとなったが中々にアイディアが浮かばないでいると秋人がネームを僕に見せてきた。

 

「なんで僕に聞いてくるんですか?」

 

「それは……」

 

 秋人の相棒は兄であり僕じゃない。それなのに僕にネームを見せてきている。

 時期的に服部さんからネームで持ってこいとか言われたりしているのになにを焦って……いや、焦るか。最終候補止まりで目の前に居るのが準入選だから。

 

「最高の絵は問題は無いんだ……今回手塚賞を逃したのはオレの話に問題がある」

 

「問題があるって充分に面白くて最終候補まで行ったのにですか?」

 

「最終候補に行ったんじゃない。最終候補止まりだ……最高の絵は練習すれば上達していけるけど、オレの話はそうはいかない。丸々一個新しいのを作ってそこを風船みたいに膨らませないといけない。今回の手塚賞を審査してくれた先生達は面白いって評価してくれたけど編集長はハッキリと面白くないって言ってきた。どうしたら話が面白くなるか上手くなるか分からない。だからお前の意見を聞きたいんだ!」

 

「そうですね……マジで言っていいんですか?」

 

「ああ、マジで言ってくれ!」

 

「ならハッキリいいます。これより面白い漫画があるよって言われるレベルです」

 

 ネームや設定だけを見ても面白いか面白くないかと言われれば面白い。けど、これより面白い漫画があるかどうかと聞かれればあると言えるレベルだ。

 

「そ、そんなにか」

 

「高木さん、描く方向が定まってない感じがします。前に言いましたよね、一通りのジャンルを描いてみたらどうかって」

 

 スポーツ漫画とバトル物の漫画の割合が多い。

 流石におっさんの趣味を美少女にさせる系の漫画とかは無いけども……

 

「あれから色々とやってみたんだけど、やっぱジャンプで描くなら王道なバトルものだって」

 

「でも、ハッキリ言って今の連載陣と渡り合えるぐらいの面白さは無いです」

 

「ぐっ……じゃあ、どうすればいいんだ?」

 

「今までにない新しいジャンルでも開拓すればいいんじゃないでしょうか?ジャンプっぽくないとか受けないとか思える漫画が今のジャンプに必要だったりすると思います……あ、完全なギャグと困ったらエロに走るタイプの漫画はやめてくださいね。ギャグは高木さんがエロは兄が描けなくて死にます」

 

 高木秋人は残念な事に王道的な漫画は向いていない。ジャンプらしくない邪道的で考えさせられる漫画が向いている。

 故にいま教えれる事はそれぐらい……。

 

「新しいジャンルか……いきなり言われてもな」

 

「今までの王道的な展開をぶち壊しつつ王道的な展開を守るってのも意外といいかもしれないですよ」

 

「王道をぶち壊す王道ってなんだよ」

 

「例えば、悪と戦う定番なバトル物ですが戦う正義側が2つの陣営がいて一つは世界を支配しようとするのを阻止する為の典型的な正義でもう1つはその悪が持っている技術とかを奪う為に戦ってる。明確に見える悪なので完全な敵と見なして殲滅しようとする正義の味方と、奴等の持っている技術や道具を奪って不治の病を治す願いを叶えようとするっていう感じの展開なんてどうです?」

 

 完全にスーパー戦隊の怪盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャーのパクリだが、ネタとしては悪くはない。

 ジャンプ以外にもこの世には無数の漫画が存在しているんだ……あ、なんか閃きそう。

 

「なるほど、W主人公か」

 

「後は……全てが出来る系の漫画ですね」

 

「全てができる系?全てってラブコメとかバトルとか全部か」

 

「銀魂とかSKET DANCEとかある意味そうじゃないですか……えと……あった。これもそうです!」

 

 銀魂はなに漫画かと言われれば答えづらい漫画だ。

 ギャグもシリアスも人情も全てをこなしていて万事屋の設定でスポーツの助っ人の話を描いたりも出来る。SKET DANCEも学校限定だが色々なネタが出来る……ギャグを考えるのは難しいけど、全てをこなせる。

 前に一発ネタとして描いた若者達がテレビ離れをしていくので面白いテレビ番組を作ろうとするスペシャルチームが作られて色々な特番を作ったりする日常系(ドタバタコメディ)の漫画がある。あれならばどうにかなる。

 

「なるほど、ドタバタコメディか……けど、こういうのって最初は上手くやれてるけど最終的にバトル物になっちまうんじゃないのか」

 

「なに言ってるんです……空知先生は何事も無かったかのようにギャグ回をやりますよ」

 

 僕は好きな漫画はなにかと聞かれれば色々とある。設定や世界観ならキン肉マンが大好きだ。超人という種族が社会に根付いているからだ。

 けど、本当に1番に尊敬出来る漫画がなにかと言われれば銀魂だ。ギャグがヤバいとかそういうのもあるけどもなによりも恐ろしいのが銀魂は両立している。

 

「紅桜篇をやった後の後日談的な話で山崎が銀さん調べる話があるじゃないですか。完全にギャグ回ですよ。ちょっとシリアスとか人情物じゃなくてギャグです……普通出来ますか?」

 

 本誌での最後にテニプリっていいなを載せたり、GIGA移って早々にDRAGON BALLやったりとにかくギャグの次元が違う。

 シリアスな展開をぶち壊すギャグをやってるのに人気を取れる。シリアスなバトル回とか事件解決編とかやった後にギャグの長編をやれる。

 テニスの王子様みたいに普段は真面目にやってるけども稀にギャグ回を挟んだりするとかそういうレベルじゃない、本当に恐ろしいぐらいに完成されてる。

 

「た、確かにそう言われてみれば……鳥山先生と岸本先生とか目立つけど空知先生滅茶苦茶スゴイな。あの人もジャンプの人気漫画家なんだよな」

 

「僕も空知先生の様な漫画家になりたいですよ」

 

 カニを食うだけでラピュタにまで話を持っていける才能が欲しい。

 

「空知先生か……そうだ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「どの漫画のなにがいいのか分析してみよう。今週号のジャンプに載ってて一年以上の連載陣の漫画をっと」

 

 ジャンプを開いてラストページの目次を見る秋人。一応は力になることが出来て良かったと思いつつも今度は自分の真っ白なノートを見る。

 今回準入選したマジカルサーヴァンツは我ながら良い出来だと思う。遊戯王と被る点は幾つかはあったけども面白い作品で……それ以外の作品を仕立て上げないといけない……難問だけど、焦るな僕。

 幸いにも手塚賞に準入選したと本誌に名前が掲載されたので母さんは僕が漫画家になることを反対したりしない。手塚賞と言う1つの賞に準入選したんだ、そこは誇っていい……誇っていいけどここで終わったらいけない。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□

 

 

「あ〜緊張する」

 

 場所は打って変わり東京都内某所。手塚賞に準入選した僕はと言うと胃をキリキリと痛めながら手塚賞の授賞式へと足を運んだ。

 スーツは持っていないので制服で行ってやろうかと思ったが、これから漫画家を目指すんだから無理に背伸びした服装よりも私服の方がいい。そう思った僕は私服でやって来た。

 

「こういう時に内田さん居てくれたらいいのに」

 

 1人ぼっちで会場内を歩く。心細くなんだか涙が出そうになるが必死に堪えて会場内を歩く。

 目的は唯一つ、この会場には手塚賞だけでなく赤塚賞に佳作以上に入った作品も載せられていてその作品を読みに行く。

 

「新妻エイジ、パない」

 

 一番の目当て、今回手塚賞に入選をした新妻エイジの漫画に心を奪われる。

 作画の時点でもう既に面白いと思えてきて一気に世界観に引き込まれる。仮にこれがこの漫画の第1話だったら僕は投票をしているだろう。

 これからジャンプで連載を目指すからには最低でもこれ以上に面白い漫画を描かなければならない……僕に出来るだろうか。

 

「……クソ、面白え」

 

 新妻エイジの作品に感銘を受けていると隣で苛立った諏訪部ボイスが聞こえる。

 まさかと思い振り向くとそこには帽子を被った18ぐらいの男性……今回の手塚賞に佳作に入った福田真太こと福田さんがいた。僕と同じく新妻エイジの作品を見て面白いと評価しているが悔しがっている。

 

「福田くん、探したよ!」

 

 モジャっとした髪型が特徴的な編集、服部雄二郎がやって来た。福田さんを探しに来たようだ。

 

「もう直ぐ式があるから準備をしないと」

 

「雄二郎さん、今回の2人もちゃんと来てるんすよね」

 

「ああ。新妻くんも真城くんも来ている。後で嫌でも顔を合わせるから、ほら早く」

 

 雄二郎さんに連れられて会場のメインステージに連れられる福田さん。

 これは僕も内田さん辺りが呼び出しに来るんじゃないかと思い、最後だからと自分の作品を見に行く。

 

「……ちゃんと漫画になってる」

 

 今回の準入選として原稿の1枚1枚が貼られている。

 さっきの新妻エイジの作品を読んだ後だからか少しだけインパクトが薄い。

 

「う〜ん……」

 

「!」

 

 そりゃ新妻エイジに負けるなと感じていると新妻エイジが僕の作品とにらめっこをしていた。

 

「謎ですね」

 

「……僕の作品の何処が謎なんですか」

 

 なにかに悩んでいる新妻エイジ。

 僕の作品の何処かに疑問を感じているので思い切って声を掛けてみた。

 

「おおっ、真城先生ですか!」

 

「はい……もしかして新妻エイジさんですか?」

 

「はい!新妻エイジです」

 

「僕の作品を見て何処か首を傾げていて、面白くなかったり遊戯王っぽかったりしたんですか?」

 

 僕の作品は今のところは準入選まで行ってるいい感じの作品だ。

 マジカルサーヴァンツの続きを描けと言われれば出来る作品で……やっぱり遊戯王と被ってるのが気になるか

 

「真城先生、これ貴方1人で描いたんですか?」

 

「描きましたよ……あ、でもパソコンとか使って描いたんで迫力とかは」

 

「いえ、充分にあります……ただこれ13歳の人が描いた風に見えないんですよ」

 

「!」

 

「二十歳過ぎた大人が描いた漫画みたいな感じで、僕より若くて僕より大人な作品を描くってなにか秘訣でもあるんですか!」

 

 漫画を見ただけで、僕がただの13歳の漫画家じゃないと見抜くとか新妻エイジはスゴい。

 グイグイと聞きに来る新妻エイジ。正直に転生者なんですよなんて言えないのでどう誤魔化すか……いや、僕の漫画理論でも教えればいいのか……。

 

「新妻さん、漫画好きですか?」

 

「もちろんでーす」

 

「じゃあ、漫画の好き嫌いはありますか?連載を長引かせてグダグダとやってるとかじゃなくて話が苦手とかそういうの」

 

「あ〜そういうのは考えたこと無いです。どれもこれも面白い漫画ですから」

 

「多分、その辺りで差が出たんだと思います」

 

 好きな漫画とそうじゃない漫画と僕はどっちかと言えばハッキリとしている。

 ライトノベル系の作品はあんまり好きじゃない……ハイスクールD✕Dとかこれゾンとかデート・ア・ライブとかとあるシリーズとか普通に好きじゃない。地球とかが舞台で秘密の組織とか主人公の周りだけキャッキャしてるのはあんまり好きじゃない。特に主人公が綺麗事ばかり言うタイプの作品は割とマジで苦手で…ある日突然なにも知らない系の主人公、好きじゃないんだよな。

 

「僕は漫画の話とか設定に好き嫌いが結構あります……そこがハッキリとしてるから大人っぽく見えたんじゃないでしょうか」

 

「なるほど、漫画の好き嫌いですか……真城先生、好き嫌いはよくありませんよ」

 

「なに言ってるんですか、この世でなにもかもが好きな人が居るわけないでしょう。新妻先生も無意識の内に描いてなかったり苦手だったりするジャンルの漫画があったりするんじゃないですか」

 

「う〜ん、少なくともマジカルサーヴァンツは描くことは出来ないですね」

 

「そういうとこです……因みに僕は熱血のスポ根とか普通に大嫌いですよ」

 

 この辺に関してはハッキリとしておく。

 けど勘違いしちゃいけないスポーツ物の漫画が嫌いなわけじゃない。テニヌとかプレイボールとか黒子のバスケとか普通に好きだ。描けないだけだ。

 

「真城くん、もうすぐ受賞式がはじまるから」

 

「新妻くん君もだよ」

 

 そうこうしていると自分の出番がやってきた。

 内田さんと同時に雄二郎さんも新妻さんを迎えに来ており、一緒にメインステージに連れられる。そこには嘗ておじさんこと川口たろうの編集をしていた現編集長がいた。

 

「!……そうか」

 

 ここに来て、はじめて編集長と顔を合わせる。

 編集長は僕の顔を見て直ぐにハッとなる……兄の事を気付いているなら知ってると思ったんだけど……まぁ、いいか。

 

「手塚賞準入選、おめでとう……先ずは最初の登竜門を開く事が出来てなによりだ」

 

「あ、あああ、ありがとうございます」

 

「そう緊張しなくていい」

 

「す、すみましぇん。どうしても緊張感が……」

 

 編集長から準入選の賞状を貰うけど、その手は震えている。

 やっと世間に認められるぐらいの作品を描けたのが今頃になって緊張感が増してきた……本当に情けない。人前に立つの向いてないんだよな。

 

「こんなところで緊張していたのなら漫画賞を受賞した時が大変だぞ」

 

「ま、まだそこまでのレベルの漫画家じゃないです」

 

「まだ、か……これからの君を期待している。是非ともジャンプの看板になる漫画家を目指してくれ。兄弟共々期待している」

 

「はい!」

 

 編集長から頑張れとの後押しを頂いた……これはもう頑張らないといけない。

 表彰状を受け取ったので長居するわけにはいかないとそそくさと賞金と賞状と共に壇上から降りていく。

 

「はい、笑ってください」

 

 一通りの授賞式を終えると今度は記念撮影に入った。

 僕は賞状を両手で持ってニコリと微笑みながら写真を1枚撮ってもらう……ふぅ、なんとかボロを出さずに済んだ。

 

「本当にスゴイよ。はじめての投稿で手塚賞に準入選だなんて」

 

「はい……って、喜びたいんですけど漫画家への登竜門が開いただけなんですよね」

 

 内田さんは褒めまくってくるが僕が目指しているのは漫画家だ。

 おじさんが出来なかった漫画家として一生食っていくのと1位を取るのを先ずは目標としている……今は登竜門が開いた事を喜ぶべきだろうが、今から僕は門の向こう側の世界の住人になっていくんだ。

 

「内田さん、出来る限り早く本誌に載りたいんで次を目指しましょう次を」

 

「ええっ、もう次を……いや、そうですね」

 

 手塚賞に準入選して喜ぶのはここまでだ。

 次は本誌掲載……は難しそうだから赤マルジャンプの掲載を目指して新しい読み切りを書き上げる。マジカルサーヴァンツは……これは連載向きだから連載とか目指す様になったら描こう。

 

「手塚賞に準入選したから次のステージ、赤マルジャンプで……なにか新しい読み切りのネタは浮かんでる?」

 

「いえ、全然です!」

 

「ぜ、全然なんだ」

 

 気持ちを切り替えたのはついさっきだ。

 新しい漫画のネタは浮かびそうで浮かばない……これはまたおじさんの部屋に入り浸って漫画でも読んでみるのもいいのかもしれない。

 スポーツ物は無理で完全なギャグ漫画も無理、銀魂みたいにギャグも日常もシリアスも全てこなす感じなら描ける、いや、描きたい……あ〜でも、それでも普通の王道的なバトル物を描きたい。カッコいいモンスターもいいけどカッコ良くて面白い能力を持った道具……海賊戦隊ゴーカイジャーのレンジャーキー……宇宙人が地球に眠ってるお宝を探す、なんか浮かびそうだ。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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