アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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悪魔の妖精 1

 強くなる為にはどうしたらいいのか?それは戦うことだ。だから戦った……強くなりたかったから。弱い自分が嫌いだったから。

 戦って、戦って、戦って、戦い抜いた。あらゆる戦いに勝利した俺は血塗れになったけれど圧倒的な力を得た。特別なチームも出来た……けれども、なにかが違った。俺が求めるものはこんなものだったのだろうかと疑問を抱いた。

 

「なにがしたかったんだろうな……」

 

 ワケが分からなくなって、将軍様()から解散を命じられた。

 チームは以前からガタガタなところがあったかといえばあったのであれは良かったと思う。

 一人は会社を立ち上げた。一人は思い出を忘れられず酒に飲んだくれている。一人は新しく悪の組織に入って幹部にまで上り詰めている。他の者達もそれ相応の成功を納めていると言うのに自分と来たら、辺境の島に引きこもっている。毎日毎日同じことを考えていて何をやっているのだろうと考える自問自答の毎日……いや、自虐の日々か。こんななにもない無人島で暮らしていて俺だけはなにも出来ていない……恥ずかしい。

 

「きっかけ……いやでも、外に出るのは怖いしな……!」

 

 変わらなければならないけど、変わるのは怖い。そう思っていると島に誰かが入り込んできた事に気付く。

 俺の居る島には生きていく上で必要な飲み水に最適な水辺や果物が実っていて、本当に無人島なのかと思えるぐらいには豊かだ。だが、無人島である事実は変わりなく、過去に誰かが住んでいた痕跡はない。開拓しがいはあるが、それだけの島をわざわざ選んでいるんだ。

 

「……流れ着いたパターンもあるかもしれないな」

 

 ここは無人島で周りは海。もしかしたら誰かが流れ着いた可能性があり、それならば元いた場所に帰ってもらおう。

 目を閉じて氣を深く感じ取ってみると老練された氣を持っている事に気付く……これは老人、おじいさんの氣だ。

 

「……」

 

「……」

 

「……むぅ……」

 

「……」

 

「……なにかを言ったらどうじゃ?」

 

 氣を感じるところにやってくるとちっこい爺さんがいた。

 世捨て人かと思ったら結構な格好をしていて世捨て人じゃなさそうだ。

 

「あ〜……ここは無人島でお宝らしいものは無いぞ」

 

「知っとるわ……評議院から罰としてこの島の生態調査にやって来たんじゃ!」

 

「評議院……ああ、あれか」

 

 世間に疎い俺でもよく知っている。

 評議院は魔法使い共もとい魔導士達の統率をしている議会的なところであり、そこから罰を送られるとはこの爺さん……

 

「魔導士ギルドのマスターかなにかか?」

 

「そうじゃ……先程からワシの事ばかりじゃし少しはお主の事を教えてはくれんか?その奇妙な仮面の事も気にするなと言われても気にはなる」

 

 俺のつけている仮面を気にする爺さん。

 

「なに、別に大層な理由じゃない。真に強い戦士ならば素顔は無闇矢鱈と晒すものじゃないと教えを受けているんですよ」

 

「ほぅ、随分と変わった教えじゃのう」

 

「素顔を知りたければ自分を倒してみろ、的な感じ」

 

 とにかく弱肉強食の世界で生きてきて、勝たなければゴミとの教えを受けている。

 その教えを俺は否定はしない……世の中は勝たなければ意味はない。正しいから勝つんじゃなくて勝っているからこそ正しいんだ。教えてくれた将軍様は弟と引き分けた事を未だに根に持ってるけど。

 

「っと、この島の生態調査にやって来たのでしたね。なにか書く物はありますか?」

 

 プライベートな時間で来ているんじゃなくて、罰ゲームみたいな感じで来ているんだ。

 ここに無駄に長居されるのはそれはそれで困るしここで出会ったのもなにかの縁。この島の事ならば色々と知り尽くしているので書こう。

 

「……お主、何故この様な無人島に住んでおる?」

 

 書くものを出してくれるかと思いきや爺さんは俺がどうしてここにいるのか疑問を持つ

 

「別に、いいじゃないですか」

 

「そうはいかん……うちに居るガキ共と似たような年齢のワッパが無人島でポツリと暮らしていて、はいそうですかと見過ごせる程に人間は腐っておらんぞ」

 

 グイグイと来るな、爺さん。とはいえ言っていることにはなにも間違いはない。

 まだ酒を飲める歳(15)ですらない子供が無人島にポツリといたら誰だって疑問に思う……けど、どうしてここにいるかと聞かれれば答えづらい。具体的に言えば逃げたとしか言えないのだが……そうだな。

 

「最初は強くなりたいと思ったんだ……力こそ絶対で勝たなければ意味が無い、俺が育ったのはそんな環境下で俺は愚鈍なまでに力を求めた。探し求めて、色々な魔法を試し、見つけた……だけど、違ったんだ。俺の求めてたものと何かが違った。強くなったのに弱くなった気がした」

 

「ふむ……」

 

「戦って勝つ力を求めていた筈なのに……」

 

 その為に色々と捧げたのに、沢山の傷を背負ったのに……燃え尽き症候群みたいな事になっている。

 同じ力の奴と満足の行く熱いバトルを求めていた……いや、違う。圧倒的な力を求めていたのは確かだった。けど、最後には虚しい気持ちになった……褒め称えてくれる仲間達だっていたのに。

 

「強さとは力だけではない。他者を傷つけるぐらいならば自らが傷付く優しさと言う名の強さが世の中には存在する」

 

「優しさか……俺はそれを踏み躙って食い物にする馬鹿をよく見ていたよ」

 

「確かにそれを食い物にする愚か者は世に多い……じゃが、その逆も、誰かを思いやる者も世には大勢いる」

 

 そういうもの、なんだろうか。愛よりも剣を選んでしまっている身だからその考えはよく分からない。

 けど、爺さんの言っていることは非常に納得が行く感じ……俺よりも酸いも甘いも噛み分けているからだろうな。

 

「優しさか……そういう強さは求めたことは無かったな」

 

「力とはまた違う強さを持っておるぞ」

 

「そっか」

 

「そういえばまだ名前を聞いておらんかったの。ワシはマカロフ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターじゃ」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)……確か100年ぐらい前に起きた第二次通商戦争辺りから出来たとかいう」

 

「詳しいのぅ」

 

「まぁ、ここも大事ですから」

 

 トントンと頭を叩く。

 今の時代は脳みそ筋肉よりもある程度はインテリじゃないと……とはいえ、都合の良いことは忘れる様には出来ているけども。

 

「俺はシゲオ……7人の悪魔の元リーダーだ」

 

「7人の悪魔じゃと!?」

 

 嘘をついても適当な事を言っても仕方がない。ここまで来たのならばちゃんと話すべきだと自分の素性を語ると案の定爺さんは驚く。

 7人の悪魔、ゼレフとかいう400年前にポッと現れた魔導士によって人工的に作られた悪魔とは違う正真正銘の真正の悪魔の特別部隊と言われる存在であり、悪人相手にヤバいことをしている。なにを隠そう俺はその部隊のリーダーだ。

 

「お主、悪魔じゃったのか」

 

「悪魔だから討伐するか?」

 

 ドラゴンに次ぐ異形の存在である悪魔。

 存在だけで忌み嫌う者は多く、敵対するならば俺は躊躇いなく殺す。

 

「いや、そんな事はせんよ……お主は人の様に迷い悩んでおる」

 

「人の様にって、なんて言えばいいか……まぁ、そう言ってくれるのはありがたいですけど」

 

 俺は人か悪魔なのかイマイチ分かっていない。立ち位置が曖昧な存在だが、そう言われれば嬉しい。

 

「シゲオよ、妖精の尻尾に来んか?」

 

「俺が魔導士ギルドに?」

 

「そうじゃ……力以外の強さを知りたいのであろう?未来ある若者を見捨てるわけにはいかん」

 

 ……運命なんてものを感じるタイプじゃないが、これを運命と言わずなにを運命と言うんだろうな。

 今日までこの島で引き籠もっていたのはもしかしたら爺さんと出会うためだったのかもしれない……なんて言えば詩的な感じだろう。だが、この運命はただごとじゃない。

 

「俺みたいなのを入れて後悔するなよ」

 

「なに、ガキのケツを拭けねえ程耄碌はしとらん」

 

「んじゃ、ちょっとカバンを取ってきます」

 

 爺さんも色々と準備をすることがあると言ってちょっとだけ解散。

 自力で作ったツリーハウスへと戻ると着替えと使えそうなものを鞄に入れ、爺さんと出会った場所に戻る。

 

「島の生態調査のこと、忘れておった!」

 

「おい!……ったく、書く物を貸してください」

 

 俺のスカウト云々で本来の目的を忘れていた爺さん。しっかりしろよと思いつつも書く物を受け取ってこの島の生態系について色々と書いていく。この島は俺以外の人の手は加わっておらず、四方八方が海に囲まれ、ここに来るまでに凶暴な海の生物がいる。並大抵の人間ではこの島に来ることは出来ず、魔導士とかならば問題はない……はず。

 

「こんな感じでいいですか?」

 

「おぉ、中々に良い感じに出来ておるのぅ……ひょっとして事務仕事が得意か?」

 

「人並み程度です」

 

 変な期待はしないでくれ。

 ともあれ、俺ことシゲオは妖精の尻尾のマスターに連れられて名前の無いフィオーレ王国にある辺境の無人島から離れて、妖精の尻尾のギルドがあるマグノリアへと向かった。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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