アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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ネタが浮かぶから早いところ処理しておく


お兄ちゃんは辛いよ 2

「入るぞ」

 

「いらっしゃい……麟児さん」

 

 時間は少しだけ流れて日曜日の週末。

 日曜日は休む為にあるものでアルバイトは入れない様にしている私の元に麟児さんがやって来た。

 

「私に話があるなんて珍しいですね。修には言えないこと……修の成績ですか?」

 

 テーブルを出し、座布団の上に座ると向かい合う形で麟児さんが座ってくる。

 なんの話なのかはなんとなくで分かるが当てるとややこしくなるので素知らぬ顔……これぞ転生者名物と言うかお家芸で有る原作知識でどういう感じの事を言ってくるかわかってるけども全く知りまんだ。

 

「修の成績は良好だ。彼奴自身が根が真面目だから平均点以上は取れる……まぁ、運動神経はそこまでだが」

 

「体は弱くても心は物凄く強い弟です……修の成績関係でないならなんでしょうか?」

 

「コレがなにかわかるか?」

 

 コトっと置いたのは21グラムぐらいの重さのある片手に持てる装置……トリガーと呼ばれる道具だ。

 

「トリガーですね……ボーダーに入隊したんですか。おめでとうございます」

 

「いや、違う。これは横流し品だ」

 

「!」

 

 あくまでも素知らぬ顔でならなければならないけど、麟児さんは包み隠さずに言う。

 トリガーは電気による科学とは根底から異なるトリオンというものを動力にしている近界民の技術。取り扱っているのはボーダー……ただボーダー以外でトリガーを作れそうな人に心当たりはある。横流し品とハッキリと言ったのでボーダーからパクったものだ。

 

「色々とあって協力者を得た。俺はそいつ等と一緒に近界民の世界に行こうと思っている」

 

「また随分と話が飛躍的な……」

 

「その割には驚かないんだな」

 

「ボーダーは近界民と交流があってトリガーという技術を手に入れた。近界民を研究したのでなく近界民の方から何らかのアクションがあったと考えているんです……少しだけ肩の力を抜いて考えていればボーダーは矛盾しているところがあったりしますからね」

 

 普段襲ってきているのがトリオンというエネルギーで出来たロボットとか公表はしていないが、冷静に考えればその答えには辿り着く。

 こちらの世界に意図的に襲撃を掛けているのならばなんらかの理由があると考えるのが妥当である……ホームズじゃないが初歩的な事だ。

 

「……お前は何処まで分かっている?」

 

 思ったよりも理解している事に麟児さんは驚いたものの直ぐに探りを入れる。

 何処まで喋っていいのか……いや、どうせなら喋れるところまで喋ってみるか。

 

「ボーダーは近界民の世界に行ったことがある、普段襲ってくるのがロボット、ボーダーは何度か近界民の世界に遠征している、近界民の世界は私達の世界とは異なりトリガー文明が根付いている、近界民もこっちの世界みたいに色々な国があるぐらいですかね」

 

「それは修に言ったのか?」

 

「言ってませんよ。確証もなにも無く批判をしたりする姿なんて見せられません」

 

 ボーダーと言う組織は世間的には悪から市民を守る防衛機関でいい。

 批判したり思うところがないわけじゃないが文句を言う暇があるならば自分で動き出せばいい。そしてそれをすれば文字通り痛い目に遭う……痛い目に遭うのはごめんなので余計な事はしない。

 

「それで船もなにも無いのにどうやって行く、いえ、そもそもでどうして私にそんな事を話そうとしたのです」

 

 私の周りには話し合いが通じそうなボーダー隊員がいる。通報をして現行犯で取り抑えればそこまでだ。

 それなのにわざわざ言いに来るなんて……物凄く嫌な予感がする。

 

「お前も一緒に近界民の世界に行かないか?」

 

 ほらね。

 麟児さんはコレはお前の分だと目の前にトリガーを置いてくれる……って、ちょっと待て。

 

「こういうのって発信器かなにかついているんじゃないんですか」

 

 トリガーには発信機的なのがついているのが公式設定集かなんかで書かれていた。

 私の分をわざわざ用意してくれたのはいいけれど逆探知的なのをされれば最後、あっという間にバレて拘束される。流石にボーダー相手に喧嘩を売るのは得策じゃない。

 

「安心しろ、俺達のは起動しなければバレない仕様にしている。なにも当てのない旅をしに行くんじゃないんだ……協力者の中に家族が拐われた奴がいる。そいつの弟を探すついでに、千佳の事をどうにかする」

 

「どうにかって、また随分と曖昧ですね」

 

 千佳ちゃんはトリガーの動力源で生体エネルギー的なのであるトリオンを尋常ではないほど持っている。

 トリオンはトリガー文明には絶対に必要不可欠なものであり、近界民がこちらの世界を襲撃する主な理由として優秀なトリオン能力を持っている人間を拉致する為である。

 そんな千佳ちゃんは過去に何度も何度も近界民もといトリオン兵に狙われている。

 今のところは上手い具合に乗り切っているのだが、それでも周りを危険な目に遭わせるぐらいならば自分一人でと思っている。過去に自分の事を信じてくれた友人が逆に拐われるなんて事があったぐらいだ。

 

「麟児さんがボーダーに入って千佳ちゃんを助けるって言う選択肢は無いんですか?」

 

「確かにその選択肢もある……だが、現状はどうだ?ボーダーは千佳の存在に全くと言って気付いていない。千佳が狙われる原因があるとして、それをどうにかするのがこの街を戦場に変えてる組織の筋じゃないか」

 

 麟児さんの言っている事には間違いはない。

 この三門市はある意味米花町よりも危険な街で、自覚や認識がされていないだけで戦争が勃発している。優秀なトリオン能力を持っている人間が拉致される云々をボーダーでは熟知していて、それに対してのなんらかの対応を取らないのはいけない事だ。

 そんな漫画みたいな冗談抜きで頭おかしいトリオン量を持った人間は存在しないなんて言い訳は通用しない。千佳ちゃんは黒トリガーと呼ばれるトリガー並にトリオンを持っている。保護の一つでもしておかないといけない。

 

「外部スカウトなんてしている暇があれば、ですよね」

 

 ボーダーの構成員は主に三門市の住人だが、ボーダーは県外、北は北海道、南は沖縄からスカウトをやっている。

 優れたトリオン能力を持った人間をスカウトしており、優れたトリオン能力を持っているかどうかを調べる装置は持ち運びが可能、と言うよりはトリオン測定する装置、ゲームボーイみたいな見た目だった気がする。

 

「でも、そんな文句を言うぐらいなら麟児さんが千佳ちゃんの事をそれとなく報告すればいいじゃないですか。トリガーを横領したってことはボーダー関係者は最低でも1人は居ますよね」

 

 しかし、文句を言うならば自分でやればいいだけだ。

 麟児さんが原作でも勝手に向こうの世界に行ってしまったのは色々とおかしい。そこから上手く出来るんじゃないか。

 

「それだと千佳は救われない」

 

「?、ボーダーじゃ守れないって言うんですか?」

 

 まぁ、確かに修の犠牲(生きている)があったから原作は上手く乗り切ってるところがあるけども。

 

「そうじゃない……自分の事を唯一信頼してくれた友達が拐われた事を千佳の心の中に罪悪感の様な物がある。それを取り除くには、その友達を探し出さないといけない。千佳が前に進む為にはその子を連れて帰るぐらいの事をしないと、そうすれば千佳自身も変わることが出来るかもしれない」

 

 確かに友達を助ける事が出来れば千佳ちゃんは大きく変わることが出来る……と言うかもっと早くに変わろうと思えば変われる。

 変身する事が出来ないのはきっかけの様な物が無いからで……そのきっかけを与えるのは後、半年後になるだろう。こればっかりは物語が始まらないとどうにもならない。私がどうこう出来ない……ホント、駄目な奴だよ私は。

 

「行くのは止めないんですね」

 

「このままなにもせずに居るのもボーダーに頼るのも出来ない」

 

「千佳ちゃん、泣きますよ」

 

「それぐらいの事は覚悟の上だ……昴、お前も一緒に来ないか?」

 

「!」

 

 これは意外な提案だ。

 麟児さんの事だから千佳云々を託すのかと思ったが、まさか誘ってくるとは思ってもみなかった。

 

「私を誘うなんて、どうかしてますよ」

 

「お前は自己評価は低いが相当優秀な方だ……なによりもホントの意味で実戦を経験していて知識も豊富だ」

 

「それはお世辞でもありがたい」

 

「お世辞じゃない、事実だ……お前が来てくれれば心強い」

 

「買い被り過ぎですよ」

 

「そんな事はない……実際には見たことは無いが百歩神拳とか言う技を使えるのもだ……実際に見せてくれないか?」

 

「普通に家の壁に穴が開いて母さんに夕飯抜きにされそうなんで嫌です」

 

 後、あれシンプルに疲れる。

 人様に見せるために色々と技を覚えたりしたわけじゃない。家族や自衛の為に身に着けたものだ。

 

「そうか……向こうの世界に行くまでにまだ時間がある」

 

「すみませんが行く事は出来ません」

 

 考える時間はあるかもしれないが答えはもう決まっている。

 過去に一度調子に乗って痛い目に遭っているので下手な冒険はしない……特になんの宛もない冒険は危険だ。

 

「千佳ちゃんの友達を見つけたら、帰ってきてくれますか?」

 

「……どうだろうな、そもそもでこっちの世界の人間を拐う国から助け出さないといけないから片道切符の可能性が大きい」

 

「だったらやめましょう。多少の無理や無茶は大事ですけどしないに越したことは無いです」

 

「それは出来ない……俺はもう後戻りが出来ないところまで来ている」

 

 今更ボーダーにトリガーを返してごめんなさいで終わらないし、複数名での犯行だから引くに引けない。

 

「千佳の事を頼む」

 

「頭を上げてください、麟児さん……止められない私が悪いんです」

 

 麟児さんを説得出来る言葉を私は持ち合わせてはいない。

 今から通報すると言う手段を用いればすべて解決するかもしれないけれど、上手く逃げるかもしれない。

 

「それに私は千佳ちゃんよりも修の心配をした方がいいんで、その頼みは無理です……修はああ見えて大胆なところがあるから、麟児さんが急に居なくなったらなにをしでかすか分かりません。麟児さん達を探す為にボーダーに入るとか言い出しそうです」

 

「……そうか。その可能性もあるか……万が一千佳が追いかけようとして来たら止めることは」

 

「出来ません、千佳ちゃんなりの前進や変身に止まったままの私は文句を言えません」

 

 私がああだこうだする権利は何処にも無い……そんなに止めたいのならば、自分で止めればいいだけだ。

 それが出来ないから私にこうして頼みに来ている。しかし私にも無理なものは無理……出来る事よりも出来ない事の方が多いんだ。

 

「でも、ホントに危ない時が来たら手を貸します……そんなの無いことを願うのが1番ですけど」

 

「そうか……すまないな、こんな話をして」

 

「修にも一言ぐらい声を掛けてくださいね」

 

「ああ……そうだ、コレを渡し忘れていた」

 

 そう言うと麟児さんはメモ用紙を渡してきた。

 なんなのだろうとメモ用紙を見るとそこにはボーダーのトリガーの名前が書かれていた。

 

「ボーダーのトリガーはメインに4つ、サブに4つトリガー枠があって俺が勝手にお前に合うと思う物をセットしておいた」

 

「え、持って帰らないんですか?」

 

「それはお前の物だ……使えばボーダーにバレる。たった一回しか使えない、本当に危ない時にそれを使って千佳と修を守ってくれ」

 

 麟児さんはそれを言い残し、この場を去っていく。

 部屋には麟児さんが横流しして貰ったトリガーが置かれており、恐る恐る手に取ると予想以上に軽かった。

 

「……これを使うのは当分先になるか」

 

 使えばボーダーにトリオン反応なりなんなり出てきて捕まってしまう。

 練習も無しでトリガーを使えなんてそんなまるで漫画に出てくる様な主人公じゃないか。ある日突然出会う系の主人公は修だよ。持ってないけど持っているメガネなんだよ、弟は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 

 

 

 

「修くん、昴さん、兄さんが……兄さんがぁあああああ!!」

 

 そんなこんなでGW。麟児さんは近界民に拐われた……と言うことになっている。

 実際のところは近界民の世界に乗り込みに行ったのだがトリガーが横領されたとバレると組織として問題なので上手く揉み消している。いや、今はそんな事はどうだっていい。ちっちゃくて可愛い千佳ちゃんが洒落にならないぐらいに本気で泣いている。兄までも去ってしまったと言葉を出すことが出来ずに泣いている。

 

「……兄さん」

 

「……今は千佳ちゃんを泣かせるだけ泣かせよう」

 

 兄が居なくなってしまった事に泣き叫ぶ千佳ちゃん。真実を大体知っている身としてどう接すればいいのか修は悩んでいる。

 どうすればいいかと言われてもそんなに人生経験は豊富ではない私がなにかを言うことが出来ない……悲しいな。転生する前も転生した後も鍛えたってのになんの力も発揮出来ていない。人には人のペースや才能があるから気にしなくていいなんて言ってくれるけど、本当に必要な時に必要な力が無い……完璧じゃないからか……私じゃ完璧になれないか。

 

「リリエンタールの力があれば麟児さんに会うことが出来るかな?」

 

 ボソリと耳に語りかける修。

 お世話になっている日野家にいる賢い犬ことリリエンタールの力を用いて麟児さんとの再会を考える。

 

「あの時はリリエンタールは家に帰りたいと思いと日野のお兄さん達がリリエンタールに会いたいと言う思いがあったから出来た。けど、今回は違う。麟児さんはこうなる事を覚悟の上で向こうの世界に行った……千佳ちゃんは麟児さんに会いたいって気持ちはあるけど、麟児さんは千佳ちゃんに会うつもりは無いみたいだ」

 

 自力で帰ってくるとあの人は言っていた。

 なんの成果も上げる事なく帰ってくることは絶対に無い……ボーダーと交渉する為にもそれ相応の成果は必要だ。

 

「麟児さん……兄さんは麟児さんの事を何処まで知ってるの?」

 

「向こうの世界に行かないかって誘われた」

 

「なっ!?」

 

 そこまで驚くと言うことは原作通りの感じだろう。

 

「協力者が居るとまで聞いていたが、そこまでだ。ボーダーに頼る手はあると言っていたが止めることは出来なかった」

 

 雨取麟児が鳩原未来以外の誰を協力者としているかは知らない。

 

「兄さんは行こうとは思わなかったの?」

 

「面白そうな旅にはなりそうだけど、あまりにも当てが無い危険な旅だ……リスクが多すぎる」

 

「だったら止めない……いや、僕も麟児さんを止めることが出来なかったから同じか」

 

 ボーダーに通報をすればいい、それだけで解決をする。

 修も私もその一手をしなかった。修なんて自分も行くと言い出している……本当に罪深い事をしている……ああ、くそ、胃がキリキリとする。

 

「昴さん、修くん……ごめんね」

 

「いいんだ千佳」

 

「そうだよ……辛い時に辛いと言って泣けれる事は良い事なんだ。限界ギリギリにまで追い込まれる前に思いっきり泣くんだ」

 

「もう、大丈夫です」

 

 泣いた痕が残っている千佳ちゃんはまだ震えている。

 本当は麟児さんが向こうの世界に行こうとしていることを知っていたなんて口が裂けても言うことが出来ない。

 

「メールか……」

 

 修にはとっくに送られたであろうメールが私にもやって来た。

 

【千佳と修を頼む】

 

 謝罪の一言も無いのだろうかあの人は……いや、逆か。

 私が此処に残ってくれるから安心して近界(ネイバーフッド)に行くことが出来た……残された者として私が頑張らなければならない。

 あ〜辛い。修はなんか真剣な顔で麟児さんを止められなかったことを悔やんでいる。千佳ちゃんのマジ泣きの顔を見たから仕方無いと言えば仕方がない……私はなにを頑張ればいいのだろうか。ボーダーに入るのはなんか違う気がする。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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