アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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HIRETU クローバー 2 

 巻物を見ながら頭を悩ませる。

 日ノ国にいる山賊達は独自の徒党を組んでいると思えば、日ノ国の司法の中でもそれなりに力を持つ越前(こしまえ)と裏で繋がっていた。

 司法の目があまり届かない裕福ではないが食うに困らない平凡な村に襲撃を仕掛けられたのは裏で日ノ国の事情に詳しい者が居たからだった。

 

「全く、上が腐っていては話にならん」

 

 越前が裏で山賊や国に対して反抗心を抱くものに政治資金や魔道具を裏流ししていた証拠は掴んだ。

 しかし越前が国の中枢にいる人間、権力を持った人間だ。そういう奴はあの手この手を行使して罪から逃れようとする。

 そんな阿呆はどうすればいいのか……それは1つ、殺して闇に葬り去る事だ。表立って裁く事が出来るのならそれに越した事はないのだが、それをしても権力を使って逃れられる。

 

「なんのゲームだったか……権力は何時だって強い者の味方だったか」

 

 地獄の転生者養成所で遊んだゲーム、テイルズオブとか言うシリーズのゲームでそんな台詞はあった。

 これは個人的な経験の話だが、悪い事をしている人間は悪い事をしているという自覚は一切無いものだ……いったい何処でなにを間違えれば私腹を肥やす馬鹿者になるのか。美味い飯が食えて、馬鹿騒ぎが出来る友がいて、温かい家があればそれで充分に人は幸せだ。

 

「さて、任務の内容は簡単だ。越前の肥やしている私腹の回収及び下手人である越前の暗殺……越前には有能な武士達がついている、そいつ等も始末の対象になっている。越前の庭園には幾つか隠し穴がある。そこに埋蔵金がある……お前達は埋蔵金を探せ」

 

 戦闘能力的に越前の武士達を部下にぶつけてもいいが、時間が掛かってしまえば逃げられてしまう。

 確実性を考慮すれば今回俺1人でどうにかした方がいい。なにより手を汚すのは少ない方がいい。

 越前の屋敷の図面を広げてどの辺りに埋蔵金が眠っているのか、逃げるのならばどの様なルートを歩むのかを話し合う。結果、メインで襲撃するのは俺で逃亡先に部下が待ち受けている二段構えの体制でいく。

 

「では、ゆくぞ」

 

 感情は高ぶってはいけない、今は大事な仕事を成し遂げなければならない。

 心を鎮め、屋敷に貼られている探知系の結界に引っかからない様に工夫しながら結界を通る。

 流石は私腹を肥やしている阿呆、持っている魔道具も一級品で並大抵の人間ならば気付かない高度な結界が貼られている。

 

「全員通過したな……各々、現場に迎え」

 

 部下達も無事に通過することが出来た。

 ヘマの様な事は一度もおかしていないのでそれぞれを持ち場につかせる。問題はここからである。

 屋敷の内部に足を踏み込ませると屋敷内にいる人間の数を把握する……護衛を含めて十数名、内に似たような強さなのが8名、恐らくだがそいつらが護衛の立場の人間……後は小間使いと裏で繋がっている蛮族といったところか。

 

「ここか」

 

 誰もいない部屋に辿り着くと天井を調べる。

 天井には隠し通路が存在しており、あっさりと入り込む事が出来た。ここからは天井を経由して諸悪の根源である越前の元まで向かう。

 しかしここで隠れる事が出来たと油断はしてはいけない。ある程度戦闘能力に優れた者達ならば氣を感じ取る事が出来る。透遁の術を欠かしてはいけない。

 

「越後屋、首尾はどうなっておる」

 

「ええ、中々に順調になっております」

 

「お主も悪よのう……ところでなにか退屈を凌ぐ面白い物はないだろうか。見せ物小屋の芸などは飽きてきての」

 

「それでしたら、遥か遠い異国に行くことが出来るらしい道具がございます」

 

「ほぅ、異国との」

 

「ええ。日ノ国と貿易を行っていない国で、恐らくは刀などの武具はないと思われます……我々で独自に貿易を行うのはどうです」

 

 会話の内容を盗み聞きする。

 異国、こことは異なる国との貿易を提案している……コレだけを見ればただの商人だが元手となる資金を無垢な民から奪い去っている。

 俺が越後のちりめん問屋ならば颯爽と印籠を片手に成敗してやりたい。貧乏旗本の長男ならば堂々と先陣を切って出れるが……残念な事に俺は忍者である。

 

「越前様!!」

 

 どうやってどのタイミングで暗殺しようかと考えていると慌てふためいた声で1人の武士が入ってくる。

 越前の耳元でなにやらぶつぶつと呟いており、それを聞いた越前は先程まで浮かれていた姿から顔を一変する。

 

「曲者だ!!であえであえ!!」

 

 薙刀を持ち、大きく叫ぶ越前。

 結界を完璧にすり抜ける事が出来たようだが、武士達の氣の探知からは掻い潜る事を失敗したようだ。

 これは完全に俺のミスだ。

 

「そこかぁ!!」

 

 僅かなミスで感情が少しだけ揺らいだ為に隠していた気配を探知された。

 武士は天井を綺麗に切り裂くので俺は刀が自分に当たらないようにクナイで上手く流しながら天井から抜け出る。

 

「越前、代官の身でありながらも山賊を操り、罪無き村を襲撃させた……貴様の行いは身に余る行為だ」

 

 暴れん坊将軍ならばここで腹を切れと言うが俺は忍者である。

 抹殺命令が出ている以上は殺すしかなく命乞いの余裕すらも与えない。

 

「き、貴様、千樹扉間!?」

 

「ほぅ、俺も大分有名になったものだな」

 

 俺の顔を見て越前は顔を青ざめる。

 御庭番衆の忍頭に最も近い存在である俺の名は有名になった……忍者は忍んで隠れる存在、NARUTOの世界ならばいざ知らず、ブラッククローバーの世界で有名になっても仕方のない事だ。

 

「俺の事を知っているのであれば、この術の事も当然知っているであろうな」

 

 両手を合わせてから少しだけスペースを開けると、光る真っ白な立方体が出現する。

 それを見た越前は顔を青ざめ逃げ出そうとするのだが、既に俺の射程範囲内に入っており逃げ出す事は出来ない。

 

「塵遁 原界剥離の術」

 

 真っ白な立方体が巨大化し、越後屋や越前達を包み込む。

 すると包み込まれた面々は分子レベルにまで分解をされる……これこそ血継淘汰である塵遁の術、今の自分が出来る最高質の術だ。

 この術を打ち破るには反魔法の剣でも持って来るか、同じく原界剥離の術をぶつけるかのどちらかをしなければならない。

 

「さて……こうなっては致し方あるまい。爆破するか」

 

 忍とは忍ばなければならない存在で武士よりは目立ってはいけない。

 しかしそんな悠長な事は言ってはいられない。越前を殺し、原界剥離の術で屋敷の一部を分子レベルにまで分解をしてしまった。

 忍が悪行を重ねている越前を殺したと知られる事は別に構わないが、出来れば足跡を残したくはない……忍とは本来は影の様な存在である。偶然の事故を装うのが1番だと起爆札を取り出して家の柱へと貼り付ける。

 

「貴様、そこでなにをしている!!」

 

 家の中を堂々と歩くと流石に他の警備達も気付く。

 俺に向かって刀を向けてくるので手裏剣を投げると綺麗に弾くのだが、それは悪手である。

 右手と左手、別々の方向から手裏剣を投げる

 

「バカか、こんな狭いところで手裏剣を投げても壁にぶつかる、なに!?」

 

「悪いが一手目でお前に磁力をくっつかせた……今のお前は強力な磁石となっている」

 

 磁遁の術を用いて武士に強力な磁力を纏わせ、その磁力を経由して手裏剣を当てる。

 1番の要人である越前は既にこの世から去っており、後は作業だけだが気を抜くことはしない。仕事が完遂するまで油断は許されない。

 殺した武士から刀を奪い、残りの武士達も始末していく。

 

『顔色一つ変えずにそこまで殺るか』

 

「俺とて好き好んでこの様な仕事をしているわけではない」

 

 全員を抹殺し終えると頭の中から声が響く。

 俺もこんな仕事、うんざりと思っている……だが、世の中には殺さなければどうしようもないクズがごまんといる。誰かがそんなクズを殺さなければ負の連鎖は止まらない。でなければ、俺みたいなのが……いや、この事を考えるのはよそう。

 

「世の中にはぶん殴っても改心する事が出来ないカスは存在している。そしてそういうカスほど偉そうにしていてロクなものではない」

 

『そりゃ同意だ。バカは死んでも治らねえっていうしな』

 

「死んでも治らなければ、いったいなにをすれば治るというのか……爆!」

 

 屋敷中に起爆札を設置しおえた。

 俺の計算が正しければ屋敷の破片は残っても屋敷の原型は留めていない様に爆破解体することが出来たはずだ。

 爆風の煙が晴れるとそこには屋敷はなく瓦礫の山だけが残っていた。

 

「扉間様、埋蔵金を見つけました」

 

「そうか。こちらも完了した」

 

「また随分と派手にやりましたね……」

 

「屋敷ごとやられたとすれば、悪の抑制にもなる……それよりも埋蔵金はどうだった?」

 

「千両箱がかなり必要です。それと幾つか見たことのない道具が多数ありまして……」

 

「金と分けておけ……道具に関しては俺達の方で調査をする」

 

「はっ!!」

 

 部下を巧みに扱い、越前が肥やしていた私腹を割く。

 どうやら思っていた以上に埋蔵金が眠っていたようで持ち運ぶのに時間が掛かる模様だ。

 越前の屋敷はぶっ壊す事が出来たが朝になれば嫌でも目立ってしまう。運び出すのは俺の飛雷神の術が必要になる……一箇所に集めるのは部下にやらせるか。

 

「集め終わりました!!」

 

「これはまた随分とあるな」

 

 ピラミッド状に積み上がった千両箱を見て、思わず呆れる。

 小さな村を襲撃し金品を巻き上げていてそれなりに私腹を肥やしていたことは知っていたが、ここまで溜め込んでいたとは思いもしなかった。

 これは大仕事になるなと飛雷神の術を用いて大名の蔵へと転送していき、最後には部下を引き連れて集落へと転移する。

 

「報告は俺がしておく。お前達は今日はもう休め」

 

 間もなく夜が明ける。

 朝一で大名に報告するべく、今から報告書を作成するので部下に休むことを指示する。休むこともまた大事な仕事の1つだ。

 部下達は分かりましたと頭を下げると各々の家へを帰還していくので俺は早速報告書を作成する。パソコンも無ければタイプライターも無いこんな世界、手書きの報告書を書き上げなければならず、いちいちガラス細工のボールペンに墨を吸わせるのは面倒なことだ。

 

「以上が事の顛末です……越前は街の金貸しとも裏で手を組んでいた模様で、裏金はタンマリとありました」

 

「そうか、そうであったか……残念な事だ。して、その肥やしていた私腹はどうすればいい?」

 

「越前が裏で手を組んでいた面々が襲撃した村に支援と復興の資金と致します。既に倒壊してしまった村もあるらしいので新しい村を発足させるのにも使わせていただく次第で」

 

「そうかそうか、扉間がそういうのならばそれが一番であるな」

 

 大名に今回の一件を報告し、今後の事についても伝える。

 どうも俺は大名に気に入られているのか、時折政治に関して意見を求められる。正直なところ、俺は政は向いていないと思っている。

 今だってそうだ。倒壊した村や貧乏な村に支援をするといった事は誰でも考えれることだ。

 

「のぉ、扉間よ……ワシはお主を隠密御庭番衆の頭領に任命をしたい」

 

「我が身には勿体のない称号、現場で動いていた方が身に合います」

 

 忍頭になることを大名から勧められるが丁寧に断る。

 現場で動けなくなり書類仕事に追われる身になれば現場の声が届かなくなってしまう。それだけはあってはならないことだ。

 

「勿体ないのぅ」

 

「忍は忍ぶ者達です。下手に表立てば武士達がなにを言い出すか分かりません……それに現忍者の頭領にはなんの問題もありませぬ。貴方様が個人的に私を気に入ってくれている事は誠に嬉しい事ではありますが贔屓はいけません」

 

「そうか……ならば次の報告、楽しみにしておるぞ」

 

「ははっ!!では、これにて失礼いたします」

 

 大名の誘いをのらりくらりと交わすとやっと休みに入る。

 とりあえずは休むことを優先とし、飛雷神の術で家へと帰宅して直ぐに睡眠を取る。無理に限界は超えなくていい。何処かの偉い人が言っていた様に小さなことからコツコツとが大事だ。

 

「さて、調べるぞ」

 

 睡眠を取って充分に休むと仕事の続きに取り掛かる。

 越前から巻き上げた大金は大名の政務活動費に当てられたのだが、越前の隠し持っていた道具を調べておかなければならない。

 時と場合によっては危険な道具を破壊しなければならない……なにやら異大陸から流れ着いた物を手に入れていたそうだが、さて……

 

「ほぅ、通信道具にタイプライターもどき……中々にいい道具を隠し持っていたな」

 

 テレビ電話の様に通信が可能な通信道具、音声に反応をして文字入力をしてくれるタイプライターもどき。

 越前の隠し持っていた道具は中々に有用な物ばかりで、それ故にコレだけの物を持ってなにをしようと企んでいたのかを考えてしまう。越前の警護をしていた武士達は俺からすればそこまでの強さの連中であり、叛逆を狙うにしても些か、いや、かなり無茶だ。

 

「むっ……なんだこの巻物は」

 

 色々と道具を掘り当てていってると見たことのない字が書かれている巻物を見つけた。

 日ノ国の文字でも日本語でもない、見たことのない文字

 

『おい、魔力を流してみろ。なんかの魔言の術式だぞ、そいつは』

 

 どう処理をすべきかと悩んでいると頭から声が流れてくる。

 魔力を流せと来たか……面倒なことにならなければいいが……仕方ない

 

「むっ!?」

 

「扉間様!?」

 

 巻物に魔力を流すと発光する。

 これは厄介な物だと察したので巻物を手放すのだが、時すでに遅し。

 どうやら時空間系の術式だった様で瞬く間に俺の体はこの場から消え去ってしまい、気付けば海の上に立っていた。

 

「ふむ……これは……迷子か……」

 

 魔力を用いてチャクラの如く水の上に立つのは容易い事だ。

 いきなりドボンと溺れるような醜態は晒さず冷静になって今の状況を確かめてみる。海の上にいるが、直ぐ近くに飛雷神のマーキングは無い。

 氣や魔力の探知の範囲をかなり広げてみるものの、反応はない……飛雷神の術があれば、一瞬で国に帰る事が出来るがマーキングした位置すら辿れないとなるとそれは出来ない。俺を飛ばした巻物は手元には無い。今の状況からして絶賛迷子状態。

 

『空気が完全に日ノ国とは違う、こりゃあ日ノ国と貿易もなにもしてねえ国だぞ』

 

「その様だな……ふむ……」

 

 てくてくと海の上を歩いていき、陸地へと辿り着いた。

 空気から氣、雰囲気まで完全に日ノ国とは異なる国……

 

「変化の術!!」

 

 ここは完全な異国、それが分かれば次の行動は容易い。

 千樹扉間の戦闘装束はやや目立つので、変化の術を用いて何処にでもいる一般人を装い、陸路に向かって歩いていく。

 

『随分と慎重じゃねえか』

 

「今の俺達は下手をすると密入国者だ。無駄に騒ぎを大きくすれば日ノ国に多大な迷惑がかかる……」

 

『つっても、ここが何処だか分かんねえと話が進まねえだろ。人を見つけたらここが何処だか訪ねねえと』

 

 それは確かに一理ある。

 ここが何処なのか大凡の見当がついてはいるが、万が一という事もありえる。

 魔力と氣の探知を最大まで広げると人気のあるところを発見したのでそこに向かうと海の家の様なものがあった。あったのだが

 

『……完全に外国だな、こりゃあ』

 

 なにを言っているのか、使っている文字でさえ異なっていた。

 俺の中にいる牛鬼は額に汗を流しており、ここが日ノ国とは文明もなにもかも異なる国に来てしまった事に困り果てていた

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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