アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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HIRETU クローバー 4 

 住居の確保は出来た。飯もなんとかなるだろう。しかしそれだけで問題はまだまだ山積みだ。

 当面の目標として……風呂がどうにかしたい。川で水浴びをするという手もなくはないのだが、日本人としてはちゃんとした風呂に入りたい。

 ならば探すしかあるまい……温泉を。土地勘も分からぬ場所で火山地帯を見つけて数日かけて渡り歩いている。

 

『公衆浴場がありゃ手っ取り早いんだがな』

 

「異国では風呂の文化1つ取っても違うという事だ」

 

 銭湯があればそれに越したことはないのだが、何処にも無い。

 ブラッククローバーの世界もといクローバー王国は魔法ありきだが、それなりに発展している筈だが……無いのである。

 仮にあったとしても今の文無しの俺には風呂に入ることは出来ないだろう。それよりも今は温泉を探さなければならない。

 

「ふぅ……暑いな」

 

『コレで暑いだけで済ませるか』

 

「大声を出して叫んでも仕方がない。暑いものは暑い。一度だけ口にしてストレスを発散させて溜めないようにしなければ」

 

『お前、時折カラクリかなんかに見える』

 

 恐らくは強魔地帯と呼ばれる火山地帯を渡り歩く。火山地帯故に暑さを感じるが、そこは魔力を身に纏って回避する。

 足に魔力を纏って木の上を歩いたり水面歩行をしたりする事が出来る俺にとってマナスキンと呼ばれる技術は呼吸をするのと同じくらいに意識をせずに容易に出来る。牛鬼は表情1つ変えることなく淡々としている俺に引いているが無理に興奮すればそれこそ暑さのループが続くというもの。

 

「ふぅ……どうやら当たりを引いたようだな」

 

 火山地帯を歩き、時折モンスターの様な生物が襲いかかってきたが俺にとっては雑魚でしかない。

 何処かに温泉は無いかと探していると気付けば日は沈み、活発的だった火山はふと急に活動を停止した。コレは原作知識で知っている。俺がやってきたここは原作に出てきたユルティム火山地帯なのだろう。

 (マナ)による探知でなく氣による探知をしてみると火山の活動が段々と停止していっている事を感じる。最後の灯火は消えないが、火力が弱まっている感じか

 

「おぉ、丁度いい頃合いか」

 

 探知方法を氣に変えればあっという間に温泉を見つけた。

 ボコボコと地面から湧き出る温泉に手を入れると程良い温度で、必死になって探し出した甲斐がある。

 身につけている衣服を脱ぎ捨てて早速、温泉につかった。

 

「はぁ……疲れが取れる」

 

 クローバー王国に流れ着いて、早数日。

 睡眠は取っているが岩の上で寝ていて、食事は焼いた川魚や砕いた木の実といった原始的な物ばかり。

 米が食いたい、この国には米がある筈だ。なんだったら醤油的な物もあるはずだ。なんとしても金を得なければならない。その為には狩猟生活を送らなければならない。数日前までなんでも食えていたのにこの生活……日ノ国に帰るべきか。

 

「……むっ」

 

 数日分の汚れを落とす様に肩までじっくりと温泉に浸かっていると人の気配を探知する。

 かなりのレベルの実力者が直ぐ近くに居る……が、悪意を持ってこちらに向かってきてはいない。敵意もなにもない。一瞬だけ身構えるが、その必要性は無いと警戒心を緩める。

 

「ほぅ、先客か。珍しい」

 

「……」

 

 野性味溢れる女性、確か名前はメレオレオナ・ヴァーミリオンだったか。

 ブラッククローバーの主要キャラでかなりの実力者で、野生の肉を食いたいが為に危険地帯で生活をする野生児。とにかく強い。

 感知に力を入れていないが、それでもかなりの実力者だと風格と力強さを感じる……だがまぁ、今は敵でもなんでもない。

 俺はゆったりと温泉に浸かりたい。故にあまり原作キャラと深く関わりを持ちたくない

 

 土遁 土流壁の術

 

 湯の中で印を結んで温泉の真ん中に土で出来た壁を作り上げる。

 

「土魔法の使い手か……見たことのない奴だな」

 

 口を動かして俺に興味を抱いているがなにを言っているのかサッパリと分からない。

 とりあえず温泉は俺の方が先に入っていたのであっちに入れと指差す。声は出していないが言いたいことは伝わったのかメレオレオナは壁の向こう側へと向かうと思ったのだが俺をジッと見つめている。

 ここで後々揉めると厄介なので喉をトントンと叩いてから手で×印を作り上げる。

 

「貴様、喋れないのか」

 

 なにを言っているのかわからないが、ここで見せる反応として喋れない事に気付くのが正しい。

 コクリと頷いてみるとジッと凝視をされる……魔力がどの程度か探知をしようとしているのか……ならば、偽装しておこう。牛鬼の存在が知られたりすれば厄介だ。

 とりあえずは向こうの壁に向かってくれたので一先ずはホッとするのだが、油断は出来ない……数日ぶりの風呂だと言うのにどうしてこうも他人に気をつかわなければならないのだろうか。

 

「ふぅ、今晩は満月か。どうだ、お前も一杯やらんか!」

 

 落ち着いて風呂に入りたいがどうもそれが許されない。

 メレオレオナが向こう側からなにか言ってくるのでトントンと壁を叩くと酒が入ったコップが飛んできた。

 酒か……別に飲めないわけではないし、酒乱なわけでもない。しかし味を知りすぎてしまうのも如何なものか……別に明日、仕事があるわけでもないのだ。多少の贅沢はしても問題はないか

 

「………」

 

 メレオレオナから渡された酒は中々に美味かった。

 仕事があるから酒は控えたりしているので付き合い程度で飲んでたが、美味い酒を飲むのは久し振りだ。だが、声は一切出してはいけない。あくまでも俺は喋れないという設定でここにいるのだから。

 

「それはリュウゼンカグラという名酒でな、滅多な事ではお目にかかれない極上品だ」

 

 またなにか言っている、味の感想かなにかだろう。

 壁越しだから読唇術の様なものも使えない……ある意味、土流壁の術は失敗だっただろうか。いや、混浴よりはましか。流石にカップルでもなんでもない人間同士の混浴はまずい。

 

「ところで貴様は何処かの魔法騎士団の人間か?」

 

 会話を普通にしてくる……いっそのこと無視してやろうか。

 原作キャラに好意的に思ってほしいわけでもない。しかし塩対応をし続けて嫌われるのもあまり良くない事だ。

 

「違うか……この火山地帯に足を運ぶ猛者となれば魔法騎士団の誰かだと思ったが……ふ、クローバー王国にはまだまだ猛者が居るようだな」

 

 血が滾ると言った気配を感じる。

 やはり下手に塩対応をしてしまうと変に勘違いをされてしまう……早いところどうにかしてクローバー王国の言語を覚えなければならない。

 風呂はゆったりと浸かっているのだが今は早く時間が過ぎろと強く願う。メレオレオナは酒を飲みながら温泉に入っているという事はかなりの長風呂になるだろう……長期戦は不利だが、久しぶりの風呂でゆったりしたい。温泉がある場所が分かった以上は飛雷神の術でマーキングしておけばいい……ここで逃げても明日、普通に遭遇しそうで恐ろしい。とりあえず身体を擦って数日分の汚れを落とす。シャンプーや石鹸を買わなければな。

 

「魔法騎士団に入団するつもりは無いのか?」

 

 当たり前の如く会話をしてきているが気にしない。喋れないという設定を作った以上は喋らない。下手に声を出さない。

 メレオレオナは俺に興味を抱いている……怒ってはいない。面白そうな奴が居るなと見ているだけだ。

 

「無い、か……ここに来れるという事は上級魔法騎士レベル」

 

 あまり無視をしすぎるとなにをしてくるか分からない。

 時折コンコンと岩の壁を叩いて返事をしておく……こうやっていると先人達の知恵は恐ろしい。こんな状況の中から自分の国とは異なる言葉を覚えていったのだから。

 

「……」

 

 そろそろ出るか。

 数日分の汚れを落とし体の芯まで温まったので温泉から出て着てきた服に着替える……汗臭いな。

 数日分の汚れを落とせたのは俺だけで着てきた服は洗えていない。とりあえず明日にでも着替えを購入しなければならない。

 

「なんだ、もう出るというのか」

 

「!」

 

 温泉から出て着替えを終えた頃にメレオレオナが出てきた。素っ裸でだ。

 

「女の裸程度で慌てるな」

 

 慌てる俺を見てメレオレオナは少しだけ呆れていた。女の裸を見た程度でと言ったところだろうが、勇ましすぎるぞアネゴレオン。しかしわざわざなんで温泉から出て来たのだろうか。

 

「私は強い奴が好きだ……かかってこい」

 

 クイクイっと指を動かすメレオレオナ。その真正面には魔導書が浮いている。

 こんな時にバトルとは……風呂上がりの後はゆったりとストレッチをしてから寝たいのに……現在、火山は止んでいて飛雷神の術で家へと帰る事が出来る。逃げるのは容易い事だが、逃げれば後が怖い。仕方ないか。

 戦わなくても戦ってもややこしくなるならば戦うしかないと巻物を取り出して別空間に収納してある刀を口寄せする。

 

「それは……刀か?ヤミと同じところで作ったのか」

 

 刀を見て少しだけ珍しそうにし、ハッキリとヤミと言った。

 大方刀が珍しい、ヤミ・スケヒロしか持っていない武器だから気がついた……刀を出したのは失敗だ……だが、気にしている場合ではない。

 戦うとなった以上はやるしかないと煙玉を投げて当たりを煙幕で包み込む

 

「なにをするかと思えば、くだらんな!」

 

 この国の住人は(マナ)を感知することが出来る。王族ともなればかなりの感知能力で、煙幕程度では意味はないだろう。

 だが、そんな事は俺も百も承知。メレオレオナが俺に向かってハッキリと攻撃心を剥き出しにしているのが分かる……だが、ここからだ。俺はクナイを取り出し投げる。

 

「この程度のなまくらで私に傷をつけられると思うな!!」

 

 煙で前が見えない中でのクナイをメレオレオナは物ともしない。

 それどころか炎を纏った拳でクナイを殴って叩き落とす。それも1つ残らず……やれやれ、本当に恐ろしい女だ。氣を上手く感知する事が出来ない者ならばクナイに当たり、感知できるものでもクナイを防ぐのに集中するものを、全て叩き落とすとは……だがしかし、甘いわ!!

 

「飛雷神峰打ち!」

 

「!!」

 

 このクナイも煙玉も全ては飛雷神斬りをする為にある。

 どれだけ感知能力に優れていてもクナイに飛雷神の術のマーキングがされた事には気付きはしない。

 

「おい……」

 

 ここに来ての流血沙汰は流石にまずい。峰打ちの部分でメレオレオナを攻撃したら不機嫌になる。俺が喋れた事に関しては一切気にしていない。

 思わず声を出してしまったが……頭に血が上っていてそんな事を気にしていないな。

 

「貴様、刃が無い部分で攻撃したな!私を相手に手加減とはナメるのも大概にしろ!!」

 

「……はぁ」

 

 なにやら文句を言っているメレオレオナ。手加減した事について怒っているのだろう。

 今にでも殴り掛かりそうな雰囲気を醸し出しており、これ以上はやっていれば本当に死闘を繰り広げなければならない。体の疲れを取るために温泉に来たのに余計に疲れてしまっては元も子もない。俺は大きくため息を吐いて飛雷神の術で家へと帰還した。

 

『あの様子だと明日も確実に居るぜ。ああいう輩は逃げたりするよりも1回どっかちゃんと戦ってスッキリさせた方がいいぞ』

 

「あんなのをいちいち相手にしていたら身が持たん。逃げるのもまた1つの手だ」

 

 別にメレオレオナを倒せないわけではないが、それなりに時間を食う。

 さっきのような飛雷神斬りの奇襲はもう通用はしないだろうし、牛鬼の力を使うのは厄介だ。

 

『折角見つけた天然の温泉もコレでパァになったな……外国での生活ってのは難しいもんだな』

 

「仕方あるまい……最悪土遁で枠組を作って水遁で水を入れて火遁で湯にした簡易的な風呂に頼るしかない」

 

 不衛生に見えるので出来ればやりたくないのだがな。

 

 

 

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

「邪魔をするぞ」

 

 扉間がメレオレオナと出会った翌々日のこと。

 もう一回、温泉にやってくると思っていたメレオレオナだったが、扉間は警戒していたので温泉には来なかった。

 自分に手加減をしてきた男になんとしてでも一発お見舞いしてやりたい気持ちのメレオレオナは黒の暴牛のアジトに足を運んだ。

 

「え、ウチになにしに来たの?」

 

 トイレとの格闘を終えてスッキリしていた黒の暴牛の団長のヤミは意外そうな声を出す。

 年中野性的な生活をしているメレオレオナがアポもなにも無しにいきなりやってきたのだから驚くしかない。

 

「ヤミ、貴様の使っている剣は何処で買った物だ?」

 

「マジ、いきなりなんなんだよ。俺の刀は特注品の一品物でローンを組んで購入したんだけど」

 

「ならばその業者を教えろ」

 

「え、なに?アネゴレオン、ステゴロから魔法剣士にジョブチェンジをするの?俺とキャラ被るじゃん」

 

 炎の剣士とかマジでヤバいわーと呑気に言っているヤミ。

 するとメレオレオナは扉間の残していったクナイを見せると呑気にしていたヤミの表情が変わった。

 

「お前、これ何処で手に入れた?」

 

「やはりコレがなにか知っているのだな」

 

「コイツはクナイつって手裏剣って武器の一種だ……久々に見たわ」

 

 懐かしいなとクナイを手に取るヤミ。

 日ノ国で割と見掛けていた物を久しぶりに手に取り若干だが童心に帰るが直ぐにメレオレオナを見つめる

 

「何処でコイツを拾った……いや、誰がコイツを使った?」

 

 スペード王国でもダイヤモンド王国でもハート王国でもない異邦人であるヤミ。

 故郷である日ノ国との文化の違いを彼はよく知っており、手裏剣がここにある事はおかしいと認識をしている。故に何処で拾ったのでなく使った誰かを問う。メレオレオナと対峙した誰かがコレを使った。それが誰かヤミは興味津々だった。

 

「それが分からぬからお前に尋ねている。刀を作った業者から何処の誰かを割り出す」

 

「そいつぁ無理だぜ。だって、刀を作ってる業者は俺にしか刀を作ってねえ……なんだったら業者に手裏剣なんてもん作ったかどうかも聞いてやろうか?」

 

 ヤミの知る限り魔法剣士はそれなりに居るが、刀を使った魔法剣士は自分しかいない。

 メレオレオナがやろうとしている方法では見つからない事を教えた。

 

「っち、お前も知らないか」

 

「なに、もしかして負けたか〜」

 

「おい、先に言っておくが私はアレを負けたとは思っていない!一撃はくらいはしたものの、あの一撃ならば私はまだまだ存分に動ける!!」

 

「お、おぅ……」

 

 軽くおちょくった結果、殺してやろうかというぐらいにメレオレオナにヤミは強く睨まれた。

 このバイオレンスメスライオンに不意打ちとはいえ手加減をした何処の誰かは知らないがご愁傷様と心の中で祈る。

 

「用件はそれだけだ……ああ、そうだ。通信魔道具で何時でも出れる様にしておけ。奴はなにを言っているのかわからないが、お前なら言葉が通じるだろう」

 

「そいつが日ノ国の人間かどうかは分からねえんだから無茶言うな……って、帰りやがったよ。相変わらず滅茶苦茶だな、あのアネゴレオン」

 

 他の団員達が珍しく居なくて良かったとホッとしつつ、タバコに火を付ける。

 

「ふぅ……刀に手裏剣ね」

 

 俺の事を真似して作ったのかと考えるが、業者は自分にしか作っていない。

 ならばメレオレオナが戦ったであろう刀と手裏剣は何処から出てきたのか……考えられる事は1つである。

 

「忍者でも紛れ込んだのか……」

 

 忍者がクローバー王国へとやってきた。

 ヤミの予想通りそれは正解であるのだが、彼が扉間に出会うまではそれなりに時間がかかる。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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