無人島を出て、フィオーレ王国の本土のマグノリアと呼ばれる街にやって来た。
ここに爺さんがマスターをしている妖精の尻尾のギルドがあるらしい。街の有名人なのか周りから声が聞こえる
「念の為に言っておくがかお前さんが7人の悪魔だった事はあまり言い触らすでないぞ」
「そういう自慢みたいなのはもうしませんよ」
昔、相当調子に乗っていた時、サタンに命を捧げていた頃とかブイブイ言わせていた時期はあった。
その頃だったら威張ってデカい顔をで俺様は7人の悪魔とか言ってたりしたが、今は丸くなっている……あの頃は沢山……。
「ここが妖精の尻尾じゃ」
過去を振り返っていると酒場と思わしき建物に来た。
堂々とFAIRY TAILと看板がついている……
「そういえばなんで妖精の尻尾って名前なんですか?動物とかの名前を付けるのはどっかの大陸の最初の魔導士ギルドがドラゴンの名前を付けたからだって聞いたことあるけど」
ふと疑問に思ったのでギルドの名前の由来を聞いてみる。
魔導のドラゴンだかなんだか忘れたけど、世界初のギルドがそんな感じの名前だったのが起源とか習った……まさか使う時が来る羽目になるとはな。
「妖精には尻尾があると思うか?その答えは永遠の謎、故に永遠の冒険が待っている……そんな思いが籠められた名前じゃ」
「尻尾があるタイプと無いタイプがありましたよ」
「え?いたのぉ!?」
深くいい感じの事を言っているところ申し訳ないけど、妖精なら見たことある。
人間に蝶の羽を付けたタイプが主に主流だったけども極々稀に動物タイプの妖精もいるらしい。
「……ま、まぁ、とにかく冒険心を忘れない為にも名付けられたギルドじゃ」
俺が余計な一言を言ってしまったせいでなんとも締まらない感じになってしまった。
余計な言葉を言わなければ良かったと軽く反省しつつギルドの入口を開くとピタリと騒がしい筈の酒場の空気が固まった。
「今、帰ったぞ!」
静かな空気の中で爺さんが声を上げると周りは再び騒ぎ出す。爺さんが帰ってきたことを盛大なまでに喜んでいる。
それだけこの爺さんが周りから親しまれている事がわかる……スゴいな。
「じっちゃん、お帰り!」
「ジイさん、随分と早かったな」
「マスター、元気そうでなによりです」
桜髪の少年、黒髪の少年、赤いロン毛の甲冑女子と俺よりも若い子がマスターに声をかける。
ギルドのマークが入ったスタンプがあるという事は彼等も魔導士ギルドの一員……。
「マスター、その後ろにいる変な仮面をつけたの誰だ?」
「おお、そうじゃの……シゲオ」
「マスターが仕事中に出会ったシゲオ。よろしくお願いします」
爺さんは俺に自己紹介をする様に言うので特に当たり触りのない感じの挨拶をする。ここで無理に威張ると後々めんどくさくなるから、ここは一般人的な風貌を醸し出す。子供の多い魔導士ギルドの為に俺が新入りだと分かると納得をする。
「シゲオ、お前なんでそんな変な仮面をつけてるんだ!」
そんな中で桜色の髪の少年が俺のつけている仮面について聞いてくる。
「えっと……」
俺だけが自己紹介をしているのでこいつの名前は知らない。
「オレはナツ、ナツ・ドラグニル。よろしくな!」
「ナツか」
ドラグニル……何処かで聞いたことのある名前だけど、なんだっけか。
なんかかなり大事な事だった気もするけど、今は思い出す場合じゃない。ナツの質問に答えないと。
「俺の素顔が気になるか?」
「おう、気になるぜ」
「……見たかったら俺に勝負で勝って剥ぎ取ったらいい」
本当に強い戦士ならば素顔は無闇矢鱈と晒さない。俺はそう教わっている。
俺の素顔を見たいと言うならば俺と勝負をして勝った時に仮面を剥がせばいい……勝者こそが絶対なのでその事に俺は文句はない。まぁ、子供がいきなりそんな事を言われたら戸惑う
「よっしゃあ!シゲオの素顔、絶対に見てやる!」
かと思いきやあっさりとノリノリのナツ。
周りもその反応に驚くかと思えばナツが新人と勝負をしやがる!と面白そうだという物見遊山な声が上がる……どうやらこのギルドではこういう感じのバトルは当たり前の様に行われている……。
「ナツ、勝負するなら外でせんかい!」
「おぅ、そうだった!外に出るぞ、シゲオ」
ついてこいと勝負するべく酒場の外へと出るナツ。
ついていくと街の真ん中に出る……え、もしかしてここでやるのか?遮蔽物とか住居が無い場所でやるのが普通だけど……ああ、でもよく見ればこの街、弄られてる跡がある。魔導士ギルドがあるからそれ対策に強化してるんだろう。
「そういやお前、どんな魔法を使うんだ?」
「ああ……へ〜んし〜ん!」
戦う前に首を傾げるナツ。
まだどんな魔法を使うのかを教えていなかったので、腰に手を添えて光を放つと……
「おぉ!変身すんのか」
「いや、
「どっちにしろずぶの素人じゃなさそうだ」
変身後の姿に驚くナツとパイプを加えたおっさんともう一人のおっさん。
どっちに賭けるかこの姿を見てヒートアップをする……オッズは俺の方が低い。まぁ、音楽プレーヤーみたいな見た目になったら誰だって貧弱そうに見える……なんかムカつくな。
「俺は俺に勝つに10000
今まで無人島に暮らして無職だ。今日からこのギルドで世話になるのならば金が必要だ。
手っ取り早く依頼をこなしたいが、それよりも賭場で自分に賭けた方が儲かりそう……。
「新入りが10000も賭けたぞ!よっしゃ、オレは20000賭ける」
典型的なパチンカスかな。ともかく俺が俺自身に賭けたことで賭場は大きく盛り上がりをみせる。
ナツはなんか自分に全財産をぶち込んでやるぜと意気込んでる……こいつ、中々の博打打ちだ。
「よっしゃあ、勝負だ!」
「……そういやナツってどんな魔法を」
「火竜の咆哮!」
「ぬぅお!?」
どんな魔法を使ってくるのかと思えば、ブレスを吐いてきたナツ。
「おまっ、滅竜魔導士だったのか!」
「ああそうだ!イグニールから教わった火の滅竜魔法だ」
「てことは第1世代か第3世代か」
「なんだそりゃ!」
滅竜魔法は古代の魔法であり、ドラゴンを撃退する魔法だ。滅竜魔法を使う魔道士は
ドラゴンに直接魔法を授かった第1世代、滅竜魔法の魔水晶を埋め込んだ第2世代、ドラゴンに直接魔法を授かり滅竜魔法の魔水晶を埋め込んだ第3世代、滅竜魔法の魔力を用いて生まれる第4世代、ドラゴンそのものを喰らって力を得る第5世代。
滅竜魔法の様になにかに対して特効が入っており同じ属性を喰らう力の根底を理解し開祖と同じ様に滅神や滅悪、滅獣、滅人の力を作り上げる第0世代なんてのも存在しているがまともに見たことはない。
「滅竜魔法は苦手なんだよ……」
同じ属性なら上位に当たる滅の力以外ならばなんでも喰らえるとんでもない魔法。マナを喰らう力が云々カンヌンを教わったが俺には向いていない。
「どうした、避けてばっかじゃ勝負にならねえぞ!」
「けどあの新入りナツの攻撃を全部避けてるぞ」
「ったく……好き勝手言ってくれるな」
拳に炎を纏いながら俺に殴りかかってくるナツ。
パイプを咥えたおっさんは俺がナツの攻撃を全て躱している事に注目をする……おっさん、安心しろ。俺に賭けて正解だと教えてやる。
「見せてやる。ステカセキングのミラクルランドセルに搭載された……あ……」
ステカセキングの本領を発揮してやろうと背負っているミラクルランドセルから魔導士大全集を取り出そうとするが手を止める。
魔導士大全集を使って千の魔法を見せつけてやりたいが、この勝負は倒さなければならず殺すことはやってはいけない。今日からは魔導士ギルドの一員で敵を殺すじゃなくて倒さなければならない……ナツが滅竜魔導士で通常の人間より頑丈に出来ているのは分かるが……ダメだ。
「お前にこのミラクルランドセルに秘めた魔導士大全集を使うのは勿体ねえ」
「なにをゴチャゴチャと言ってやがる!」
「とぉう!」
ナツの素早い滅竜魔法の攻撃を適格に避けて飛びかかる。頭に乗りかかり足で耳を挟む。
「おぉ!新入りが上をとったぞ」
「聞かせてやる……地獄のシンフォニーを!」
スイッチ、オン!
耳にヘッドホンを装着をし終えた俺は体の音量のレバーを切り上げる
『カルビ丼の【カ】の字はカッカッカッ〜、カルビ丼の【ル】の字はルンルンルーン、カルビ丼の【ビ】の字はビンビンビーン!あ〜あ〜【丼】、【丼】!』
「ぎゃああああ!?」
「どうだ!」
「アイツ、なに苦しんでるんだよ。音漏れする程度の音量だぞ!」
カルビ丼音頭を流すと苦しむナツ。音漏れする程度の音量で普通の人なら苦しむはずがない。多少うるさいと不快に感じる程度だ。
音漏れをする程度の音量に苦しむのはおかしいとナツぐらいの年頃の半裸の小年は驚く。
「滅竜魔導士ってのは通常よりも身体能力だけじゃなく身体機能も滅茶苦茶高いんだよ。音漏れする程度の音量を至近距離で聞かせりゃ常人の何倍も苦しむってわけよ」
「そうか。確かにナツは鼻や耳がいい。これはそれを逆手に取った攻撃というわけか」
「ケーケッケッケッケ、そういうことだ」
甲冑を身に纏った女の子が納得をする。
その気になれば音漏れ程度でも不快に感じる音量を出すことが出来るが、それは相手を確実にぶっ殺す為の必殺技。聴覚が無駄に優れてる滅竜魔導士になんぞ使えば確実にお陀仏ってもんよ。
「ぐぇえっ……気持ち悪い」
カルビ音頭の前にナツは敗れ、顔を青くしてぶっ倒れる。
まともに喋る事が出来ずに今にでも吐きそうな感じで……放置しておけば勝手に治る感じだから。よし。
「お、ぉおおおお!新入りがナツに勝ったぞ!」
「クソ、ナツの野郎、なに負けてやがるんだ!」
「オッズは新入りの方が高い、今夜は一杯上物が飲めるね」
パイプを咥えたおっさん、何故か半裸の男の子、どう見ても15未満の少女の順番に叫ぶ。
俺の方がオッズが高いと言うことは倍以上になっている事を期待する。この街って商業都市らしいから物価が高そうで良い感じの賃貸がないかと探さなければならない。その為には敷金礼金用意しなければ。
「ほぅ、ナツをこんなに容易く倒すとは……よし、次は私が相手だ」
倒れているナツを片付けていると今度は甲冑を纏ったナツよりちょっと年齢が上な女の子が挑んでくる。
全くと言って疲れてはいないけども連戦をしないといけないのは気苦労……しないな。連戦連勝は何時もの事だし
「お、今度はエルザとか!」
「よっしゃ。新入りが勝つに賭ける!」
「いや、流石にエルザ相手じゃ無理だろう」
「シゲオ、オレに勝ったんだから負けるんじゃねえぞ!」
「はっはっは……さっきの賭けで勝った金額全部、俺が勝つに賭ける!」
やるならばとことんやってみせる……倍プッシュだ。
さっき得た配当金を全額自分に賭けるとぶち混んでエルザと向き合う。
「換装!」
勝負は開始した。エルザは自身を眩く光らせると着ていた鎧とはまた別の鎧に着替える。
なるほど、別空間に閉まってある武器や鎧を瞬時に換装して戦う至近距離での戦闘を得意とする魔導士か。面白い。
「へ〜んし〜ん!」
先程のステカセキングで戦えない事もないが、ここは他のやつを使おう。
頭にネメスを巻いた長身の男性……ミスター・カーメンに変身した。
「先程とは随分毛色が違う姿だな」
「だが、こいつもナツをぶっ倒したステカセキングにも負けない力を有してる」
「そうか……だが、私はナツよりも強いぞ」
「俺もナツより強いんだよ!」
剣を握り斬りかかるエルザ。
俺は限界ギリギリまで待ってエルザの剣により攻撃を見極める……今だ!
「マーキマキマキマキ!」
「なに!?」
エルザが俺を斬るギリギリの直前で俺は四肢と上半身と下半身をバラバラにする。
「見よ、これぞファラオ解骨術!」
剣や槍を使う相手ならば、ミスターカーメンに限る。
どれだけスゴい剣術を持っていたとしても四肢がバラバラになり手数が増えれば両の手で戦う二刀流の剣士だとしても手数が足りずにボコれる。
「成るほど、剣が効かない相手か」
剣で倒せないモンスターは普通にいる。
エルザも最初こそはビックリしたが直ぐに持っている剣を巨大な大鎚に変える。
「残念ながらこのミスターカーメンはそんなに便利なものじゃない。これ以上はバラバラになることはできん」
これ以上にバラバラになる剣や槍による攻撃に対して無敵の強さを持っている奴は知っているが、生憎カーメンではこれ以上が限界だ。
「それは良いことを聞けた……一度に全部攻撃をすれば問題は」
「くらえ、怪光線!」
「なっ!?」
解骨術はここで終わりっちゃ終わりだが、ここで終わりなミスターカーメンじゃない。
頭部のコブラから怪光線を放つとこちらに向かって突撃しようとしてくるエルザの体は硬直をする。この光線をくらった者は皆、体がまともに動かなくなる。
「マーキマキマキマキマキマキィ!秘技、ミイラパッケージ!」
バラバラにしていた体をくっつけると巨大な布を取り出し、エルザを包み込む。
怪光線により身動きが取れなくなったエルザは為す術もなく全身を布に包まれてしまう。完全にエルザを包み込むことに成功したのを確認すると俺は巨大なストローを取り出す。
「ミイラパッケージ完了!仕上げはこの巨大なストローで……ストローで……」
後はこのストローをエルザの体にぶっ刺して血液をはじめとする体中の水分を吸い取る。
そうすることではじめてこの技は完遂する技だが、それをすればエルザは死んでしまう……殺してはいけない。ここの一員になる以上は人殺しはしない。
「ぐ……ぬぅ……」
怪光線の硬直が解けたエルザは体をジタバタと動かしてミイラパッケージから脱出をする……。
「24秒……これがなんの秒数か分かるか?」
「私が固まっていた時間か?」
「おしい。俺がミイラパッケージをしてから抜け出すまでの時間だ……これがどういう意味か分かるか?」
「……っく」
巨大な鋼鉄のストローをペロリと舐める。
10秒以上のデカい隙を作り、その間なにもしなかったとなるとそれはもう屈辱的だろう。
「私の……負けだ」
「マーキマキマキ……俺の勝ちだ」
ここで逆上し怒って襲いかかってくるかと心配をしていたが、そんな事はなかった。
10秒以上の隙を作ってしまい、その間にやられていた事実をエルザは認めて敗北を認めた……よかった、敗北を認めてくれて。これでダメだったらバッファローマンとかブラックホールとか出さなきゃいけない。ミスターカーメンやステカセキングより扱いづらいからな。
「お、ぉおおおおおお!新入りがナツに続いてエルザにも勝ちやがったぞ!」
「しゃあ!この賭け、俺の勝ちだぜ」
「ぎゃあああ、オレのヘソクリがぁ!」
俺が勝ったことで周りは騒ぐ、騒ぐ。ナツ、全財産を賭けるとか言っていてヘソクリを隠し持っていたのか。
まぁ、賭けは俺の勝ちだからそのヘソクリはありがたく俺がいただくけども。
「あ〜久しぶりに動いた」
戦いは終わったので元の姿に戻る。
最近というか島にずっと居たのであんまり動く機会はなかった。本気で殺りにいってはいないけれども良い感じの汗をかくことが出来た。
「シゲオだったな……改めてよろしく頼む」
「ああ……にしても汗が……ふぅ」
仮面の中に手を突っ込んで汗を拭く。
「その不気味な仮面を外せばいいのではないのか?」
「嫌だよ……素顔が見たけりゃ俺を倒してみろ」
敗者はなんにも言えない。それが悪魔の流儀よ。
エルザと握手を交わすと周りも俺を囲む……なんとも言えないむず痒い気持ちだ……。
「あ、俺の配当金プリーズ」
貰えるものは貰っておかないと。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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連載見てみたい
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短編集にだけしとけ