「……ふむ……やらかしたな」
『なにがだよ?』
「
『あ〜……幻術解除系の術を使われたらそれで終わりだから仕方ねえんじゃねえのか?』
「俺もまだまだ二流という証か……気付かぬ内に慢心していたとは情けない」
クローバー王国に漂流しそれなりに日月が経過した。
日ノ国に帰る手筈を整えるわけでもなければクローバー王国で第二の人生を送るわけでもなく、ただただ惰性に生きている。
俺らしくもないと思っているが……俺はこれからどういう風に動けばいいのか、そこが重要だ。ラスボスまでに主人公を鍛えてなければ詰んでしまう。だから下手に活躍することが出来ない。
『それにしても……増えたな……』
「おかげで食い扶持に困らずに済んでるな」
『おいおい』
「冗談だ」
俺のもとに来て鍛えてくださいと言ってきた男が他にも人を連れてきた。
鍛えてほしいと言う意思は本物だった、だから鍛えておくかと鍛えているのだが段々と増えてきて気付けば20人ほどになった。
会話が出来ない俺の代わりに会話をしてくれている。文字での会話ならば時間が掛かるがなんとかやっていけている……奴等は山賊や野山を荒らす猪を倒したりしている。狩猟民族に近いのだろうがおかげで食うものには困らない。
「…………はぁ……………悪目立ちはしてしまうか……」
魔法騎士団のローブを付けている奴等が見守っている。いや、監視している。
何故その様な事をしていたのか……恐らくはこの国の端っこの住民がなにかしようとしているんじゃないのか、クーデターを起こそうとしているのではないかと危惧している……しかしこの氣から見るに下民が頑張ったとしても意味は無いという見下しの視線がある。
どうせ報告書にロクでもない事が書かれるオチが待ち構えている。それを見て上の良識のある連中が苦しむと言うこともだ。
『どうする?……コイツを利用して上の偉いさんに話を通すってのは』
「あまりその手の事はしたくないが……今は一人身ではない」
気付けば20人ぐらいになっていた俺の弟子とも言える者達。
本格的な殺しの技術や魔力に物を言わせた火力ゴリ押し勝負は出来ない、しかし戦い方は幾らでもある。
「見っけ!」
今現在、缶蹴りをしている。遊んでいるというわけではない、缶蹴りと言うのは意外と忍びの極意がある。
人に見つからず動く、そして目当ての缶を蹴る。至ってシンプルだがそこに至るまでの過程に色々と出来る……
「だぁあああ!クソッ……なんで分かるんだよ!?」
「なんでって……視線を向けてきたからだろ?」
「それで分かるのお前だけだってば!」
缶蹴りをしている、鬼はアスタだがアスタ問答無用で見つけていく。
最初の頃は魔を出さない氣を用いた威圧感を与えた。そうすることで氣を探知する第六感とも言える感覚を無理矢理研ぎ澄まさせる。
魔力が無い=才能が全部無いではない、魔法の才能が無いだけで他にも色々と才能はある。恐らくはアスタが下民並の魔力だったとしても上手にやるだろう……魔力が0だから嫌でも氣を用いての気配探知能力が高まるな。
『あいつ、魔力は無いけど筋はいいな……魔力の身体向上さえあれば後は充分に戦える基礎が出来ているな……魔力貸してやらねえのか?』
『それもありだが、それならば魔力のタンクが必要だ……膨大な魔力を持っていて戦闘をしない、と言う条件が揃っている者……居るか居ないかで言えば恐らくは国王辺りが』
『王様に魔力くれって大分だな』
『ひのきぼうと10Gよりはましだ』
アスタに魔力を貸し与える、牛鬼はそれを提案してくるがその戦闘に馴れてしまえば魔力切れて補充の部分でややこしくなる。
膨大な魔力を持っていてこの国で暇を持て余していそうなのは国王ぐらい……一度見たが牛鬼の奴も俺も思わず爆笑した。あんなトランプに出てきそうな王様の様な格好をホントにしていて顔も王様感あるが威厳らしい威厳も覇気も感じれん、龍頭達が如何に優秀な者だったのか分かる。
「影分身の術」
恒例の基礎訓練である缶蹴りを終えた……アスタは自覚は無いが氣の探知を成功している。
絶天を教えてもいいがアレは魔力が無いといけない、それに等しい動力源が無いと使えない。他の面々にとりあえず氣を用いた威圧感を与える。ビクッとビビる者達が多いが徐々に馴れてきた……しかし氣の探知は早々に上手くいかん。微小ながら
「大丈夫だって!全然怒ってないから」
「そ、そうか?」
「そうだって……最初はオレも怒ってるんじゃないかって思ったけどさ、冷静に感じたら威圧してるんじゃなくて……こう、えっと……大きいなにかがあってだな」
「全然ダメダメじゃねえか!」
氣の探知について話しているみたいだが、この国に氣の概念は無い。
アスタがなにかを説明しようとするが
戦闘関係のIQは高いだろうが、こういう感じになると使えん。基礎的な学力も足りんのに魔法帝になると言うのは恐らくは上が認めない……と思えて英雄譚を幾つか刻み全員から魔法帝にと言われる。ナルト一直線だの。奈良シカマルポジションが居ないから苦労が見える。
「じゃあ、よろしくお願いしまーす!」
手頃な木の枝を互いに持つ。アスタは将来的に剣士になるのだから剣術を教えるのがいい。
勿論それ以外の技術も教えてもいいが言語が通じなければ教えるものも教えられない、やはり言葉の部分がネックだ。文字による筆談をしても小まめに勉強するタイプでないのはハッキリと分かる。普通ならばAを出せばいいと言うところでAを出せない、ではなにか代案を考える。自分の持っている武器で代案を考える……その基礎的な知識が無い。戦闘IQだけが無駄に高い発想力等が大きいのは良いこと……人間の武器は多様性だからの……。
「とぅ!せい!はぁ!」
木の棒による攻撃を回避する……こんな物は写輪眼を使わなくてもどうにでもなる。
右に左にと攻撃をしているが、ただ素早い一撃……コレが現実ならば鍛えた筋肉は正直に答えてくれるがこの世界では魔力という物で身体能力は幾らでも底上げすることが出来る。アスタには素の状態で超人的な運動神経を手に入れないといかんからの。
「クソッ……速すぎるっていうかどうして……」
氣を探知する探知能力は手に入れた。それを応用した戦闘技術、絶天以外にも色々とある。
絶天は氣を一転に集中するが氣を探知する事が出来るのならば回避は可能だ。アスタは攻撃が当たらないが諦めることはしない。しかし回避速度が速すぎるからどうすればいいのか……無闇矢鱈に攻撃を当てても無理……アスタはどうすればいいのか、氣の探知から逆算しての攻撃を当てる、コレは割と基礎だ。
「考えろ、考えろ……この人はオレ達をバカにしているんじゃない。技術をしっかりと教えてくれているんだ」
ブツブツと口元を動かしている。
それは考えることを始めたという証拠……口に出ているのはと言いたいが俺も未だに術を使う時に術名を口で言ってしまう。悪癖だ。
必殺技の名前を叫ぶと言うのはその必殺技を意識して使うこと、意識を殺して使わなければ忍ではない。
「魔の探知は出来ないけど誰かがなにかを見ているのとか何処になにが置いてあるのかなんとなくは分かるようになった、オレに対して微弱だけど向けている……意識を逸らす、のは無理だし……意識を読み取る?右に行くか左に行くか……よし」
どうやら答えが決まったようだ。
アスタは木の棒を構えた……こっちに対して先ずは大振りで攻撃してくる。その程度は簡単に回避することが出来る、しかしそれならばとアスタは集中している。戦闘のセンスは本物……アスタだけでなく他の者達もしっかりと基礎を学んでいる。如何に普段が怠惰か分かったであろう……もっとも、上に上がる制度が無い可能性があるだろうが。
「やった!って、うぉあ!?」
「俺が攻撃を受けた程度で喜ぶな……この程度なら何時でも魔力による身体向上でどうにでもなる」
「いてて……やっぱ強え……全然オレは相手にならねえ……けど、1回は当たったんだ……」
俺に攻撃を回避させず攻撃を受け止めるという事が発生した。
それについて喜ぶのだがまだ修行中だと木の棒で小突けばアスタは倒れる。ただ移動しているだけの俺を止めた……アスタに俺がどういう風に見えているか分からんが……嬉しいのか……そうか……。
「ふむ……久しい感覚だな……」
新しいなにかを見つけたり出来たりすることで喜ぶ……大人と子どもの中間ぐらいだったが為にその手の感覚が薄れていった。
昔は新しい事が出来たと喜ぶことが出来ていたが今ではその手の物は覚えておかなければややこしいと思えるぐらいだった。
「って、もう時間が来ちまった……」
アスタに色々と教えてやるかと考えていると目覚まし時計が鳴った。
下民で魔導書を持っている者やそうでない者達が居る、その上で俺が1人1人指導している……が、各々時間があったりする。故に制限時間がある。一応は保護者達には鍛えていると言う話は通してある。しかしそれでも突然帰ってこなかった偶然にも1日帰る事が出来なかった等では心配される。故に時間が来たり日が沈んだ頃に家に1人1人帰している。当然飛雷神の術で村や街近くの適当なところにマーキングしている。流石に村の中で人が現れれば驚かれるからな。
1人、また1人と帰して行く。空間転移系の術は実に便利だ。
「いや〜パッと行ってパッと戻れるの便利っす……シスター・リリー、ただいまー!」
「アスタ、おかえりなさい……今日も頑張ってるわね」
「はい!日に日に力をつけてきてるっていうか……いやぁ、コレで魔法に覚醒したらあっという間に魔法帝ですよ。ハッハッハ」
なにを言っているのか分からんがバカな事を言っている事だけは確かだな。
他の影分身の術が消えた……っ……
「だ、大丈夫すか!?」
影分身の術は経験値が色々とフィードバックされるからな……20人、1人1人に合わせて修行をしているから20人分のデータが入る。魔導書を持っていない子供と魔導書を持っている青年達だったりで1度に多くの情報を送られてきてしまう。20人の情報整理と今後の方針を決めたりしなければならないからな。
「あの、少し休みましょう……貴方の分身魔法、結構疲れるんでしょ?」
「……」
アスタが休憩とアピールをしてくる……脳が痛むがコレしかないか。
如何に牛鬼の膨大な魔力があろうとも知能面は俺だ、その辺の負荷は牛鬼には掛からない……流石にシャーロック・ホームズやジェームズ・モリアーティの様なスパコン並の演算処理能力は宿していないからな……目を写輪眼に切り替えて少しだけ休んでいいかとこちらの国の言語で言っている様に見える幻術を仕掛け、少しだけ休憩する。
「……アンタがアスタを鍛えてるのか」
白湯を出してもらい一息ついているとユノが現れた。
俺の知らないところでアスタがユノに勝負を挑んで勝利をした……その結果、ユノは少しだけ焦りを感じている。
まだアスタに魔力そのものが無いことを知らず反魔法の力が無い。ただ純粋に鍛え上げた身体能力だけでアスタはユノを上回った。
勿論、ユノも修行はしている……だが、壁にぶち当たっている。本来ならばそれは巻物、いや、魔導書を貰えば勝手に解決するものだ。魔導書の魔法という強力な魔法を使えるようになる。風の精霊のシルフを従える事が出来る。
孤児だが実際のところは王族だ。
才能は本物だ……しかし残念な事に環境が悪い。周りが自分よりも劣っていたり自分以上の存在が居ない。
アスタの事をライバル視しているがアスタと同じ事をしても意味は無い。この世界の住人は基本的には1人につき1つの属性の魔法を覚える。だから、アスタとは違うやり方でないと壁を越える事が出来ない。
壁にぶち当たっている……それが原因で妙な焦りが生まれては困る。
今の段階で会得出来る技が幾つかある。ユノの才能ならば簡単に会得する事が出来るだろうと掌の真ん中にインクを濡らしそこを基点に螺旋丸を作り出す……会得するのに時間がかかったが仕組み自体は至ってシンプルだ。
「コレは……」
眼を写輪眼に切り替え、ユノに幻術をかける。
この技を模倣してみろと、風属性の魔法を使えるのならば会得は難しいが魔導書が無くても会得出来る強力な武器だ。
ユノに水風船を破壊しろ、ゴムボールを破壊しろ、風船に100%の力を留めろと幻術越しで教える……ユノは自分の手に魔力を集中させる。片手に魔力が集まっていき小さな竜巻が巻き起こる……ので、螺旋丸の第一段階のみを極めた魔力をぶつける。ユノの掌にあった小さな竜巻は破壊された……螺旋丸は一箇所に同じところに回転していてはいけない。勿論、それはそれで気円斬と言う武器になるが気円斬は切断、螺旋丸は打撃と切断の2つを行える。純粋なパワーのぶつかり合いになった時に螺旋丸は圧倒的な力を見せる。
「攻撃だけではいかんからもう1つ教えてやろう……風遁・風王結界」
「消えた!?」
アルトリア・ペンドラゴンの風王結界と同じ理論、風を操り光の軌道を逸らす。
そうすることで透明になる……俺は印を結んで風属性の魔法を作っているがユノは元から風を操れる。コレに必要なのは膨大な魔力、そして光を屈折するほどの風を維持するメンタル……魔導書があればオートで勝手に動くが手動でやっているからな。
『1番大事な飛雷神の術は教えねえのか?』
『飛雷神の術は覚えようと思っても早々に覚えられない』
風王結界と螺旋丸の2つをユノに教えるが、それを最も効率良く活かす術、飛雷神の術を教えないことを牛鬼は言ってくる。
この術は覚えようと思えば覚えれるが……大半は俺の様にはいかない。俺はあらゆる物にマーキング出来る、しかし大半は自分の属性と同じ物にしかマーキング出来ない。水属性なら水に、土属性なら土、鋼ならば鋼にしか出来ない。遠距離移動はマーキングしたものを感知し、更に具体的に何処にどういう風にマーキングしているかなどを想像しなければならず、通常の飛雷神の術でもかなり難しい。
「では、失礼する」
飛雷神の術を使い俺は家に帰った。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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短編集にだけしとけ