アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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悪魔の妖精 3 

「マスター、ただいま」

 

「おぉ……おお!」

 

「ちょ、泣かないでくださいよ」

 

 妖精の尻尾に正式加入をし、数週間程経過した。

 賭博によって得た金は自分の部屋を借りたので一瞬にして消え去った。マグノリア、商業都市だから魔界よりも物価が高い。なので思ったよりも金が必要だったりする。盗賊とか山賊とかを討伐する系の依頼はこなしていない。ナツ達と戦ってしみじみと分かった。俺は人を相手にする事が相変わらず苦手だ……爺さんに諭されても根本的な部分はあいも変わらず……。

 

「だって、だってお前さんなにも壊しとらんじゃろう」

 

そこ(・・)で泣きますか普通」

 

 仕事完遂の報告をすると大粒の涙を流す爺さん。俺が仕事先でなにもぶっ壊さなかった事を喜んでいる。

 入った後に調べてみたんだがこの妖精の尻尾、フィオーレ王国でもトップと言われるほどの力を持っている反面、問題行動を起こしまくるので有名である評議院に目を付けられまくってるらしい。

 ナツとかエルザとか半裸の男もといグレイとか、強い奴ほど問題行動を起こしている……近隣の村に被害を与える魔獣の討伐をしただけで大号泣は引く

 

「普通はその程度の事で浮かれるな、なのにな」

 

 前に居た環境が過酷だっただけに違和感しか感じない。なんとも言えないむず痒い気持ちになっていると顔がメシメシという。

 この程度のクエストをこなした程度では浮かれるなという通達だろう。7人の悪魔ならばもっともっと凄い依頼を受けろって事だ。

 

「マスター、ここにある依頼よりもっとエグいのはないんですか?」

 

「2階にある」

 

 2階か。

 そういえばこの酒場の一階には驚くぐらい人はいるけども、二階には全然人がいない

 

「じゃが、2階には行ってはならん……彼処にあるのはただのクエストではない。S級クエストじゃ……あれを受けていいのはS級魔導士のみ」

 

「ほぅ……S級クエストか」

 

「S級魔導士になりたければ1年に1度のS級の昇格試験を受けるしかない……ま、頑張って依頼をこなすんじゃの」

 

 やっぱり何処の世界も手柄を多く取ってこいっていう成果主義なところはあるか。

 S級クエストと言う今あるクエストよりも更に上があると知れただけでも俺はモチベーションが上がる。

 

「さて、次の依頼をこなすか」

 

「シゲオ、そんなにポンポンとやらなくてもいいぞ」

 

「借りた賃貸が13万Jで思ったよりも高かったんです……貯金作らないと」

 

 半年分の生活費を一気に貯め込んでクソみたいなニート生活を送ったりもしてみたい。世の中は金と知恵と偉い何処かの誰かが言っていた。

 13万×6で78万でそこから水道代金とか食費とかも含めると……250万Jか……家具とか揃えないといけないし、それが最低限の金といったところか。

 

「なにか良い依頼は……っち……」

 

 魔法薬に必要な薬草の採取、非常に珍しい食材の捕獲、箱を閉じている魔法の解呪、どれもこれも簡単にこなせそうな依頼だ。

 その代わり7000Jとかの格安の依頼料……これ、途中でギルド連盟とかがマージンで値段を差っ引いていて、本当はもうちょっと金があるらしいんだよな。

 

「討伐系の依頼以外はどれもこれも似たりよったりの依頼料か」

 

 珍しい食材を取ってくる系の依頼ならばいっそのこと、グルメ界に行ってこいとの依頼があれば面白いのに。

 とはいえ、アースランドはグルメ界との交流も貿易もとっていない。あちらの世界の人間は数が少ない上に舌が越えているから、わざわざこちらの世界には来ない。こちらの世界のコ・カコーラよりもメロウコーラの方が何百倍も美味いからな。

 

「人じゃない討伐系は……」

 

 千桁の依頼には興味はない。万を超えた依頼じゃなきゃ下手すりゃ移動する費用だけで赤字になることもある。

 転移系の魔法は使えるから俺にはあんまり関係はなさそうだが、複数の人と組んでやった場合だと疲れるから使わない。

 

「悪魔の討伐依頼か」

 

 人を相手にしない討伐系の依頼の中で最も良い討伐依頼。

 30万Jの報酬で村の辺境に巣食う悪魔を討伐してほしいと言うオーソドックスな依頼……悪魔の世界は完全実力主義、他の悪魔が悪魔を殺したとしても誰も文句は言わない。この世は弱肉強食の世界と教えているからな。

 

「マスター、この依頼を受注しといて」

 

 お金の為に悪魔をぶっ飛ばす……反社会的な感じ、悪でいいね。

 マスターに依頼書を渡すと、ギルドから出て依頼をしてきた村がある方向を向く。

 

「へ〜んし〜ん!」

 

 ここから交通機関を利用しても最低でも半日以上は掛かるところに依頼主がいる。

 いちいち歩いていたらキリは無いので魔法を使い変身……全身黒色で顔のど真ん中に穴が空いている悪魔、ブラックホールへと変身をする。

 

「四次元ワープ!」

 

 はい、あっと言う間に瞬間移動。四次元を制するブラックホールに掛かればワープなんてあっと言う間なもんだよ。

 っむ……周りには人がいない。どうやら若干転移先を間違えた様だ……まぁ、悪魔は些細な事は気にしないというものだ。

 

「まだか!まだ魔導士ギルドの者はこんのか!」

 

「落ち着いてください村長」

 

「そうですよ、まだ依頼を出したばかりでそんなに直ぐに」

 

「魔導士ギルド、妖精の尻尾だ!」

 

「もう来たぁ!?」

 

 悪魔の事で村がモメてるのでカッコよく登場をしてみせる。

 爺さんが今頃は受理をしているであろう依頼の為にまだ来ないと思っていた依頼主は目玉を飛び出して驚く。流石にこんな秒で来ることは予想外だろう。

 

「って、まだこんな若いじゃないか!」

 

「おいおい、人を見た目で判断するのは良くないことだぜ」

 

 それに俺は妖精の尻尾の子供組の中じゃ年長者な方だ。酒の方は飲めねえけど……飲んだらなにするか分からないからな。

 酒云々は置いておいて俺の事を見て、少しだけガッカリとする依頼主達……ったく、本当に強い奴は無駄に威張ったりしねえってのに、しゃあねえな。

 

「へ〜んし〜ん!」

 

 必要なのはイャンパクト。

 俺が舐められない様にする為の1番の魔法……それは俺がなれる姿の中でも最も強い荒れ狂う猛牛、バッファローマン。

 

「お、おぉ!」

 

 鋼の如きその肉体を見て、言葉を失う依頼主達。

 

「このバッファローマンは俺様に10000000パワー……っと、これ今は関係の無い話だな」

 

 圧倒的な力を持つこのバッファローマンを自慢してやりたいところだが、そんな場合じゃない。

 腕をバキバキと鳴らして依頼主達に今回の依頼の標的を尋ねる。

 

「さぁ、どいつを血祭りにあげればいいんだ」

 

「ず、随分と物騒だの」

 

「今からぶっ飛ばす相手に行儀良くするほど俺は育ちがいいわけじゃないんだよ」

 

 相手は人間じゃないから、ぶっ飛ばしたとしても誰も何も文句は言わない。

 まぁ、精々言うならば今回の相手がゼレフとか言う400年前から生き残っている魔法に失敗した愚かな魔道士が作り上げた人造的な悪魔である事を祈るぐらい、アレはぶっ殺しがいがある。

 

「彼処です!彼処にある家に悪魔は住み着いております」

 

「悪魔が家に住み着いている、だと?」

 

 村長に案内をしてもらうと悪魔の住み着いている家に辿り着く。

 おかしいな。悪魔ってのは基本的に暴れたりするもんだし、家に住み着くタイプはあんまり見ない。社会に溶け込むタイプの悪魔……いや、知的な悪魔ならばもう少し上手くやる。力で抑えるタイプじゃないならば尚更だ。

 

「どうやら一筋縄じゃいかなそうか」

 

 鬼が出るか蛇が出るか、こういう博打みたいなのは悪くはねえ。

 なにが出てきても問題が無いようにバッファローマンの姿のままで悪魔の巣食うと言う家に向かっていく。

 

「おう、ここに悪魔が居ると聞いたがそいつはどいつだ!」

 

「っ!」

 

 家に入るとそこは荒れていた……なんてことは無かった。

 普通に生活感溢れており住人と思わしき子供がビクッと反応しており、慌てていた。

 

「お前が悪魔……いや、氣が違うか」

 

 悪魔の気配はちゃんとするが目の前にいるちびっ子じゃねえ。

 となると知性ある悪魔が奴隷として従えている……いや、それだったらはなっから村全体を従えている。わざわざ魔導師ギルドに依頼するって事は……キナ臭いな。

 

「ミ、ミラ姉は渡さない」

 

「っむ……」

 

 バッファローマンの姿になっている俺に怯えて足を震わせても、なにかを守る様に庇う少女。

 姉……悪魔の気配はするが少女からは一切しない。

 

「姉ちゃん、逃げて!ここはオレ達が食い止める」

 

 今度は男の子が出て来て誰かを逃げるように促す。

 

「っ、止めろ……そんな事をやってもお前達が死ぬだけだ!」

 

 2人が言っていたミラ姉と言う人物と思わしき女の子が出てくる。

 何処からどう見ても普通の女の子じゃないかと思ったら右腕が異形な姿をしている……ふむ……。

 

「お前、私を殺しに来たんだろう……殺すなら殺せ……けど、リサーナとエルフマンは」

 

「ミラ姉、やめて!」

 

「そうだよ……姉ちゃんは悪魔でもなんでもない」

 

「ちょ、ちょっと待て。イマイチ事情が飲み込む事が出来ん……少し冷静にならせてくれ」

 

 必死になってミラとやらを庇おうとする2人。容姿が似ていることから弟と妹なのは分かるが、イマイチ状況が飲み込めない。

 

「冷静って、貴方さっきミラ姉を出せって」

 

「俺は悪魔を出せと言った。悪魔の力を使ってる奴とは一言も……そもそもで人殺し系の依頼はどんなギルドであろうと絶対にしてはいけないルールだ」

 

 第一、俺がこいつを殺す理由は見つからない。

 俺もそうだがこの3人もイマイチ状況を掴めていないので俺は適当に腰掛け、バッファローマンの姿から元の姿に戻る

 

「変身してたの?」

 

「まぁ、そんなものだ……っと、俺の事はどうだっていい。問題はお前達の事だ。俺は悪魔の討伐の依頼を受けてやって来たんだが……これはいったいどういうことだ……お前、悪魔じゃないだろう」

 

 今までの話を纏めて推理すれば、今回の依頼の討伐対象はこのミラと言う子だ。

 だが、この子からは人間の気配が強く微弱な悪魔の気配を感じるだけだ……。

 

「村の教会に悪魔がいて、その悪魔をミラ姉が追い払おうとしたら悪魔が取り憑いたの」

 

 俺が話の通じる相手だと分かると妹と思わしき子は事情を話してくれる。

 見たところ普通の女の子だが、それで悪魔を追い払おうとしたとは随分と度胸があるみたいじゃねえか。

 

「それから村の人達は……姉ちゃんが悪魔に取り憑かれたって騒いで、魔道士ギルドに依頼を……」

 

「……1つ聞く、この村で魔法に詳しい奴とかは居るのか?」

 

「いや……居ねえよ。そんなのが居たらわざわざ私が悪魔なんか追い払うか」

 

「はぁ……そういうことか」

 

 ミラの言葉を聞いて、点と点が繋がった。

 

「先ず、大前提としてミラ、お前は悪魔に取り憑かれたわけじゃない……無意識の内に魔法を使ったんだ」

 

「魔法……私が?」

 

「ああ。別に驚くことじゃない。こっちの住人は誰だって魔法を使える可能性を持っているんだ」

 

 このアースランドの住人は全員体内に魔力を宿している。

 最終的には才能の有無が関係してくるが魔法は覚えることができる……稀に気付かずに無意識で魔法を使っちまう子供が居たりするのは小耳に挟んだが、実際に目にするのははじめてだ。

 

「悪魔に憑依されるのが魔法だって言うのか!」

 

「逆だ、逆……お前は悪魔に体を乗っ取られたんじゃない。接収(テイクオーバー)、生き物の体を乗っ取る魔法……俺も使っている」

 

 悪魔に体を乗っ取られたんじゃない、悪魔の体を乗っ取ったんだ。

 どんな悪魔が宿っているかは知らないが若い子供に乗っ取られるとは、いったいどんな悪魔だった、いや、今は考えないでおこう。

 

「じゃ、じゃあ姉ちゃんは悪魔に取り憑かれたんじゃないんだね!」

 

「ああ……俺も同じ魔法を使っているからよく分かる。お前から悪魔の気配は感じるが悪魔じゃない……にしても、スゴいな。悪魔を接収するなんざ、中々だ」

 

 なにか特別な訓練を受けているわけでもないのに悪魔に立ち向かっただけでも立派だってのに……鍛えれば化けるな。

 姉が悪魔に乗っ取られたんじゃないと分かると嬉しそうにする妹と弟だが、ミラだけは浮かない顔をしている。

 

「……らない」

 

「ん?」

 

「こんな魔法、いらない!こんな力、私は必要は無い!家族で、エルフマンとリサーナと平和に暮らせるだけでいいんだよ」

 

 こんな力はいらないと自分の右腕を強く睨みつける。

 村の人達から悪魔と蔑まれ、元に戻らない腕とくれば誰だって嫌になるもの……

 

「お前の思いは分かった」

 

「お前、魔道士なんだろ。私の腕を元に戻す方法を教えてくれよ!」

 

「……それでいいのか?」

 

「いいに決まってるだろう。元に戻りさえすれば」

 

「現実はそんなに甘くないことぐらい、理解しろ」

 

「っ……」

 

 魔法とは無縁な村に普通に暮らしていて、悪魔がやってきた。

 その悪魔をやっつけようとして無意識の内に接収の魔法を使い、悪魔の体を乗っ取った。そして魔法に詳しくない村の人達から悪魔に取り憑かれたと激しく蔑まれる様になった。

 

「お前の平穏に暮らしたいと言う思いは否定はしないが、お前とお前の家族の平穏を乱す奴はごまんといる。この国は治安が悪いからな」

 

 闇ギルドは沢山あるわ、黒魔導士の妄信的な信仰をする組織があって禁術に手を出すわ、封建主義な貴族が残ってるわ闇が多い。

 平穏に過ごしたとは簡単に言えるが、それを実行することは難しい……その事をミラも薄々感じている。

 

「……信念はあれば越したことはない……だが、力は必要だ。力無き信念なんてもんはただのゴミだ」

 

 なにかを成し遂げる為には圧倒的な力が必要だ。そしてその力を手に入れる事が出来るのはほんの一握り。

 そしてその一握りの中にミラは入っている。無意識の内に悪魔を接収するなんぞ才能があるとしか言えない。

 

「……私は、どうすればいいんだ……」

 

「少なくともこの村に居たらダメだな」

 

 悪魔をやっつけようとして接収したミラを悪魔に取り憑かれたと蔑んでる時点でもうダメだ。

 今から接収したんだって説明を……あ〜そう言えば、今回の依頼をどういう風に後始末を付けるとか考えてなかったな。

 

「何処か新しい場所を見つけないといけない」

 

「……だったら、だったらお前の入ってる魔道士ギルドに入れてくれよ」

 

 こことは違う何処かに行かなければならない。そう教えるとミラはとんでもない事を言い出す。

 俺みたいなのが入ることが出来ギルドでナツとかグレイとかの若い奴が入れるんだからミラでも入ることは出来る。

 

「あんたも同じ魔法を使うんだろ……教えてくれよ」

 

「俺は、人になにかを教えたりすることはあんま向いてないんだけどな」

 

 手加減が本当に苦手なんだ。気を抜いてしまえば人を殺そうとしてしまう。

 同じ悪魔だったとしても俺とミラじゃ力の差がありすぎて……なんかやらかしそうで怖い……けど、まぁ……なんとかなんのだろうか。

 

「リサーナ、エルフマン……私はこの家を」

 

「私も行く!」

 

「お、俺も!」

 

「くっくっく……美しい姉弟姉妹愛だな」

 

 自分はここを出て妹と弟を安全にしようと考えてるみたいだが、2人はついてくる気満々だ。

 ミラは言う前に阻まれたので一瞬だけ驚くがすぐに嬉しそうな顔をし、涙を流す……

 

「悪魔を宿した女が涙は似合わない……笑えよ」

 

「……そういえば、お前の名前をまだ聞いてなかったな」

 

「シゲオだ」

 

「シゲオ……ありがとな」

 

「礼を言うにはまだ早いぞ……村人達にそれ相応の報復をしないと」

 

「なっ!?そんな事をやったら」

 

「まぁ、聞け……このままだと色々とまずい」

 

 折角、俺なんかを拾ってくれたマスターの顔に泥を塗るのは申し訳ない。

 ミラが村を助けたと言うのに蔑まれるのはなんだかムカつくし、それ相応の報復をしないといけない。後、こんな依頼を持ってきた魔道士ギルドの組合に文句を言っておかなければならない。

 

「あ、出てきたぞ!」

 

 ミラだけでなくリサーナとエルフマンとの話し合いを終えた。この家を出ていく準備を終えたので家を出ると依頼してきた村長の取り巻き的な人が声を出す。うんともすんとも言っていないからどうなっているのか気になんだろうな。

 

「それで悪魔は……まだいるじゃないか」

 

「ああ……今からこの子に取り憑いた悪魔だけを倒す。あんた等の依頼は悪魔を倒せ……魔道士ギルドは人殺し系の依頼は出来ないからな」

 

 ミラを蔑んだ目で見てくる村の人達。接収について説明をしようと思ったが無駄だと諦める。

 今から悪魔を倒す事を見せてやると村人達を集めると直ぐに集まる……余程、悪魔の脅威に怯えているな。

 

「お、おい、大丈夫なんだろうな」

 

 沢山の村人が集まってきて本当に大丈夫なのかと心配をするミラ

 

「ミラ、悪魔は都合のいい事しか覚えようとしないが約束は守るんだ……さぁ、今から彼女に宿る悪魔を退治してみせましょう」

 

 後はもうなるようになれとしか言えない。

 俺は自分の被っている仮面に手をつけ、思いっきり引っ張る

 

「フェイス、フラァアアアシュ!!」

 

 素顔を晒すと燦然と輝く。眩い光に村人やミラ達は目を閉じてしまう。

 この技こそ俺が巻き起こす奇跡の魔法……っく……。

 

「はぁはぁ……悪魔退治完了だ……っく……」

 

「腕が……!」

 

「お、おぉ、ミラに宿ってる悪魔が!」

 

 異形な右腕は元の綺麗な女の子の右腕に戻った。

 それを見た村長はミラから悪魔が完全に消え去った事を喜ぶ……。

 

「クエストは達成、した……約束の報酬を寄越せ……っ……」

 

「あ、ああ……大丈夫か?」

 

「あんた等から金を受け取って、家に帰る……ぐらいはな」

 

 フラフラの俺を心配する村長だが、あんたに心配されるほど弱っちゃいねえ。

 村長から報酬の30万Jを受け取ると村の外へと出ていく。

 

「悪い、待たせたな」

 

「ごめん、ちょっと荷物が重くて」

 

「さっきの光、スゴかったよ!」

 

 後で会おうと打ち合わせをした場所で落ち合うミラ、エルフマン、リサーナ。

 

「にしてもスゴいな……私の腕を少しの間だけ元に戻すなんて」

 

 ポンと右腕を悪魔の姿に変えるミラ……おいおい

 

「まだ接収した姿から元、の人間の姿に戻し方を教えてねえぞ」

 

「なんかコツを掴めた気がする」

 

「よかったねミラ姉」

 

「これでもう悪魔だって言われない」

 

 元の腕と悪魔の腕と交互に入れ替えるミラ。

 こんな事が出来るって事は……フェイスフラッシュの影響だろうな。あれってなんらかの奇跡を巻き起こす技だし。

 

「オレ達もあんな風に魔法を……シゲオ!?」

 

「ああ、んだよ……」

 

「物凄く汗をかいてる……大丈夫なの?」

 

 汗だくな俺の心配をしてくるリサーナ。

 

「問題無い……と言いたいんだがな」

 

「おぉ、おい……お前、やっぱりさっきのは」

 

「そうだよ……予想以上にパワー使うんだ」

 

 フェイスフラッシュはその気になれば腐ったドブ川を一瞬にして飲めるほどに清らかな清流へと変える事が出来る。

 俺はまだまだ未熟なフェイスフラッシュだと通常よりもパワーを使ってしまう。

 

「すまねえ……私なんかの為に……」

 

「気にするな……ほらよ、30万Jだ」

 

「なっ……こんなもんいらねえよ!」

 

 報酬の30万Jを差し出すと突き返してくるミラ。

 

「今からお前達は新天地に向かうんだから、何かと実入りが必要だ」

 

「だからって、こんなの受け取れけねえ……シゲオ、お前の気持ちは嬉しいけど……これじゃあ、これじゃあ貰ってばっかだ」

 

 さっきから俺の好意に甘えてしまっているミラ。何一つ恩を返せてないと自分自身を落胆してしまう。

 はぁ……まぁ、施しなんてあんま受けたくないな。

 

「悪魔にだって友情はあるんだよ……あんなのを見せられてなにも言えない……」

 

「けど」

 

「それならこれはどうだ?この30万Jは俺から借りた扱いで、後々纏めて返してほしい」

 

「そんなの言われなくても返すよ」

 

「……よし、じゃあこうしよう。お前達に依頼をする……俺の家で週に何回か家事をやってくれ……その上で30万を貸してやる」

 

 本当ならばこの30万Jはミラ達が使うべきものだ。

 悪魔の討伐ってのを達成したのはミラなんだ……他人の手柄を横取りするほど、俺は落ちぶれちゃいない。

 

「ミラ姉、受け取ろうよ」

 

「リサーナ」

 

「オレ、魔法の事は出来ないけど家の事だったら手伝えるよ」

 

「そうだよ。シゲオはこのお金をミラ姉に受け取って欲しいんだよ」

 

「っ……っ……本当に、なにからなにまでありがとう……」

 

「ああ……泣きたい時は思いっきり泣いて、その後に……ふぅ……」

 

「シゲオ、大丈夫なの?姉ちゃんの右腕を元に戻した時のあれで魔力が」

 

「大丈夫……とは言い難いが歩けないわけじゃない。本当ならパッとマグノリアの街に移動できるんだが久々過ぎて体力も魔力も持ってかれてる……多少の時間が掛かるが歩いてマグノリアを目指すぞ」

 

「お、おう」

 

「うん!」

 

「なんだか旅みたいだね」

 

 リサーナ、冒険が本当の意味ではじまるのは妖精の尻尾についてからだ。

 妖精の尻尾に入って早数週間、まさか自分が導く側の人間になるとは思いもしなかった。けど……なんだろうな。不思議と気持ちは悪くはない。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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