「お疲れ様でーすっと」
「ムー!ムー!」
「あ〜……大丈夫じゃなさそうッスね……」
アメフトのシューズとグローブを購入した翌日、アメフト部に向かった。
朝練が何時とか具体的なのを聞き忘れてたけども、まぁ、それよりもと思いつつアメフト部の部室のドアを開くと口を縛られている男の子が……主人公である小早川瀬那くんがいた。
「とりあえず、口だけは開くッスね」
「た、助けてぇえええ!!」
「どうしたんスか?ここに来たって事はアメフト部に入部希望って事っすよね?」
「そうだけど、違うぅうううう!!」
なにがそうだけど違うんだろう。
とりあえずアメフトの用具は揃っているので着替えてみる。俺の身長190cmもあるのにピッタリ合うサイズに仕上がってる。
ご丁寧に背番号は4番、バスケをやってた頃にずっと背負ってた数字ッスね。
「よ〜糞イエロー、ちゃんと来たか」
「ほ、ホントに入部希望者!?」
「うぉ、縦にも横にもデカい…………はじめまして、黄瀬諒太ッス!」
着替えを終えるとヒル魔さんと栗みたいな頭の人がやってきた。
栗みたいな頭の人は縦にも横にも大きな体格をしておりとりあえずは握手を求めると両手で握手をしてくれるけどもこの人の怪力凄まじいッスね。
「わーい!部員が4人になったって、セナくん!?」
「く、栗田さぁああん!!」
「ケケケ、高速のランニングバック見つけてきたぜ!さぁ、セナくん入部届にサインをしようか!」
「ぼ、僕は選手じゃなくて主務希望なんですよ!!」
「だったら選手と主務の両方をやりやがれ!」
なんかかなりのめちゃくちゃを言ってるッスね。
とりあえずはとセナくんが縛られているロープから開放してみればヒル魔さんはセナくんにアメフトのユニフォーム一式を渡す。
着替えろという意味でセナくんも嫌だと言うに言えない、ていうかなんで当たり前の様に銃を持ってるんスかね。アメリカの軍からパチって来たのは知ってるけど、ここ日本の敷地内ッスよね。
「小早川瀬那です……えっと」
「黄瀬諒太、1年生で気軽に黄瀬って呼んでくれっす」
「あ、じゃあ……黄瀬くんもヒル魔さんに拉致されて?」
「いやいや、俺は面白そうだから入部したんスよ……中学でも部活やってたんだけど、飽きちゃったから今度はアメフトにって」
「そ、そうなんだ」
「オラ、糞イエロー、糞チビ、呑気に駄弁ってねえでさっさと来いや!!」
っと、いけないいけない。
セナくんと俺はヒル魔さんに急かされればアメフトのフィールドに出る……この学校、マンモス校ってわけじゃないけども、何故にアメフトの設備が充実か……確実に目の前に居る人が原因ッスよね。
「ヒル魔、ダメだよ。助っ人としてならともかくセナくんを無理に選手にするだなんて」
「バカか、糞デブ。この糞チビを選手じゃなくて主務に納める方が何百倍もアウトだ…………」
「あ、あの僕はなにをすれば、ていうかなにをさせるつもりなんですか?」
「安心しろ、テメエはボールを持ってただ走ればいいだけだ……つーわけで、40ヤード測定をやる!!」
栗田さんがセナくんに無理をさせるわけにはいかないと言うけど、無視するのが余計にダメだと言い切る。
セナくんはまだ完全にアメフトのルールとかが分かってなくてヒル魔さんに逆らうに逆らえないので流れに身を任せるみたいで、ヒル魔さんは40ヤード測定を行うことを言う
「40ヤード?」
「ヤードってのはアメリカで使われてる長さの単位で1ヤード0,9144mッス……40ヤードだから大体36mッスね」
「へぇ、そうなんだ……ッハ!?」
「そういや、新学年になってからまだ1回もまともに計測してねえな……先ずは糞デブからだ!」
「うん!」
何時の間にか練習に組み込まれているとショックを受けるセナくん。
栗田さんが走る準備を行うんだけども……ヒル魔さん、なんでバズーカ持ってるんすか?空砲のアレは?
「YA−HA!!」
ヒル魔さんはバズーカを放った。
栗田さんは当然の如くというか馴れてるみたいで何事もなく走るけど……足、遅いッスね。
「ふぅ〜何秒?」
「こんの糞デブ……6秒5って去年よりもタイム伸びてんじゃねえか!!」
「ご、ごめんよ!」
「っちぃ…………まぁ、いい。テメエにスピードは求めてねえ。次はオレの番だ、糞イエロー、タイムを測れ」
「了解ッス」
「え、じゃあ僕は」
「コレを撃つ役だよ」
栗田さんは厳ついバズーカをセナくんに渡す。
いや、絵面がスゴイことになってるっすね。海坊主さんとか次元さんとかじゃないと似合わなさそうなバカデカいバズーカ……う〜ん、酷いッス。セナくんが重そうにバズーカを背負った。重心が色々と不安定だから上空に向けて撃てば言いと言えば上空に向けてバズーカを打ち上げてヒル魔さんは走り出す。
「5秒1ッス……」
「YA−HA!自己ベスト更新だぜ!」
「栗田さん、コレって速いんですか?それとも遅いんですか?」
「う〜ん、平均より上ぐらいかな」
自己ベスト更新と喜ぶヒル魔さん。セナくんは早いのか遅いのかがよく分かってないので聞いてみれば平均と返ってきた。
アレで平均より上ならばと思っていると悪魔のような笑みを浮かび上げているヒル魔さんが近付いてきた……いやぁ、普通に怖いっスわ。転生者に昼間妖一って人も居るけどこんな感じなんすかね。
「さて、糞チビ、テメエの番だ……安心しろ、今回はただ単に真っ直ぐに走っとけばいいだけだ」
今回は、か……まぁ、それもそうッスね。
とりあえずセナくんに立ってもらってヒル魔さんがバズーカを撃てばセナくんは走ってくる。
「5秒ジャストッス」
「ああ!スゴい、スゴいよセナくん!!」
「僕が1番?」
「いや、違えな……テメエ、途中で素早さ落としてんだろ!最初のダッシュの速度を維持しやがれ!」
「そうッスね。セナくん、真剣に走ってない感じがしたっス……セナくん、全力で後先考えずに走ってほしいッスね」
「ほ、本気で走ったんだけど」
「本気じゃねえ死ぬ気でやれ!な〜に、人間恐怖を感じれば死ぬ気になるってもんだ」
ヒル魔さんはそう言えば犬用のクッキーをセナくんの首元に置いた。
セナくんは首元に置かれたクッキーの意味が理解する事が出来ないみたいッスけど、直ぐにその意味が分かる。
「ケルベロォオオオス!!」
「GAOOOOOOOO!!」
「っひ、ひぃいいいいいい!!」
無駄に厳つい雑種犬がセナくんの尻を追いかける。
さっきまでの走りが嘘なのかと思えるぐらいの素早さ……やっぱりスポーツって時にはメンタルの世界ッスね。
「4秒2!
「アレでもまだトップじゃなくてトップクラスっすか……」
…………充分にすごい足を持ってるけど、ヒル魔さんはトップクラスと言い切った。
トップじゃなくてトップクラス……
「す、スゴいや。関東最強のラインバッカーでも4秒4なのに」
「だからこんなのを腐らせるわけにゃいかねえだろ…………さ〜て、次はテメエの出番だ。黄瀬クンよ〜」
「ありゃ、糞イエローじゃないんですか?」
セナくんがなんだかんだでケルベロスに追い付かれて噛みつかれてる。
セナくんよりも素早いケルベロスっていったいなんなんすかね。けどまぁ、セナくんの全力が見れたんでそれで問題無し。
今度は自分の番だと振り向くヒル魔さん。パソコンを取り出したと思えばデータを漁ってる。
「黄瀬諒太、中学最強のバスケ選手。日本人離れした身長190cmだが注目すべきは体格じゃなくて能力にある。相手が出した技を相手の目の前で即座に模倣する驚異的な能力にある。PG,SG,SF,PF,C,ほぼ全てのポジションをこなせるオールラウンダー、体力測定は常に学年1位……バスケを辞めた理由はバスケに飽きたから」
「黄瀬くん、そんなにスゴい選手だったの!?」
「もうバスケをやめたから関係無い話ッスよ……っと、重りは外しておいてっと」
何処から集めたかは知らないけど、ヒル魔さんは俺のデータを確認する。
セナくんが驚異的な走りを見せちゃったし、無駄にハードルが上がる……けど、それぐらいは成し遂げないと黄瀬涼太を名乗れない。
結局のところ1度もあの技を使うことなくバスケを引退したけども、もしかしたら何時かは使う日がやってくるかもしれない。何時もつけているパワーアンクルを外す……やっぱ付けてないだけで凄く身軽になるッスね。
「フー……OKッス」
「さぁ、いくぜ!YA−HA!!」
ヒル魔さんはバズーカを撃った。
コレで本日4度目のバズーカだけども周りの殆どが気にしない。ヒル魔さんがどんだけ泥門を支配下に置いているのかよくわかるッスね。
今やることは単純明快、0,1秒でもいい。とにもかくにも早く走ること。それしか道は存在していないのだとただただ真っ直ぐに走った。
「ケケケケケ!!」
タイムを見たヒル魔さんはご満悦なのか笑みが止まらない。
「…………ダメっすね…………」
一方の俺はこれじゃあダメだと思った。
「ああん?なにがダメなんだ?4秒38,高校アメフト界最強と言われる進よりも足が速えんだ」
「いや……コレじゃあダメっす……100m9秒切れないッス」
「上見るのは構わねえが、意味分かってて言ってやがんのか?陸上の100mだけに特化した連中ですら10秒台が限界なんだよ」
そう、この頃にはまだ100mを10秒で走るのが日本人の陸上競技の世界。
でも俺は知ってる。ハーフでもなんでもない純粋な日本人なのに9秒台の世界に足を踏み入れた本物の天才を……赤司っちが無闇矢鱈に真正面から戦うことはせず、バスケという競技で勝たなきゃいけない本当にヤバい青峰大樹という化け物の存在を。きっとあの人ならば音速の世界に足を踏み入れる……あの人だけは異質だ。個として最強で……俺の憧れだった。
「黄瀬くん、スゴい」
「セナくん、4秒2って数字を叩き出してるのに嫌味っすか?」
「ち、違うよ!ホントにスゴいって思ったんだ…………僕のはほら、無理矢理出された感じだから」
「無理矢理でもアナボリックステロイド的なのを使ってるわけじゃないのに最高速度を叩き出したんすよ?足が速いってのは殆どのスポーツで最強の武器っす」
「そうかな……僕、10年もパシリをしてて気付けばこんな感じだからさ……」
結構どころかかなり情けない理由っすね。
ともあれ、俺の足はセナくんの足には届かなかった……アメフトをやるんじゃなくてバスケをやる為に鍛えてたから30m以上のダッシュは厳しい。体をアメフト向けの体格に作り変えないといけない。
「んじゃ、次行くか」
黄金の脚を見ることが出来たのでヒル魔さんはご満悦だ。
他にも練習はあるんだとハシゴの間をジグザグするだけの特訓とかもあって、セナくんはなんだかんだで練習に付き添ってくれるッスけども、セナくんの脚力だけは本物ッスね。足を使って体を動かす系に関しては超高校級の数値を叩き出してる。
「お、重いぃいいいい」
「セナくん……そりゃ無いっスよ……」
ベンチプレスを出来る部屋に移動したけれども、セナくんがバーベルだけでアウトになってた。
重りも乗せてないバーベルは10kg、10kgって言ったらデブな犬ぐらいの重さだけどもセナくんはそれを持ち上げる事が出来なかった。
足だけは凄まじいのは分かったけど、ここまで能力値に偏ってる人は見たことが無い。黛さんですら最低基準の能力を持ってた……まぁ、あの人は色々と例外だけども。
「フン!!これ以上は無理っぽいッス!何キロッスカ!?」
「130kgだ」
「あちゃ〜……ダメっすね」
「そ、そんな事は無いよ。ベンチプレスで100kg越えてる時点で」
「栗田さん、とある馬鹿は言ってました。スポーツをやる上で大事なのは筋肉だから筋肉をつけた。筋肉で負けたのならば技術で返すのは日本人の悪い癖だって……俺には恵まれた体格があるんです。だったらもうちょっと筋肉があってもいいっす」
「まぁ、高校最強の進は150kg持ち上げられるって噂だからな………」
「え、そんなにだっげぇ!?」
150kgだと言い切ったヒル魔さんは栗田さんの尻を蹴る。
多分盛ってるけども栗田さんは160kgを持ち上げることが出来る。奇跡の世代の紫原っちは高校一年生で余裕で170kgを持ち上げてた。
単純な総合的な運動能力だけ言えば紫原っちが断然に上……そう考えれば、アメフトで紫原っちがライバルだったら面白そう……いやでも?紫原っち無意識に力を制御してるんスよね。
「で、ヒル魔さん。俺はなんのポジションをすればいいですかね?」
「全部だ」
「え?」
「アメフトってのは馬鹿みてえに戦術が存在している、テメエみたいな万能な人間よりも一芸特化な人間の方が有利だ……だが、テメエはどのポジションにも求められる能力を全て高水準で持っている。ベンチプレス130kg、40ヤード4秒3、日本にこんな記録を持ってる奴は早々にいねえよ」
「でも、俺はアメフトのテクニックとか無いっスよ?」
「テメエなら見ただけで完コピする事が出来んだろう」
「いやいや、最後に物を言う基礎の部分だけは再現出来ないッス……強奪は出来るんですけどね」
「強奪?まだなんか必殺技でも隠し持ってるのか?」
「いや、別に必殺技ってものじゃないッスよ。単純に相手の技に自分のリズムを加えて模倣したかのように見せつけて相手のリズムを崩すだけの技術ッス……バスケ雑誌の人達は模倣と強奪の違いを一切理解してなかったッスけど」
見ただけで完コピ出来るには出来るけども、強奪もやろうと思えば出来る。
ただし超高校級とかプロのスター選手とか体格が違いすぎるとかは無理、一応はそれっぽい再現は出来るんすけどね。強奪を使って相手のプライドを粉々にしすぎるのは色々と失礼だから滅多な事じゃやらないし、極端な話オンリーワンな武器を持ってる人達にはこの模倣は通じないんすよね。
「ほぉ……じゃあ、テメエよりスペック下な連中のテクなら一瞬で盗めるってわけか」
「模倣出来ない技も中にはあるし、心理戦とかも難しいッスね。作戦や暗号を覚えてその通りに実行するのは出来るんスけど、土壇場の切り替えとか判断能力は低いッス」
困ったらコレを使うという定石を持ってしまってる。
力技で通るパターンがあるけど、本物の天才には中々に及ばない。オンリーワンな武器を持ってる人達はヤバいっす。
「安心しろ、テメエには小難しい理屈や腹の探り合いよりも手数で挑んだ方が何百倍もいける。相手にこのカードを握っているかもしれねえ、そう思わせるだけで1%の可能性を作り上げる事が出来る。1%の可能性が存在してるなら勝てるって事だ」
「1%…………1%あれば勝てるんスよね?」
「勝てるんじゃない、勝つんだよ」
「っと、すみませんでした…………んじゃ、基礎練を」
「ケケケケケ、テメエには特別メニューだ!コイツを全部体に叩き込め!」
ヒル魔さんはそう言えばパソコンを渡してくる。
なんだろうと見てみれば3時間ぐらいの動画だけども、全てがアメフトのプレイ……ただのプレイじゃなくてトリックプレーやスーパープレーも普通に存在している。
「む、無茶だよヒル魔。黄瀬くんはアメフト初心者なんだから先ずは基礎をじっくりとして」
「この糞イエローなら出来る……いや、出来ねえとは言わせねえ。今の段階で
「……ん〜行ける気がするッスね。俺よりも運動能力高くないなら大体は大丈夫ッス」
NFLじゃなくて大学や社会人のアメフトを見せてくれる。
中々にトリッキーなプレーが多いけども、模倣出来るか出来ないかで言えば出来るッス。模倣じゃなくて再現になりそうな技は今のところは無いっスね。
「でも、俺だけじゃなくてセナくんも使ってくださいよ」
「いや、だから僕は主務に」
「安心しろ、先ずはアイシールド21でどデカいインパクトを引き付けてやる……2枚看板だ!」
「ということでセナくん、いや、アイシールド21、勝負ッス!」
色々と面白そうな技があるからそれを会得した。多分だけども簡単に模倣することが出来る。
セナくんは主務だと主張してくるけど、こんなスゴい足があるのに使わないのは勿体無いッスよ。
「ところで公式戦って何時ぐらいなんすか?」
「3日後だ」
「「ええっ!?」」
基礎練云々の話じゃ無いっスね……
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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短編集にだけしとけ