アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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悪魔の妖精 4 

「以上だ……マスター、仕事の偽装はいけないことです」

 

 ブラックホールの力を使わず、歩いて妖精の尻尾へと帰還した。

 仕事内容が悪魔退治だってのに悪魔に取り憑かれた人間を殺せと言う依頼だったので、爺さんに少しだけ愚痴る。

 

「むぅ、そうじゃったか。ギルド連盟にはワシが話を通しておく……接収(テイクオーバー)の魔法を勘違いか、お前さんも大変じゃったな」

 

「……別に……」

 

 一連の事情を知って同情をする爺さんだが、ミラはイマイチ心を開いていない。

 リサーナとエルフマンはここが魔導士ギルドなのかとワクワクをしているが……どうしたものか。時間が勝手に解決してくれるのを祈るべきか。いや、それだと万が一があるか。

 

「それでシゲオ、どうするつもりだ?」

 

「聞けば親もとっくの昔に死んじまってる……無意識に悪魔を接収したなんぞ才能の塊だし、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れる……暫くの間は俺が面倒を見る」

 

「そうか……ミラよ、そう警戒をせんでもよい。ここにはお前を蔑む者は誰もおらん」

 

「……」

 

 爺さんの言葉を聞いても警戒心は無くならない。

 まぁ、自分が悪魔に取り憑かれたと思われて蔑まされたと思っていたら魔法を無意識に使っていたなんて事を聞かされて実は魔法だったとはいそうですかと受け入れる訳にはいかんか。悪魔と言うのは都合のいい事のみを覚えて後は忘れろと言うが酷か。

 とりあえずギルドに入ることは確定なのでギルドのマークをスタンプの魔法で体の何処かに入れなければならない。

 

「シゲオは何処にマークを入れてるんだ?」

 

 何色にするのか何処にマークを入れるか悩んでいるミラ。

 こんな事に迷う事は無いと思うが下手すりゃ一生物になるマークになるから、女なら色々と考えるだろうか。男臭いところにしか居なかったからか女心というのはよく分からんな。

 

「何処だと思う?」

 

 ここで何処にあるかを答えてもいいが、それだと面白くはない。

 何処にあるかクイズを出してみるとミラは俺の事をジッと見てくる……クククッ、普段から晒してる部分にゃギルドのマークは無い。

 

「……背中?」

 

「惜しい、上半身じゃなくて下半身にしてある」

 

「下半身、ま、まさか!?」

 

 何を想像してるんだお前は。下半身と言う言葉で顔を物凄く真っ赤にしてプシューと顔から煙を出すミラ。

 

「尻だよ、尻にギルドのマークを付けてる」

 

 このギルドの名前は妖精の尻尾(フェアリーテイル)、妖精の尻尾……ならば、尻にギルドマークを付けるのがいい。

 尻にマークを付けているのはオレだけの様だ……流石に股間のアレとかにマークをつけてるやつはいない……舌につけてる奴が居るとかは聞いたことはあるがな。

 

「見るか?」

 

「だ、誰が見るか!」

 

「クックック」

 

「なにがおかしい!」

 

「いや、おかしいんじゃねえ。さっきまでの暗い表情が嘘みたいになってるだろ?」

 

「あ……」

 

 浮かない顔で爺さんにすらマトモに心を開いていなかったミラだが、何時の間にか素の明るい顔に戻っている。

 その事を自覚していなかったのかミラは俺の一言で気付き、クスリと笑う。やっぱ暗い表情よりも笑っている方がコイツにゃ似合うな。

 最終的にミラは自分の左の腿にギルドのマークをつけた……そこだと変な奴に視線を向けられる気もするが……まぁ、いいか。

 

「さてと、一旦帰るぞ」

 

「ああ……エルフマン、リサーナ、行くぞ」

 

「うん!」

 

「行こう、ミラ姉」

 

 ここでのワイワイ騒ぎは楽しくてしょうがねえけど、忘れちゃいけない。オレは30万Jと言う大金を3人に使い身の回りの家事なんかを頼んだんだ。何をするのにも金は必要だからな……。

 

「此処が俺の借りてる家だ」

 

 ギルドを出て徒歩10分、家賃13万Jと妖精の尻尾の女子寮であるフェアリーヒルズより家賃はお高めだが、フェアリーヒルズと違い一部屋じゃなく一軒家の借家だ。2LDKの一階建ての借家で、マグノリアの中では比較的に安い……不動産は金が貯まったら4LDKの一軒家を購入しないかと提案をしてきたが、オレには広すぎる。本音を言えば1Kぐらいの家でいいんだけどな。

 

「お前……そこそこ散らかってるじゃないか」

 

「むぅ……俺からすれば普通なんだが」

 

 ミラ達を案内すると散らかっていると怒られる。貯金の為に仕事にばかり行っているから片付ける機会が中々に無かったからな。

 俺としてはこれでなにが何処にあるのかが分かっているがミラからすれば汚いようでミラは背負っている鞄から掃除道具を取り出した。

 

「エルフマン、リサーナ、掃除すんぞ」

 

「うん!」

 

「窓、開けるね」

 

 掃除用具を手にして散らかっている部屋を片付けてくれるミラ。

 何処か男よりも雄々しい感じがしているから女子力が皆無かと思えば真逆、家事は万能であっと言う間に部屋は綺麗になっていく。

 

「変わった食器ばっかだな」

 

 部屋を綺麗にしたら今度は溜まっている食器を洗う。

 

「俺はこれでも東の国の出身で主食はパンじゃなく米なんだよ」

 

 生まれは東洋で、フィオーレ王国の人間じゃない。育ちは……まぁ、色々と転々してる。グルメ界で1年以上も修行していた時期もあったから舌は肥えてる。とにかく朝はパンよりも白米、ご飯。スープはコーンスープじゃなくて豆腐とワカメの味噌汁がいい。

 

「東の国の出身……なんでフィオーレ王国に居るんだ?」

 

「……それは」

 

「シゲオ、これって何処に置けばいいの?」

 

「っ、それに触るな!」

 

 ミラの疑問に答えれずにいるとリサーナが一冊の魔導書を持ってきた。

 

「ひっ!?」

 

「おい、リサーナを脅かすなよ!!」

 

「あ……悪い……」

 

 リサーナが持ってきた魔導書は触れてはいけない物だ。厳重に保管して置かなければならないのに乱雑に置いていた俺が悪い。

 リサーナに謝ると俺はリサーナが持っていた魔導書を受け取る。

 

「それ、大事な物なの?」

 

「……俺の一族に伝わる大事な物なんだよ」

 

 ぞんざいに扱ってはいるが、この魔導書は見る人が見れば国宝だと言うほどの価値はある魔導書。

 存在自体は有名じゃないがこの魔導書にはとんでもない力を秘めている。大事な物だとリサーナから魔導書を受け取ると異空間に魔導書をしまう。コレは本当に大切にしておかないといけない物……あんまりぞんざいに扱ってはならない。

 

「そうだ。なにか食いたいものは無いか?作ってやるよ」

 

「だったらカツ丼を頼む」

 

「おし、カツ丼だな」

 

 俺の1番の好物だ。他の奴等はカルビ丼だ牛丼だなんだと言うがやっぱり男ならばカツ丼だ。

 俺の食べたい物が分かると張り切って食器洗いをする……30万Jを使って正解だったかもしれねえな。

 

「あ!」

 

「どうした?」

 

「な、なんでもねえよ」

 

 カツ丼の材料があったかと冷蔵庫を確認していると急に声を上げるミラ。

 皿でも割ったのかと思ったが、割ったら割ったガッシャーンと言った音がするはずだから音がしない。何事も無かったかの素振りをミラは見せてはいるが、明らかになにかがあった。

 

「お前、接収を発動しているじゃねえか」

 

 沢山の泡で悪魔化していた右腕を隠そうとしているが出来ていない。

 

「コツを掴んだんじゃねえのか」

 

「いや……元に戻せるけど、気付いたらこうなっちまう」

 

 ポンポンと魔法陣を出しながら腕を悪魔から人間の姿に戻したり戻ったりと交互に繰り返す。

 接収による肉体変化のコツを掴んではいるが……こいつ、腕しか変えることが出来ていない。悪魔をやっつけて取り憑かれたと言っていたから体の一部だけ接収したんじゃなく全部を接収しているはず。

 

「ミラ、表に出ろ……力の使い方を教えてやる」

 

「この力を……あの時みたいに光をぶつけたら」

 

「それじゃあその場しのぎにしかならねえ。お前が自分の魔法を意のままに操ることが出来ねえと、同じ事の繰り返しだ」

 

 それに何時も俺が側に居るわけじゃない。これから色々とギルドの依頼をこなす事も考えれば力を扱える様になっとかねえと。

 自分の魔法のコツは掴んだものの完全に使いこなしていないミラは恨めしそうに自分の右腕を見るのだが、ゴクリと息を飲み込んだ。

 

「シゲオ、力の使い方を教えてくれ!」

 

「ああ……ん、どうしたエルフマン?」

 

「その……姉ちゃんを傷つけないで」

 

「エルフマン……」

 

 力の扱い方を教えると言うことは危険な戦闘をするということ。

 エルフマンは俺がミラを傷つけるんじゃないかと心配をするので頭にポンと手を置いた。

 

「安心しろ、お前の姉ちゃんは怪我させねえよ」

 

「ホント?」

 

「ああ、ホントだ……ふっ」

 

 かつては悪名を轟かせまくっていた七人の悪魔だった俺も随分と丸くなってものだ。リサーナもミラを傷つけないのか心配をするので俺は見ての小指を出して指切りげんまんをする。嘘ついたら針千本飲まなきゃならねえから約束は守らねえと……悪魔は何がなんでも契約は守る。

 

「力の扱いを教えるって言ったけど、具体的になにするんだよ」

 

 リサーナとエルフマンに残りの家事を任せ、マグノリアの暴れてもいい街の外れにやってくる。

 右腕を悪魔の腕と人間の腕にしたりと本人なりに力の扱い方を覚えようとしているのだろうが、俺から見ればまだ甘い。

 

「お前が今やっているのはこういう事だ」

 

 ミラの様に右腕を鋼鉄のバネへと変化させる。

 今、ミラがやっているのは悪魔の肉体を一部だけ接収で出しているだけに過ぎない。

 

「お前は今から全身接収をするんだよ……こういう風にな」

 

 体を光らせ、今度は全身をバネに変化……打撃と関節技に関しては無敵と言えるスプリングマンに変身した。

 今からミラに力の扱い方を教える以上はサンドバックになるぐらいの覚悟はしている。どんな技が飛び出してくるか分からねえからこのスプリングマンほど最適なものはない。

 

「全身を、変化……」

 

 自分の右腕を見てゴクリと息を飲み込むミラ。

 

「怖いか?」

 

 俺の問い掛けにミラはコクリと頷く。接収の魔法は自らの肉体を大幅に変化をさせる魔法で、変身魔法と似ている。

 己の姿を変えるという点で似ているが、変身魔法と異なり暴走をしてしまう恐れがある。接収の魔法は危険なところがある。

 

「俺を思いっきりぶん殴ってみろ」

 

「なにを言ってるんだ」

 

「いいからその腕でやってみろ!」

 

 今の俺はスプリングマン。打撃系の攻撃や関節技は殆ど効かない。

 ミラが今の時点でどれだけ悪魔の力を使いこなせているのかは知らんが、ちょっとやそっとの事じゃこのスプリングマンは倒すことは出来ない。

 

「や、やるぞ」

 

「ああ、来やがれ」

 

「うぉおおお!」

 

 迷いを断ち切り思いっきり腕を振って俺に殴りかかるミラ。

 防御の構えを一切取らずに攻撃を受ける……全く鍛えてないのに年の割には良い感じの拳じゃねえか……けど、今の俺はスプリングマン。ただ普通にぶん殴ったとしてもバネがボヨンと弾くだけで全くと言ってダメージが無い……が、少しだけ後退る。

 

「いい拳、してんじゃねえか」

 

「だ、大丈夫か?」

 

「おいおい、他人の心配よりも自分の心配をしろよ」

 

 鋼鉄を真正面から殴ってるんだから、腕が痛むだろう。

 そう思ったがミラは全くと言って痛がる素振りを見せていない……こりゃとんでもねえ才能だな。

 

「俺は人より頑丈なんだ。もっともっと攻撃してこい」

 

「ああ!」

 

 俺を殴ってもなにも問題はない。

 そう分かるとミラは右腕で俺を思いっきりぶん殴ってくる。

 

「右腕だけじゃない、他の体も使え!お前には才能がある。自分を信じるんだ」

 

「っ、だらぁあああ!」

 

 俺の言葉に反応し段々と込める力が、魔力が高まってくるミラ。

 右腕だけじゃなく左腕、左足、右足と段々と悪魔の接収の力を発揮していき、体格が段々と変わっていく。接収の魔法で全身の姿を変えると元の生物に人格を乗っ取られたりする可能性があるがミラは完璧に使いこなしている……俺、自分の力を使いこなすのに結構時間が掛かったんだけどなぁ。これが才能の差ってやつか。

 

「もっともっと来やがれ」

 

 両腕両足を接収で変身出来ている。後は胴体だけだとミラの乱打を耐える。

 

「力が……スゲえ力が湧いてくる!もっと、もっとだ!」

 

「ああ、もっともっと出すんだ!」

 

 カモンと挑発をするとミラの体は光り輝く。

 残っているミラだった部分も段々と変身していき、全身接収に成功した。

 

「ぬぅおおおお!!」

 

「あ、ちょ、そっち系は無理ぃ!」

 

 一気にパワーアップしたミラは殴ることをやめた。

 両手に膨大な熱量を持った魔力の塊を集め、俺に向かって放つ。

 

「ぐふぁあ!」

 

 スプリングマンは打撃系や関節技に強く、投げ技なんかにもある程度は耐えうる力を持つ。

 しかしその反面で炎とか水とかのエネルギー系の攻撃には弱い……要するにこの攻撃は滅茶苦茶痛い。

 

「い、いててて……」

 

「わ、悪ぃ……怪我はないか?」

 

「今のは思ったより痛かった……どうやら全身接収に成功した様だな」

 

 俺の側に駆け寄り俺の身を心配するミラは全身を悪魔の体に変えているのに暴走の気配が見られない。

 完璧に制御している事に頷いているとミラは少しだけ落ち込んだ顔をする……いったいなにを落ち込んでるんだ。

 

「その……怖くはないのか?」

 

「怖いだと?」

 

「だって私、腕だけじゃなくて全身が悪魔になってるんだろ……怖くないのか?」

 

「怖くねえよ……元の姿に戻ってみろ」

 

 俺の言葉通りにポンッと元の姿に戻るミラ。もう一度悪魔の姿になってみろと言えば簡単になった。

 

「お前の何処に怯えろってんだよ」

 

「っ……っ……」

 

「お、おい、泣くんじゃない」

 

「あーあ」

 

「姉ちゃんを泣かすんじゃない!」

 

 リサーナにエルフマン、ついてきてたのか。

 涙を流すミラにあたふたをしているとリサーナがアドバイスを送る。

 

「こういう時は抱きしめてあげないと」

 

「いや……俺はそんな気の利いたことは」

 

 俺はどっちかと言うと気の利かないマスクマンだ。

 リサーナはやってと強く懇願してくるのでミラの肩にポンッと手を置くとミラの方から抱き着いてきた。

 

「ありが、とう……」

 

「礼なんて要らねえよ」

 

 俺は特になんもしてねえ。

 こんな風に人に感謝をされることには馴れてねえからどうしても背中がむず痒くなっちまう……今までに味わった事のない感情だ。

 

「シゲオ、俺も姉ちゃんみたいに魔法、使えるかな?」

 

「使える様になりたいって思いを忘れなきゃ、使える……けどな、大事な事は忘れるんじゃねえぞ」

 

「大事な事?」

 

「魔法の力は強大だ。強くなったと勘違いをする」

 

「魔法は強い力じゃないの?」

 

 違うな、リサーナ。

 

「魔法ってのは手段の1つで目的じゃねえんだ」

 

 魔法以外にも強い力はこの世には沢山ある。料理が出来たり面白い話を作れたりするのだって立派な力で強さの1つだ。

 

「家族を守れる力を得たとデカくなった気になる奴に威張る資格もデカくなる資格もない……」

 

 このワイワイとしたギルドに入ってそれが強くわかる。過去に自分がやったこととか得た強さがどんだけ虚しいものだったのかもだ。

 今から力を得ようとしているエルフマンやリサーナ、これから強くなっていくミラに先駆者として少しでも道を示さないとな。

 

「カッコいい……」

 

「ふっ、よせよ照れるじゃねえか」

 

「き、聞こえてたのか!?」

 

 おいおい、俺はラブコメに出てくる鈍感な主人公じゃねえっての。

 ミラは俺の言葉に聞き惚れていた様なので少しだけ恥ずかしい…………。

 

「腹減ったな」

 

 サンドバック状態だったとはいえ、いい感じの運動をしてお腹が刺激されたのか空腹を感じる。

 

「食いしん坊だな、シゲオは。待ってろ、直ぐに作ってやる」

 

「ああ、美味いカツ丼を頼むぞ」

 

 ミラが接収を完璧に使いこなせる様になったので家へと帰る。

 こんなに心地の良い空腹になったのはグルメ界に行った時以来で、ミラの作る料理は滅茶苦茶美味かったとだけ言っておこう。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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