アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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悪魔の妖精 5

 

「ふぅ……」

 

 俺の朝はコーヒーによって始まる……なんて言ったら厨二病臭いか。

 しかしコーヒーというものはいいものだ。眠気を覚ますのにも使えてこの苦味がまた中々の物、マグノリアが商業都市なだけあってか良いコーヒー豆やら何やら入荷がしやすくなっている。無人島でポツリと一人暮らしをしていたのも良かったのだが、この生活も悪くはない。

 

「シゲオ……どうやってコーヒー飲んでんの?」

 

「ふっ、この仮面の口部分を経由して飲んでいる」

 

「口ないじゃない」

 

「オーバーボディと言って本来であればこの仮面は純金で出来ている物なんだ。純金の仮面の上にこの3つの角の甲を纏っている状態だ」

 

 コーヒーを仮面を着けたまま飲んでいる俺にちゃんとコーヒーを飲むことが出来ているのか疑問を抱くカナ。

 一見、口が無いようにも見えるのだがこのマスクにはちゃんと口はありそこを経由してコーヒーを飲んでいる。

 

「カナも1杯どうだ?奢るぞ」

 

「朝っぱらから苦いのはゴメンだね。同じ苦いのなら後味スッキリなビールが」

 

「おいおい、お前まだ酒飲めない歳だろう」

 

「酒じゃない、発泡した麦の汁だ」

 

 それをビールと言うんだ馬鹿野郎。

 酒場でもある妖精の尻尾のギルドは当然の如く酒も置いてあるのだが未成年であるカナに提供していたりする。故郷である東の国は酒や煙草関連の規制が厳しい……この酒場は十中八九営業停止だろうな。

 

「……」

 

「なんだ?」

 

「いや、何時もその仮面を付けてるなって……マスターも素顔を知らないんだっけ?」

 

「俺の素顔を知りたければ俺をぶっ倒せばいい。ぶっ倒して仮面を剥ぎ取れば素顔を見ることが出来る……倒せればの話だが」

 

「あ〜……私じゃ無理か」

 

 自分の実力というのをよく理解しているカナは即座に諦める。ナツの様に勇猛果敢に挑んで来いとは言わないが……もうちょっとはな。

 張り合いというものがないのは良くない事である。強力なライバルは時として己を高める為の力になるからな……。

 

「ただいま〜……シゲオ!」

 

「おかえり、ミラ……無事に依頼をこなす事が出来たようだな」

 

「が、ガキ扱いすんじゃねえよ!」

 

 俺が連れ帰って力の使い方を教えたミラはアレからメキメキと頭角を現してきた。

 悪魔を接収(テイクオーバー)出来るというのは中々の特異体質、磨けば物凄く光るセンスを持っていたのは薄々わかっていたが同世代……特に小さな子供達、将来の妖精の尻尾を担う人物の中では特に上位に君臨している。

 

「まだまだ青二才だよ。討伐系の依頼を順調に熟しているみたいだが、この大陸にはゼレフだかゼレンスキーだか知らんが悪魔もどきを作るくだらない亡霊が存在しているからな。ひょっこり何かの拍子で出会うかもしれん」

 

「ゼレフの悪魔だろ……シゲオ、なんかあったのか?悪魔関連になると色々と厳しいよな」

 

「まぁ……悪の血筋だからな」

 

 神に選ばれた人から下等な悪魔に身を落とした人間の末裔とは早々に言うことが出来ない。

 俺が7人の悪魔のリーダーであった事を知っているのは現状マスター唯一人、別に自慢気に語る事でも無いし言えばややこしくなりそうなので言わないでおく。強い血筋は重圧になれど自慢にはならねえ。

 

「コラァ!!ミラ!!」

 

「む……」

 

「マスター、ただいま!」

 

「ただいまじゃないじゃろうが!畑を荒らす魔猪の討伐の筈が畑ごと破壊してどうする!!」

 

「っくっくっく……まだまだ青二才だな」

 

 血管を浮かび上げて評議会から怒られたんだぞと愚痴を零すマスター。

 このギルドの面々、特に若い連中は年齢に比べて同世代の中でも頭が幾つも抜けていて無茶苦茶強いのだがその反面かは知らないがやらかしが多い。仕事そのものは完遂するがその過程で色々な物をぶっ壊す。おかげさまでこの国の評議会の議員に目を付けられてしまっている。全く難儀と言うかマスターが何時か高血圧関係でポックリ逝っちまうんじゃねえか心配だ。

 

「魔猪が思ったよりも雑魚だったから手加減が全然出来なかったんだ」

 

「手加減は早い内に覚えておけよ。今は魔獣系の討伐のクエストでどうにかなってるが盗賊やら山賊やらは命を奪っちまったらいけねえ。再起不能になるまでが限度だ……自信が無いんだったら後で殴り合いに付き合ってやるよ」

 

「ホントか!?」

 

「悪魔は都合のいいことしか覚えたりしねえけども破らないと決めた約束は破らねえよ」

 

「約束だかんな!!」

 

「ああ……取り敢えず休んでおけ。仕事明けに無茶をしても体を痛めつけるだけだ……アイスコーヒー1つ」

 

 今は休息の1杯が大事だ。この何気ない1杯が人を大きく成長してくれるとスタージュンが昔言っていた。

 ミラに俺の奢りでアイスコーヒーを頼めば嬉しそうに席に座りミラは運ばれてきたアイスコーヒーにガムシロップとミルクを入れる。

 

「それでマスター、なんか評議会から罰則かなにかあったか?」

 

「ん、ああ、今回は」

 

「た、大変だぁ!!」

 

 マスターから今回の一件による罰則はなにか無いのかと尋ねると慌てた様子で酒場(ギルド)に人が入ってくる。

 慌てているのでなにかあったのだろうかと考えていると警報音の様なものが鳴り響く。

 

「なんだなんだ?地震か?雷か?火事か?それとも闇ギルドでも来てやがるのか?」

 

「む、そういえばお前さん等ははじめてじゃったの」

 

 警報音の様なものがマグノリア中に鳴り響く。

 ギルド関連の出来事の筈なのにマグノリア中が騒いでいる。マスターに何事かと聞いてみれば特に慌てた素振りは見せていない。

 

「ギルダーツだ!ギルダーツが帰ってきたんだ!」

 

「ギルダーツ?誰だそいつは?」

 

 ナツが嬉しそうに笑う。

 まだこのギルドの面々の顔を全て覚えているわけではないのだが聞いたことが無い名前を出される。

 

「ウチのギルドで最強の魔導士だよ」

 

「ほっほぅ……なんで街が騒ぐんだ?」

 

 グレイから説明を受けて誰が帰ってきたのかは分かったのだが問題は何故にこんなに騒いでいるかだ。

 

「ギルダーツはクラッシュという破壊の魔法を使うんじゃが……たま〜に無意識で発動しておっての。街が粉々になるからマグノリアが街を改装してギルダーツシフトと言うギルダーツがこの酒場に帰って来れる様になっておるんじゃ」

 

「おいおい……」

 

 無意識の内に強力な魔法を発動しちまってるって大丈夫なのかそれは?

 気付けばマグノリアの外からこの酒場に通じる一本の道が出来ており1人の男が歩いてくる。

 

「よぉ、ただいま」

 

 恐らくはギルダーツという男だろう。

 ラクサスを始めとしたこのギルドの若いメンツが結構な手練に対して熟練の魔導士の風貌を醸し出している。穏やかに抑えているが内に秘めている氣が中々のものだ……だがまぁ、決して倒すことが出来ないわけじゃなさそうだな。

 

「おかえり、ギルダーツ!俺と勝負しろぉ!!」

 

「はいはいっと」

 

 ナツの勝負しろという拳を知り尽くしているかの様にギルダーツは殴りかかってくるナツを簡単にあしらう。

 一瞬の内にやられたナツを見てなにやってんだよとグレイは呆れたりしている。強い相手に挑もうとするのはいいが時と場合によっちゃあ蛮行だぜ?ナツの姿は見習うべき時もあるが時にはアホだとしか言えない時もある。

 

「よぉ、どうじゃった?」

 

「思ったよりも遠かったし手強かった……ん?新入りか?」

 

 なんの仕事をしていたのか気にはなるが、情報漏洩を防がないといけない時もあるので聞かないでおく。

 マスターと会話をするギルダーツはマスターの直ぐ近くに座っている俺やミラの存在に気付いた。

 

「シゲオだ……この仮面に関しては気にしないでくれ」

 

「大分厳つい仮面を付けてるな……ふぅん……ほぉう」

 

「なんだ?」

 

「いやなに、お前かなりやる奴だなと思ってな。こりゃあ将来が楽しみだな」

 

「言っとくがコレでも15は過ぎてるからな」

 

「そうなのか?」

 

 色々と禁術的なのに手を出していて老けにくくなっているけれどもラクサスよりも歳上だからな。

 ギルダーツは俺の年齢を知って意外そうにした後に酒を注文すると椅子に座った。

 

「見ないチビ共も増えてるけど……んっ……ふぅ!この味だけは変わらねえな!」

 

 酒をグイッと一気飲みするギルダーツ。

 このギルドの空気が大好きなのか嬉しそうにしている。妖精の尻尾(フェアリーテイル)はやらかしが色々と多いギルドだがそれ以上に実績を叩き出している優秀なギルド……果たして俺は馴染む事が出来ているのか?悪魔にだって友情や絆はあるが、その力を十二分に理解しているとは言い難いからな。

 

「それでマスター、なにかあったんですか?」

 

 ギルダーツはこのギルドの空気をツマミに酒を飲んでいる。

 仕事明けのギルドの1杯は悪くはないもの、ああだこうだ言う権利は誰にも無いのだとさっきの話の続きをする。

 

「罰として誰かに酔っ払った虎を退治する依頼がやって来ている」

 

「酔っ払った虎だと?そんなもんに魔導士ギルドを派遣しなくても猟銃で一発で仕留めりゃいいだけでしょうが」

 

 この国の猟師ならば容易い事だ。

 凶暴な魔獣ならばまだしも酔っ払った虎ならば……酔っ払った虎?

 

「まさかとは思いますがその虎って滅茶苦茶酒臭いんじゃ」

 

「おぉ、そうじゃ。酔っ払ってて温厚なんじゃが酒臭くての、酒蔵を荒らしては酒樽の酒を根刮ぎ飲んでいくんじゃ。その事にカンカンになった酒屋が倒そうとしたんじゃがベロンベロンに酔っ払った虎がこれまた強くての。一般人には手が負えんものじゃから何処かのギルドに早急に依頼しようと評議院に話が回ってきた……どうした?」

 

「なに、そのベロンベロンに酔っ払った虎の種族に心当たりがあって……まさかなにかの拍子で流れ着いたのか」

 

「おぉ、じゃあこの依頼お前さんに任せても構わんか?」

 

「構いませんよ……む……」

 

 一般人が手に負えないレベルの酔っ払った虎。その正体はなんとなく分かり、分かったのならば代わりに行ってこいと言われる。

 高額な仕事の依頼を多く1人で受けたりして最近やっと生計が落ち着いてきた。家賃だなんだと気にしなくていい。

 

「カナ、極上のブランデーは飲みたくは……カナ?」

 

 ギルドのやらかしを帳消しにする依頼、ギルドの為ならば1Jも出なくても構わない。

 俺の読みが的中していたのならば極上のブランデーが飲むことが出来るのだと酒好きのカナを誘ってみようとしているのだがカナは暗い顔をしている。

 

「え、ぁ……なんだシゲオ?」

 

「いやだから、極上のブランデーは飲みたくはないかと聞いているんだが……気分でも悪いのか?」

 

 やっぱりまだ酒飲めない年齢なのに酒を飲んでるから元気が……って、俺も言えた義理じゃないか。

 なにかあったのだろうか?ついさっきまで軽口を叩き合えるぐらいにはいい感じだったのに、もしかしてなにか余計な事でも言っちまったんだろうか?女性ってのはなにかとデリケートで男は無意識にデリカシーの無い事を言っちまうからなぁ。

 

「別に……」

 

「別にって、そんな感じの事が……あ〜……」

 

 触れる優しさもあれば触れない優しさもある。親しき仲にも礼儀ありとか言うし、カナがなんで暗いのかは深くは追求しないでおこう。

 状況からしてギルダーツ辺りが関係しているのだろうが肝心のギルダーツはグビッと酒を飲んでは肉を食らっている。

 

「美味い酒は飲みたくはないのか?」

 

「奢ってくれるの?ん……じゃあ、飲ませてよ」

 

「まぁ……当たりだったらな。マスター、その仕事の場所は?」

 

「ほれ、ここに細かな事が書かれておるぞ」

 

 マスターから依頼の場所を教えてもらう。

 馬車で数時間の距離と言ったところなのだろうが、俺にはその数時間の距離と言うものは関係が無いのである。

 

「へ〜んし〜ん!」

 

 四次元を操る事が出来るブラックホールに変身した。

 顔のど真ん中に穴が開いておりゴゴゴとギルドを軽く揺らしたらど真ん中が別次元の道に通じる様になっている。

 

「中々面白え魔法を使うじゃねえか」

 

 酒を飲んでいたギルダーツは俺のこの姿を見て笑みを浮かびあげている。

 

「移動する時はブラックホールかザ・ニンジャが1番なんでな。さぁ、飛び込んでこいカナ!」

 

「うん!」

 

 俺の顔面の穴に手を突っ込めば吸い込まれていくカナ。

 無事に転送された事が分かったので俺もカナが飛ばされた場所に向かう。

 

「ロケーションムーブ!」

 

 シュンとギルドの酒場から姿を消す。

 辿り着いたのは商業都市のマグノリアとは真逆なのどかで平穏な村だ。

 

「ホントにこんなところに美味いブランデーがあるって言うの?」

 

「無かったら無かったで奢ってやるよ。その前に村人を探さない……お、居たか」

 

 飛ばされた先が極々普通の田舎町だった事で俺を疑うカナ。

 俺の予想が的中していたのならば極上のブランデーにありつくことが出来る筈だ。村人を発見したので声を掛ければ奇異の目で見られる……ブラックホールの姿になったままだから色々と悪目立ちをしてしまうか。

 

「おぉ、魔導士ギルドが来てくれたのか」

 

 評議会から罰として派遣されたとかいう余計な事は一切言わずに酔っ払った虎を退治しに来たことを伝えれば直ぐに納得してくれる。

 ブラックホールの姿だからかこんな子供にといった視線は無い……この姿は悪目立ちをするので正直な話好まないが、まぁ、いいか。

 

「それでその酔っ払った虎は?」

 

「酒さえ飲んでいれば温厚なので酒を入れた盃を用意して……罠に仕掛けたり色々としたんですが1回暴れ出したら手が付けられなくて」

 

「だろうな……確か捕獲レベルは53辺りだったか」

 

「捕獲レベル?」

 

「いや、こっちの話だ。気にしないでくれ」

 

「ねぇ、まだなの?」

 

「まぁ、待てって……」

 

「っ、来ました!後はお願いしますよ!」

 

 酔っ払った虎が盃に入った酒を飲みにやって来た。

 

「琥珀色の虎なんて珍しいわね」

 

「アレはブランデータイガーと言う生き物で……アースランドには存在しない筈だが……」

 

 琥珀色の虎を珍しいと凝視するカナ。

 俺はあの虎を知っている。あの虎はブランデータイガーと言うこの世界とは違うグルメ界と呼ばれる世界に存在している虎だ。アースランドと呼ばれるこの世界には存在しない筈の虎だ……スターの奴が勝手に野に放ったわけないか。なにかの拍子でこっちの世界に紛れ込んだ……異世界に関与する何かしらの魔法がこの世界の何処かで発動したりしてるのか?

 

「なぁ、もしかして極上のブランデーってのは……」

 

「ああ、あのブランデータイガーの事さ……こういう時は、へ〜んし〜ん!」

 

 色々と気になる事はあるのだが気にしててもしょうがない事だ。

 カナはブランデータイガーを指差して青い顔をしているのでブラックホールからミスター・カーメンに変身すると巨大な布を異空間から取り出してブランデータイガー目掛けて投げる。

 

「マーキマキマキマキマキ!!ミイラパッケージの完成だぜ!!」

 

「それってエルザと戦った時の技でしょ?捕獲するだけじゃ」

 

「馬鹿を言ってるんじゃねえよ。このミイラパッケージはコレに繋げる為の布石に過ぎねえ!!カルトゥーシュ・ストロー!!」

 

 巨大な極太のストローを取り出してミイラパッケージされているブランデータイガーに突き刺し……ゴクリと血液を飲む……む……

 

「150年ものと言ったところか」

 

 ブランデータイガーの血液は極上のブランデーなのだが、極上のブランデーになる前の血液は有害な毒になっている。

 100年ぐらい熟成させておかなきゃ美味いブランデーにならない。このブランデータイガーは中々の味だ。

 

「お、おい、虎の生き血なんて啜って大丈夫なのか?」

 

「マーキマキマキ、問題無い。ミイラパッケージと言う技は元来生き血を啜る技、このミスター・カーメンは生き血を啜っても問題無い頑丈な体をしている。第一、ブランデータイガーの血液は極上のブランデーなんだ」

 

 美味いぞとカナに勧めてみればカナは恐る恐るブランデータイガーの生き血啜る。

 

「!」

 

 生き血を啜ったカナの表情は切り替わる。

 ギルドに置いてある酒は一般人でも飲める酒が多い。しかしブランデータイガーのブランデーは最高級品、グルメ界の中でも中々の極上の逸品である事には変わりは無くカナはゴクゴクとまるでジュースを飲むかの様に一気に飲んでいく。

 

「ぷはぁ!!なにこのブランデー、今まで飲んだ事無いぐらいの美味さ!」

 

「グルメ界産の酒だからな……フィオーレ王国の最高級品の酒に余裕で勝つぐらいには美味い」

 

「シゲオ、こんな美味い物を知ってたんだね!!」

 

「ああ…………元気になってなによりだ」

 

「え?」

 

「いや、ギルダーツが帰ってきたらなんか元気が無くなっただろう……ギルダーツ関係でなんかあるんだろう。深くは聞かないでおくが暗い顔のまま居られると色々と辛気臭いからな」

 

「……」

 

 むぅ、どうやらまた余計な事を言ってしまったようだ。

 ギルダーツ関連で浮かない顔をしている事を言えばカナは浮かない顔に変わる。さっきまでブランデータイガーの極上の生き血を啜っていて上機嫌に酔っ払っていたのに……俺はデリカシーが無いか。

 

「シゲオはさ……尊敬するスゴい人が居たりする?」

 

「む……人かどうかは定かではないが尊敬の念等を抱いている御方は居るぞ」

 

「その人が滅茶苦茶身近に居たりしたら……こう、プレッシャーとか自分と比較したりしない?」

 

「…………ああ、比較したりするな」

 

「!」

 

「なんだ?意外そうな顔をするなよ」

 

 俺にだって尊敬の念を抱く存在は居るし、自分と比較したりする事もする……そして卑下する事もだ。

 特に自分の血筋に関しては色々と思うところがある。偉大なる血筋で自分以外は全て死に絶えている。

 

「シゲオもそういうのを感じるんだ……」

 

「ああ。なにせ俺以外の一族は皆殺しにされちまった、この世で唯一人の存在になっちまったからな……だからだろうな。強くならなきゃならない、血に恥じない存在になろう。その為に俺は多くの命を奪った……最後に残ったのは虚しさだけだった」

 

 強くなる事は出来た筈なのに、求めていた何かとは異なっていた。

 妖精の尻尾に入ってから変わる事が出来ているかどうかは不明だが、少なくとも空虚だった頃よりは生きているんだと生を実感する事が出来ている。7人の悪魔として暴れ回った頃も悪くはなかったが今も今で心地良い……あの御方がなにを思っているのか分からねえけど。

 

「深くは聞かねえ……特に血に関する事ならば尚更だ。だが、その血の運命(さだめ)からは誰も逃げる事は出来ない……だがな、その血を邪悪なものにするか誇りにするかを選ぶぐらいの権利は俺達にはあるんだ」

 

「血を誇りに……誇りに……」

 

「お前とギルダーツの間に何があるのかは詮索はしない……だが、ギルダーツが関係しているならばむしろ誇れる様に生きるんだ……とまぁ、偉そうに言うほど俺は立派な人間じゃねえんだがな」

 

「シゲオ……ありがとな」

 

「なに、気にするな。仲間だろぅ?」

 

 例え悪魔であろうとも友情というものは存在する。

 カナは少しだけ吹っ切れた感を出しており、気持ちを少しだけ切り替えようとしている……コレが銀の言っていた道か。悪くはないな。

 

「ブランデータイガーの肉は極上の肉だからか……スタージュンにでも渡すか」

 

 生き血を全て啜り終え、ブランデーが無くなったブランデータイガーは干からびていた。

 本来ならば人に向かって使うミイラパッケージもこういう感じの使い方がある。

 

「もう一杯行こう!シゲオ!」

 

「絡み酒は勘弁してくれよ」

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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