「フハハハ……藤太よ、王者の威光と言うものを見せようではないか!」
「英雄、そういうのはな……見せつけるんじゃない、さりげなくだ」
「っむ?1球目を完璧にホームランほど威光に相応しいものはないのではないか?」
「違う違う……真の強者は格が違うと戦う前から思い知らすことが出来るんだ……要するに素振りをしただけで段違いと思わせるんだ」
「ほぉ、それは面白そうだ!」
結局なんやかんやで英雄の所属しているチームに所属した。
英雄が絶対的なエースで全力で投げれば130kmに越えるという調べてみたら規格外過ぎる小学生だった。
そんな英雄の球を捕れるのは俺だけ、やっと英雄も全力投球が出来るのだと喜んでおり……本日は横浜の名門チームとの試合だ。
公式戦じゃなくて練習試合であり中学生と比較しても段違い、小学生ながら大人な体格を持っているとかではない英雄の偵察だろう。
「何百回も練習してるとか基礎を疎かにしてないとかそんなんじゃない……そういう感じの素振りをするんだ」
「ふむ…………ふん!!」
試合開始前のアップの時間だ。ジャンケンの結果、先攻であり英雄は4番だ。
エースで4番とは流石だがまだまだ上に行くことが出来るだろうと英雄に素振りをさせれば……横浜の名門チームが驚いた顔をしてる。
寝る間も惜しんでとかそういうのもあるだろうが段違い、世に言う才能を持っている……凡人や多少の才能がある人間の心を圧し折るには力を見せつけるのが一番だがそれとなくだろう。
「っと……やっぱ名門は強いか」
しかしなんだかんだで横浜の名門のリトルであることには変わりはない。
野球は1人で出来ないスポーツである点取り屋が来る前に1番打者、2番打者が軽くやられる。
3番打者は俺であり名門は強いから後攻は頑張らないといけない、そう思いながらも投げられたボールを見極めてバットを振って軽々と3塁打を打った。
「では、先ずは軽く2点を取ろうではないか」
英雄はそういうと宣言通り2点を取った、要するにホームランを打った。
投げるのも上手ければ打つのも上手い、いきなりの2点を奪われたことに心が折れかけるかと思っていたが名門は伊達ではなくあの2人が強敵だが他は対等以上に戦える相手だと激励を送り攻撃になる。
「ストライック!!」
時速130kmを越える剛速球、今の段階ではそれが武器だ。
まともに反応することが出来ない、仮に出来たとしても撃ち返すだけのパワーを持っていない。
英雄のボールはそれだけ凄まじいが……それだけだ。ボールを上手い具合に制御しておかないといけない、リトルリーグやシニアリーグは球数の制限があるから無駄な球を投げさせるわけにはいかない。しかし世の中にはワザとボールをしなければならない球がある。精神的な揺さぶりだろう。
「……おのれ!真正面から戦う気がないのか!!」
そんなこんなで打順が一巡した。塁に出れるやつが俺達以外にも居たのだが運悪くダブルプレーが起きたりした。
再び打席に立った英雄は……敬遠をされた……コイツには勝てないと思わせることには成功した、だったら塁に歩かせればいい。
今回も試合を見に来ている九鬼のお姉さんが真正面から攻めないのかと怒っているが英雄にとってはそれは想定内の事である。ピッチャーがボールを投げるフォームに入ると同時にセカンドまで走り出す。キャッチャーがボールをキャッチした後直ぐにセカンドまでに投げるが誰の目から見てもキャッチするのが遅いという、いや、英雄が早すぎるという事に気付く。
投げても一流、打っても一流、仕方なく塁に出せば気付けば3塁にまで走っておりヒットに近い球を打たれれば確実に1点を取られる。1点を取り返そうにも130kmの球を打てるものはいない。バントで誤魔化すことは出来ない
「ハーッハッハ、横浜の名門にも完勝だ!」
「うむ……しかし日本一ではない!精進を怠るでないぞ」
「…………」
九鬼のノリは相変わらず馴れない。
しかしまぁ、自己研鑽することは怠るつもりはないのだと思っていると英雄が九鬼のお姉さんの格闘技の大会に誘ってくる。
見た目は美人だがやはりアマゾネスな存在なのかと困惑しつつも葵と井上、小雪も来てくれるので見に行けば、まぁ、圧倒的だった。
退屈そうにはしていないが同年代では相手になる奴は居ないんじゃないのか、そう思えるぐらいには強いわけで慢心とかそういうのはしていない。
「フン、小僧、貴様が英雄様の相棒か」
「相棒じゃなくてキャッチャーだよ」
だって師匠が如何にも強そうな執事だもの。
世界にはまだまだ強い奴が大勢いるから慢心とかそういうのはしなさそうだが普通にエラそうだ。
英雄は偉いがこのおっさんは……アレだ、強すぎるせいで自分は強いんだぞと思っている。それに伴い態度まで肥大化している。
この前の川神院の孫娘もそうだけども強い力を持ってればなんで傲慢になるんだろうか?俺もタケちゃんもその辺はあんまり理解してない
「…………英雄様」
「どうしたヒューム?」
「シニアに上がるのならばこの者と縁を切っておいた方がいい」
「なっ!?なにを言っているのだ!?」
「この者には野心が無い、1番を目指そうという気概が無い……」
「俺はそういうのがあんまり興味無いだけだってば」
俺にやる気云々が無いのを言ってくるのでその通りだと頷くのだが俺はそういうのにあんま興味ないだけ。
英雄は一番を目指しているんだろうが……俺はただ単にそれについてきているだけだ。野球が楽しくないとか熱中する事が出来ないとかそういうアレじゃない。
「英雄が頑張ってるし俺も頑張ってる、ただそれだけだってば……というかさ、そういうのホントによくないよ。根性とか信念とか才能とか色々とあるし向き合い方や愛の形は色々とあると思う」
「ふぅん、悟ったかの様な口振りだな小僧……」
九鬼のお姉さんの格闘技の師匠は……こっちをジッと見つめた。
なにをしているのかと思えば蹴りを入れてきた、コレは九鬼のお姉さんや川神院の孫娘よりも痛いものだ。
なんで全くの赤の他人に蹴りを入れてくるんだと思ったのだが回避すれば更にめんどくさいことになるなと思いながらも色々と思案した結果、師匠の蹴りを受けた
「ヒューム!?」
「っぐ……貴様!」
「だからさぁ…………なんでなの?なんでそうも力を持てば暴走する感じなの?上には上が居るって知っているのに、己を高める道具じゃなくて他者に威光を示す道具になってんじゃん」
「っな!?……なんだそれは!?」
「硬度10,ダイヤモンドパワー……頑張って会得した」
蹴りを入れたことに関して英雄が驚いているのだが師匠さんは苦しい顔を浮かび上げている。
蹴り自体は綺麗に入ったのだが蹴ってしまったものは異常に硬かった、そのせいで足を痛めてしまった。
九鬼のお姉さんがキラキラと輝いている俺を見て驚いている。努力に努力を重ねた末に手に入れた硬度10、ダイヤモンドパワーだ。
そんな事が出来たのかと九鬼のお姉さんが驚いている。足を痛めた師匠さんは拳を振りかぶろうとしたので仕方がないなと拳を受け止めれば……生気を吸い取った。
「ぁ……あぁ……」
「ヒューム、ヒューム、無事か!?藤太よ、なにをした!?」
「生気を吸い取っただけ……大丈夫、飯食って一日寝れば何時も通りに過ごせます」
ムキムキのお年寄りだった筈のヒュームの気が物凄く弱まった。目に見えて萎んでいる。
なにをしたのかと聞いてくるので生気を吸い取っただけ、要するに体内に溜め込んでいる気を吸い取っただけだ。
悪魔霊術の一種であり、コレもまたダイヤモンドパワー同様に黄金のマスクから教えてもらった技の一種だ。九鬼のお姉さんが何をしたか聞いてきたから休んで飯を食えば勝手に治ると言えば生気を吸い取られた師匠のヒュームさんが他の執事やメイドに連れられて何処かに行った。
「藤太よ……お前は……」
「ん〜……まぁまぁ、今回は向こう側が悪かったという事で。武術を嗜んでるならば戦闘の意思が無い人に蹴り入れてくる方が悪いよ」
お前こんな事が出来たのかと英雄に驚かれる。
こう言うので自慢するつもりは無い、俺は全くと言って喧嘩を売ってないのに向こう側が殴りかかってきたから向こう側が悪い。
「そういう事で解決したりそういう事で動くというのならばこちらもそれ相応の返事をする、ただそれだけだ」
「むっ……」
「安心しろよ、お前のキャッチャーで一緒に野球をやっている藤原藤太はなんも変わらない……」
いきなり攻撃を仕掛けたヒュームのおっさんが悪い、それは英雄の中でも分かっている事だ。
そういう事をするのであればそういう事で対応をする……でも俺は武芸の自慢はあんまりしたくないタイプだ。武芸は殺す技術だ、己を高める者かもしれないがその結果がヒュームのおっさんやこの前の川神院の孫娘ならば俺は弱くたって構わない。
「藤太よ……あの時、我の攻撃を受けることも避けることも出来たのではないのか?」
「……出来るか出来ないかで言えば出来るけどさ……九鬼のお姉さん、揚羽さんにとって武術ってなんなの?」
「むっ……我にとっての武術は己を高めるものだ」
「俺は他人の命を奪うための技術だって思っている……活人拳と呼ばれる武術があるのも理解している。でも、俺にとっての武術は殺す技術を追求したものだ……他人の持つ信念や誇りとぶつかり合い互いに理解者になる、友情を育むものじゃない。己と対戦相手を互いにリスペクトして高め合うものだとは思ってないよ」
「……ならば何故英雄と共に野球をしている?武術とは違えど高みを目指しているのは事実であろう?」
「高いところがどんなところなのか気になるから……でも、そこに行って立ち止まってしまえば見えなくなるものも沢山ある。見えてしまっていたものが別のものに見える。何時かそれを下等だと見下す……それでもなにかを言えというのならばきっとそれは勝敗以上のなにか別のものを見出したのだと思っている。それは下等だと見下している人達に秘められている無限の可能性だと思っている。あんた達が王だなんだと語っているのならば、その下等な無限の可能性を認めないといけない。もしそれを認めることが出来ないというのならばそれでは何時か堕ちてしまう……まぁ、要するに英雄と野球をするのが最近は楽しいと感じてるから野球をやっているだけだ」
「…………」
「揚羽さんはコレから上に行く人だ。でも、上に行くことで下を下等だと見下せば何時か貴女が下等に堕ちる。ヒュームがそうだ。俺なんかと比べて死線を多く潜っただろう。常人には出来ない経験を多くしただろう。その上で勝利してきただろう……そして高みに至り、下にいる連中を下等と見ている、自分が若かった頃は云々を何時かは言い出して余計なアホな事をしてるんじゃないのか?」
「っ!?……」
あ、なんか図星を突いてしまったっぽいな。
ヒュームはなんか余計な事をしてしまっている……強いが故に、高いところに至ったが故に下等に落ちてしまったみたいだ。
「……藤太よ…………九鬼金剛雷神拳!!……っ!?……」
「あのぉ、話聞いてましたか?」
色々と思い詰めた感じの揚羽さんだが最終的には殴ってきた。
最初に殴ってきた時と異なり全力で殴ってきたので直ぐにダイヤモンドパワーで身体を硬くする。
自分の拳で尋常じゃないぐらいに硬いものを殴ったので揚羽さんは腕を痛めたっぽい。なんかいい感じの話をしたのに最終的に殴りかかってきた。
「金剛と言っていましたが金剛には程遠いですよ。そっちがいきなり一発入れてきたんですからこっちも入れさせてもらいますよ」
「っ、来い!!」
「金剛堅城砕破!」
「っがぁっ!?」
やられた以上はやり返さないといけないし、向こう側も攻撃を受けるだけでは嫌だろう。
金剛の体で相手を殴る金剛堅城砕破で揚羽さんを殴り飛ばした……揚羽さんは空を見上げている。
「ふぅ……世界とは狭いのか広いのかよくわからないな……ヒュームがいきなりのバカをやってすまなかったな」
「出来ればまたやってこないことを祈りますよ」
多分無理だろうな、あの手のタイプって修行してパワーアップしてリベンジしてやるぞとか言い出しそうだし。
ホントにさぁ強くなって天狗になってたりするの多いよ。戦闘民族とか嫌いだってば。
天帝vs童子切を連載化したいんだが
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連載見てみたい
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短編集にだけしとけ