アルピ交通事務局のネタ倉庫   作:アルピ交通事務局

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真剣で恋しなさいとか言われても 10 

 

「聞いてないぞ、藤太よ!」

 

「言ってないからな」

 

小学六年生、小学生最後の夏、英雄と共にバッテリーを組んでV2チャンプをもぎ取った。

英雄を温存して決勝戦まで来れて英雄がマウンドに出ればその時点で詰んだと思わせる程のピッチングを見せつけての勝利だ。

小学生の野球の日本一を決める大会で激戦区である神奈川の名門のシニアチームが見に来ていた。是非ともうちで活躍してくれのスカウトがあり今度はちゃんと名門に入ろうと英雄は決めた。

 

「中学受験をせぬとはどういう事だ!」

 

「どういうことって言われてもな……」

 

小学生最後の夏を終えれば後は卒業して中学に行くための準備をしたりだが……中学受験をしているやつはしている。

英雄は九鬼財閥の跡取りだ。葵と井上は病院のトップとその補佐の息子だ。小雪は葵のところの病院の優しい老夫婦な医者の養子だ。

一般公立の中学でなくちゃんとした受験勉強をしている、課金ゲーと言われてもおかしくないような塾に通ってる連中が受験する私立中学に行く感じである……医者の子供達に加えて財閥の跡取りなのだから良い学校に通うのは極々普通な事だ。

俺としては疑問に抱いていたのは英雄はどうして普通の小学校に通っているのか?ボンボンで実際に命を狙われたので金持ちや財政界のエリートが通っている外国の学校とかに通ってないのか、そっちの方が謎だったりする。

 

「葵と井上みたいに勉強が出来るタイプじゃないからな……いいじゃん、シニアチームにスカウトを受けたんだからさ。硬式野球部がある私立中学に進学するわけでもないし」

 

「むぅ……………」

 

「俺は勉学とか腹の探りあいとかそういう意味での戦いでは負けると自覚しているぞ……野球で繋がっている、だからそれで構わないだろう?」

 

俺が普通に公立中学に進学することが英雄に知られた。

自分のキャッチャーなんだから普通に一緒の中学を目指すと思っていたのだから聞いていないぞと言われた。

しかし残念な事に俺の学力は普通なのだ、前世が受験戦争をしていたわけでもない、かと言って特定の夢を持っていたわけでもない。

惰性に生きていたと言われればそうかもしれないのだが、親も勉強しろとか言ってこないし野球という日本でメジャーなスポーツで一番になった。それだけでも充分な成果で入団テストがあるレベルで一流なシニアに入団テスト無しで入ることが出来た。

 

「大丈夫、高校は一緒にするから……甲子園のマウンドは一緒に立つ……ただそこからは分からん」

 

「なにを言っている!我と一緒にプロを目指す!」

 

「それはするよ……でもさ、プロはドラフト制だから同時指名されることはない。被ってしまったらくじ引きしないといけないし、もしかしたらプロになれないかもしれない」

 

「むぅ……」

 

「英雄にとっては俺との出会いはどうだった?」

 

「中々に衝撃的であったぞ」

 

「出会いがあるなら別れもある、お前の親父さんとだって死ぬ的な意味で別れもあるし今まで一緒に戦った奴等全員が同じシニアに入らない。本当の別れもあるのだからそれは認めないといけない。今回は本当の別れじゃなかったから構わないけどもプロになったりした時はもしかしたら敵対する……」

 

「……別れか……考えたことも無かったな」

 

「最初の別れが小学校の卒業だ……でも、野球で繋がっている。それだけは変わらないからそれでいいだろ?」

 

「…………そうだな…………我と藤太は出会いは野球であった!離れていても野球の繋がりは確かにあるのだ!……しかし、高校は一緒だぞ?例えどんな理由があろうともだ」

 

「ああ、約束しよう」

 

英雄をなんだかんだで上手い具合に巻き込むことに成功した。

野球で一緒のチームになっているのだからそれはそれで構わないのだと認めてくれた。

 

「トータ…………受験しないの?」

 

「しないぞ……俺は小雪の様に賢くないからな……文武両道が出来ない、些かどころかかなり武の方に偏っている」

 

「ボクが勉強を教えてあげるよ!」

 

「いや、すまんがそれは無理だ」

 

「なんで!?トータと一緒がいい!!」

 

「こら、ユキ、藤太にしがみつくんじゃありません」

 

「藤太くん、ホントに受験しないのですか?」

 

「学力の方は3人と比べて自信が無いからな……だからここまでだ……」

 

「え?」

 

「そう、か……そうだよな……………」

 

「準、どういうこと?ここまでってどういうこと?ねぇ、トーマ、どういうこと?」

 

「藤太くんはこのまま野球を一緒に続けてくれる、藤太くんと英雄くんならばシニアで頭角を現すでしょう。本気で甲子園を目指しているというのならば甲子園常連の強豪校に行くのは普通な事で………広島や大阪の様な野球激戦区の学校に行く、勿論神奈川も高校野球激戦区ですが……………川神市外の学校に通うことになる」

 

「やーだ!!トータ、行っちゃやだ!一緒の学校に通おうよ!!」

 

小学生でお別れになるのだと葵は教えてくれる。

井上も出会いがあれば別れもあるのを理解している、本気で上を目指しているのならばそれはぶち当たる壁だと分かっている。

医者の息子の自分達も何れは名門な大学の医学部に進学し、医者を志す。その過程で友人と呼べる連中とは別れなければならない。

 

「別に永遠の別れじゃないんだ、学校は違っても顔を合わせる事は出来る……俺の家に何度か来てるし住所知ってるだろう?」

 

「そういう問題じゃないよ!ボクはトータともトーマとも準とも一緒にいたいの!」

 

「…………悪いがコレは決めたことなんだ」

 

「トータの……トータのバカぁああああああああ!!」

 

小雪が俺に蹴りを叩き込んで走り去っていった。全くと言ってダメージになっていないが痛いことには変わりはない。

走り去っていった小雪をどうすべきかと考えるのだが井上と葵も色々と考える。

 

「ホントに、ホントに受験しないのか?……私立中学はお金がかかるとかそういう理由とか」

 

「いや、学力の面でな。私立中学は勉強する奴が集まるところだ、生憎な事に勉強の方は普通の中学で精一杯だ」

 

「そうですか……………」

 

ホントに受験しないのかと2人も聞いてくるが受験はしない。

学力の面で普通の中学の勉強で手一杯だ……前世で通っていた高校も普通の高校だったから進学校的なのに通えば落ちこぼれになるのは目に見えているだろう。井上と葵はスゴく残念そうにしているが仕方がない事だ。

 

「頭では理解していましたが……その日がこんなにも早くにやってくるとは予想外です」

 

「若、仕方がない事だ……藤太や英雄の背中を押すのが俺等の仕事だろ?」

 

「…………ええ……しかし、藤太くんは私達以外と仲良く出来るのでしょうか?」

 

「葵の様に表面上の友達的なのは作る気にはなれんな……1人の方が気楽だし、中学まではプライベートで会うことが出来るのだから問題は無いだろう」

 

頭では分かっていることだがショックな2人。仕方がないことなのだと受け入れる。こうやって人は前に進んでいくものだ。

なんだかんだで受け入れている2人は大人だなと実感しつつも小雪をどうにかしなければならない。下手したら入試で白紙にする可能性がある。

 

「やだよ……やだよぉ……トータともトーマとも一緒にいたい。ついでに準とも」

 

「小雪…………嫌なのか?」

 

「うん……だってトータのおかげだもん。トータはボクのヒーローだもん!」

 

「ならば何かしらの言うことを1つだけ聞いてやる、と言うのはどうだろうか……出来る範囲内限定だがな」

 

「ホント!?」

 

「出来る範囲限定だ……無理だと思うなら無理と断るぞ」

 

「う〜ん…………じゃあ、ボクのこと、ユキって呼んで!」

 

泣いている小雪の説得に使えそうなのが言うことを1つ聞ける範囲ならば聞くと約束をした。

その結果、小雪は自分の事をユキと呼んでほしいと頼み込んだ。そういえば井上も葵も小雪の事をユキと呼んでいるが小雪とは呼んでいないな。

 

「それはいいですね……コレを機会に私の事を冬馬と呼んでくれませんか?」

 

「そうだな、お前だけ何時までも名字呼びってのはなんかしっくりと来ねえわ」

 

「分かった……改めてよろしく頼むな。ユキ、冬馬、準と言う名のハゲ」

 

「最後をしっかりしてくれねえかなぁ!!」

 

「冗談だよ、準……だから入試で白紙とかはやめろよ」

 

「うん……」

 

「白紙どころか主席で合格してみせますよ」

 

カッコイイことを言ってくれるな……冬馬ならばホントにやってくれるだろう。

ユキもちゃんと約束を取り付けたし、休みの日とかはちゃんと遊ぶことになっている。

学校が違う、ただそれだけのことだがそれだけのことが割と重要だったりする。

 

「という感じで俺は受験致しません……普通に中学に進学します」

 

そんな事を黄金のマスクに報告をする。

最早、黄金のマスクに報告をすることに関しては日課になっている。宗教みたいな感じになっているが気にしない。

やるからには精進しろと脳内に黄金のマスクが語りかけてくる……相変わらず謎だったりする……いや、ホントにな。

超人が居ないこの世界、超人じみた事が出来る連中が沢山居る。そういう人達を見て鍛えてやろうって……あ、思っているか。俺にダイヤモンドパワーと地獄の九所封じ教えてきたか。覚える事が出来たのホントに奇跡だからな。

 

「トーくんもよっちゃんも羨ましいな。やりたいことを見つけることが出来て」

 

そんな事をタケちゃんとよっちゃんに話す。

将来の進路云々に関してはああだこうだ言わない感じだが、よっちゃんは既に将来の夢を決めてて一部実現している。

よっちゃんは将来的には日本に飯を食いに来た外国人観光客に東京の美味しいお店を教える通訳をしたいと言っている。

 

「ラーメン、お待ち」

 

現在は東京と北海道の美味しいお店巡りをしている。

本日も付き合いでヴィーガンラーメンを食べに東京にまでやって来た……肉を食ってないとラーメンらしくないとかそういうのがあるのかと思ったのだがヴィーガンラーメンは思ったよりも美味しい。

それを外国人向けのサイトでここなら宗教的なアレとか気にしなくていいよとか言える。

 

「タケちゃんも折角の二度目なんだからどうにかしようとか思わないのか?」

 

特になにかをしているわけではないタケちゃんの将来をよっちゃんは心配する。

 

「む……私はそういうのにはあまりな……最悪この筋力を活かして引っ越し業者にでも就職しようかなと」

 

「力の活かし方を間違ってないか……藤太、九鬼と仲良いから紹介しないか?」

 

「嫌だ、私は彼処には行きたくない。私達の遊ぶ時間を奪った連中は許さない」

 

「俺と英雄はそういう関係性じゃない」

 

タケちゃんの能力ならば喜んで九鬼は受け入れるだろうが、九鬼とはそういう関係性じゃない。

そういう邪な感じで近づいたのならばなんか言われそうだしなんか普通に嫌だ。タケちゃんも主にヒュームが嫌いなので嫌がっている。

 

「大丈夫だ、よっちゃんがくれた金玉のおかげで経済的な意味で苦しまない。トーくんのお陰でご飯で困ることはない」

 

「藤太、もしかしてオレ達がタケちゃんをダメにしてるかもしれない」

 

「ハッハッハ、日本版アーサー王も結局のところはニートだったというわけか」

 

「失礼だな!私、君達2人より強いのだからな!先祖王族なんだぞ!」

 

「先祖が王族云々を言ってる時点で底が見えるよ、タケちゃん」

 

「よっちゃん、酷いぞ!場合によっては私はガチ泣きするぞ!私の様に見目麗しい存在がガチ泣きすれば大変だからな!」

 

自分で言ってて悲しくならないのだろうか?

タケちゃんをダメにしているのは俺とよっちゃんなのかもしれない。それはそう……よっちゃんは金玉を与えて俺は飯を与えている。基本的にはタケちゃんに与えているだけでタケちゃんから何かをもらった記憶は無いに等しい。

 

「まぁ、タケちゃんの力は近い内に必要になるからアレだよ。私はまだ本気を出してないって言い切ることが出来るよ」

 

よっちゃん、それ完全にニートのセリフだぞ。

天帝vs童子切を連載化したいんだが

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