無人島の猫百合姫 ~ハードコア孤島サバイバルが百合ハーレムになるまで~   作:Kkmn

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コメントと評価とってもありがたいですなぁ
ゆりゆり


20. お嬢さま、愛を捧げる

ああ、何故?どうして?

 

どうして私の暗く、どうしようもない真実を知ってもなお、なぜ私のことを、あなたは――――。

 

 

 

「…ありがとう、エルゥ。」

 

 

 

彼女の仲間を、獣人を殺した呪われた家の娘である私を、猫耳の少女の双眸が見つめる。

 

 

 

「チガウ…チガウノ…ワタシ…。」

 

「自分と、一緒にいてくれて。自分と、友達ににゃってくれて。」

 

 

 

その美しい蒼の瞳の光彩は、光一つない暗闇のこの島の中で、唯一…文字通り『輝いて』いた。

 

 

 

 

 

「大丈夫。ちょっとだけ、待っててね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女をゆっくりと下ろし、後ろに下がらせる。

 

最期まで何か自分に言いたげな顔をしていたが、今はその時ではない、後でゆっくり聞こう。

 

そう、後で。

 

 

 

「はっ、なんだそりゃ?エラい薄っぺらな服だな。痴女みてーじゃねーか。」

 

「…そう。」

 

 

 

何故だろう。不思議と心が落ち着いていた。

 

まっすぐに狼少女の眼を見据えると、そこに写った自分の姿は確かに…少し異様というか、不思議なモノだった。

 

 

 

首から足の指先に至るまで、全てを覆う薄く光沢のある艶やかな生地。

 

それらが少女の身体のラインをくっきりと浮き出していて…胸の谷間の形など水着の時より遥かにその形が浮かんでいる。

 

 

 

「……ん……。」

 

 

 

僅かに歩を進めると、ぴっちりと張り付いたそれらが僅かに締め付け、素肌を撫でる。

 

なるほど、確かに少し恥ずかしい。でもそれ以上に、水着とは比べ物にならないほど、動きやすい…。

 

 

 

なんて言うか、随分未来的な…ロボットのパイロットのスーツみたい…。

 

 

 

あんなに重くて邪魔で仕方なかった弾む胸が、揺れる尻が、そこだけ誰かに支えられてるような感じ。

 

これなら…何も気にせず、この身体の全力を発揮できる。

 

 

 

 

 

「ありがとね…アン。」

 

「いいねぇ…じゃあ今度はハダカじゃなくて、そのエロい衣装のままで喰ってやるよっ!!」

 

 

 

 

 

相も変わらずギラついた、少し下卑ているとも言えるカオ。

 

再びその彼女が大きな咆哮と共に、とてつもない跳躍力で自分の目の前に駆けてくる。

 

 

 

振りかざされる光り輝く鋭い爪。チェーンソーをも上回るであろう切れ味と破壊力を持つ常識外のそれを。

 

 

 

 

 

ガ、きぃぃぃぃん……ッ。

 

 

 

「―――――んなぁっ……!!?」

 

 

 

 

 

はじけ飛ぶ硬いナニカ。それが彼女の欠けた爪先だと気づいたのは、数瞬の後で。

 

いとも簡単に…アンが擬態したスーツは防いで見せたのだ。こんな、こんな薄い布地だけで。

 

 

 

「はは…すごいにゃ、アン。」

 

 

 

『……♪ <blip> Assault mode engaged. Rerouting power maximize damage output.

 

 攻撃を推奨します。』

 

 

 

…ん?今一瞬だけ無機質な機械音声から、無邪気ないつものアンに戻った気がするけど。

 

ううん、今はいいや、とにかく……。

 

 

 

「今は、あにゃたが邪魔だから…ッッ!!!」

 

 

 

自分の決意を込めた覇気と共に全身に力が漲っていく。

 

あんなに非力で、腕力の無さに絶望していた腕に信じられない程の力が感じられる。これなら…。

 

 

 

 

 

 

 

「…ッッ!!どんな手品かしらねぇがッッッ!!!」

 

 

 

目の前に迫りくる狼少女の両の拳。

 

それがさっきよりもはっきりと見えるのは、アンのおかげなのか。自分がこの身体になれたからなのか。

 

でもどっちでもいい、確かなのは、そのおかげでエルゥを守れる…この『敵』を倒せるってことだけだから。

 

 

 

「UGURUゥゥゥゥゥッッッ…!!!」

 

 

 

槍を咥えた口の奥、喉から漏れるケモノそのもの声。それが自分から出ている事が、少しだけ信じられなかった。

 

 

 

 

 

……バキィッッッ!!

 

 

 

 

 

何かの強烈で巨大な破砕音が砂浜の静寂に響き渡り、それは槍の柄と、それを咥えた自分の牙が砕けた音…。

 

そして迎え撃った狼少女の両手の拳が砕けた音だった。

 

 

 

 

 

「グルゥゥゥガァァァああああぁぁ!!?…あーっ…てめぇっ、このっ、半端モンの獣モドキがあああああッッッ!!!」

 

 

 

 

 

あはは…やった。相手の両手はもうボロボロだ。これでもうきっとマトモな攻撃は出来ないだろう。

 

自分だって牙が折れて口から血が溢れてるけど、たいした傷じゃない。

 

ざまあみろ。エルゥを、自分の大事な人を傷つけるからそうなるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爪を割られ、両手を砕かれた狼は無様に血を垂れ流しながらわなわなと苦しみ悶えている。

 

あとはもう、頭を掴んだ蛇、尻尾を切ったサソリと一緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さっさと殺して…動かにゃいようにしにゃきゃ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。自分の、自分たちの命を脅かすモノは、何であろうと殺して、身を守らなきゃ。

 

だってそう決めたんだもの。あの日、この島の自然に打ちのめされて死にかけた日。

 

 

 

自分は、絶対に生き延びるって決めたんだ。だから。

 

 

 

 

 

『分析…標的の生命プロセスは著しく損傷しています。戦闘の継続は困難と認定。

 

 推奨…攻撃の継続。』

 

 

 

ほら、アンも私の中でこう言ってるじゃないか。そうだよね、危ない危険生物はちゃんと始末しなきゃ。

 

大丈夫わかってるよ。ちゃんとトドメを刺すから、しっかり手伝ってね。

 

 

 

 

 

 

 

『 <blip>fabrication initiate「...メルトオプション...ロード」します。』

 

 

 

 

 

 

 

粉々に砕けてしまい先端のみになってしまった槍を掲げ、アンの一部を寄生させる。

 

じゅるり、と巨大生物の遺体から剥ぎ取った牙の先から禍々しい液体が滴る様は、まさしく捕食者といった具合で悪くない。

 

 

 

あぁそれにしても、随分と今日はカロリーを使ってしまったな。

 

この目の前の狼モドキは食べれるのだろうか?そう言えばコイツから蛇肉のニオイがするが、つまみ食いしたのだろうか。

 

だったらどうしようもない許せない害獣だ。

 

 

 

 

 

「あぁどうしよう、肉は食べて、骨は武器にしようかにゃ…そうだ、毛皮は毛布にしよう。

 

 きっといい素材ににゃるよね。」

 

 

 

だいじょうぶ、頭と内臓をとれば、ほとんどの生き物は食べれるってここの生活で学んだから。

 

それにきっとエルゥも喜ぶだろう。暖かい毛布があればきっと夜もぐっすり眠れるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜーっ…はーっ……はーっ…わ、悪かったよ…。アタシが、悪かったって…。

 

 アタシ、この島に昨日漂着してさ…ちょ、ちょっと腹減ってたモンだから…つい。」

 

 

 

 

 

…?何言ってるんだろう。

 

 

 

「お腹にゃら、じぶんもすいてるよ?」

 

 

 

「……ひっ……!!?」

 

 

 

 

 

あぁ、コイツ、こんな顔も出来たんだ。バカみたいに怯えて、涙まで浮かべちゃって…。

 

…?でもなんだか…緊張のニオイというか、そんなカンジのニオイがしないな?

 

 

 

 

 

スッ―――――ガチンッッ……!!

 

 

 

 

 

「…ちっ!!」

 

 

 

あぁ、やっぱりそうだった。

 

危ない危ない、油断して近づいたところを牙で噛んで来ようとするなんて。

 

 

 

ヘビだって頭だけになっても噛んでくるし、サソリだって尻尾無くてもハサミで攻撃してくるもんね。

 

危険生物はちゃんと、最後まで油断せずに後始末しなきゃ。

 

 

 

 

 

「…あぁ、クソがッ…!!もういいよ、めんどくせー…やれよ……。」

 

「うん。」

 

 

 

 

 

そう言って自分は、槍を構えて首のあたりに狙いを定めた。

 

諦めたように動きを止めてくれたのはありがたい。お腹とかを切ると、きっと内臓の処理が大変だもん。

 

 

 

「....リィナ、姉ちゃんもそっちいくからな...」

 

 

 

あぁ良かった。これで自分とエルゥは生き延びれるんだ。本当に、よかったよかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノウンッッッ!!!ダメッッ!!」

 

 

 

 

 

ずどんっ、と鈍い衝撃が自分の身体の横に思い切りぶつけられる。

 

けど、アンの不思議なスーツのおかげで脚力まで強くなっている自分は、その程度ではびくともしなかった。

 

 

 

「…うん?どうしたの。エルゥ…?」

 

 

 

どうしてトドメを刺そうとしてる大事な時に、邪魔しに来たんだろう。

 

コイツが暴れるかもしれないから、危険だし離れていて欲しいのに。

 

 

 

 

 

「ノウン…、ダメ!!ノウン…チガウノ、ダメナノ、コンナノ…!!!

 

 ソンナノ、ワタシノ、イエノヒトト、オナジ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

「にゃにがダメにゃの?自分とエルゥが生き残る為だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

――――そうだよ、生き残るためだから仕方ないんだもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…後で良い?さっさとにゃい臓を取り出さないと、コイツの肉が腐っちゃうから。」

 

 

 

そう、何のことでもないように、無機質な声で告げる彼女。

 

可愛らしいその顔を返り血と吐き出した血で染め、眼の前の獣と人が混ざった姿の少女を獲物としか見てないその姿は――――。

 

 

 

 

 

――――恐ろしくも、幼い頃の日に見た…獣人を出荷する、お父様の姿と被ってしまって。

 

 

 

 

 

嫌でした。私は構いません。これ以上いくら汚れようが、いくら傷つけられようが、知ったことではありません。

 

ですが彼女は、ノウンだけは、絶対に同じような存在にはなって欲しくないのです。

 

 

 

 

 

「イヤ…ダメ…。ノウン…モトニ…モドッテ……。」

 

 

 

 

 

まるで感情を何処かに落としてきてしまったような、そんな彼女の肢体を抱きしめました。

 

それは…あんなにも暖かった彼女の身体が…まるで氷のように冷たくて…。

 

 

 

「ゴメンネ…ワタシガ…ワタシノセイデ………。」

 

 

 

あぁ、こんな汚れた手で、あなたの美しい純粋な身体を抱きしめるのを許してください。

 

でも。そうしなければ、あなたは…わたしと同じ存在に堕ちてしまう―――――。

 

 

 

 

 

「……エ……るぅ…?ぅ…にゃ……。」

 

 

 

 

 

 

 

僅かに、ほんの僅かにですが、彼女のその瞳に意思の輝きが戻った気がしました。

 

ですが、それはほんの些細なことで消し飛んでしまうようなか細いモノで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もう、私には、これしかアナタを引き戻す手段が思い浮かびません。」

 

 

 

「………?……エルゥ……?」

 

 

 

 

 

きっとこの言葉は、あなたには聞き取れないでしょう。意味が分からないでしょう。

 

 

 

 

 

「もし…これでもあなたを取り戻せなければ……。」

 

 

 

 

 

私は、彼女の手を取り、微笑みました。

 

 

 

 

 

「私もあなたと共に、地の底まで堕ちましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呆然と魂が抜け落ちた、愛する人の唇に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――アイシテル。ノウン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、失くしたモノを注ぎ込もうと、自らの唇を重ねました。

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