無人島の猫百合姫 ~ハードコア孤島サバイバルが百合ハーレムになるまで~   作:Kkmn

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3. 猫耳少女、サバイバルの洗礼を受ける

 

疲れた。

 

 

 

 

 

体力も気力も何もかもが尽き果て、水の出ないココナッツを抱えて砂浜に座り込んでいた。

 

 

 

 

 

きっとこのココナッツは枯れ果てた果実だったんだろう。よく思い出せばテレビとかで見るのは緑色っぽかった気がする。

 

 

 

 

 

もっと早くそれに気づいていたら....密林をもっと探していれば....ココナッツを早く諦めて別のものを探していたら.....。

 

無意味な『たられば』の考えばかりが思い浮かび脳のリソースを無駄にしていく。

 

 

 

 

 

どうすればいい?いや、どうしようもない。

 

 

 

 

 

「けほっ....。あ....やどかり.....?」

 

 

 

 

 

ふと、三角座りのその膝下を一匹のヤドカリがすーっと歩いているのを見つけた。

 

普段なら『かわいい』『面白い』とか思うところだが、この限界を超えた状況では違った。

 

 

 

 

 

これ食べれるよな...。ザリガニだって食べれるんだからヤドカリだって....。

 

 

 

 

 

そう思い至った瞬間、ガッとヤドカリを掴んで殻から引っ張り出した。

 

可哀そう、とか、寄生虫とか細菌とかヤバそう、なんて考えは浮かばなかった。

 

ただ何かを食べたいという生物的な本能だけが頭の中にあった。

 

 

 

 

 

「あむっ.....」

 

 

 

 

 

砂を洗い流すのも、殺す気力もなく、生きたヤドカリをそのまま口の中に入れる。

 

ボリボリと毛の生えた殻ごと砕く、思ったよりも柔らかいなぁ....。

 

でも殻ばっかりで肉の部分は本当に少ない。何度も何度もかみ続けると若干の甘みと旨味が滲み出てきた。

 

 

 

 

 

その時やっと、自分の歯の中に二本だけ動物のような小さな牙が生えていることに気づき、それを使って殻や筋を細かく砕いた。

 

 

 

 

 

「けほっ.....美味しかった.....」

 

 

 

 

 

食べれる肉の部分はかなり少なかったが、この身体にとって初めての食事は割と美味しかった。

 

でも全然足りない、まったく足りない。

 

それに口の中の水分がヤドカリについていた砂に更に奪われ、渇きがひどくなった。

 

そのうえじゃりじゃりして気持ち悪い。

 

 

 

 

 

「ほかには......いにゃいか......」

 

 

 

 

 

もっと食べたい、そう思って辺りを見渡してももう砂浜には何もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

他に探しに行く気力もなく、結局ヤドカリ一個を食べただけで一日を終えた。

 

頭が酷く痛い、胸がムカムカして吐き気がする。身体の震えが止まらない。

 

きっと脱水症状が昼間より更に悪化しているんだろう....。

 

 

 

 

 

そして更に、それに追い打ちをかけるように別の事実に気づいた。

 

 

 

 

 

「やばい、ちょっと、さ、さむい......」

 

 

 

 

 

ぎゅっと膝を抱え、うずくまるように身体を縮める。

 

日が暮れた海岸は恐らく20℃ほどで温かいくらいではある筈だが、海へと向かう海陸風が裸の身体から熱を奪っていく。

 

 

 

 

 

服...なにか、着るものがあれば.....。

 

 

 

 

 

「ここ、だめだ.....森に.....」

 

 

 

 

 

おぼつかない足で立ち上がり、震える足で歩き出す。視界がぼんやりとして、バランスを取るのでさえ一苦労だった。

 

 

 

 

 

「......あっ....」

 

 

 

 

 

砂に足を取られ、受け身をとるまもなくどさっと顔から倒れ込んでしまう。

 

 

 

 

 

もう.....無理.....動けない.....。

 

 

 

 

 

立ち上がる気力も、這いつくばって移動する体力ももう残ってなかった。

 

 

 

 

 

冷たい砂浜に身を任せ、ほとんど気絶に近い形で眠りの中に意識が沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

照りつける太陽、白い砂浜と緑色の宝石のような海。もうそれらを眺めても何の感情も湧いてこない。

 

あの後、眠りについたと思ったら強烈な吐き気と腹痛で目が覚さめさせられた。

 

 

 

 

 

這いつくばって森の茂みの中で胃から溢れ出るものを吐き出し、用を足すと酷い下痢をしていた。

 

熱中症でも脱水症状でもない、きっとあのヤドカリが食あたりを起こしたんだろう。

 

 

 

 

 

「...ははっ....こほっ....」

 

 

 

 

 

きっと下痢をしたことで更に身体から水分が失われたに違いない。なんて馬鹿なことをしたんだろう。

 

普通に考えれば野生の虫を生で食べるなんて考えられないのに。

 

 

 

 

 

「......うぇっ、ひぐっ....くしゅんっ!!...うっ、うっ......」

 

 

 

 

 

不意に、ぽろぽろと玉の涙が目から溢れ、頬を伝って地面に吸い込まれていく。

 

目元がじんわりとはしてたものの、まだ泣くには至ってないと思ってたのでそれに驚いた。

 

 

 

 

 

この身体、涙腺までゆるくなってるのかな.....?

 

 

 

 

 

不思議なことに目から涙があふれると、無感情だった心まで悲観的に染まっていき止まらなくなる。

 

 

 

 

 

ああしてれば、こうしてれば。なんて自分は哀れなんだろう。死にたい。死にたくない。意味がわからない。ここで死んだらどうなるんだろう。

 

 

 

 

 

結局その日は、何もせず、いや何もできず大きな木の影で一日中うずくまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと日は沈み、辺りは暗くなっていた。

 

うずくまっていた筈の身体は倒れるように横たわっていて、口から寝てる間に溢れた吐瀉物が地面を汚している。

 

 

 

 

 

「.......」

 

 

 

 

 

頭が何も働かない、何も考えることができない。なんでここにいるのかすらもうよく思い出せない。

 

 

 

 

 

ただぼんやりと、光なんてとうに消えてるであろう眼で、変わり映えしない海と砂浜を―――――。

 

 

 

 

 

いや、変わり映えしていた、何かある。なんだあれは、光ってる。

 

 

 

 

 

「あ......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不思議と夜でもよく見える目でじっと焦点を合わせると、波打ち際にビンが2本打ち上げられているのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもそのビンはどう見ても普通じゃなかった、まずそのビンは光り方はホタルみたいだが紫色に発光している。この時点でどう考えても普通じゃない、おかしい。

 

おかしいが、今の自分にはそれがたいした問題には感じられなかった。

 

 

 

 

 

ビン、なかみがある、いれもの、のめる.....?

 

 

 

 

 

混濁しきった理性がそんな短絡的な思考に至り、フラフラと誘われるように光るビンに向かって這った。

 

這うたびに大きな胸が押しつぶされ、先端が擦れて鋭い痛みが突き刺さって邪魔だった。

 

 

 

 

 

近づくとビンの中身がよりはっきり確認できた。

 

発光する紫色の液体の中に、気泡や小さな粒が浮かんでいる。猛毒と言われればうなずいてしまいそうな外見だった。

 

その上、ワインのようなビンではなく、昔ながらの大きな口のコルク瓶なせいで余計にそう見えた。

 

 

 

 

 

ぼんやりと考えながらビンを握ると、冷たくも暖かくもない。

 

震えながらコルクのフタを掴み、力の入らない痙攣する手でなんとか外す。

 

 

 

 

 

「...........」

 

 

 

 

 

匂いはしない、湯気もたたない。

 

 

 

 

 

「.......きれい.......」

 

 

 

 

 

何故か、本当に何故かわからないが、その光った液体を見るとポロポロと涙が溢れてきた。

 

 

 

 

 

「......いただきます」

 

 

 

 

 

何故か、誰に向けたかわからない言葉が口をつき、目をつぶり瓶に口をつけた。

 

 

 

 

 

「ごくっ....んくっ.....んくっ.....」

 

 

 

 

 

傾けたビンから口の中に達するまで時間がかかったことから、かなり粘っこい液体のようだった。

 

流れ込んできた液体が舌に触れる。

 

 

 

 

 

甘い。すごく甘い。美味しい。美味しい。美味しい......!!!

 

 

 

 

 

喉を鳴らしながら必死に、呼吸することさえ忘れながら一心不乱に液体を飲み込んでいく。

 

ビンの口が大きかったせいで、溢れた液体が身体に垂れていくのも気にしない。

 

 

 

 

 

空っぽだった胃が満たされていき、干からびていた喉が潤っていく。

 

今まで食べたどんな食べ物よりも、どんな飲み物よりも美味しくて仕方なかった。

 

 

 

 

 

さっきとは別の意味の、幸せで感極まった涙がボロボロと溢れ、頬が笑顔で緩んだ。

 

 

 

 

 

あぁ、きっと自分は今、世界で一番幸せな人間....ニンゲン??だろうなぁ.....。

 

 

 

 

 

「ごくっ....ぷはっ....!!!...けぷっ」

 

 

 

 

 

底の一滴まで飲み干し、忘れていた呼吸を再開した。一気に飲み干したせいか、口から自分のものと思えない可愛らしいげっぷが漏れた。

 

 

 

 

 

「美味しかったにゃぁ....もう一個は、とっておこう....。」

 

 

 

 

 

気づけばあんなに苦しかった餓えと渇きはすっかり治まっていた。

 

空き瓶ともう一つの光るビンを大事に両腕で抱えると、木の下へと引き返した。

 

 

 

 

 

ビンから発せられる紫の淡い光が周囲を照らし、仄かに光るランタンみたいだった。

 

その光に不思議と安心感を覚えながら、満ち足りた幸せな気分で再び眠りについた。

 

 

 

 

 

これ、ホントなんなんだろう.....?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時自分は知らなかった。

 

眠りについた後、もうひとつのビンの中身がもぞもぞと意思をもって蠢いていたことを。

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