無人島の猫百合姫 ~ハードコア孤島サバイバルが百合ハーレムになるまで~ 作:Kkmn
「うーんっ....」
大きくぐっと伸びをすると、なんとも言えない気持ちよさを感じる。
昨日とはうって変わって、なんとも気持ちのいい目覚めだった。
あれだけ酷かった体調はすこぶる良くなり、気力も体力も満ち溢れている。
ただ一つ気になる点は昨日飲んだこのドロドロ....これが一体なんなのかと言うこと。
お酒でもないし、調味料でもない、多分毒でもなさそうだけど....それにコルク瓶に入ってるし。
「まぁこうやって元気ににゃってるし、お腹も壊してにゃいし、悪いものではにゃいか...」
なんだか気分がいい、頭がすっきりとして回転が早いのを感じる。
「今にゃら水も、にゃんだかみつけられそうにゃ気がする.....」
自分でもよくわからない高揚感に身を任せ、先日散々な結果に終わった砂浜の散策へと向かった。
砂浜を歩いているうちに自分の身体の異常に気づいた。
足の裏の傷に砂が入ってこないのを不思議に思い確認すると、なんと昨日まであった筈の傷が全てキレイさっぱりなくなっていたのだ。
いや、足の裏だけじゃない、体中にあれだけ付いていた赤い擦り傷が消え、血まみれの手のひらも真っ白に戻っていた。
「たぶん....あのドロドロのおかげにゃのかにゃぁ....」
なんとなくそんな言葉が口をついた。
もしこの世界がファンタジー的な世界だと言うのなら、きっとあのドロドロはさしずめポーションとかそういう物なのだろうか。
そんなことを考えながら波打ち際を歩いていると.....。
.......ちょろっ.....
「......!!......この音.....!」
頭の上でピクピクと何かが....っていうか猫の耳が動くのを感じた。
波の音、鳥や動物の音ではない、何かが流れる音をはっきりと聞こえてとれた。
あまり近くない、結構遠くの方から小さいけど確かに....ってなんでこんな音が聞こえるんだろう?
この猫耳のおかげか?
音が聞こえる方に走って向かうと、やがて密林が途切れ岩場になっている箇所にたどり着いた。
「ココらへんから聞こえてるけど....にゃんだろう?溜まった海水が.....あぁっ!!」
背の高い大きな岩を調べていると、その割れ目からちょろちょろと水が流れているのを見つけた。
よく水流を見ると別の岩に滴り落ちていて、そこには小さなくぼみができて僅かに水が溜まっていた。
落ち葉や砂が溜まってはいるが水自体は澄んでおり、恐る恐る顔を近づけて口を付けてみる。
「しょっぱくにゃい.....真水だっ....!」
やったやった!念願の水だ!!量はそこまでないけど、これでひとまずは安心だ!!
小さく飛び跳ね、嬉しさのあまり大きくグッとガッツポーズを掲げた。
食料ももちろん必要だが、間違いなく水は一番優先すべき事項であり、それをわずかながら確保できたことは本当に大きかった。
幸運というものは一度起こると連続してやってくる、ってどっかで聞いたことがあった。
今まさに自分はそれを体験していた。
水をみつけスキップでもしたいほど舞い上がってた帰り道、再びあのココナッツが転がっていたのだ。
それも今回はまだ若々しい緑色で、その新鮮さが伺える。
「......もうおにゃじバカはしにゃい。」
ココナッツを抱え来た道を戻り、先程の岩場に再びやってきた。
ちょうどココナッツが上手いこと挟まりそうな岩の隙間を探し、そこに蹴り込んで固定する。
そしてっ....このっ....抱えた大きな岩をっ....あっマジで重い....叩きつければ....!!!
ゴシャッ
気持ちのいい炸裂音が響き、岩をひっくり返すと、ココナッツの外皮は綺麗に割れていた。
「っしゃっ.....」
さっそく中を見てみると細い繊維の中にもうひとつ小さなココナッツ?が入っていた。
それは触った感じ若干柔らかそうで、岩に叩きつけてみると中から液体が溢れ出した。
「わっ....あっ...もったいにゃっ....」
慌てて口を付け、その割れ目からあふれる果汁を飲んでいく。
おぉ....美味しい....。思ってたよりも甘みがあって、とてもまろやかな感じ....。
これなら幾らでも飲めそうだ....。
ぎゅっと絞り最後の一滴まで果汁を飲み干すと、皮の内側に白いゼリーみたいなものがついてるのを見つけた。
試しに少しかじってみると、味はさほどしないが水分を含んでそうな感じだった。
「食べれるモンにゃら食べにゃいと.....」
皮にかぶりつくように白いぷるぷるした物体を食し、久しぶりに食べる固形?物?に少しほっとした気分になる。
「はぁー....にゃんか、幸せだにゃぁ....」
水を見つけ、腹も僅かだが満たされ、満ち足りた気持ちになりながら再び帰路についた。
その後岩場に張り付いていた小さな貝を見つけ、石で引き剥がし片手で持てるだけ持って帰った。
貝を採っていた最中、あの体調を崩す原因にもなったヤドカリにも再会したのでもう一度捕まえた。
今度は生は絶対にやめておこう.....。何か調理する方法を探さないと。
内蔵を抉られるような痛みを思い出し、額に大粒の汗が浮かぶ。
「一番いいのは加熱だけど....火にゃんてにゃいし....うーん、それにゃら.....」
近くにあった岩の上で貝とヤドカリの貝を叩き割り、ついでにトドメもさす。ごめんね。
そのあと、貝の身だけとヤドカリを日光で熱せられた海岸の岩の上に並べた。
これなら日光と、石の熱さで多少は加熱されるんじゃないか...?
とりあえずそのまま干した貝とヤドカリは一旦放置し、ビンを置いてきた砂浜に戻ることにした。
相変わらず妖しく紫色に発光しているビンを見ると、不思議と安心する感じがする......。
飢えや渇きを癒やしてくれた上、傷まで治してくれた魔法のような液体。
それがもう一本手元にある。その事実がとても心強い。
言いすぎかも知れないが、命がもう一つあるようなものなのだ。感謝してもしきれない。
ビンを膝に抱えると、視線を静かで大きな海へと移した。
相変わらず島の影も船らしきものも見えない。
実はここは島ではなく、後ろの森の先には人間の集落が────みたいなことも考えた。
でも森の中には人が踏みいった跡らしきものはないし、もしそうなら船の一隻でも見える気がする。
おばあちゃんが転生してるって言うんだから、少なくともこの世界に人はいるはず....。
となるとやはり、この海の向こうには人がいる。自分の今の姿を見る限り、自分が知っている人間とはちょっと違うかもしれないが....。
気づくと、座り込む自分の背後で尻尾が大きくゆっくりと揺れていた。
たしかこれは、猫が『これはなんだろう?』みたいに考えているときの動きだったっけ...これ自分で動かせないんだよなぁ。
「.........ふぅ、よし。」
昨日までの自分はどこかふわふわしていた。現実離れしたことばかりを立て続けに体験し現実味が薄れていた。
でも昨日、お腹が空いて苦しみ、喉の渇きに死にそうな程辛い思いをしてわかった。
これは現実だ。自分がいるのは頼れる人も、モノもない世界で、自分は猫の耳と尻尾を生やした女の子だ。
このカラダは体力も少ないし、力もあんまりない、って言うか本当に弱い。
胸だって正直邪魔だし擦れると痛いし、何より恥ずかしいだけだけど。
でもこの猫耳のおかげで飲める水を見つけられ、なんとか命を繋ぐ希望ができた。
現実もこのカラダも受け入れて、生き延びないといけない。
海の向こうに行くにしても、森の向こうに人が居たとしても。死んでしまえば、そこで終わりなのだから。
あの人に会うために、生き延びる為に、サバイバル的に今一番必要なことは....。
「......火を、付けたい」
文明と未開を分ける境界、火を手に入れるための戦いが始まった。