無人島の猫百合姫 ~ハードコア孤島サバイバルが百合ハーレムになるまで~   作:Kkmn

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53.【悲報】人類絶滅

「にゃにこれ…にゃんにゃの……!?」

 

 

目の前にあるのは、何と形容すれば良いかわからない理解を超える意味不明なモノ。

 

自分の大事な、大切な親友の少女、エルゥ。

 

その彼女が、まるでそう…脱皮をしたかのような、そうとしか考えられない『皮』だった。

恐る恐る震えが止まらない手で触れてみると、僅かにまだ暖かい。そしてその柔らかで繊細な手触りは…幾度となく触れ合ってきた彼女のモノに違いない。

じゃあこれは彼女自身なのかと聞かれると、絶対に違う!!ちがう、はず…!

 

 

「もしかして…巨大にゃ蚊みたいにゃのに…吸われ――――――にゃっ!?」

『あるじ』『コレ、みて』

 

――――ぴょんぴょん!!

 

 

最悪の想像――――これが彼女の成れの果てじゃないか、という想像をしてしまった自分を正気に戻してくれたのは、飛び跳ねるアンだった。

呼ばれるがままにそっちを見ると…地面に何かが滴った後が、森の奥へと点々と何かの痕のように残っていた。

 

……これって!!

 

そしてその滴った痕跡は…このエルゥの皮から始まっている!!

 

それを理解した瞬間、自分はまた跳ねるようにアンを強引に掴んで駆け出した。

 

 

 

 

「エルゥッッッッ!!!何処なのっっ!?いるんでしょ!!?ねぇ、返事してよっ!!!?」

 

 

 

 

もう何度も、何時間も叫び続けている喉は張り裂けそうなほど痛く、掠れている。

…でも知ったことではない。

今の自分の頭の全ては、ただエルゥを探し出すコト。それだけに全神経を捧げていた。

 

 

「アンッ!?この世界の人って、脱皮したりするの!?ねぇ、そうにゃんだよね?そうだって言ってよ!?

 エルゥ、食べられちゃったんじゃないんだよね!?アレがエルゥにゃワケ、にゃいよね!!???

 もしあの子ににゃにかあったら、わたし…じぶん…あぁ…もう……!!!」

 

『おねがい、なかないで』『きっと、だいじょうぶ』

 

「……ひぐっ…ぐすっ…!!…うん…ごめん…」

 

 

もう何時間も、一切休まずに全力で森の中を駆け続けている。

それも大声でエルゥに呼びかけ続け、身体の全神経を最大限に集中させながら。

腕も足も疲労の限界はとっくに超えているし、足の裏にいたってはもう傷だらけを通り越して血まみれだった。

水着しか身にまとっていない身体にも無数の擦り傷や打撲やあざができてて、エルゥが見たらきっと怒ることだろう。

 

 

…でも、今はそのすべてが関係ない。

今この瞬間にも、エルゥが助けを求めて苦しんでいるかもしれないんだから。

だから!一刻も早く、この痕跡を追って!!早く見つけてあげないと!!!!

 

 

 

「はぁーっ!!…はぁーっ!!ふーっ、フーッ…!!!!」

 

『あるじ、おちついて』『しんじゃう、いったんやすんで』

 

 

 

――――ぽた、ぽた…。

 

 

 

雨に打たれたような汗と、とめどなく溢れる滝のような涙が、視界をぼやけさせる。

いつしか熱を発散するために、まるで疲れた猫のように舌を出して荒く呼吸をしているのに気づく。

そして滝のようにかいた汗のシミがスクール水着を真っ黒に染め上げ、辺りに甘い少女のニオイを霧散させた。

 

…今ほど、このカラダの体力の無さと、走るのに邪魔な大きな乳房を恨んだことはない。

 

手と足が地と汗でぬめり、地面を思うように蹴ることが出来なくなってくる。

ただでさえ感覚の無くなっていた手足が、発熱とは対照的にどんどん冷えて冷たくなっていく。

止血もせずに傷口を晒したまま全力疾走した結果…きっと出血量もかなりのものになってるのだろうか。

 

 

「あり、がとね…ふーっ…でも、だいじょうぶ、だか、らぁっ……はぁっ!!」

 

『だめ、だめだから』『ほんとうに、しんじゃう』

 

「…ッ!!そんにゃのどうでもいいからッ!!!エルゥを、探してッ!!!!」

 

『………』『………うん』

 

 

アンを怒鳴りつけてしまったことを、一瞬だけ後悔するが今はそれすら気にしている余裕はない。

もう、身体も心も、どちらも限界を超えてとっくに決壊しそうになっている。

そんな状態でちょっとでも休んでしまえば、もう二度と立ち上がれなくなるのは、火を見るよりも明らかだから。

 

 

 

「…ぜぇーっ!!……はーっ!!………あ…?」

 

 

そして、その痕跡をひたすら追いかけること1時間余り。

ついにその追跡は、終わりを迎えようとしていた。

 

数時間に及ぶ追跡の果て、もう今の自分の正確な場所すらわからない。

きっともう、一度も踏み入れたことさえないほどの奥深くにまで来てしまったのだろう。

 

 

「こんにゃ………とこ、このしま、あっ…たんだ……。」

 

 

そのエルゥの抜け殻から続いていた液体の痕は……岩肌に空いた、真っ暗な洞窟の中へと続いていたのだ。

 

ただでさえ何の光源もない真っ暗な森の奥。その上今の時刻は深夜もいいところ。

それでも多少のモノなら見える優れた猫目をもってしてさえ、その洞窟の中を伺い知ることは出来ない。

 

 

『あるじ、これいじょうはダメ』『さきに、しけつ、して』『それと、みず、のんで』

 

 

ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと、いつにない程アンが頭で飛び跳ね主張してくる。

それにここまでアンが口数が多いのは初めてだ、…それほどにまで今の自分の状態が酷いのだろうけど。

 

 

「…ぁん、ゃりに…はぃって…けほっ、ひかって……ぁかり……」

 

『―――――あるじ!!!!』

 

 

―――――ぴょこむッ!!

 

 

何か可愛らしい軽快な音がして、頬が柔らかい何かに触れた次の瞬間。

自分は力なく地面に打ち倒されていた…まったくふんばることも出来ずに。

 

そしてそのまま数秒意識をぼんやりとさせてからやっと、アンの触覚にぶたれたのだと理解できた。

 

 

『あるじのばか!!!!』『えるぅ、かなしむ!!!!』

 

 

……それは余りにも突然のことすぎて、最初は幻覚を見てるのだと思った。

あのアンが、無口でどこかぼんやりとしていた、無邪気な相棒が。

 

それが…自分を怒鳴って、悲痛そうな叫びで叱っているなんて、昨日まで考えられただろうか。

 

 

『えるぅも、あるじも!!!』『しんじゃ、だめ!!!!』

 

 

…アンは、猫耳と触手を逆立てて…そんなことを、私に言ってくれたのだ。

ぷるぷると震えている様子は…まるで人が、衝動を押し殺してるかのような姿に重なって見えて。

その声が心の底からの、本当のモノであることが、ハッキリと理解できた。

 

 

「…………ごめん、ね……ぁん…」

 

 

自分はさっきまで、心のどこかでアンを軽んじていたことを本当に反省した。

アンはずっと、エルゥも自分も、きっと同じように…こんなにも心から大切に思ってくれていたのに。

…自分はそれを気づかずに、先走りすぎてしまって……。

 

掠れきった、蚊の鳴くような弱弱しい謝罪しかもう喉から出ない。

それでも、相棒にはしっかりと伝わってくれたようで。

 

 

『…だいじょうぶ』『なぐって、ごめんね』

 

「…ふ、ふっ……ぃぃ、の…」

 

『からだのいちぶ、そっちにうつす』『うごかないで』

 

 

―――――どろり…ぐちゅむっ…。

 

 

そう言うとアンは力なく横たわるわたしの口から、その粘液の身体の一部を潜り込ませた。

 

…懐かしいなぁ。この子と初めて出会った時もこうして…。

 

そうだ、栄養失調で死んでしまう寸前の自分は、あの時も同じようにアンに命を救ってもらったのだ。

…だめだなぁ…わたし、ぜんぜん、成長してないや…。

 

 

 

『…すぐ、よくなるから』『えるぅおうの、それから』

 

「…うん、ありがとう。アン…」

 

 

あの時と同じだ。傷ついて消耗しきった身体が、どんどんと癒えていくのが感じられる…暖かい。

 

ありがとう、わたしはそう微笑んで、隣で佇む相棒のスライムを撫でようと手を伸ばし――――――。

 

 

 

 

 

 

 

「………ノウン、ナノ…………?」

 

 

 

 

 

 

「みゃっ…………えぇぇッ!!!?」

 

 

そして洞窟の暗闇から不意に聞こえてきたその声に驚愕し、身体を起こした。

今だ塞がってない傷口達から血が溢れ激痛が走るが、そんなこと知ったことではない。

 

今の声は、その声は、間違いない。忘れる訳もない。聞き間違えるハズがない!!

 

じぶんの、わたしの親友で、大切な人で、一番今死に物狂いで探していたヒト――――――!!!

 

 

 

 

 

「エ、エルゥ!!!エルゥだよね!!!ぐすっ、良かったホントに!!!もう!ひぐっ、すっごく心配して―――――ー!!」

 

 

 

「―――――――――コナイデッッッ!!!!」

 

 

 

 

涙さえ流しながらその声の元に駆け寄ろうとした私に彼女からかけられたのは。

自身を拒絶する、悲痛に満ちた悲しげな叫び声だった。

 

 

「………え…?」

 

「…オネガイ、カエッテ……。ソレデ、モウ、ワタシヲ…サガサナイデ……」

 

「にゃ、あ!?…にゃ、にゃに言ってるの!?ふざけにゃいでよ!!そんにゃことできる訳にゃいでしょ!!!」

 

 

い、意味が分からない…!!なんで、どうして?

姿の見えないエルゥは、そんな…到底考えられないような、悲しい、突き放す言葉を発して。

 

…あのどこまでも心優しくて、明るくて、いつも笑顔のエルゥが。

そんな彼女が、そんなこと…絶対に理由もなしに言うわけが無い……!!

 

 

「……チガウノ。モウ、ワタシ……。ワタシジャ、ナイノ……。」

 

「…エルゥじゃ、にゃい?にゃに言ってるの!!あにゃたはエルゥだよ!!

  元の世界でも見たことにゃいくらい可愛くて、キレイで、美人で、優しくて!!

  礼儀正しいし、いつも気遣ってくれて…!肌も凄く綺麗で、良いニオイがして…にゃんでも一生懸命で素敵で!!!」

 

 

胸の衝動のままに、思いのたけを心の底から叫ぶ。

 

 

「何(にゃに)があっても…!

 自分のッ…!!わたしのッ!!大切な親友だよ!!!」

 

 

 

「……ノウンノ、シンユウ?」

 

「そう!そうだよ…!!何(にゃに)があっても!どんにゃににゃっても!!!ずっと!!これからも先、永遠に!!!」

 

 

 

―――――しゅる、しゅるる。

 

 

 

……何かが、地面を這う音。

それが何故か、エルゥのいる、真っ暗な洞窟の闇から聞こえてきて。

 

 

 

「………タトエ………」

 

 

月光に照らされた、わたしの大切な親友の姿。

今までずっといつも傍にいて、わたしと触れ合ったその姿は――――――――。

 

 

 

「……たとえ……?………ッッッ!?!?!?」

 

 

 

一糸纏わぬ穢れの無い、美しい少女の裸体…そしてその身体の腰から下はまるで…いや『蛇』そのもの。

無数の金色に輝く鱗が、まるで宝石をちりばめているように爛々と月光を反射している。

 

 

 

 

「タトエ……ワタシガ…コンナスガタニ、ナッテイテモ…………?」

 

 

 

そういって一筋の涙を零したエルゥのエメラルドの瞳は……鋭く縦に割れた、蛇の眼と化していた。

 

 

 

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