無人島の猫百合姫 ~ハードコア孤島サバイバルが百合ハーレムになるまで~   作:Kkmn

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54.愛してる

何故でしょうか。これは罰なのでしょうか。

私が――――獣人を殺戮した、マトーヤ家の娘が、獣人であるノウンと幸せになるなど。

そんなことは決して許さないと。女神様がお与えになった罰なのでしょうか。

 

 

「……」

 

 

あぁ、やめて、そんな目で…私を見ないでください。

あなたのそんな顔見たくなかった。

私の姿をみて、驚愕に目を見開いている顔なんて。

 

何か言葉を発そうとした時…その時私は初めて、口の中に鋭い 2 本の牙が生えていることに気づきました。

それはまさしく、獲物に噛みつき毒を流し込む禍々しい「蛇」の牙そのもので。

 

こんなモノができてしまえば、もう二度とノウンとキスは…。

いいえ、キスなんかどうでも良いですね。

だってもう私は二度と、彼女と触れ合うことは叶わないのですから…。

 

 

「……ワタシ、ソウナンシテ、ヨカッタ。ノウンニアエテ、ヨカッタ。」

 

「……」

 

 

私を見つめる、震える蒼い猫の眼。

それには少なくない悲しげな感情が覗いていたことに、こんな時だというのに少しばかり 嬉しくなってしまいます。

 

 

「……ゴメンネ、コンナ、カタチノ、サヨナラ…」

 

「にゃんで、そんにゃコト言うの?」

 

「…ダッテ、ダッテモウ。ワタシ…コンナ、コンナスガタジャ…!!モウ…!!」

 

「…『もう』…何?」

 

 

ゆっくりとした足取りで、ノウンがこっちに近づいてきます。

 

 

「イヤ…ダメ、コナイデ…!!」

 

「駄目、行く。」

 

 

透き通り、凛とした、硬く気高い意思が込められた声。

どこまでも真っ直ぐで決意に満ちたその蒼の瞳は…私が恋い慕い、憧れたモノそのもの。

 

それから逃れようと後ずさろうとしても…歪にもヘビのモノに転じてしまった下半身は、 上手く動かすことができません。

結果として、ただその場でその細長い蛇の胴が蜷局を巻くようにしなり…おぞましく私の 周りを這いずっただけ。

 

その不気味で気持ち悪い様を、彼女に、愛する人に近くで見られるのが――――耐えがたい ほど苦痛で、悲しくて、怖くて。

 

 

「ヤダ、ミナイデ!!イヤ、コンナ、ミニクイ、ワタシヲ・・・!!!」

 

「ごめんね、エルゥ。わた…ううん、自分、ちょっとだけ男に戻るね。」

 

 

ノウンの手が…か細く華奢で、可愛らしい手が。 信じられないほど強く、私のむき出しの…一部を金色の鱗に覆われた肩を掴んで。

 

 

 

「エッ…?ナニ、ヲ……ン、ムッ…?!」

 

 

 

戸惑いの言葉を口にしようとした私の唇を――――力強くノウンに奪われました。

 

 

「ンンゥッ…!!? ンムァ…ンゥンッ…!!」

 

突然の出来事に、真っ白になった私ができることは何もありませんでした。

恋い慕う人にキスされた悦びよりも…あのノウンが、いつもされるがまま愛されていた彼女が。

そんな彼女が、こんなにも強引な、力強い口づけを自分としていることが信じられなかったのです。

 

でも、唇に押し付けられるどこまでも柔らかい、ふわふわとさえ感じられる唇の感触。

そして彼女が纏う、甘く爽やかな香り。

それらが今自分がキスしているのは、間違いなくあのノウンなのだと教えてくれました。

 

 

 

 

 

「…愛してる、エルゥ。」

 

 

 

 

 

「ーーーーッッッ///!!?!」

 

 

そして次に耳元で囁かれたその言葉に…私の心の中は混乱を極めました。

 

 

「どんにゃににゃっても、何(にゃに)ににやっても関係にゃい。」

 エルゥ、あにゃたを愛してる。心の底から。」

 

「~~~~ッッッ!!?!?!」

 

 

そういってノ、ノウンは…私の手を―――― 爪は鋭利になり、甲はびっしりとおびただしい蛇の鱗に覆われた、歪な異形と化したその手を優しく取って。

 

 

「好きだよ。自分の、大切にゃ人。」

 

 

まるで、白馬の騎士(ナイト)が守るべき姫君に忠誠を捧ぐように。

その不気味な手を取って――――――優しく、口づけました。

 

 

「分かるよ。すごく不安で仕方にゃいよね。自分もこの姿ににやった時、凄く怖かったから。」

 

「イヤ…ヤメテェッ……ヤサシク、シナイデ……」

 

 

綻びそうになる心と、嬉しくなりそうな心を否定するように必死に首を振ります。

涙があふれて止まらないのは、幸せだからなのか、それとも悲しいからなのでしょうか。

 

もうこんな姿の私に、そんな風に愛される資格はないのに。別れがつらくなるのだけなのに。

 

 

「やめない。エルゥにわかってもらうまで、ずっとするから。…ん」

 

 

その時でした。私の頭上で何かがーーーそれも複数ーーー蠢きました。

 

 

「ヒッ!?ナニ、コレ…ヤメテ!!ヤダ!!トマッテ!!」

 

「…ッケシャアアア……!!」

 

 

蠢いていたのは、なんということでしょうか。

私の長いブロンドの髪が変じ、その一本一本が蛇と化していたのです…!!

それも全てが自らの意思を持っているかのように…目を自身と同じ、碧色に光らせて。

 

そしてそれらは、目の前のノウンに絡みついていくではありませんか一一。

私はその光景に込み上げる吐き気と、気が狂いそうになるのを必死に堪え彼女に逃げるように叫びます。

 

 

「イヤ、カッテニッ!!トマッテッ!!ノウン、ハヤクニゲテッ!!」

 

「ん……ううん、大丈夫、ほらよく見て。」

 

 

しかし帰ってきたその声は私とは対照的に酷く落ち着いていて…私は促されるまま彼女の 顔を見つめました。

 

 

「ふふ、だいじょうぶ。じゃれてるだけだよ、このコたち。みんにゃいい子だよ。」

「……しゅるしゅる…♪」

「…しゃうあああ…♡」

 

 

そこにはあったのは、絡みついた―――いいえ、甘えてきた私の髪だった蛇達を優しく、微笑みながら愛でる彼女の姿。

おぞましく、正気さえ失いかけた自身の異形に…彼女は何ら嫌悪することも、恐怖することもなく、愛しそうに接してくれているのです。

 

 

「ふふっ、自分も尻尾が勝手に動いちゃうからわかるよ。エルゥもお揃いだね♪」

「…フフッ……グスッ、ソウ、ダネ…」

 

そうやって優しく、いつもと変わらない眩しい笑顔を私に向けてくれると。

私も釣られて―――あれだけ悲しみと深い絶望に染まっていたにも関わらず、笑顔で返してし まいました。

 

 

「よかった。やっと笑ってくれた。 やっぱり笑顔の方が可愛いよ、エルゥ。」

「……アッ…」

 

 

そういって私は強く、彼女の豊満な胸元に抱きしめられました。

暖かなぬくもりが、安心する柔らかな匂いが、本当に尊く…幸せで…。

 

 

「アァ…ウワァ…ノウンッ。ノウンゥ……グスッ、アアァアァ…!!」

 

 

私は異形へと変わり果てた身体で――――いつもと変わらぬ笑顔で迎えてくれる彼女に抱 き着きました。

 

 

 

 

 

 

 

『えるうのからだ、しらべた』『のろい、だとおもう』

 

「ありがとねアン。…呪い?原因は?何とかにやりそう?」

 

『やばいくらい、つよい』『ちょっと、むずかしい』

 

 

泣きじゃくるエルゥの、一部が鱗に覆われた背中をポンポンと慰めながら自分はアンの報告を聞いていた。

もし逃げられた時の保険に背後から彼女に憑りついてもらっていたが、杞憂でよかった…。

 

 

『いまのえるう、データベースにある』『「らみあ」だと、おもう』

 

「ラミア……ヘビと人間の相の子みたいな生き物だよね?」

 

『そう、もんすたーの』『いっしゅ」

 

 

ラミア…なるほど。誰か、もしくは何らかの呪いがこの子をソレに変えてしまったと。

うん、理解はできた。エルゥも何とか落ち着かせられた。

 

ただその呪いとやらに関しては完全に異世界だ、自分の手に負える所ではない。

やはりここはカミュー、もしくはレイシアちゃんに頼るしかないだろう。

 

―――何にせよ二人とも心配しているはずだ。早く戻らないと。

 

 

「みんにゃの所に帰ろう。歩ける?」

 

「……ダイジョウブ、カナ」

 

 

エルゥの背中に手を添え、慣れない身体で辛いだろう歩みを手助けする。

 

 

「安心して、エルゥはエルゥだよ。怖がらなくてもへいき。 きっと二人とも笑顔でおかえりって言ってくれるから。」

 

「……グスッ……うん。でも、ちょっとだけ…うしろ、むいててくれる?」

 

「ん。わかった。」

 

 

その場で反転して彼女に背を向ける。きっと何か見られたくモノがあるのだろう。

 

 

「ありがとう。ノウン………それと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さよならじゃ、ノラ猫♪」

 

 

 

 

―――背後で何かが私の首筋に振り下ろされるのを、揺れる空気で感じ取った。

 

 

 

 

「―――アン」

 

『(bilp)…シールドオプション、ロードします。』

 

 

 

 

―――ガ キ ィ ィ ン !!

 

 

 

逆手持ちで背後に向けられていた槍から放たれた禍々しい光の奔流は、『エルゥだった者』の爪を弾き返した。

 

 

「ほおっ?ハハハハハ!!防ぎおったぞ!!一丁前に槍を扱えるとは利口な猫畜生じゃ!!ふはははははは!!」

 

 

「お前が…あんたが、エルゥを……」

 

 

 

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