球詠 珠姫の元・チームメイトはスイッチヒッター   作:エーモンドが好きな未来人

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再会は突然に

ピリリリリピリリリリリ!!!

 

私は目覚まし時計の音で目が覚めた。今日から高校生活と言うのに、目覚ましの音で嫌々目を覚ます。

「もう、もう朝?はぁ、準備しよ」

 

私は布団との誘惑と戦いながら下に降り、顔を洗う。そしてリビングに行く。

 

「おはよう、葵ちゃん。朝ごはんできてるよ」

 

「おはようございます。おばあちゃん、おじいちゃん」

 

「おはよう。今日から高校生じゃのう、野球も勉強も頑張るんじゃぞ」

 

その、おじいちゃんの言葉を聞いて固まる。野球……かぁ。思わず苦笑いを浮かべるのを見て、おばあちゃんが

 

「これ!爺さんや!葵ちゃんは……」

 

「しまった!すまんのう!葵ちゃん!わしすっかり忘れとって」

 

「別にいいよ、おばあちゃん、おじいちゃん。別に何とも思ってないから。野球も好きなままだしね。早く朝ごはん食べよ?」

 

私の名前は久世 葵。今は祖父母の家に暮らしている。父親と母親は転勤が多く、馴染めない私を見兼ねて、高校生だけは3年間同じ所で過ごせるようにと祖父母に相談し、そこから高校に通う事になった。

 

確か、通う高校は新越谷高校。野球も元は強豪と言われていたみたいだけど……前年度に暴力沙汰を起こして停部処分をくらった……。まぁ、野球部に期待は出来ないかな。

 

私は制服を着て鞄を持ち、おじいちゃんとおばあちゃんに

 

「行ってきます」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

見送られて家を出る。癖付いたように鞄に、外野グローブと内野用グローブを入れて。

 

家から歩いて10分で新越谷高校に到着する。選んだ理由に近いがあるから、まぁこの位で着いて貰わないと困る。

 

「ふぁー……ふぅ」

 

欠伸をしながら、教室に向かって歩く。まだ、眠気があるのかと内心思いながらも、入口でクラス表と座席表を貰い、自身のクラスの教室に入り、自分の席を座席表で見つけて座る。

 

座って鞄を机の横に置き、誰と話す訳でもなくて、外の景色を眺めていた。知り合いがいるとも思えないし、知り合いがいないだろうと思って選んだのもあるし。

 

「アオちゃん?」

 

聞き覚えがある声に声をかけられる。その声の方を向く。その人物は二年前の夏まで一緒に野球をしていた人物である。

 

「やっぱりアオちゃんだった。久しぶり……覚えてない?」

 

「珠姫?覚えているよ。同じチームで野球した事あるしね。久しぶり」

 

山崎 珠姫。名門とされている美南ガールズの正捕手だった人物。中二の時は一緒に試合に出ていたこともあった。

 

「急に転校した時は驚いたよ」

 

「まぁ、ね。親がそういう仕事のが多いしね」

 

昔の仲間との会話に私は思わず表情が綻んでしまう。一緒に居残り練とかした仲だからと言うのが大部分を占めているかも。

 

「でも、驚いた。また、会えるなんて」

 

「あー……まぁね。あ、先生入ってきたよ」

 

「また、後で」

 

珠姫と分かれて先生の話を聞き、入学式に参加する。こう言う静かな入学式とかの時は眠くなるから早く終わって欲しい。皆真面目そうにい聞いているから私も悪目立ちしないように真面目に聞いている振りだけをする。

 

そんな入学式が終わり……

 

「アオちゃんはこの後どうする?」

 

「あー、少し待ってくれる?先におばあちゃんに電話しないといけないから」

 

私は珠姫を待たせておばあちゃんに電話をした。お昼は食べて帰るという事を伝えるために。何も言わないのは流石にマズイので、こう言う連絡をしっかりしておく。

 

「あ、待って貰ってごめん」

 

「別にいいよ。そんなに大して待ってないし。と言うか一緒の時はよく待たされたし」

 

「そ、そんなにまたせた記憶ないんだけど?」

 

私と珠姫は昔話に花を咲かせながら廊下を歩く。目の前からは三人の女子生徒が歩いてくる。その一人に見覚えがあるのか、珠姫が通り過ぎ際に

 

「ヨミちゃん…?」

 

立ち止まり名前を呟く。それを聞いた女子生徒は振り向いた。その女子生徒の顔を見ると嬉しそうな顔になった珠姫は

 

「やっぱりヨミちゃんだ。珠姫だよ 覚えてない?」

 

と確認を取るように言う。小さい時から仲良かった友達だろうか。向こうも嬉しそうな表情となり

 

「タマちゃん……!…覚えているよ……!久しぶり〜〜!!」

 

「い!?」

 

ヨミちゃんと呼ばれた人物は人目を気にすることなく珠姫に抱きついた。

 

「急に転校しちゃうんだもん。懐かしいなあ…昔よく遊んだよねぇ。うんなるほど、確かにタマちゃんの匂いだ。えへへ」

 

顔をグリグリと擦りつけているのを見るとヤバイ気もするけど、それほどまでに感極まっていると言うのも何となく分かる。向こうの二人も置いてけぼりだ

 

「知り合いみたいね?芳乃?」

 

左の金髪の子が隣の金髪の子を見るが、その子の髪はピコピコと反応し感極まったような反応している。

 

「山崎 珠姫選手…なんでこんなところに……。中二の時、名門・美南ガールズの正捕手で強気なリードと守備が魅力的な人だったよ。去年は強打者捕手の台頭で控えだったけど…私は山崎さんを使うべきと思ってた!つまり……ファンですサイン下さい!!」

 

芳乃と呼ばれた女の子はどこからとも無くサイン色紙を出して、珠姫に渡していた。

 

「人気だね珠姫は」

 

「タマちゃん、こっちの人は?」

 

「アオちゃん、久世 葵。一年半一緒に野球をしていた仲間だよ。それで、こっちが武田詠深。小さい時によく遊んだ友達」

 

「武田 詠深です!よろしくね、アオちゃん!」

 

「久世 葵。こちらこそよろしく、詠深」

 

ヨミという人物の質問に答えるように私のことを紹介してくれた珠姫。そして、その紹介で芳乃がこっちを見て再度驚く

 

「うっそ!久世 葵選手もなんでここにいるの!?中二の時は山崎さんと同じチームで打撃ではクリーンアップを務めたし、守備ではランナーの進塁を許さない送球が凄かった人だよ!去年は去年で名門の菊川ガールズでチームトップの打率と打点を叩き出し全国ベスト8に貢献した凄い人だよ!サイン下さい!」

 

私のことも知ってたとは思わなかった。目を輝かせながら二枚目の色紙とペンを渡されれば断ることが出来ない。

 

「わ、分かった、分かったから」

 

「へぇ タマちゃんも野球してたんだね」

 

「ヨミちゃんもやってたの?」

 

「うん、1回戦負けだけどねー」

 

1回戦負けという事は、運が無かったのか弱かったかの話だけど、まぁ詳しくは聞く必要は無いね。負けた話なんて話す方が辛いし。そんな中、詠深が思いついたように

 

「そーだ、タマちゃんアレしよっか」

 

「アレ?」

 

珠姫はアレと言われてピンと来ていない様子だった。正直に言うと私も分からない。

 

「野球女子の再会の儀式といったら、キャッチボールしかないでしょ!」

 

そうしてこの後の予定にキャッチボールが加わった。しかし、グランドに来てみても誰も居ない。

 

「グランド来てみたけど誰もいないね」

 

「停部期間終わってるはずだけど……廃部になっちゃうのかな」

 

「どうだろうね。その不祥事で部員が一人も残っていなかったら廃部しているだろうけど……入部するなら確認が必要だろうね」

 

「それもそうね」

 

私は今、双子と三人でキャッチボールをしています。詠深と珠姫が経験者同士でキャッチボールをしている状況ですね。片やピッチャー、片やキャッチャーと言うバッテリーを組める組み合わせでだしね。それに小さい時からの友達なら一緒にキャッチボールした方が楽しいだろうし。

 

「投球練習してみる?」

 

「うん」

 

キャッチボールから投球練習に発展していた。珠姫が座り、双子の姉の方の息吹はバットを持ち、妹の芳乃は珠姫の後ろ立った。投球練習という事でバッターと審判のつもりなんだろう。

 

「よーし、じゃあ打席で見てあげるわ」

 

「じゃあ、私審判ね」

 

「いいけど、ヘルメット被ってね、あと後ろ危ないよ」

 

「公式戦 捕逸ゼロ……信頼しているよ」

 

どこからその情報を仕入れているのだろう……その私の事や珠姫のことといい侮れない人かもしれない。珠姫も驚いた表情をしている。

 

「私は外から見てるよ」

 

私は外から見ている事を伝えて投球練習を見る。

 

「そうだヨミちゃん、あの球投げないの?昔カラーボールで投げていた魔球」

 

それを聞いたヨミの表情が変わる。

 

「投げていいの?捕れるの?」

 

驚いた表情……をしていた。今まで封じられてきた球種なのかな。

 

「投げられるの?硬球で?」

 

「似たような球なら…」

 

「投げて!きっと捕るから!」

 

珠姫は本腰を入れて構えた。ヨミの空気が変わった。緊張が場を支配する。それは息吹も芳乃も感じ取っているみたいだった。

 

「いくよ」

 

「こい」

 

ヨミは振りかぶってボールを投げた。ボールの軌道はすっぽ抜けたように息吹に向かう。このままじゃ

 

「危ない!避けて!」

 

私は当たると思い叫んだ。しかしボールは落ちて珠姫がキャッチしていた。当たるかと思われたボールはストライクとして入っていた。球種的にはカーブだろうけど

 

「なんてカーブ……あの落差とキレのあるやつ見た事ない……!」

 

バッターとしての私が心を大きく揺さぶられた日になった。

 

 

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