前作の幕間回が悪魔回になってしまいました(汗)
かなり鬱な話にしたので、艦娘の名は出しませんでした。もし、出したら確実に推しの方々に粛清されそうなので、くわばらくわばら・・・。
うさぎっ娘回では、長波ファンの方々すいませんでした。(フライング土下座!!)
&浜波・朝霜ファンの方々にも、はい(汗)
(浜波モブ扱い、朝霜はギリギリまで助けようと果敢に頑張ったのにシーンが無くて・・。長波はもっと勇猛果敢に戦うシーンを入れれば・・・。)
これでも、長波様カワイイし・・・推してまして(汗)
つつ、つ、次は、はいこの娘ですね・・・。
それでは、どうぞー。
シミ1つ、皺1つ無く。高級士官の軍服を着こなす貴方。高潔で、純粋で、清く正しく。それでいて暖かく眩しい。まるで太陽の様な貴方。
あなたの元へ駆け込み、敬礼・・・
岸壁で海に向かい立つ司令官。背中越しに話す私。
「司令官!わたし、遂にやりました!!」
「・・・・」
「一生懸命訓練してー、遠征してー、那珂ちゃんさん達と水雷戦隊でいっぱい戦果上げて、怖かったけど防空戦も戦いました!やっと練度が100に満たしたと認められました。」
「・・・・・・」
「私なんか、駆逐艦で戦艦や空母の皆さんに比べたら、ちっちゃい艦です。…・・装甲も。うううん(照)」
「・・・・・・・・」
「私、どんなにボロボロになっても沈むものかって。」
「みんなが待ってる、・・・司令官が居るお家“鎮守府”に帰るまでは。沈むなら温かいフカフカお布団に沈みたーい(笑)って思うと、私、頑張れるんです!」
「・・・・・・・・・・」
「司令官、お家に居るみんな、鎮守府を陰に日向に切り盛りしてくれる人たち。みんなが家族です!」
「・・・・・・・・・・・・」
「私、司令官・・・貴方が好きです。・・いえ、愛してます!!かけがえない、この暖かな場所を作って下さり、私を此処へ導いてくれた、貴方を。」
「海軍数多の艦娘居れども、誰よりっ・・・。誰よりも強く、深く!!私の命尽きるその時まで。いいえ、尽き果てたとしてもお慕いします。」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「可笑しいですよね?!昔、無機質な軍艦だった私達。時代も次元も超越して、人の女の子として艦の魂と力を宿し蘇って闘うなんて。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「やっぱり・・・・。へんですよね、私?」
「・・??。しれい、かん、さま・・??」
先程から、なぜ何も反応が無い?
あえて、言葉のわからない人に話すかの如く、1音ずつゆっくりと聞く、私。
それでも、返事が無い提督に苛立つ私。
段々と焦りと不信感が心に現れる。
「司令官、何で一言も返事を頂けないのですか?!」
我慢し切れず、岸壁と司令官の間に身体を滑り込ませる私。だが、しかし・・・、
「司令か・・・ん・・・え? そ ・・・嫌・・・嫌だ、嘘だよね?」
そこに佇んでいた彼女が親愛している司令官は、
胸を、腹を穿たれ血を流し・・
目は生気を失い窪み、昏く金色の様な灯りを宿し・・
あまりにも、現実離れした事に彼女の思考が止まり言葉も紡げない・・・
ダンッ!!ダンッダンッ!!
ガガガがガガガッッッ!!
「エッ!!・・・グッぅぅ・・・かハッ?!」
すると突然、後方至近距離から砲撃と共に機銃射撃音がする。
しかし完全に呆けてしまい、回避も防御も無い。艤装も纏って無い背中を次々と撃ち抜かれる。
撃ち抜かれた身体を必死に動かし海側へと顔を向けると、姉妹艦“だった”者達が昏い笑みを湛え彼女へ砲を向けていた。
嗤う口だけが毒々しいまでに赤黒く、他はモノクロで色が抜け落ちた姿をしていた。目だけは怪しく青く閃光が奔る。
「み?、深雪に叢雲ちゃん・・・そんな、白雪ちゃんまで?!」
ズガンッ!!ズガンッ!!
バババババババババババッッッ!!
「ハッ初・・雪ぃ、磯なみちゃん、ま、で??・・な、な で、なん っ え・・ぇぅ」
姉妹艦らしき艦娘?!から、四方八方から身体を撃ち抜かれ機関大破し、命の灯が消え逝く。もう、呼吸も発声もままならない。
「・・・い、やっ、・・い ゃ ょぅ・・。」
身体の機能も低下し体も強張りはじめ、悲しいのに涙すら流せない、哀れな少女が独り。
「し、 れ・・・ ・・ん・・。そ でも・・、 し ・・たい てま ・・た さ ら」
最期の言葉と思しきところで、最愛の人?だった?!
司令官に刀の柄で一突きされ、海に墜とされる。
ざぶん・・・・。
司令官と姉妹艦だった者達は嘲笑うでもなく、無機質な目で沈んでいく彼女をただ見ていた。泡沫と沈みゆく姉を。
沈む私。・・・悲しく、辛く、痛く、冷タク、くルシイ、コの感ジョウ・・・、嗚呼、イシキが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
陽射し眩しい海に接し岸壁に佇む一人の軍人男性。
純白の士官服に身を包む彼は、この基地、鎮守府で古の軍監の魂と力を宿す少女達・・・艦娘を数多従え、突如現れ世界各地を破壊し続ける呪われた存在“深海棲艦”を征伐するための艦娘海軍司令官だ。
彼は今、初期艦ーー自分が司令官として任命されて最初に配備された艦娘の帰還を待っている。
事前情報で深海棲艦はル級Flagshipを中心の高練度の打撃艦隊ではある。しかし、こちらも長門・比叡の戦艦を軸とした打撃艦隊と神通達水雷戦隊から抽出した混成部隊だ。
改二改修も行い、生存・継戦能力も引き上げた。ダメージも中破までとし、それ以上の蓄積は禁止としている。
私の艦娘達に誰一人として失って良い艦などいない。
各種資材とバーナーさえあれば、建造は幾らでも行え艦娘を増やす事は容易い。装備品も同じだ。
しかし他の鎮守府を見ていても思うが、同じ艦娘でも一人ひとりに個性がある。ある程度のテンプレ的な資質や性格はある。しかし、一人ひとり“違う性格”なのだ。積み上げた戦歴・経験・任務・交流全てがピタリと同じになる艦娘などいない。それぞれが唯一無二の艦娘なんだ。
そこに緊急電の報せを持った、今日の通信当番の艦娘が大声で私を呼びながら走ってくる。何があったのか?
「し、失礼します。青葉です!!て、提督。御報告です。長門さん達迎撃艦隊は無事、ル級Fla打撃艦隊を全艦撃破しました。損害も比叡さん・神通さんが小破ですが他は損害軽微。見事な勝利でした・・」
「青葉さん、迅速な報告をありがとう。しかし“れんそうほう”は大事と言え、そこまで慌てる内容では無いだろう?」
「それが・・・、第2報が有ります。」
「続報か、教えてくれないかい?ドロップ艦娘かな?」
時折、戦闘終了後に敵深海棲艦が転生現象を起こす事がある。もともと艦娘も深海棲艦も1つの種族では?と言う考察がある。その説を後押しするのが、ドロップ艦娘だ。撃沈させた深海棲艦もしくは艦隊から、オーラの様なものが集まり1人の艦娘として昇華する現象が起きる。性格や行動・成長も何ら変わる事が無い。建造艦娘となんら変わることがない。
「いえ、それが・・・」
「どうした?」
「帰投途中に、ヲ級Elite2・NORMAL2・ホ級2の空母艦隊に待ち伏せに遭いました」
「何?待伏せ?!こちらが本番だったのか??」
「ル級艦隊と比べれば練度が低めで普通であれば何となる相手でした。しかしル級打撃艦隊討伐後の弾薬や燃料に不安な中で交戦となり、大量の艦載機に苦戦を強いられました」
「被害は少なからずあったのだね。・・正しく伝えてほしい。」
「ヲ級Elite1・ホ級1は大破撤退しました。こちらの損傷は長門さん小破。比叡さん・足柄・神通・鬼怒中波・・・」
急拵えとはいえ精鋭部隊だったが、大物相手に一戦交えたあとでは体力と物資的に大変だったか。
「そう言えば、我が鎮守府の初期艦はどうしたのだい?」
「それが・・・敵艦載雷撃機の迎撃最中に戦闘機の波状攻撃に遭い大破。バイタルパート及び機関を撃たれてしまい意識が低下してる模様です・・。」
「何だと!!嘘だろう・・・?改二まで改装し、秋月型がいないウチにとっては防空指揮官と呼べるまでに彼女は努力たのだぞ?!」
「しかし、敵艦載機は彼女を真っ先に狙ってきたそうです。彼女が1番厄介であると踏んで誰よりも先に被害を。戦艦・重巡3人で庇っても構うことなく。」
「今は、こちらに戻って来ているのだな?」
「はい、レーダーには敵性波は検出されないので、白雪ちゃん達特Ⅰ型部隊を組んで曳航のために緊急抜錨しました。」
「ドックでは明石と夕張
が緊急の手配を整えています」
「青葉さん、迅速な手配をありがとう。」
「みんな誰かが傷つけば心配です。尚更・・・。今すぐ全力出撃する勢いの娘が何人もいます。」
「そうか、みんな本当に良い娘達だよ。とにかく、待機組にはくれぐれも落ち着いて、早まったことをしない様にと。各自冷静に教練や整備、休息と予定通りに動いて欲しいと。」
「今日は陸奥さんと加賀さん、愛宕と龍田が巡回してるので、そこらへんは早まる娘が居てもちゃんと落ち着かせてくれますよ。」
「そうか、1番不甲斐無いのは私かな?!オロオロしてしまってはな。しょせん、私は行って来い!というだけで何とも無責任なモノだ。機銃一発打てるわけでも、弾除けになる事も出来無い。」
そこへ、カツカツとブーツの音が複数。
「お主は、部下であるこの初春達艦娘を信じておらぬのかえ?」
「子日はー、司令官の言うこと信じてるよ。だって必ず私達の事を第1に考えてくれてるから!」
「そうだな。若葉たちを高みに導くために日夜、滅私奉公で励む姿、皆その後ろ姿を頼もしく見ているぞ?!」
「司令官さんなら、例え厳しい状況でも打開できる策を、無理ならば初霜たちを沈ませない為にと作戦を考えてくれますよね?」
「こんな新米の有明も大事にしてくれるだろ?頼もしい指揮官さ、自信持ちなよ。」
後ろから小さな艦娘達、初春型駆逐艦の娘達が現れた。
こんな小さな艦娘たちでも遠征では小さな体に幾つもドラム缶を引っ提げ帰ってくる。
水雷戦隊としては、暴力的に禍々しい艤装の深海棲艦達に敢然と立ち向かい魚雷を叩き込む。
深海から凶悪なトラップを仕掛けて来る潜水部隊にも、キリキリと胃の痛む様な神経戦を軽巡達と行う。
それでいて、彼女達は純真無垢な素直な性格が多い。
たまに風変わりな性格な娘も居るが、皆掛け替えの無い縁の下の力持ちだ。
「いやぁ、とんでもないよ初春。むしろ不甲斐無い私が、こうやって前線司令官としてやって行けるのは、君たちの勇姿を見て活力をもらえているからだよ。皆、本当にありがとう。」
私は、前向きに気持ちを述べるこの子達一人ひとりに感謝した。戦艦や空母といった大型艦種の娘達ですら大物相手では、恐怖に足がすくむと言う。しかし、小型の艦種である駆逐艦や海防艦・潜水艦といった娘は本当にその小さな体にどれだけの勇気が詰まっているのかと、常々思わされる。決して無茶をしてあとさき顧みないような蛮勇では無い。
「沈んでしまいもう取返しが付かないと言う訳ではない。気を大きく持つのじゃ、司令官。」
「信じて待ってあげようよー。そんなショボンとした顔してたら戻って来たみんなが傷つくよ?」
「指揮官は、慌てず騒がず構えていてくれれば大丈夫さ。」
「私達は司令官を、最後の最期まで信じています。」
「と言うわけじゃ。お主の仕事は妾たちを信じ抜くことじゃよ、ゆめゆめ忘れぬ事じゃ。」
すっかり、主従が逆転した様な場が出来上がってしまった。しかし立場など関係ない。教えられる事があれば真摯に聞き入れ自分の糧とするまでだ。
・・・さて、帰投組が帰ってくる頃か。ここからは私が覚悟を決めるところだな。心して待とう。
「青葉さん、引き続き情報収集をお願いします。初春型の皆さんは艦隊訓練ですか?怪我に気をつけておねがいします。初春、みんなの統率を頼みます。」
初春型の艦娘達と分かれ、帰投用の埠頭で皆の帰りを待つ事しばらく。鋼鉄の城の如き艤装が目立つ長門を始め皆の姿が見えた。今すぐ、海の上を走り駆け付けたい思いに駆られる。
「うわっととと……!」
埠頭の先ギリギリまで行き過ぎて海に危うく落ちそうになる。様子を見に来た明石のクレーンに引っ張られ事無きを得た。
「提督〜?バイタルパートが撃たれてしまったと聞きましたので、応急妖精さん連れて行きましたから心配は有りません。この私が保証します!!今は、意識は無いと思いますが・・・工作艦・明石、全身全霊で作業しますから。」
「・・・・信じてあげて下さいね。目を覚ましたら笑顔でおはよう、おかえりって言ってあげて下さい。」
「ああ、顔を合わせる娘達みんなに言われたよ。大事にしてあげてって。」
「じゃあ、お出迎えですね。」
長門と比叡がまず陸に上がって報告をしてくれる。後ろでは足柄以下の負傷組が、白雪や明石の手を借りて上がって来ている。
「提督よ済まなかった。第一波を征伐したところを、油断してしまった。それに貴方の大切な初期艦を傷付けてしまった。責はこの長門が如何様にも受ける。」
「提督、それは間違いです。長門さんは私との一斉射の後の次発装填時間も果敢に縦となり皆を庇い必死でした。むしろ私が・・・」
そっと言葉を制する
「大丈夫だよ、長門・比叡。君たちが勇猛果敢・獅子奮迅の働きをしてくれたのは間違いないんだ。それに、君たちが庇ってくれたから、生還できたとも言えるよ。」
「提督よ、確かに結果そうだとも言える。しかし彼女が傷付かず済む方法はあったかも知れぬ。」
「そうです。私達が砲撃の散布角度に・・・!」
私は比叡の言葉を遮り、長門と比叡を抱き寄せ頭をそっと撫でた。まだ、体からは激戦の跡と言える強い硝煙の臭いが残る。二人は突然の事で顔を真っ赤にしている。
「「はっ、ななっ、て、てぃと!!??」」
私は構わず、そっと撫でる感謝。ただ、ただ感謝。
「・・・ありがとう、本当にありがとう。良く頑張った。そして良く守ってくれた。本当に生きていてくれてありがとう。」
長門、比叡が静かに泣いていた。悔し涙もあるだろうが、提督がこうやって気遣い労ってくれた事にたいしてなんだろう。
「足柄、神通、鬼怒。君たちも苦しい状況の中で助け合い励まし合い、よく戻ってきた。頑張ったな、おかえりなさい。」
「こんどはオール完全勝利を約束するわ!ありがとう提督!」
「提督、私は・・・そんなに・・・でも、あ、ありがとうございます。」
「提督ー、お迎えありがとう!帰ってこれたなって嬉しかったよ〜。」
「さあ、みんなもドックでゆっくり休んでおいで。ちゃんと傷は治すんだよ、良いね?」
皆を休息へと促し、明石と共に白雪達、曳航組を迎える。
「白雪達、急な出動要請を受けてくれてありがとう。容態はどうかな?明石からは落ち着いたと聞いているが?」
「はい、明石さんに渡された応急妖精さんのおかげで、一命は取り留め、機関もバイタルまパートまで一応の手当は出来ています。」
「特型姉妹は繋がりが大事なんだぜ!こういう一大事には頼ってくれな!」
「そう、連携がとても大事、命は大事だから・・・。」
ハイテンションな深雪に、ダウナー係少女の初雪。
姉妹艦の多い特型の代表として出掛けてきてくれた。
「3人とも、本当にありがとうな。無事に戻って来られたのは君達が安全第一で曳航してくれたからだよ、ありがとう、ゆっくり休んでおいで。元気になったらすぐ伝えるからね」
「えっへん!」
「へへへ・・・ぶい。」
「微力ながら頑張りました。他の娘達には私から伝えますね。」
そう言って、隊舎に帰って行った。ここからは明石の出番である。
「さあ、工廠ドックで修理します。暫くは籠もりますね。・・滅多な事は無いと思いますが、ここまでの大破は早々無いから、長期戦ですので・・・。」
「そこは、覚悟の上さ。こちらこそ、彼女を頼む。」
明石は、敬礼をして応えてくれた。
「おかえり、・・・いっぱい頑張ったんだな。ありがとう。こんなに一杯被弾してしまって・・。否、私が弱くてはいかんな。」
「良く耐えて、みんなと戦った。キミのおかげで皆が今日も無事に居られるよ、ありがとう。」
私は静かに眠る彼女を優しく抱いた。硝煙や煤に塗れ、血と汗と油に滲んだセーラー服も構わず。それこそが彼女が精一杯頑張った戦果の証明である。
「・・・・・」
彼女へと頬を寄せ、そっとキスをする。
ほのかに、血の香りがした。
「行ってらっしゃい、元気に、きれいになって戻っておいで。待っているよ。」
妙に、名残惜しくなってしまい、もう一度頬を撫で抱きしめて彼女の熱を感じる。ふと涙が出てくる。
・・・私は弱く脆い存在だ。
「そんな事は、無いですよ?大好きな司令官です!」
「っ!!??」
意識が、無いはずの彼女が?!いや、そんなはずは?
「・・提督ぅ?いくら一命は取り留めてるとは言え重篤患者ですよ?寂しいし名残惜しいのは解りますが、時と場所を弁えてください!!金剛さんの事言えませんよ?!」
「えあっ?、すまない。では、彼女の事頼むな。」
改めて、明石へ彼女の事を託した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は夢を見ているの?同じ、夢を?何度も?
一体私はどうしたのだろう?
シミ1つ、皺1つ無く。高級士官の軍服を着こなす貴方。高潔で、純粋で、清く正しく。それでいて暖かく眩しい。まるで太陽の様な貴方。
あなたの“直ぐ側に”駆け込み、敬礼・・・
岸壁で海に向かい立つ司令官。横顔越しに話す私。
「司令官!わたし、遂にやりました!!」
司令官は、穏やかな顔で答えてくれる。
「おめでとう。」
「一生懸命訓練してー、遠征してー、那珂ちゃんさん達と水雷戦隊でいっぱい戦果上げて、怖かったけど防空戦も戦いました!やっと練度が100に満たしたと認められました。」
「最初は君一人だけだったからな。よくここまで辿り着いたな。」
「私なんか、駆逐艦で戦艦や空母の皆さんに比べたら、ちっちゃい艦です・・・。」
「そんな事は無いよ。小さな身体にその明るさと力強さ。一等星の如く輝いてるさ。君には何度励まされ。勇気をもらったか。」
「私、どんなにボロボロになっても沈むものかって。」
「みんなが待ってる、・・・司令官が居るお家“鎮守府”に帰るまでは。沈むなら温かいフカフカお布団に沈みたーい(笑)って思うと、私、頑張れるんです!」
「君にとって此処は大切な場所なのだな。」
「司令官、鎮守府に居るみんな、鎮守府を陰に日向に切り盛りしてくれる人たち。みんなが家族です!」
「そうか家族か。掛け替えの無い人達か。その気持ち、考え方大事にするんだよ。」
「私、司令官・・・貴方が好きです。・・いえ、愛してます!!かけがえない、この暖かな家を、家族を作って下さり、此処へ導いてくれた、貴方を。」
「海軍数多の艦娘居れども、誰よりっ・・・。誰よりも強く、深く!!私の命尽きるその時まで。いいえ、尽き果てたとしてもお慕いします。」
「私を?いや、一介の冴えない司令官を好いてくれるのか?」
「可笑しいですよね?!昔、無機質な軍艦だった私達。時代も次元も超越して、人の女の子として艦の魂と力を宿し蘇って闘うなんて。」
「いや、過去は過去で消えない業も有るだろう。しかし、君が居るこの世界を戦い護る。これもまた君が居る証しであり意義だよ。」
キシ・・・・ カチャ・・・・
・・・ふと会話の最中、違和感を感じ岸壁に立つ司令官の足元、波打つ所に銃口が伸びる
「司令官・・??・・・・・!!!あ、危ない!!」
ダンッ!! ダンッ!!
司令官を慌てて突き飛ばす、身を翻しとっさに連装砲を顕現し、交互射撃で海水面に潜む潜水艦を撃破し退けた。
そして司令官に慌てて駆け寄るが、
「し、司令官!!・・えっ、嫌、いやだ・・・よ。」
真っ白の海軍士官服の胸の部分に狙撃で穿たれた跡があった。つい先程まで、優しく微笑んでいた司令官が動かない。
「嫌だ、死んじゃ嫌だ!駄目だよ?!まだまだ、勝利をみんなと刻んで分かち合って鎮守府の家族みんなで平和を目指そうって・・・。司令官の居ないお家なんて嫌だよ・・・うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
司令官に抱き付き必死に起こそうとする。抱き締め温もりを与え、手を握り・・・声が枯れるまで泣き続け、呼び続けた。そして、いつしか疲れ果て司令官を抱き寄せるように眠ってしまった・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ここは治療が終わった艦娘が休む医務室。司令官の慌てる声が響く。
「おい、大丈夫か?!頼む、返事をしろ!!返事をしてくれ、私の声が聞こえないのか?」
彼女が突然、かっと目を見開き半狂乱になり暴れだした。司令官を返せだの、奪わないでと悪夢にうなされて夢と現実が交錯しているようだ。
あまり手荒くしたく無い。もう1度全力で抱き締め、動きを止めさせる、ゆっくりゆっくりとあやすように、背中を頭を撫で落ち着かせる。
「私の声が、聞こえるかい?ここは医務室だよ。君は、戦闘中に被弾・大破し意識を失っていたんだ。鎮守府から白雪たちに応急妖精さんを連れていき、手当て曳航してきたんだ。」
一通り、戦闘の状況を説明し誰も沈まずに帰投できたことを伝えた。
「そっか、私は皆さんの足手まといだったんだ。駄目だったんだ。」
「そんな事は無い。君が奮戦したからこそ、皆が勇気を振るって戦い勝利し帰ってこれたんだ。誇る事はあっても自分を貶める事は無い。」
「本当にそうでしょうか?確かに、戦艦型と対峙した時は軽巡の皆さんと上手く連携できたと思います。・・・しかし、空母型と乱戦になった時に皆さんをお守りするどころか皆さんに守られてばかり。しかも身動きがままならず狙い撃ちされました。」
「戦いは常に想定通り動くとは限らない。奴らは長門達を狙うより、対空指揮者である君を攻略対象として見ていたんだ。」
「司令官、正直、私怖かったんです・・・。最初、対空戦闘入る前は、私が頑張っちゃうんだからって張り切っていたのですが、空から大量の艦載機、ヲ級達の重たい負のオーラ、ホ級達の的確な嫌らしい砲撃。どんどんと焦りで判断できず、体が震えて、気持ち悪くて、怖くて・・・。」
「訓練では上手く行っても実践ではままならない事はよくあるよ。張り切っていた分、理想と現実の差に思考が追い付かなかったかな。」
「私が実力無かったのは仮に良かったとしても、長門さんや比叡さん達に護ってもらい・・・皆さんいっぱい傷付いて、痛かったはずです。」
悔しさや不甲斐なさ、情けなさの気持ちが込み上げ涙を目にいっぱい溜めて話す彼女。余程今回の事が堪えてしまった様だ。
「長門さんや比叡さんはどんなに攻撃を受けても耐えて怯むどころか、掛かってこい!その程度か?!と言わんばかりに反撃して相手を撃沈。・・・足柄さんや鬼怒さんは・・・潜水艦達が潜んでない足元も気にしながら颯爽と立ち回って。・・私とは何もかもが違いました。」
「そんな、皆さんでも多勢に無勢では限界があります。だんだん被弾し傷つき、もしも私のせいでって・・・考えちゃいけない事思ってしまい。・・・何もかも分からなくなって、ただ恐怖だけが頭の中を埋め尽して。無防備になったところを徹底的に狙われてしまいました。」
段々と声が震え下を向き、感情が堪えきれなくなりながらも独白は続く。
「私、気を失っている間、同じ様な夢を何度も見たのです。」
「同じ夢を?先程、随分うなされていたが?」
「司令官に戦果報告している最中、私は独り善がりに話し始め調子に乗ってしまい、異変に気付かなかったのです。司令官が既に深海棲艦に襲われた後で白雪ちゃん達も深海棲艦に堕ちていて、私は集中砲火を受けて、深海棲艦になり掛けながら沈む夢です。」
「もう一つは、同じ様な夢ですが今度は司令官とちゃんと顔を合わせて話しているのです。ですが、そこで深海棲艦の襲撃から司令官を守り切れずに無力な自分に苛まれる夢です。」
「うーん、夢とは言え、うん壮絶と言うか。キツイな」
「申し訳ありません、こんな酷い夢なんて・・」
「いやいや、そういう意味じゃ無いよ。」
私は、彼女の横に座り語り掛ける。彼女は、今自身に溜っていた澱を出してくれた。今度は私が助ける番だ。
「君は、今まで私と共にコツコツと補給地の頃から、寄り添い助けてくれた。最初は戦いも野良駆逐を退治するのもやっとだったしな。」
「その頃は本当に無我夢中でした。懐かしいな・・」
「君が育つに連れて、泊地になり鎮守府になり。設備も艦娘も増えて、管理することも増えて大変になった。秘書艦娘として、皆を統率したり小言を言ったりとストレスの溜まる事もあっただろう。なのに私に一言も泣き言恨み言言わず、別け隔てなく明るく接してくれた。」
「それは、皆さんが優秀なだけですよ。こんなちっちゃい私には説得力なんて・・」
「それは、些か自分を過小評価しているぞ?!君の頑張りを見て、奮闘する小さな背中を見て皆鼓舞されたんだ
。毎日どれだけ大変でも、出撃があっても変わらずコツコツと進む姿は皆の手本で道しるべだよ。」
「私が・・・そんな、みんなの手本なんて。ただ、がむしゃらに必死に喰らいついただけです。」
「がむしゃらなのは効率が悪い事もある。しかし、時にひたむきな一生懸命さが人の心に響く時がある。君は弛まぬ努力をくじけぬ姿を見せた。それは何にも替えがたい教科書になったんだよ。」
「私が皆さんのお手本?」
「そして、君のお陰で1番心に響いた者がいる。・・・私だよ。間違いなく君は私を支えてくれた。執務が溜まり辛い時も寄り添ってくれたし、出撃も本当は毎回恐ろしいだろうに、皆を鼓舞し元気よく行ってきてくれた。遠征も皆と知恵を出し協力し合い多くの成果を持ち帰ってくれた。」
「私は皆とこの鎮守府を大きなお家に住む大家族だと思います。そして司令官は一家の長、大黒柱です!」
彼女の考え方は素晴らしいと思う。皆を思いやり大切にして誰一人欠けない為に考える。
「そうか、家族か。とても良い考え方だよ。そして君も私にとっては掛け替えの無い家族になって欲しい。私はこれからも君と寄り添い、この鎮守府を護り育てていきたい。」
「・・・司令官。本当に?本当に私と家族になって頂けるのですか・・・ずっと寄り添い。いつまでも・・・。」
「艦娘として、パートナー。伴侶として最期の時を迎えるまで、いや、ずっと永遠に共に・・・。いつまでも私と。」
「はい!不束者ですが・・・。本当に、夢・・いいえ、やっと醒めることが出来ました。司令官・・・貴方、私を心の闇から救ってくれて、ありがとうございます。」
「愛してるぞ・・・」 「はい、司令か・・」
私は、彼女の言葉を待たずに、抱き止め口づけをした。彼女の目には涙が溢れ、まつ毛が揺れる。
唇を離し、見つめ合う。そこへ長門や特型の姉妹艦が入ってきた。
「司令官、おめでとう。やっと心のつかえが取れたな。我らも益々精進して“我が家”を大きく育てようぞ!」
「やったなぁ!お嫁さんかぁ・・深雪もいつかなりたいな」
「これまでの頑張りが報われたね。こんな幸せな気持ち、良いものですね。ね、叢雲?」
「何よ?!白雪?私は、今までモヤモヤしてたのがスッキリして気分が良くなっただけよ!」
「何ですか?さっきまで“行け!そこだっ!押し倒すのよっ!”とか言ってましたよね?」
「んにゃっあ!!!」
「おめでと、やったね・・・」
「長門さん、深雪ちゃん達もありがとう!これは私だけじゃない。皆んなが居たからこその幸せだよ。これからも幸せだよ。」
・・・・・後日、私の体調が完全復調を見計らい、改めて鎮守府総出で手作りでケッコン式を執り行ってくれました。
私のドレスや白無垢は司令官の正装に負けないくらい白く眩く、笑顔が止まらなくって、すごく嬉しい!
つられて、艦娘の皆さんが笑顔で溢れました。
そんな笑顔あふれる中、誓いの指輪を交わす事が出来たのは格別の幸せです!
これからも、この家・この家族を司令官と手を取り合い、皆と護り育てたいと誓いました。
というわけで、悪夢と現実を織り交ぜてのお話でした。
TV版ですとお出かけMod.でビルの上で楽しく踊る彼女も印象的でしたよね。
今回は大団円的にお話をしてみました。
挫けてもめげずに頑張るヒロインと司令官。
幸せしかないですよね。
今回も長丁場のお話にお付き合い頂きありがとうございました。
また次回を宜しくお願いします。