とある艦娘の後日譚?!    作:糸田ひろし

15 / 29
いつも、ありがとうございます。

特型駆逐艦の5人目ですね。

この娘とオリキャラ相棒の副司令とのお話になります。

舞台はもちろん架空の町ですが、モデルにした街はありますので、分かる方は分かるかと。


便覧番号15

ここは、とある海沿いの街の墓地。

 

深海棲艦との熾烈な戦いが起こる前まで、この地域は遠浅の海が広がり、地方有数の海水浴場や潮干狩りのできる海岸として初夏からお盆までは、屈指の観光スポットだった。

 

 

ーーー檀家を多く抱える寺院の為か、院内は奇麗に掃き清められ本堂や鐘桜、墓地は立派である。

 

 

2つの半島に遮られた内海の海岸線の為、深海棲艦からは狙われ難く、他の海岸線を有する地域と比べ人口流出はない。その為比較的発展した貴重な港湾都市となりつつある。

 

 

ーーーそこへ、現れた二人の姿。

 

一人は海軍の正装に身を包んだ上級士官らしき男性。そして絹糸の様な長髪が美しい少女。ワンピース型のセーラー服を着ているので中等部の娘さんだろうか?

 

 

地元の商店で調達した日本酒と茶菓子。近隣では国内有数の茶葉産地がある。

 

そして色目良くまとめられたかなり大きな花束。お供え物としては立派だが少々量が多い。花も菓子類も寺への手土産も兼ねてるのだろうか?

 

 

 

「じゃあ、僕は先に住職へ挨拶してくるから、君は“先代”の掃除を頼むよ。」

 

「わかったわよ。その代わり長話厳禁よ!見つけたら住職共々ブッ飛ばすわよ、いいわね?」

 

「わ、わかったよ(汗)・・・善処するから。大事な報告もあるからね・・・」

 

「善処する、ね・・・。都合のよい言葉だわ。」

 

「まあ、まあ、そう言わんでくれ。

 ・・・じゃあ花束だけお願いして良いかい?」

 

 

 

花卉(かき・花類全般)栽培でも有数なこの地域。ある程度の規模の花屋でも質の良いものが手に入りやすい。

 

 

 

「待ってる間に組分けて水上げしておくわ。せっかく良い花を包んでもらって枯らすのは勿体無いわ。」

 

 

 

言いつつ、花束を愛おしく見つめる彼女。

 

 

 

「フフッ、君にもそんなお淑やか・・「それ以上口走ったら私の薙刀の錆にするわよ?!」」

 

 

 

思いきり少女の眼力と覇気に気負されてしまう軍人男性。・・・タジタジである。

 

 

 

「じ、じゃあ、僕は社務所にいるから、何かあったらすぐに呼んでくれ」

 

 

「解ったわよ、さあ、早く行ってらっしゃいな。」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

社務所入り口の引き戸を開け、主を呼び出す

 

 

 

「おーい。付いたぞー?!」

 

「おぅ、よく来たな。まぁ上がってくれ・・・っと、彼女は?」

 

「あぁ、花束を解き直して、飾りやすい様に直してくれてる。ああ見えてセンスあるよ。こっちにも水盤か花瓶ぐらいあるだろ?」

 

「何だよ?!墓場の隅の水場で一人やらせてるのか?そういうとこだぜ“提督”さん〜?」

 

「何がだよ?墓の掃除やるまでの繋ぎの時間つぶしでやるって言うから・・・」

 

「かーっ!深海棲艦の奴らにはとことんエゲツない作戦考えて撃退する気鋭の中佐様が、オンナゴコロには新兵卒以下ですか?!」

 

「言い草・・・」

 

「とにかく、彼女には社務所の水場使って貰え。早く呼んで来いよ。・・・話はさ墓参りだけじゃないんだろ?」

 

「・・・ああ、呼んでくるから。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

俺はこの辺りの海域を守護する鎮守府を任せて頂いて5年になる。今は亡き先代の提督、『玉津大佐』は俺の師匠に当たる。軍人としても、人生の先達として非の打ち所がない方だった。

 

よく食べ、よく語り、よく笑う、そしてよく呑み明かした。・・・人だろうが艦娘だろうが、時には不倶戴天の敵・深海棲艦の鬼姫級どもにも舌戦と言うか、誰も食わないような喧嘩じみた言い合いをしてみたりと、破天荒極まりない人でもあった。

 

 

 

「おう、良いかー?俺らの後は守る壁は無ぇんだ。かと言って一死百殺の様な玉砕戦法しろなんて言ってんじゃあねぇ。」

 

「考えろ。考えて考えて考えて・・・生き残り、守り抜き次の作戦につなげるんだ。尻まくって逃げる?上等だよ。命が温存できて守るべき人達が守れるんなら合格だ。次でひっくり返してやりゃ花丸だよ。」

 

「散らして良い命なんて1つもねえぞ、大和や武蔵だろうが、海防艦のおチビちゃん達。デカいも小さいもねぇ、ひとりの艦娘としてみんな平等だ。ただ、ちょっとばかし活躍の場が違うだけさ。」

 

「ウチの艦娘ちゃん達もべっぴん揃いだけどよ、深海棲艦の嬢ちゃん達もなかなか粒揃いだよな、お話すりゃこっち側に付いてくれる奴1人ぐらい居ねぇかな?ネ級やタ級のオネエチャン可愛くねぇか?・・・っっ痛えなぁ?!・・・怒るなよ!!あ、ヤキモチか?」

 

 

「いっっっ!!痛えぇぇってっ!爆撃すな!!」

 

 

「お、ネ級の嬢ちゃん?角生やしちゃって・・・色気づいた?・・・あ、彼氏が浮気して激怒とかか?!俺がウザくて怒れたから?マジか??」

 

「戦艦棲姫さんよ?ネグリジェっぽいのよりさ、フリフリのドレスの方が品が出るんじゃねぇかと思うがよ?・・・あ、ウルサイ?」

 

 

 

とにもかくにも破天荒な人だった。

 

・・・しかし先輩は呆気なく病に斃れ、多くの艦娘や鎮守府の人々を残して逝った。最後の最期まで全身癌で蝕まれていたのを気力で隠し陣頭指揮を採っていた。

 

 

 

俺はその当時、副司令まで昇格していたが他にすぐ赴任できる提督も居ない為、代行としてそのまま後任に付いた。

 

 

今まで総旗艦をしていた武蔵に引続き着任してもらい、先輩の秘書艦をしていた瑞鶴を『副旗艦』として鎮守府No.2の位置に付いてもらった。

 

正直言って名誉職の様に感じるが、俺は提督としてまだ青二才であり複数艦隊を正確に操るにはヒヨッコな為、瑞鶴には戦術補佐官的立場になって貰った。

 

 

そして俺の秘書艦は、俺が司令官として歩むべく初期教導を受ける時から側に居てくれる特型駆逐艦の彼女だ。

 

 

とかく気が強く。曲がった事・半端な事は許さない真っ直ぐと言うか苛烈な性格をしている。良い物は良い悪い物は悪いと言い切る素直さであり、頑固さとも言える。

 

そして、美味しい物が大好きなのは見てて微笑ましいが、この見た目でありながらかなりの酒豪である。

私を含め鎮守府の下士官から憲兵まで、“撃墜スコア”男は相当数だ。

 

また、嫁入り修行かと言うほどに、様々な習い事は一通りこなせるとの事。

忙しい軍務の合間にどうやったの?と問うてみたいほどだが、きっとそこは深掘する領域では無いのだろう。

 

そして、先程の大きな花束も、仏前用から花瓶、水盤と綺麗に生け直してあった。

 

 

 

「綺麗だよ・・・実に・・・。」

 

 

充実感の笑顔を見せ、見事な出来映えの花瓶を持つ彼女へ感想を漏らした。

 

 

「えっ、きゅ、急に何を言い出すのよ、馬鹿・・・。そりゃ私は、オカタイ軍属な訳で・・・。」

 

「だから!女を磨く為に、戦しか知らないバカ女どもって言われない様に努力してきたの。・・・そうやって努力してきたのを言ってもらえるのは、そのやぶさかじゃなくて・・・」

 

 

「ああ、もう!恥ずかしいじゃない!!」

 

 

 

「えっ!あの・・・」

 

 

「え、何よ。その鳩豆な顔してるのは??」

 

 

「あ。あ・・、いや、そのだな・・・。」

 

 

「何よ?男ならハッキリしなさいよ!!」

 

 

「花が・・・・・」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

「その、何だ・・・。スマ」

 

「謝るな!それ以上口も開くな!!私は、私は・・・くぅッ!!」

 

 

 

彼女は、花瓶を置くと、一目散に外へ駆け出して行ってしまった。

 

 

 

「あ、待てっ!・・・しまったなぁ。」

 

 

二人の声を聞いて駆け付けた住職が俺にハッパを掛けてきた。

 

 

「ほらほらっ!ぼさっとしてないでサッサと追い掛けるんだ。」

 

「あっと!そうでした。呆けてる場合じゃないや。」

 

「嬢ちゃんが大事なんだろ?守る物に大きいも小さいも無い。でも、お前には嬢ちゃんは特別なんだろう?」

 

「それは大佐の・・・」

 

「ありゃあ、俺がアイツに説教した時の言葉だ。大方、便利な言葉だぐらいに思って使ったんだろ?」

 

「流石、あなたの弟さんらしいですね、抜け目なくチャッカリしていて。」

 

「何の因果で寺の家から軍人、しかも大佐様だ・・・。おっと、昔語りしてる暇ないだろ、嬢ちゃんあんまり土地勘ないだろ?それと、この花を持っていけ、おまえには必要だ。」

 

「この白い花は・・・」

 

「分かってんだろ。ちゃんと気持ちを添えて渡すんだぞ?!さぁ行って来い!!」

 

 

俺は追い立てられるように社務所を出て寺を後にして、近所を探し始めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

はあ、はあ、はあ・・・・っく、

 

 

「あの馬鹿、ニブ、ろくでなし、青二才、それから、それから、それから・・・こんの愚か者ーー!!」

 

 

艤装も無く非武装のままで走った為、艦娘の能力補正も無く、運動で鍛えている少女並みの体力しかない現在の私。粗くなった息を整える。

 

 

 

「あっ、私どこに来たんだろう・・・?」

 

 

 

そこは小さな古くからの商店街。

3方向からの合流地点に作られた駅を中心にしているようだ。

 

 

 

「私、完全に迷子だわ・・・。」

 

 

 

寺への行き掛けに立ち寄った商店や花屋が見当たらない。店はあっても屋号が全然違う。

 

 

 

「もう、お寺は何処なのよ?道を聞いても土地勘が無いから迷ってばかりで、ああっもう・・・」

 

 

 

腹を立て飛び出したものの、完全に迷子となり心細くなる。海上なら電探や艦娘の力で索敵すれば方位を調べるなど造作もないのだが・・・・。

 

 

 

「取り敢えず海沿いの方に向かえば何とかなるかしら?

あとは・・・“戦闘糧食”は必要よね・・・あ、このお店は。・・・すいませーん、抹茶団子と抹茶飴、その煉羊羹、ういろう、ざらめおせんべ下さい!・・・手土産?いいえ、全部私が食べますが?」

 

 

支度を整えた彼女は、海岸線の道へ出た所で丁度良い木陰を見つけ休憩をする事にした。

 

 

 

「間宮さんや伊良湖さんの甘味も絶品だけど、土地々々の御菓子屋さんも良いわね。・・・・玉津提督?何故無理なされたのですか?常々命を大事にしろと言ったのは貴方なのに。それで、アイツを私に付けたんでしょ。あの馬鹿をさ」

 

 

木陰で一人ごちる彼女・・・

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

水雷戦隊の僚艦として戦った頃・・・

 

「クソっ、ホ級や後期駆逐艦が抑えられない?!」

 

「あっ!」

 

ダンッ!!  ガンッ!  ガンッ!

 

敵の砲撃が至近弾から夾叉、そして軽度の被弾と確実に当たりを寄せて来ている!

 

他の軽巡や駆逐艦の娘たちも小破レベルの被害が出始める・・・そこへ更に。

 

 

ドォーン!!   ドッゴォーーン!!

 

「きゃああぁ・・・」

 

「痛い!あっ、ああっ!!」

 

「うわあああぁっーっ!」

 

 

後続の重巡中心の打撃艦隊の中距離砲が容赦なく襲いかかる!!

行き脚の鈍くなった水雷戦隊など鴨打ち・釣瓶撃ち状態である。

 

脚や腕を激しく被弾“持っていかれ”た娘も居り、恐慌状態となってしまった私の隊。既に戦意がゼロに等しい。退避行動も無軌道で行きあたりばったりと迷走状態だ。

 

ここで私がみんなに声を掛ける。

 

 

 

「貴方達、落ち着いて聞いて!3時方向が空いている。あそこを一点突破するのよ。私が殿をするわ。」

 

 

「あなたは?1番被害軽微と言っても無茶よ!!」

 

 

「フン!あんなヘッポコ弾はアタシのコレではたき落としてやるわよっ」

 

 

私は、自慢の獲物。電探薙刀を振るって見せる。

 

 

「あなた、新しい士官さんが心配するわよ?」

 

 

「心配するのは、あたしの方よ?!またしょうもない作戦案考えたり、戦術計画立てたらお仕置きしてやらなきゃ!それまでは轟沈むに轟沈めないわよ。」

 

 

「わかった。私達も全力で退くから、あなたも出来る限りすぐ逃げてよ?」

 

 

「今は、あんた達が心配される側で私はする側よ、いい?さあ、撤退戦の開始よ。」

 

 

 

そこからは敵の包囲がいちばん少ないところを突き崩す為、旗艦の軽巡の娘と私が囮になる。

 

 

 

「ほらほら!あんた達の砲撃なんて止まって見えるわ!どんどん撃って当てて見なさいよ!!」

 

「はんっ!アタシの酸素魚雷喰らいなさいな!!」

 

「上から狙おうったって12.7A改三で水底へ叩き返してあげるわ!!」

 

 

 

威勢のいい啖呵で煽り散らしヘイトを集める私。とにかく皆を安全圏まで退避させたい。もちろん自分も逃げられる様に、敵と自分と撤退部隊との相対距離を考えながら・・・

 

遠く発光信号が伺える。

 

ーーー撤退部隊は安全圏まで退避成功せり

ーーー旗艦も撤退行動に移行す

ーーー貴艦も速く撤退されたし

 

 

 

「・・・良し、これなら行ける!!」

 

 

 

と、思った瞬間だった!!

 

 

キュインッ!!  キン!!  ピシッピシッ!!

 

 

 

肌に擦過傷の様な跡が付く、被弾した?!

 

 

 

「チッ!追い付くのが早いわね。・・・さあ、トンズラするわっ、強速前進!!・・・キャアアッッ!!」

 

 

ッドドオォォォン!!

 

 

突如、水面が膨らんだかと思った瞬間に巨大な水柱と共に爆発に巻き込まれ、身体が木の葉の様に吹き飛ばされる!!

 

 

敵の潜水艦による魚雷攻撃が爆ぜたのだった。

本来だったら直下で被弾する筈だったが、一気にスピードを上げて動いた為、爆発を背面で受ける事になった。

 

水面に叩き付けられ背部艤装も大破し、最早まともな状態では無い。全身あちこちがボロボロとなり意識があり立てるのが不思議なぐらいである。

 

 

 

「クッ・・・この私がっ・・・このぉぉっ」

 

 

 

元々がプライドの高い私が、この世に艦娘として初めて受ける大きな被弾。身体的にもボロボロなのはもちろんだが、精神的なダメージも影響大だった。

 

生き残った武装も、薙刀も振るい払い落とすもあちこちと被弾し次々と鉄クズと化していく。

 

 

 

「邪魔だ!、どけ!、寄るな!、来るな!」

 

 

 

ボロボロの主機と体を鞭打って何とか鎮守府ヘ退避しようと後退する私。しかし、相手はジワジワと包囲する。

私の様な駆逐艦では、例え鍛錬を積み練度を上げて改装をしても耐久力はさして高くない。

 

 

奴らは私に恐怖と絶望を植え付けようとしているのか?苦痛を与え愉悦に浸っているのだろう。何故か?

 

“同胞”を増やす為に他ない。

 

深海棲艦は謎めいた存在ではあるが、少なくとも負の感情を糧にして動き暴虐の限りを尽くす。

 

その為、図らずも恐慌状態となり傷つき斃れた者に憑き闇へ墜とす。生前どれだけ心清きものだったとしても、負の感情で包まれてしまい、荒み暴れ傷付け回る。

 

特に酷く負の感情に墜とされた者は鬼・姫と呼ばれ、強化された取り巻きを引き連れ、正に草木一本残さず破壊し尽くす。

 

 

 

ガキィィッ!  ガキンッ!・・・バキンっ!!

 

 

「嫌、やだっ・・・。」

 

 

唯一残っていた、薙刀も限界を迎えひしゃげ、折れてしまう。自分自身を守る、最後の手段を奪われた私。

 

朽ちた薙刀を見て、絶望感が溢れる

 

 

 

「あっ、ああ・・私、わた、わた、ワタシハ・・・」

 

「嫌だ!!・・沈ミタクナイッ・・・沈厶?」

 

 

 

もう、音も匂いも、生きている感覚さえ薄れて、自分が冷たく冷えていくのが分かる。

 

 

 

「・・・・ク。・・・・クフッッ?!」

 

「何デ?沈ムのに沸キ上ガルノ??何?愉シイ?」

 

 

 

水底へ沈んで行こうとする恐怖と、共に何故か奥底から上がってくる激しく昏い高揚感がある。

 

 

 

「アハハッ・・。狩ルワヨォ、狩リ尽クシ喰ライ尽クスワッ!!」

 

 

 

謎の高揚感が心を包み込み始める。どこかで最大級の警報が鳴り響いている。しかし、遠く鳴り響くだけで掻き消えそうな程だ。その一瞬、誰かのシルエットが浮かぶ

 

 

「アっ・・・カレは・・・!!っまだ!!」

 

 

 

パリーーーンッ・・・何か弾ける音が?!

 

 

 

 

 

そこへ・・・

 

「くっ、手遅れか・・・否、まだっ!!

   あのシブヤン海の様にはいかないぜっ!!」

 

「総員、前方敵深海艦隊に全砲門開けぇ・・・

 ・・・ってえぇぇっーー!!」

 

 

「さあ、艦爆隊・艦攻隊発艦・・・

肉薄するわっ!私達の仲間を傷つけた奴ら・・・くたばれぇっ!!」

 

 

武蔵・瑞鶴率いる第1艦隊が駆けつける!!

 

鍛え上げられた武蔵率いる旗艦艦隊の濃密な砲撃と爆撃に、なす術なく全て消し飛ぶ深海棲艦の艦隊。

 

 

そして・・・。

今にも堕ちる寸前の駆逐艦が・・・。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

そこへ駆けつける有人艦船。

 

 

「今、行くぞ!!・・・ダメコン女神妖精さん!」

 

 

一人の士官が妖精を伴い彼女へ駆けつける。

 

 

ーーーかいふくバッチリでい!あぶらも、たまもマシマシかいふくしときやしたぜ!・・・んじゃ、あっしはこれで。ーーー

 

 

「ありがとう、妖精さん!」

 

 

 

サムズ・アップして撤退する妖精を尻目に俺は彼女に語りかける。

 

 

 

「遅れてすまない!もう戦闘は終わったよ。君が決死の撤退戦を繰り広げてくれたから、誰一人轟沈は無かったよ。流石だ・・・ね?・・・おい、聞いてるのかい?」

 

「なあ、大丈夫か?・・・返事をしてくれ?なぜ、泣いたまま何だい?何があったんだ?おいっ!!」

 

 

 

女神妖精の迅速な処置で、体も艤装も傷一つ無く回復した。耳や目鼻に傷がある様に見受けられない。呼吸はしているので・・・。

しかし、どうにも反応が無い。現場で悶々としている間に手遅れになったとしたら俺は・・・。

 

 

 

「武蔵!瑞鶴!!すまない、玉津提督へ緊急伝だ!!明石や夕張にも判断してもらおう。」

 

 

直ぐに彼女を海防艦に収容し鎮守府へと戻る。

士官室に彼女を入れ座らせる。しかし、この間何も言葉を発せず自ら動く事も無い。ただ視点も中空を見続ける。ただ、時折涙が溢れ口もとが微かに動くのみ。

 

 

「どうなってしまったんだよ。いつもの高圧的な態度はどこへ行ったんだ?」

 

「うるさくて、お節介で、生意気で、美味いもんに目がない、悪酔い娘で・・・でも面倒見良くて、コロコロ表情が変わって、見てて飽きないよ君は・・・俺を見てくれないのか・・・。」

 

 

 

鎮守府に帰還すると、玉津提督・明石・夕張・工廠妖精・共に出撃した旗艦の娘皆で当時の様子状況を聞き取りながら、あらゆる処置を施したが意識を回復しない。

 

 

 

「彼女の回復も大事だが、皆戦闘直後だ休養も大事だ。武蔵達も飯食ったり入渠して休め。疲れたままじゃまともな案も出んだろう?」

 

「まあ、そうか。瑞鶴、1度体を休めよう。他にも被弾した娘のケアもあるしな。」

 

「そうね。じゃあ明石さんたちも、休みながらお仕事してね。」

 

 

武蔵たちは引き上げ、明石たちは今回の戦闘で被害の出た艤装の修理や各武装の補充で忙しく場を離れる。

 

 

「提督、俺は・・・」

 

「お前も戻れ。顔がお通夜になっとるわ。そんなんじゃ救うに救えねぇぞ?!」

 

「だけど・・・」

 

「コイツは頼れる相棒を見つけられたんだな」

 

「寧ろ、俺が彼女に頼ってばかりですよ。作戦・哨戒・遠征・編成といつか提督になる為のノウハウを現場視点で叩き込んでやるって。施設・設備も提督室や食堂、風呂場のレイアウトまで事細かく。」

 

「さすがだ。よく鍛えてくれたなあ・・・」

 

「・・・彼女には頭上がりませんよ、だからこそ、」

 

「まあ、今夜のところは俺や明石が見る。お前は明日からアイツを見てやってくれ。」

 

「解りました。彼女の事お願いします。」

 

 

俺は提督に敬礼をして自室に下がった。

 

 

「ふぅ~ん、彼女ねぇ。お前は果報者だぞ・・・初期艦様。」

 

 

明くる日から、俺は士官としての勤務の合間を縫って彼女の部屋を毎日訪れた。明石や夕張に頼んで、様々な艦娘用の資材を元にした回復用の調整薬を試した。

 

食堂の間宮や伊良湖に頼んで甘味を作って差し入れたり、各地の山海珍味・特産品を調べて取り寄せ彼女に食べて貰おうとした。

 

足柄達に頼んで、銘酒を取り寄せてもらい二人で晩酌を交わした・・・手酌になってしまうが。

 

それでも毎日、今日あった事・教練の話・戦闘の話・今日のご飯の話・季節の話・・・。

出来る限り話題が被らないよう、メモをして事前確認をする徹底ぶりで会話をした。

 

 

ある日、鎮守府No.1と2が食堂で話す。

 

「武蔵?副司令達大丈夫かな?」

 

「私も気になるが、あの日から1年近く経つか。私が副司令なら信じ続けられるか・・・諦めてしまうのだろうか?瑞鶴よ、貴様はどうだ?」

 

「私かぁ、そりゃあ私だって奇跡は起きてほしいわよ?だけど・・・心折れるかなぁ。」

 

「あそこまで献身的に想いを貫けるとはな。それを思うと副司令は将来、大きな鎮守府を背負い立つ大人物になるかもな。」

 

「あの娘、ひょっとして心のどこかで必死にもがいてるのかしら?もう一度、光指すところへ手を伸ばす為。」

 

「かもな。あいつも信念の硬さは折り紙付きだったから諦めてないだろうな、必ず帰り道を探し見つけるさ。」

 

 

 

そんな会話が行われる中、俺はもう少し彼女に刺激になる事が意識回復の鍵にならないかと考えた。

 

近所の散歩にはじまり、音楽、映画、絵画、料理・・・

 

必ずふたりで一緒に聞いて、観て、声掛けて、彼女と絵を描き、料理を作った。

 

・・・自分だけが泣いて、笑って、驚いて。例え何も反応が無くとも、きっと届く。必ず届いていると信じて。

 

 

晩秋のある日、提督の実家から花水木と言う木を鎮守府の広場に移植した。白や薄紅の可憐な花が咲くという。

 

妖精さんの手入れのお陰か木は無事順調に根付き蕾をつけ始めた。そして春の盛りになり見事に可憐な花が咲き始めた。

 

俺は今日も彼女の手を引き鎮守府の前庭を散歩する。

花水木の下の木陰でふと立ち止まる。手を伸ばせる位置に花が咲き誇る。

 

ふと俺が手を伸ばし花を一輪採る。その花を銀色にたなびく彼女の耳元へ飾った。そして彼女に向かい

 

 

「君の髪によく合うよ。これからもずっと一緒にいてくれないか。君が再び海に出るのは難しいかもしれないが、俺が帰る標になってくれないか。」

 

 

そして、気恥ずかしくなった俺は手を握ったまま彼女に背を向けた。そして帰る為に促そうとしたとき・・・

 

 

 

「なぁっ!?!?」

 

 

急に手を引っ張られ後ろへたたらを踏む。そして耳元に何かが挟まれる感覚と

 

・・・柔らかく暖かな感触。恐る恐る感触の根源へと振り向くと・・・

 

今まで待ち望み焦がれた表情、涙を流し頬を赤らめ笑ったような、怒ったような表情で見つめ返す彼女。

 

 

「あ、あぁあぁぁ・・・・。

 

おかえり・・・おかえり・・・待っていたよ。

 

よぐ戻っで、・・ぎだ、ね。」

 

 

「・・・た、ただいま。

 

・・・まあ、ずっと待たせたわね。

 

さっきのはずっと面倒見て待っててくれたから

 

お礼よ!礼!!」

 

俺は、ただうれしくて、二度と離したくなくて、離したら駄目だと思い。すがりつくように抱き着いて泣いた。

 

流石に彼女恥ずかしい為か、思い切り顔が真っ赤になるが嫌がる素振りはなく俺の頭をあやす様に撫でてくていた。

 

 

「おう、やーっと戻ったな。待ってたぜ!」

 

「初期艦殿が凱旋だ!・・・瑞鶴!皆で勝鬨だ!!」

 

「もう、武蔵!はっちゃけ過ぎよ?!でも、今日は特別ね」

 

その日から、改めてオレと彼女は鎮守府の管理と発展に尽力した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれっ、私いつの間に?朝からバタバタして迷子になりさまよい歩いて、おやつでお腹いっぱいになってウトウトしていて・・・。

ふと、隣に提督がいた。

 

「おぅ、眠り姫。おはよう起きたか?」

 

 

「何よ、すぐ追ってこないし、空気読まないし、いつまでも一人前ならなかったし・・・。んっ、これ?」

 

 

「花水木だよ。あの時はただ救いたくて藁をもすがる思いしかなかった。だけど、今度はちゃんと俺の気持ちとして受け取って欲しい。」

 

「貴方、本気で言ってるの?さっきみたいな素っと呆けて言ってないでしょうね?」

 

「正真正銘さ。」

 

 

君が俺に対して尽くしてくれた『返礼』

 

純粋に『私の気持ちを受け止めて欲しい』

 

君との関係が『永続的』に続けたい

 

 

「ま、これはアメリカさんの花言葉だけど」

 

どんな苦しいことが起きようがすべて払いのけ君との愛を貫く『逆境にも耐えうる愛』

 

 

「貴方、本当に私で良いの?後悔しないわね?」

 

「ああ、構わないさ。こんな可愛らしいことやってるからなぁ。・・・っ。ほら取れたぞ、ういろう。」

 

 

彼女の“お弁当を”キスで取る。とても甘かった。

 

 

「くぅぅ〜っ、アンタは小っ恥ずかしい事を!!」

 

「はぁ〜、分かったわよ。・・・副司令、あなたの想いを幾久しく受け取らせてほしい・・・です。私が朽ちて沈むまで「いや、俺が沈ませない!俺が生きる間は絶対にな」」

 

 

お寺への帰り道に、ポツポツと話す

 

「いつの間にか貴方に、してやられる事ばかりになったわね。」

 

「そりゃあ、鎮守府をあずかる者だしな。それに」

 

「守る事が1つ増えたしな。楽しみとも言っていい。」

 

「貴方、大物だわ。早くから玉津提督が目を掛け育てようとした訳よ。」

 

「その実務をしていたのは君だよ?」

 

「それが、今や押しも押されぬ主要鎮守府の提督様よ。鎮守府の艦娘から憲兵に至るまで、あなたの実力と信頼に疑いを阻む余地なんか無いわ」

 

「これからも、私達を導いてよ?暁の水平線に勝利を刻むまでね、頼むわよ。」

 

「あぁ、臨むところだよ。」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

私は戻ってすぐに玉津提督の兄であり住職にお詫びをした。

 

「ごめんなさい、こんなはしたない事を。」

 

「いいって事よ。“クソ提督”も元気な嬢ちゃんが見れて嬉しかったんじゃないか?」

 

「そうかしら?相変わらず手が掛かるお転婆だとか罵ってるわよ?!」

 

「でも、2代続けて提督ね初期艦であり秘書艦やってる艦娘なんて居ないわよね?」

 

「ああ、少なくとも居ないはずだぞ?それに・・・住職。いや、お義兄さん。俺は彼女とケッコンする!

・・・そして、より二人で、鎮守府全員で高みを目指し、勝利をもたらすよ。」

 

「そうかい。しっかりやってくんだぜ。俺は祈ってやるのと、あいつの墓守しかやってやれんが。」

 

「それだけでも、ありがたいです。穏やかに見守って欲しいですから。」

 

「じゃあ、“あなた”報告に行くわよ。」

 

「そうだな。それで、鎮守府に戻ったら皆に報告だ。」

 

「あー、何か今から緊張するわ。絶対に武蔵と瑞鶴の二人は調子に乗るわよ?!ま、そんな事したら、コレでもかという程見せつけてやるわよ。」

 

「・・・はぁ、程々にしてくれな。」

 

 

そう笑う寺の本堂の横には花盛りの花水木が立っている。

 




今作もお読みいただきありがとうございました


住職
→先代提督の兄で鎮守府に花水木を株分けした人。割とくだけた人物だが、近隣の方には古刹を仕切る偉いお坊さんとして有名

先代提督
→副司令であり現提督を育て上げた名将。職位は大佐。かなり奔放な性格で、知能があるのか無いのか良く分からない深海勢にも言葉で煽る困った人。
ヒロインを初期艦にしていた。

現提督
→ヒロインを初期艦として先代提督より任命され、提督のイロハを多角的に詰め込まれていた。不器用気味なヒロインが色々器用にできる様にした張本人。それがまさかの花嫁教育になるとは・・・

武蔵&瑞鶴

ヒロイン達の鎮守府を引っ張る総旗艦と副旗艦のコンビ。アウトレンジでの遠距離索敵&爆撃で戦いのイニシアチブを引き寄せ、武蔵以下の艦隊による統制された砲撃で仕留める。


あ、ハナミズキの花言葉はリアルでございます。

それでは、今後もぜひよしなに〜。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。