とある艦娘の後日譚?!    作:糸田ひろし

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ども、糸田です。
北上・大井の続編です。

今回は、大井がとある不思議体験をする話になります。

大井神社は、静岡県島田市に実存するお社です。
実際には大井川周辺にまだたくさんの大井神社があるそうです。

詳しくは大井神社さんのHPを見てみると大井川や大井神社にまつわる由来・歴史を勉強できます。
一度、御覧になっては如何でしょうか?

それではどうぞ〜。


便覧番号19+20②

北上と大井を乗せた汽車は無事終点の大井川河口の街に滑り込んだ。そして、更に列車で大井川を渡り島田の街へ。

 

「普段は自分達で海を進むばかりで乗物に乗るなんてないからねー。すっごい貴重な体験だったよ。ありがとう、大井っち。」

 

普段、乗物に乗る事も無い私達だから北上さんも汽車の旅に大満足でした。

 

島田駅の北側に広がる大井神社へと入り、さっそく二人揃って境内へと入り社務所を尋ねる。

 

 

「こんにちわ。鎮守府から参りました球磨型軽巡の大井と北上です。本日は宜しくお願いします。」

 

「おねがいしまーす。」

 

 

出て来たのは大黒様は確あるべしというような、身なりの宮司さん。ニコニコと穏やかそうな人だ。

 

 

早速、社殿の広間に通されて話を始める。

 

 

「いやあ、はるばる大井さん、北上さん共々お越し頂きありがとうございます。既に提督様より過分なお志を頂戴いたしました故、恐縮しておりましたところです。しっかりとご祈祷・祝詞を挙げさせて頂きます。」

 

 

「こちらこそ、アタシの分まで神事の支度してもらってるみたいで、ありがとう宮司さん。」

 

 

「本当なら北上さんの艦内神社は、確か仙台にある鹽竈(しおがま)神社が対応なされるのですよね?」

と心配して質問する大井。

 

 

「確かに大井様の仰る通りですが、大井さんと北上さんは一心同体の様な方とお聞きしました。きっと、多少の理はお目溢し頂けるのでは無いでしょうか?

それに、先程もお話しましたが提督からも街の発展のためと過分に“頂き”ましたので、神様も本気を出さなければ無作法と言うものでしょう(笑)」

 

「あら、神様にまで気を遣わせてしまうのは・・・」

と謙遜する大井だが、顔は全然違う表情だ。

 

「なら大井っちー、あたし達も謹んで受けなきゃ無作法というものじゃない?」

 

「これは!お話がお上手ですな北上さん(笑)。

・・・まあ、真面目な話をすると、太平洋を臨むこの各街がほぼ不安なく過ごせるのも鎮守府の艦娘の皆様のご加護に他ありません。」

 

と、先程とは変わり神妙に話し出す宮司さんに、二人共背筋が伸びる。

 

「深海棲艦達は一時は日本各地に被害をもたらしていましたが今はむしろ遠い諸外国、特に南洋の資源が豊富な地域や国を狙って襲っていると伺っています。

・・・資源の少ない私達の国は、一番痛いところを突かれ始めています。日に日に戦火が酷くなり、各地を守護する軍人・艦娘どころか民間人まで関わらず・・・」

辛くなったのか、やはり不安を煽る事を口に出すのが憚られるのか話を切る宮司。

 

 

「宮司さんお詳しいのですね?」

 

 

「いやあ、艦内神社に関わる宮司ならば、余り耳に入らない事・入れたくない事までも耳に入ります。

そもそも無関心である事は居られません。皆さんの無事を。いや、幸せを艤装にお載せする大切なお仕事を任されている身です。

それに皆様の無事を願うのは何も提督やさんや、姉妹艦同士だけではありませんよ。」

 

いつの間にか社殿の外には街の人々がちらほらと伺っている。

 

大井と北上は社殿を出て、一目見るために来てくれた人達に挨拶をする。

「お忙しい中、私達のために時間を割いて頂きありがとうございます。これからも皆さまをお守りする為一生懸命に任務を全うしてまいります。」

 

 

こういう時に軍艦時代は御召艦、現世では有能な秘書艦としてスポークスマン力を発揮する大井は、渉外・広報には打って付けである。

営業セリフ・営業スマイルも完璧だ。

 

 

「大井っち?何かそんなセリフだと神前婚の誓いみたいだよ?なんか恥ずかしいよー。」

 

 

折角決めたセリフを、事もあろうに北上が折にかかる。

 

 

「え、け、結婚ん?わ、わ、わ、わ、わ、私と北上さんが。神様の前で、神前式???!!!」

 

 

「畏まらなくても大丈夫だよ?大井っち。ちゃんと頑張ってる事は伝わるよ。皆んな見守ってくれてるよ、ね。」

 

 

「・・・はい。北上さんの言うとおりですね。恥じない行いさえしていれば、きっと明るい未来が見えてきますね。」

 

 

「ねえ、宮司さん・大井っち?折角なら皆さんと一緒に神事をするのはどう?来てもらったのに何もなしは申し訳ないし、参列くらいしてもらっても良いんじゃない?」

 

 

「私は、儀式として大丈夫なら皆さんに来て頂いたお礼替わりになれば構いませんが?」

 

 

「私としては、街の皆の願いを載せて祈るのは良い事かと。それだけの真摯な想いが合わされば素晴らしい加護を得られるでしょう。」

 

 

と言う事で、二人分だった席は急遽集まってくれた街の人の分を皆で支度して、盛大かつ厳かに神事は執り行われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「なんか、みんなのお陰で心が暖かったっていうか、応援されてるって言うのは気持ち良いものだったね、大井っち。」

 

「うん、そうですわね・・・。」

 

「大井っちー?気にしてるの?」

 

「・・・・・。」

 

「大井っち?」

 

「・・・・・。」

 

「しっかりしてよ大井っち!!」

 

「えっ!?ええ・・・。

北上さん、心配掛けてごめんなさい。」

 

「大丈夫だよ、大井っち。大井っちが苦しい時や辛い時はあたしが支えるからね。」

 

「・・・そう、そうですね。お互い支えって頑張って行く。そう誓いましたものね。」

 

 

ご祈祷自体は厳かな雰囲気の中で終了した。

・・・が、しかし。ちょっとしたいや、妙な体験をした。

 

 

 

 

 

それは、神事の真っ最中の事。

 

「え?ここはどこですの?」

 

頭を垂れて、お祓いを受け頭を上げると真っ白な何も無い空間に居た。

 

 

「あのーっ。北上さん?・・・宮司様?・・・街の皆さんは?」

 

白く何も無い無限な空間。歩いてみれば足を踏みしめる確かな感触はあるので、地面は有るのだろうと思う。

 

 

どれだけ歩いたかしら。歩き疲れは無いが、かなりの時間歩いたのは確かだ。

ただ、真っ直ぐに歩けているかは謎だけど。

 

 

暫く歩くと、

 

ドサッ・・・。  ガシャッン・・・。

 

   ドシャッ・・。    グシャーッン・・。

 

 

  ドスッ・・・。  ガチャーンッ・・・。

 

前方に遥か空から何かが落ちてくるのが確認できる。

 

一定間隔のようで不規則。

 

くぐもった様な鈍い音も有れば、金属の打撃音。

 

 

ともあれ、正体を確かめるべく音源へと向かった。

 

 

はぁっ?!・・・あれは艦娘っ?!

 

 

いや、だけじゃない。ホ級にチ級、ネ級にレ級?!

 

関係なく、雑に、グチャグチャに積み上げられて

 

・・・屍の山!!!!

 

エッ?海外艦まで!この姫・鬼級は海外の戦闘詳報でしか見たことが無い・・・何故に?

 

 

「これって、まさか、・・・艦の墓場?!いや、そんな・・・。ここ、海底でも無いし。アイアンボトムサウンドなんて洒落にもならない事言わないわよね?」

 

 

よく見ると、地面(と呼べるのだろうか謎だが)から下に

雫が少しずつ落ちて行く。

 

 

大小様々な雫が落ちていく。

 

 

 

毒々しいまでに赤黒い雫から赤い雫。

 

青い雫、透き通る程に輝く雫。

 

混沌と赤と青がマーブル状に混ざり紫に見える雫

 

 

 

雫は、ある程度落下?すると何処へともなくヒュンッと飛んで行く

 

よく見ると、地面を境にして事切れた者達が雫と化している。まるで何かのフィルターを通したかの様に。

 

「こんなのを私に見せて何がしたいのよ・・・。これじゃ魂の転生じゃないの?」

 

ふと見ると、修理女神?違う?いずれにしても、そんな風体をした妖精さん数人が、杖を振るい何やら祈っている。

 

 

「貴方達はなにをやってるのですか?」

 

 

「魂を還しているのですよ。」

 

 

「艦娘も深海棲艦もゴチャゴチャじゃないの?」

 

 

「善も悪も分け隔てなく、ただ海に還すだけですよ」

 

 

「と言う事は、復活するの?」

 

 

「間違いではないですが。我々は魂の核・因子だけを還しています。」

 

 

「と言っても同じ体へ戻るわけでは無いですよ。艦娘に生まれ変わっても同じ艦娘になるか判りません。高潔な精神を持っていても深海棲艦になる事も有り得る話です。その逆も有り得るでしょう。」

 

 

「例えば優しい古鷹や明るい愛宕が戦艦棲姫や空母棲姫になる事もあるし、陰湿な雷巡チ級や暴虐舞人なレ級が潜水艦や駆逐艦・海防艦に生まれ変わる事も。」

 

「生前の行いが影響しやすいのは有りますが、気まぐれですからね。・・・まあ、見ててください。」

 

 

あそこには、斃れた防空棲姫が・・・。フィルターを通ると光るしずくへと変化し飛んでいく。

 

 

こちらには重巡の筑摩だろうか、志半ばで斃れた様子だ。何故か青と赤のマーブル状で黒いモヤを纏う。 

あっ、飛んでいく・・・。

 

 

 

「今のは、どういう?何かイメージ的に雫の色は逆なのではと感じたのだけど?」

 

「普通に考えたら筑摩はキレイな雫、防空は淀んだ雫のはずでは?と考えたのでしょ?

 

そもそも防空棲姫はある艦娘が志半ばで果てた無念のわだかまりが澱み、昏い魂を持ったのが根源です。固有名を出すととんでもない事になりそうなので誰とは言いませんが。」

 

 

「深海棲艦とて、生にしがみつく者、ただ破壊と命の搾取を尽くす者、仲間とその日を穏やかに生きるだけの者様々です。」

 

 

「艦娘にも好戦的な者。狡猾な物。周りに比べ自分が弱く卑屈になる者が居ますよね?それは、本来発露する筈の艦種特有な性格よりも、入り込んだ魂の核に性格が引き寄せられているからです。」

 

 

「・・・深海棲艦は艦娘と表裏一体であると言う噂は聞いた事が有りますが本当なんだ・・・」

 

 

「まあ、一人目の艦娘や深海棲艦は何者だったのか、今となれば我々でも探りようの無い遥か遠い話ですが、陰と陽・裏と表な存在で有ると言えます。」

 

「ただ、代を重ねて、魂の世代交代が進み誰にでも陰と陽の因子はあります。それをどう磨き育てるか、魂の結実はその艦娘や深海棲艦次第です。」

 

 

「・・・ところで大井さん?あなた、だいぶ“来て”ますよ?」

 

 

「はい?いきなり、面と向かって何言い出しちゃってくれるんですか?・・・今までも、危ない目にはあった事はあるけど、慢心した覚えはないですわ。」

 

 

「そうですか。そもそも、こんな処へ辿り着くとは異常だと思いませんか?」

 

 

「貴方達が、私を呼び寄せたのでは?来たくて来れる様な場所では無いだろうし、そもそもが、こんな最終処分場みたいな所、ごめんですわ。」

 

 

「私達は呼び寄せていませんよ。まあ、身綺麗にだけはしておく方が良いかと。」

 

 

「貴方達に言われたくないわよ。私は北上さんとずっと仲良く暮らすのが一生の希望・夢なの。こんな所ですり潰されてる暇なんて無いわよ!」

 

 

「わかりました。せいぜい現し世で頑張って下さい。」

 

 

女神らしき妖精は杖を振るうと私の意識を飛ばした・・・・そして北上さんに覚醒され先程に至る。

 

 

 

 

 

「あ゛ーっ、ほんッっと気分が悪いですわ。せっかく、このような素晴らしい祭事をして頂いたのに。」

 

 

「まあまあ、大井っち。宮司さんも、これからも慢心しない為に神様がお示しになったのでは?って言ってたし変に考える方がぎこち無くなって危なっかしいんじゃない?」

 

「そうですわね。考える暇があったら北上さんと語らう時間の方が有用ですね。」

 

 

一通りの祭事、艤装のお祓いや艦内神社への諸々の段取りも終わり、一緒に着いてきた妖精さん達もほっと一息付いて私達と社務所でくつろいでいる。

それでも、ふと気付くとあの光景に囚われてブツブツ言ってる私がいる。

 

 

「大井っち?本当に変に意識したらダメだからね。いつもの大井っちみたいに、蹴っ飛ばしてやる位に噛み付いて行かなきゃだめだかんね?」

 

 

「なぁに、北上さん?私がそんなに品の無い女性に見えまして?私は御召艦だったのですよ?そんな下品な娘ではありませんわ!そんな未来はくずカゴにポイッしますわ。」

 

 

「・・・本当に居なくなったら、何処かいなくなったら駄目だよ大井っち。どんな大変な事があっても絶対に何時までも一緒だよ。・・・あ、そうだコレ」

 

 

と、北上さんが渡してくれた小さな御守。

和紙を結んだような形の御守。

 

夢結びと言うそうで、その人の夢が叶いますようにと願う御守りだそうです。

 

私達が何時までも良いコンビでいられるように

 

と先程、今回のお出かけのお礼に北上さんが私と自分用にと買って下さいました。

 

「ありがとうございます、北上さん!!やっぱり私のコンビは北上さんだけです!!」

 

思わず、北上さんに抱きついて喜んでしまいました。

 

「んあっ?!恥ずかしいよ、大井っち〜。・・・ふふっ。やっといつもの大井っちになったよ。」

 

「本当に大事にしますね。・・・そうだ、妖精さん?この御守も艦内神社に大事に祀って欲しいの、よろしくて?」

 

「あい、了解です!御札たちと一緒に奉納しておきますよー。」

 

「神様の加護と北上さんの加護で、厄も裸足で逃げ出しますわ」

 

「大げさだなぁ〜。でも、大事にして貰えて嬉しいよ。」

 

「さて、名残惜しいですが明日には鎮守府に帰りませんとね。あの、グダグダ提督は今頃羽根が伸び切って使い物にならなくなってるはずです。喝を入れてあげませんと!!」

 

「気合い入りまくりだね?」

 

「もちろん!北上さんとの未来の為です!!その為には深海棲艦だろうが提督だろうが、障害になるものは私の酸素魚雷で木っ端微塵です!」

 

「まあ、程々にしようね〜(汗)」

 

「さて、宿で鋭気を養いましょう〜。美味しいご飯を用意してもらいましたので。」

 

二人揃って、近くの宿で疲れを癒やすのでした。




お読みいただきありがとうございました。

艦これは
深海棲艦←→艦娘の連鎖、正と負の相反する願い・想いの表裏一体の部分。
色々と考えが尽きない部分があると思います。

深海棲艦に堕ちてしまう、ドロップされるにしても建造されるにしても提督の願いに喚び出されて建造されるにしても、色々な気持ちの因子が輪廻転生する事があるのではと思います。

今度こそは〜とか、次は絶対に〜的な台詞を言う娘は艦だった頃を引きずっているし、鬼姫級の撃破ボイスは正しくソレですし。

さて、次は鎮守府に帰ってからその後の二人です。
次回も、どうぞ宜しくお願いします。
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