とある艦娘の後日譚?!    作:糸田ひろし

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こんにちは糸田です!

えっ先回なんと言ったか?

記憶にはございま・・・。


すみませんでした(汗)!!


想定より話が伸びに伸びて、いつもの半分ぐらいのボリュームにするどころか、並盛り位になってしまいました。

・・・はい、言い訳でした(泣)


それでは、続きをどうぞ。




便覧番号23②

そして今に話は戻り。

 

 

 

「深海のバケモノ達はとんでも無い奴らばかりでねぇ、あちこちで娘さん達はやられちまって・・痛ましかったわぁ。」

 

 

 

「お姉様・・・金剛、お姉様あ・・。私は・・ぁ・。」

 

 

私は蒼白となり泣き崩れる樣に、身体を抱きすくめるように震えだす。

 

 

「君、大丈夫か?!おい、頼む!!・・・これはかなりまずいぞ!!」

 

「ああ、直ぐに提督を呼んでくる!!」

 

 

血相を変える初老の男性、そして急いで駆け出す壮年の男性。

 

 

 

「えっ、この娘はどうしたんだい!?一体何があったんだぃ?!」

 

突然のことであたふたする婦人。

 

 

「この艦娘さんのお姉さんが金剛さんなんじゃ!・・・

 

(小声で耳打ちするように)金剛さんを喪った後、立て続けに姉妹の比叡さん・霧島さんが相次いで無念を遂げられた。・・・あの後4人姉妹でただ一人生き残って、今ようやっと穏やかに睦まじく暮らす始まりだったんじゃよ、御婦人よ。」

 

 

「ああ・・・私は、何ということを・・・。」

 

 

「この状態では何とも・・・。無事、心が落着くことを祈るしか出来ん。しかし、ここでは難じゃ。食堂にも艦娘さんが仕事しておる、そこへ身を寄せよう。」

 

 

 

 

 

錯乱仕掛けている私は、老人と婦人に付添われ、鳳翔食堂の休憩室へ寝かされ、

 

「伊良湖ちゃん!まだ大変だけどお店をお願い!!」

 

「間宮さん、明石ちゃんに頼んで補助に付けられる娘を手当して欲しいと。この状況を伝えたら誰かは出してくれるはずです。」

 

「はい!店はお任せ下さい!!」

 

「誰か出して貰えるように頼んでみます。」

 

 

 

鳳翔がテキパキと指示を出す。そうこうするうちに老人は鎮静アンプルを取り出し私に打ち込んでいた。

 

 

 

「何やら私じゃ手が出せないような事態にしてしまって申し訳ない。古傷をえぐってしまうなんて・・・」

 

 

「あ、いや。御婦人、落ち込まんでくだされ。貴女の申されたことは、亡くなった艦娘さん達を偲ぶお気持ち故に・・・むしろ有り難いことです。」

 

 

「そういえば、貴方がたは艦娘さんにお詳しい方なんですねぇ?」

 

 

「んっ、・・・あぁ。従軍記者や現地特派員を生業にしてましてな。」

 

 

「そうでしたか、貴方達も大変なお仕事を。」

 

 

「まあ、艦娘さんや兵隊さんの最期を看取る事も有りました。誰が喪われたって痛ましい事は変わらんですよ。」

 

 

そうしてるうちに、部屋へと駆け込む男性2人。

 

 

「大丈夫か!!容態は??」

 

 

「提督様、お待ちしておりました。専用の鎮静剤を投与させて頂きました。しかし、根本は何も解決しておりませぬ。」

 

 

「今回も自身のトラウマを呼び醒ましてしまったのか・・。今朝も少し、懸念する兆候があったのだが。無理してでも休ませるべきだったか?」

 

 

「あの、・・・私が余計な事を口にしたばかりに」

おずおずと謝罪を述べる婦人だが

 

「何度も言いますが、御婦人に非は無いですよ。むしろ、戦後になってもこの娘達の事を良く語って下さった。懸命に闘ってきたこの娘達、志半ばで逝った娘達に寄り添って頂けるのは何よりも手向けになります」

 

「そうですよ。私の妻も艦娘からも退き一市民です。皆様を出迎え、皆様と一緒に汗を流し国を建て直す。そう共に誓いながら過ごしています。私も警備隊創設の引き継ぎが終われば退役して会社勤めでもと。」

 

初老の男性、元提督共に声をかける。

 

更に元提督は婦人に対し

「妻の為に、ご心労掛けさせてしまい申し訳なかったです。この後はどうされますか?」

と、話を促すと

 

 

「今夜は身を寄せる親戚が居りますので、何とか足を確保しなければと。車で2時間ぐらいの山の方ですが。」と婦人。

 

すると男性が

「ならば私が車を手配しましょう。私がそちら方面を抜けて山向こうの街へ取材が有るので。ああ、経費は会社持ちなんで心配しなくて大丈夫ですよ。」

 

「ああ、ご迷惑かけてしまった上にご親切に。・・・せめてこちらを。」

 

と言って白いカチューシャを渡された。

何でも、以前亡くなった御主人が艦娘の艤装調整をしていた工廠技術員で、たまに艦娘からの要望で非番の時に着る私服のアクセサリ等も作っていたと聞いた。その形見との事。

 

こういうトラブルがあったとは言え、余りにも大切な物を頂く訳にいかないと固辞したが、御婦人の決意は固く頂く形となる。丁寧に礼を述べたあと、男性と共に食堂を立った。

 

・・・これで、やっと隠さず話せる。

 

元提督と初老の男性は一息付いた。

 

実を言えば初老の男性ともう一人の男性は提督の隠密であった。表向きは特派員や記者、商社マンを装い世界や国内各地を渡り歩き情報を集める提督の目となり耳となる諜報員だった。

 

込み入る話に民間人は巻き込めない。

 

 

「こんな事になるとは・・・提督申し訳ございませんでした。」

 

 

「これは想定外だったよ。君達も妻も・・・まさかとは思っただろう。とはいえ、あの時の様に深海化は踏み止まれた様だが・・・」

 

 

とてももどかしいが、こうして呼び掛け手を握り祈るしか・・否。ネガティブな感情はそれだけで彼女達を傷付ける刃でしかない。

 

信じよう・・・何があっても信じよう。彼女の芯の強さを信じて。

 

鳳翔、間宮に伊良湖、明石に北上も再び駆け付けてくれた。皆で看病と応援をと言うことで相変わらず有り難い限りだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

・・・此処は?

 

私は見渡す限り何もない灰色に燻ったモヤのかかる世界の中に居た。

 

そうだ!私は金剛お姉様や逝った皆の話を聴いて・・・。

 

 

ジャラ・・・ジャララ・・・

『フフフ・・・貴女がここに来るのは想定通りネ』

 

 

ジャリ・・・ジャラ・・・

『ホントね。呆気ないほど簡単に惹き込まれちゃうなんてネ。』

 

 

 

「霧島!!それに、比叡姉さま?!」

 

 

 

『久しぶりね。貴女は艦娘を捨ててしまって人として生きてるのね。』ジャラ・・

 

 

『ふーん。あたし達の事捨てて忘れて暗い昏い水底に封印するのネェ』ジャララ・・・

 

 

『そうネェ、貴女の事だから提督の愛を独り占めして、お嫁さん気分はイカガかしら?』

 

 

『貴女は恋にも生にも勝ち残り!!ひきかえ、私達は見ミステナイデ!!と叫ぶだけナノ?!』

 

 

「ふたりとも、それは・・・ごめん。ほ、ほんとうにごめんなさい(汗)」

 

 

『謝ってもらってもネェ〜。』

 

『そうねぇ、それに私達二人だけじゃないわヨ?!』

 

 

見てみなさいよと促され振り向くと・・・

 

 

『探照灯・・・点かないの・・・沈んで壊れて・・・カコハ、ドコナノ・・・』

 

『高波、沈んだの。役立たないまま・・・シズンダの命も、想いも・・何モカモ』

 

『巻雲はワガママ言ったからネェ、雷撃処分してもらったの・・・ホラ血マミレ、イタイヨ〜』

 

『クルシいの・・・。10センチ砲ちゃんがシンジャッタ・・・オネエサマも月も見えないノ・・・』

 

 

ヒィッと、思わず声を上げる。

 

彼女達は艤装や身体のあちこちがボロボロと朽ちて爛れ、青紫に肌が血の気が全く無く眼も無く。昏い赤や黄の光を宿す。

 

足元には錆びて朽ちた鉄屑が積もり、鉄底から彼女達に亡者の腕や手のように錆びた鎖が身体に纏わりつく。

いつしか比叡や霧島まで朽ち果てた姿へと変貌している。

 

『見てご覧よ!光もない、冷たい昏いミナソコ。命の燃え滓の吹き溜まリダワ』

 

『虚しさと悔しさ、光を生を羨み妬みだけを抱えて、この深海に棲厶ノヨ』

 

『ムリナノヨ・・・』

『ソウヨ・・』

『イイナア・・』

『マブシイナア・・』

 

怯んで立ちすくむ私へ皆がそっと寄り添ってくる。

しかし、それは私を冥闇へと誘う悪魔の囁き。

 

『貴女も疲れたデショウ。もう、此処で墜ちて休めばイイノヨ。』

 

『こんなにも仲間が居るんダヨ!まあ、寂しくはナインジャナイ?!フフフ・・・ドウ、カシラ?』

 

 

闇の霧島に比叡も私に絡み睨めるように囁く。

その甘言に揺さぶられ惹かれる程に、私は黒く細い鎖に絡め取られ、心弱くなる程に鎖は太く絡みついていく。

 

鎖に絡め取られた苦しさが、何故か気持ちよさに変わる頃・・・

 

「提督・・・皆さん・・・。私は心も体も疲れ果てました。もう・・・大丈夫ではありません。

・・・昏い海の闇に身を任せようと思います。」

 

 

『ソウヨ・・・クライウミに揺蕩うノ。フフフ、クルシミ、ツラさ融けてイクワ。命とトモニ・・・』

 

 

霧島の言葉の通り、身を任せれば任せるほど、フワフワと体が軽く楽になり快感を感じてくる。

 

それと共に大切な何かが・・・滲んで、ぼやけて、消えて行く感じ・・・

 

 

もう、何もかも面倒になったわ。

考えることも、生きる事も、もういいわ・・・。

 

体中を闇の鎖に絡め取られグッタリと力無く意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、鳳翔の店では・・・明石や、北上が必死に治療を続けていた。

 

「ああー、くそぅ・・・人に退役してしまったから艦娘用の治療薬では効きが悪いのかなあ?」

 

「バケツの成分から精製した物を・・・ああすれば・・・」

 

「ちょっと明石?ほら北上さんも少しは食べて、飲んでくださいよ?」

 

大淀が見るに見かねて二人へオニギリを用意したのを、糧食妖精さん達がえいやっと二人の口へと放り込む。

 

あの後、私が急激に苦しみ藻掻いたあと一気に体調が悪化した為に無理に動かすことも出来ず、即席で明石と北上が治療スペースを作り必死に治療していた。

 

私の体調悪化を聞きつけ、提督と共に残務処理に当っていた大淀。

国内航路の時限兵器や不発弾処理に当たっている伊勢や日向までもが駆けつけていた。

 

「みんな、やるべき事を抱えて忙しいのに申し訳ないな・・・。」

やや憔悴し始めた顔で提督は皆に頭を下げる。

 

 

「提督、頭を上げてくれ。私は提督にそんな事させたくて任務を切り上げて来たわけではない。力になりたいから護りたいから来た、それだけさ。」

 

「もう、日向は口下手なんだからさ。

明石や北上が手を離せないんじゃ、船乗り達から悲鳴があがるよ?私達が変わりに面倒見るから。・・・提督は、奥さんの事だけを考えてあげて、他はあたし等が何とかするから。」

 

「来れなかったが飛鷹や隼鷹も頑張ってる。長門殿や酒匂もリハビリに邁進中と聞く。みな、これからが楽しみで仕方ないのだ。」

 

 

「日向、伊勢・・・本当にありがとう。君達には元気を貰ってばかりだ。こんなにも想って貰えることが有難いとはな。明石に北上、特に君達は急なことにも関わらず本当に有り難い。引き続き宜しく頼む。」

 

 

「任せて下さい!」 

 

「ドクター北上さんも頑張るからね〜」

 

本当に心から頼りになる娘達ばかりだ。

普段は控えめな間宮や伊良湖からも声が上がる。

 

「私達は給糧艦として、戦場には出られませんでした。しかし皆様のお帰りを信じ続けてここまでやってきました。」

 

「私も間宮さんや鳳翔さんに追いつけ追い越せで頑張ってきました。信じる強さだって、ね!」

 

「ああ、今一度鎮守府上げて護り抜こう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、彼女の心の中へと話は移る・・・

 

 

 

 

 

私は、闇の鎖から艦娘としても人としても生きる気力を奪われつつあり、もはや死人のようになっていた。

 

 

『もう、駄目ねコノ娘は。ココロガ萎れテイルワネ』

 

『フフンッ。生命力残滓スラ残ってナサソウダ!』

 

と闇の霧島と比叡が話している中に・・・

 

 

 

突如けたたましい落雷の如く轟音が響く!!

砲撃や魚雷の群れが襲い掛かる!!

 

 

「左舷、砲雷撃戦、用意っ・・・てぇッー!!」

 

「へやっ!!処分雷撃より、敵艦を討つことが本途です!!」

 

「やるしかないかも、・・・です。打ち方始めーっ」

 

「照月、行っきますよ~! 撃ち方、始め!

・・・長10cm砲ちゃんも、頑張って!」

 

 

 

 

 

しばらく前までは深海棲艦の様な幽鬼の出で立ちだった彼女らのはずだが?!

 

 

『ナ、何だコイツラ!!ワレラノ同胞ハ何処へ?!』

 

『鬱陶しいなア、もう一度沈めてアゲヨウ!!』

 

 

恐竜のような禍々しい口を開け主砲を旋回する2人から、まるで獣の咆哮のような轟音と共に砲撃が放たれる!!

 

駆逐艦主体の編成で防ぎ切れるのか?!

呆気ない幕切れかと思った時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょぉっと待ったあぁぁーっっ!!」 

 

 

 

 

 

 

「まったくー、ウチの娘達と大切な妹に何してくれちゃう訳〜!!・・・主砲、一斉射、始めぇぇっ!!」

 

 

「ピンチに駆けつけるこの感じ良いわね!!キライじゃないわ!!・・・霧島は、以前の様に甘くは無いわよ?・・・狙い、よーし! 全門斉射ー!!」

 

 

古鷹や駆逐艦達の前に滑り込むように入り込み、体勢を整え主砲を薙ぎ払うように撃ち込む。

禍々しい砲から放たれた砲撃を悉く相殺していく!!

 

 

しかし、たち籠もる煙からは次発が打ち込まれる音が聞こえる!!

 

 

「ふむ、いい物だわ・・・手に取る様に判る!!

比叡姉さま、行けますね?・・・払えっ!」

 

「わかってるて!!・・・そこぉっ!てーっ!」

 

 

 

次発も霧島の緻密な計算で全て撃ち返す!!

 

 

 

『何ダ?!コイツラの阿呆みたいなイキオイは?』

 

『バカジャネーノ!!一気に打って来ヤガル』

 

 

 

闇の二人が悪態を放つ

 

 

 

「貴女達のような姑息な奴らに言われたくないわね。・・・勝負は緻密な計算と」

 

「暇を与えず、一気呵成に攻込む!」

 

「みんなどうかしら!ミッションクリア??」

 

 

 

と呼んだ先には、拘束されていた鎖を破壊・解放された私を抱えた古鷹を駆逐隊が護衛しながら離脱を図るところだった。古鷹が声を上げる。

 

 

「比叡さん!霧島さん!確保ですー!!」

 

 

 

「やや〜っ、でも・・生きてる感じが殆どしません〜(汗)」

 

「ど、どうしよう・・・気付けに反応しません(泣)」

 

 

あせる気持ちが、深海棲艦を呼び醒ます。鉄屑からわらわらと湧き上がる!!

 

 

「高波ちゃん、巻雲ちゃん!気を強く持たなきゃ。私達が挫けると、ほら、面倒なのが出て来るから!!」

 

照月が二人を叱咤する

 

「く〜、踏ん張りどころです!」

 

「そ、そうです。高波は怯みませんっ」

 

 

グッタリと意識ない私を庇いながら、懸命に追っ手を撃ち返す照月達。

 

主砲や高射砲を織り交ぜ次々と撃沈して包囲網を崩す!

 

 

「比叡、あんまり悠長にしてられない様ね・・・」

 

「ならば、一気にカタを付けましょう!

・・・一式徹甲弾改、装填よーしっ!!」

 

「こちらも装填、照準・・・ヨシッ!!」

 

 

 

「「全主砲、一斉射!!  てぇぇーっ!!」」

 

「「次発装填!! 撃て、撃てぇーっ!!」」

 

 

闇の空間ですら切り裂くように、次々と必殺必中の砲弾が闇の霧島・比叡に降り注ぐ!!

 

 

「ウグァッ!!アブナイ霧・・シマ!!」

 

「キャアッ!!ダ、ヤメロ!!」

 

強烈な攻撃が次々と闇の2人に突き刺さる!!

体中から彼女らの力の源と言える瘴気が流れ出し膝をつき、艤装も力なくしなだれている。

 

・・・今、闇比叡が、闇霧島を庇った??

 

 

「ウウ、何故アイツラはアキラメナイノ?!」

 

「私タチモ、ナンドデモ食らいツイテヤル、引きずりコンデヤロウと怨みのチカラはツヨイ・・ナノニ」

 

 

 

「そうねぇ。艦種の力の差や艤装の差もあるかもしれないわね。だけど想いの差じゃないかしら?」

 

「ダカラ、ワタシ達デモ!!」

 

「でも本当はいつかは還りたいって心に有るんじゃないの?恨み辛みの鎖に縛られていても。それに、貴女は優しいじゃん?」

 

「何ヲ寝惚けたコト!!」

 

「じゃあ、あの一斉射を浴びる中で闇霧島を庇ったよね闇比叡?」

 

 

「例えナンデアッテも姉妹ダカラよ。メノマエデ傷付くスガタ・・・ミタクナイ」

 

「比エイ・・・」

 

「そー言う事よ。姿形がアレコレ変わっても絆は切れないし、そのあんた達の悔しさや悲しさは本来私達が背負ってないといけなかったものなの。だからね・・・」

 

「私達が沈んでしまった時に、大事な気持ち=貴女達を手放してしまってごめんなさい。貴女達は私達が失ってしまった大事な心の欠片だったのよ。彷徨わせてしまいごめんなさい。」

 

 

「ソウダッタのか・・・」

 

「オマエたちとワタシタチが・・・しかし、彼女ニハ」

 

 

「そうでもないわよ。貴女達が生きていた頃に知らず識らずに溜め込んだ負の感情を発散してくれたから私達がまともでいられたかもね?」

 

 

「さて、私達と一つ元に戻りましょうか。」

 

「貴女達にもあの娘の事手伝ってもらうわよ。」

 

「ワカッタ・・・もう一人の私。」

 

「モウ・・・迷いませんよ!!」

 

 

互いに手を差し出し握手をする・・・。

 

 

すると周りは明るく白く光り・・・闇のモヤのは消え去り、温かい陽射し差し込む海へと変わっていった。

 

 

 

 

 

 

 

穏やかな陽の光が差し込む中で私は目覚めた。

 

でも、ここは・・・

 

「・・・あ。私は確か」

 

 

「あ、目が覚めましたよ!!良かったあ。」

 

「良かったです〜」

 

「私が役立ててよかった・・・」

 

「うん!長10cm砲ちゃんも頑張ったし!」

 

 

 

「古鷹さん・・・え?照月さんに巻雲ちゃん、高波ちゃん?どうして?!」

 

 

 

「金剛さんが心配して、私達で貴女を助けてクダサーイって遣わせたのですが、途中で闇霧島や闇比叡に巻きこまれてしまい、助けるどころか逆に御迷惑を余計に掛けてしまったのです。」

 

「でもでもー、あたし達がピンチになった時に助けて貰ったのがー」

 

 

 

私は二人の姿を見て一瞬にして涙が溢れ出しました。

 

 

「比叡・・・お姉様。霧島・・・。

会いたかった!!ずっとずっと会いたかったっ!!

二人共、遥か記憶の中だった・・からっ・・っ。」

 

 

 

金剛お姉様は割とギリギリまで会うことは出来ていましたが、比叡お姉様と霧島は早くから深海棲艦の打撃艦隊として遠征・転戦していたため、最期に会えたのは何時だったか。

 

 

「もう、駄目じゃない?!またこんな事になっていて。お姉様が心配デースって、嘆いてたわよ?」

 

 

「ったくー。霧島の言うとおりよ?!優しくてお淑やかで頑張り屋は凄くいい事だよ?!だけど、何でも一人で抱え込んで悶々としてたら、直ぐに心が一杯一杯でパンクするよ。愛しい旦那様に、相談しようよ?」

 

 

「・・・だけど、提督も相談したことで重荷にしてしまったら・・・。あの人も沢山の事抱えているし。」

 

 

「ほら、そんな遠慮ばかりして!頼られないほうがどれだけ寂しいか解らない?」

 

 

「私達はもう貴女の記憶の中・心の中か見守るしかできないわ。新しい世の中で起きていくことは提督と二人で支え合っていくの。」

 

 

「鎮守府のように大所帯でワイワイやっていけるわけじゃないよね?段々と世の中も落ち着いていくし、そうしたら二人で貴女達の家をきちんと整えて守っていかなきゃね?」

 

 

「・・・うん、解ってる。提督のことお慕いしてるし、ずっと添い遂げていきたいって気持ちも間違いない。だから、本当の結婚もお請けしたの・・・。

だけどね?自分だけが幸せになって進んでしまって、皆んなの事・・・忘れてしまわないかなって。私一人だけ幸せになって本当に大丈夫かなって。」

 

 

「私や世の中が一歩進んでいく度に、大事なものを失いそうで。皆のことを忘れていってしまいそうで。私だけじゃない、世の中みんなが、霧島や比叡姉さま、それに古鷹ちゃん達を・・・。みんな大切だし、みんなと・・・もっともっと・・・うぅっ・・・」

 

 

「それじゃ、いつまでも停滞しちゃうじゃない。悲しいかな貴女達と私達ではもう、生きてる世界と記憶の世界とで別れてしまったの。貴女には前を向いて進んでもらわなきゃ私達も進んでいけないわよ。」

 

 

「貴女も解ってるのでしょ?戦いが終わった今、日々を平和に暮らすことが戦いになるのよ?ある意味戦っていたほうが楽なくらいよ?それを毎日を私達に見せて欲しいわ。」

 

 

「そうですよ〜。私達が頑張った結果が良くなかったら悲しいですよぉ〜?」

 

 

「高波たちの頑張りが役立ったら・・が嬉しいな。」

 

 

「そうね、皆ですごく楽しみにしてますから。いつかその景色見られることを楽しみにしますね。」

 

 

「みんな・・・有難う。こんなにも見守られているなんて・・・感激で・・・。まだ、艦娘として頑張ってる娘も居るし。私も出来ることを考えて提督と支えっていきたい。」

 

 

「そう。じゃあ、そろそろ貴女も目覚めないと皆が心配してるわよ。提督さんも帰りを待ってるわ。」

 

「そうそう。あたしも、もう一回あの娘達と呑みたかったわ〜。」

 

「比叡?あなたねぇ。酔っ払いの神様に祀って貰うわよ?」

 

「え、ヤダヤダ!こんな美少女を酔っ払いなんて?!とにかく」

 

 

 

「二人共どういうこと?」

 

 

「まあ、起きてからのお楽しみ!」

 

「そうですよっ、提督さんとお幸せに、です(笑)」

 

 

「古鷹ちゃんまで?!」

 

 

「・・・じゃあ、私達はこれでね。いっぱい提督に甘えるのよ?末永く幸せにね・・・。」

 

 

「うん。・・・・もう、大丈夫だから。ありがとう、みんな!」

 

 

 

 

そう言うと、私の意識はまた光の中へと溶けていった。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

満月の月明かりの下、縁側のある部屋の布団に寝かされた妻はとても穏やかな寝顔だった。

 

 

 

「もう、このままなのか?」

 

 

 

あれから危険だった状態を抜け、小康状態を保ったまま、既に1ヶ月意識が戻っていない。毎晩、残務をこなしようやく、戦後処理も目処がついた。自分の手から離れた案件、後任へと任せても間違い無い案件ばかりとなった。

 

「提督さん、あまり思い詰められると彼女にも悪いですよ。」

 

温かいお茶と、一口サイズに切った羊羹を持った鳳翔が来た。縁側と二人で移動する。

 

「ありがとう。いや、解ってはいるのだ。あの時、皆に誓った様に私が信じなければな。ただ、この1ヶ月明石に北上、間宮に伊良湖、伊勢に日向、大淀も。・・・鳳翔、君たちは新しい世の中が始まるために邁進している。その中で妻の為にも献身的な手助けをしてくれている。」

 

「見ているだけの自分に歯痒いと仰るのですか?」

 

「あぁ。妻の治療。民間の船の受け入れに補修。航路の保安に掃海。人の受入場所となり拠り所として、皆んな素晴らしい貢献だ。妻も倒れてしまうまでは皆の手助けとして東奔西走。・・・大淀は彼女の管理事務能力を高く買われ外務事務官としての道が拓けていくらしい。私は、未だ戦争の後片付けをしてるに過ぎない。」

 

 

「そんなに自分を卑下するものではありません。貴女は適材適所、私達を導いて指揮して頂きました。こうやって多くの仲間が残ることが出来ました。」

 

 

「しかし、先立った者には何と詫びれば良い?顔向けなど出来るはずが・・・」

 

 

「それでも前を向いて下さい提督。忘れてとは言いません。新たな日常を彼女達に見せて上げて下さい。彼女たちの戦った末にある、平和に暮らす日常を。それが提督の新しい任務であると思います。」

 

 

「君は本当に強いな。」

 

 

「生き抜いた艦は伊達では有りませんよ?!」

フフッと微笑むと立ち上がり一礼して戻っていった。

 

 

 

「信じるか・・・。」

お茶を頂くと腹の中に暖かさが染み渡り、羊羹をつまむと、間宮手製の食べ慣れた優しい甘みが広がる。

 

日頃の残務処理と毎晩遅くまでの看病が体に堪えたか、縁側でウトウトしていた、その時。

 

最中のパリッと乾いた音が耳元で聞こえる。

躾の悪い猫でも迷い込んだか?と寝惚けた事を考えていると。

 

 

「伊良湖最中も美味しいですよね、あなた。」

 

・・いま、1番望んでいた。聞きたかった声だ!

 

 

「良かった、良かったよぉ。お帰り、よく頑張って戻って、来て、くれたぁ・・。」

 

恥も外聞もなく、彼女を抱きしめ頭を撫でる。

温かい彼女のぬくもり、息遣い、鼓動・・・

 

待ち望んだ人が帰ってきた。もっと気の利いた言葉が出したいが、語彙がすっかり飛んでしまって出てこない。

 

 

「あなた、ただいま戻りました。ご心配おかけしまっ」

 

 

唇が塞がれる・・・甘みと塩っぱみの混ざるキスの味。

二人共、互いの流す涙の暖かさを感じる。

 

再会の喜びを感じた後、互いに戦争の後も引きずっていた思いや、鳳翔に話されたこと、夢の中で邂逅した姉妹や戦友との不思議な再開などひとしきり話した。

 

「そうか、私達は似た者同士だったのか。互いに思いやるつもりで、本当のところをきちんと伝えられてなかったし、今までに囚われすぎてこれからの事を考えて無かったのだな。」

 

 

「それは反省しないといけませんが、あなたは残務処理に追われ仕方もない部分はあったと思います。」

 

 

「とはいえ、この1ヶ月で大分残務処理も終わったんだ。後、1ヶ月頑張ればしばらくはのんびり出来そうだ。この先のことも考えなければならんが、二人でゆっくり過ごす時間が作りたい、今後のことも考えてな。今までの給金や手当もあるし、多少は羽目外しても許されるだろうさ。」

 

 

「はい、ゆっくりと過ごしましょう」

 

 

そして明け方二人で眠りに就きましたが、自宅ではないことをすっかり失念しており、なかなか起きてこない提督の様子を見に来た間宮と伊良湖と鳳翔には、意識を回復した私を喜ぶと共に、提督にはしっかりと『お話』をされていました。

 

後でお話を聞いても、

 

「大丈夫だ、問題無い。」

 

としかお答え頂けず、私を大事にするようにとでも言われたのでしょうか?

 

 

 

 

 

それから3ヶ月後・・・

 

私の体力も日常を過ごすには何不自由無い所まで回復し、提督の戦後処理も一区切り就きました。

物資もインフラも多少の不自由があるものの、国内外の物流が徐々に戻るに連れて有るべき日常へと戻ってきました。

 

そんな初夏のある日、私は夫と百貨店へと向かいました。

 

「そろそろ艤装の装束服ばかりではな。お洒落もしたいだろうしな。回復祝に服を買わないか?」

 

と、提案してくれました。

二人手を繋ぎ街を歩く。一年前まででは考えられないような光景。でも、皆さんは活気に溢れています。

 

復興の足取りは早く、店内には高級な嗜好品は難しいが、そこを除けば様々な衣服が飾られている。

私は店員さんや夫とも相談をしながら服選びを楽しみました。

 

 

「あなた、これとこの組み合わせどちらが良いでしょうか?」

 

 

「どちらも良い組み合わせですよ。こちらは清楚さを、そちらは爽やかさが引き立ちますね。」

 

 

「店員殿もなかなか口が上手いな〜。かなりの戦巧者ですね(笑)」

 

 

「ふふ、ありがとうございます。」

 

 

夫も私も買い物の駆け引きを心の底から愉しんでいた。

 

 

「そうだな・・・この服には雨傘を付けて、この服には首飾りだな。これを安く付けてくれるならどうだ?」

 

 

「・・・お客様には参りますね〜。では、全て合わせてこの御値段では〜。」

 

 

「どうだ、これなら出しても惜しくは無いと思うが?」

 

「本当に二組もお買いになるのですか?!」

 

 

「本当にお前には苦労や心配を掛けたからな。私からの細やかな労いと感謝と思ってほしいな。」

 

 

「はい、ありがとうございます!あなた。」

 

 

「せっかくならどちらかを着ていこうか?」

 

 

「え、今から良いのですか??」

 

 

「はい!お買い上げ頂いた時からお客様の御召物ですからね。」

 

 

ということで、彼女はグレーのロングスカートと黒のインナーに白のブラウス、ネックレスと清楚さを引き立たせる服に身を包み現れた。

 

 

「うん、やはり品の有る姿だな。」

 

 

「名家のお嬢様でも十分通用致しますかと。」

 

 

「やだ、そんな(照)・・・特別な評価なんて私には勿体ないです。」

 

 

「もっと自分に自身を持ってくれ。君にはもっと色んな事が出来る可能性があるよ。君には生まれながらに凛とした品がある。それに賢さもある。活躍できる場はきっとあるんじゃないかな?」

 

 

「僭越ながら磨けば光るものがきっとお有りでは?」

 

 

「と、言う事だそうだ(笑)何をするにしても、応援するよ。」

 

 

帰り道・・・白い手提げ袋には

白のロングスカート

鮮やかなマリンブルーのショートスリーブ・ブラウス。ダズル迷彩を思わせる柄の傘が入っている。

 

 

「本当に、私は幸せです。こんなにも周りに受け入れて貰って。先程の話では有りませんが、皆さんに喜んでもらえる事をしたいですね。」

 

「結論は急がなくて良いさ。でも、前に向けるのは素晴らしいことだよ。」

 

 

「でもね、あなた?さっき百貨店の中で、フランス語が堪能な方達が居たのね。その方がたがすっごくオシャレで可愛くて。ベレー帽で3色のスカーフを上手にあしらっていて。・・・お洒落で仕事のできる人に憧れました。」

 

 

「じゃあ、どうだい?百貨店に勤めに出るのはどうだい?」

 

 

「それも、素敵ですね!皆んなとお洒落な事に取組む、良いですね!」

 

 

「いつか将来、君とお洒落な服屋でも営めたら素敵だろうな。夢は大きく持ちたい。」

 

 

「あなた・・・。私、今・・・感激です!そう言って認めてもらえて。これからも二人頑張っていきましょう」

 

 

その後、本気で服飾の道に進んだ私。

夫ともに百貨店に勤めながら服飾の勉強をして、外国の言葉を習い店を構えるまでのイロハを徹底的に学びました。

 

そして小さいながらも街角に念願のお店を出し、お得意様の絶えない良品を揃える店として末永くあいされました。

 

 

 

「「いらっしゃいませ、当店へようこそ。」」

 

 

 

 

 

 




というわけで、この娘のお話というより群像話的な流れになってしまいました。

もっとスマートな構成を考えなければ(泣)

次は末妹ですね。
四姉妹のラストですのできっちり御用意を致したく思っております(予定は未定)


それでは。
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