糸田ひろしです。
本当にお読み頂いてる方ありがとうございます!!
本当に感謝の極みです
今回の艦娘は、幸運艦と言われたあの駆逐艦娘です。
幸運艦・武勲艦と呼ばれた艦は一定数居ますが、この艦娘ほど数奇な運命を辿った娘は居ないのではと思います。
それでは、お付き合いの程を〜
しれい!任務完了し、ただいま帰投致しました!!
彼女は、かつてのワンピース風セーラー艤装服では無くえんじ色の服をまとい、直立不動から敬礼を行った。
幼く舌っ足らずな話し方は消え、凛々しく通る声で任務報告を行った。
・・・荒れ果て主の居なくなった提督執務机に向かい。
ここはかつて、鎮守府庁舎だった建物だ
大好きな司令官も、時に厳しく時には茶目っ気たっぷりの大淀の姿も今はない。
大淀さん、あの時は無電連絡助かりました。ありがとうございます!
大淀さんの艦隊司令部能力はすごいですよね。
彼女は2人がそこに居るかの様に振る舞った。
まるで気鋭の若手女優が舞台狭しと躍動する様に“元”鎮守府内をあちこちと巡っていった。
執務室を出た彼女は、作戦会議室やラウンジを巡る。
会議室では戦艦や巡洋艦の先輩たちに帰投の挨拶をしているかのようだ。
彼女は戦艦・比叡や、軽巡・長良によく懐いていた。
艦隊訓練では、鎮守府で一二を争うストイックさを誇る軽巡・神通に付き従いよく鍛練を受けていた。
比叡さん、長良さん!ただいまです。
向こうは相変わらず蒸し暑くって大変でした。
機関部も湿度が高いと妖精さんも苦労してましたよ。
あ、神通さんもただいまです!
そうそう、みんなで頑張っていつもピカピカにしました。いざという時、身を挺して皆さんをお守りするのが役目です。
でも、自分も強くなって自身も守れないと皆を助ける事もできませんから。
機関妖精さんが、不惜身命・但惜身命って難しいお話してました。わたしの妖精さん達は優秀な子達ばかりです!
えっ?そんな事はありませんよー(笑)
皆さんともっと一緒に居たかったですよ?
私だって、ずっと離れ離れは寂しいです・・・。
ラウンジ跡の部屋には、埃とすす、クモの巣にまみれたテーブル席や、呑み上戸な艦娘達のバーカウンターらしき物が放置され、年代モノと思われる酒瓶が放置されていた。
皆がいた頃の賑やかさはどれほどだったのか?
駆逐隊のみんな、ただいまー!!
みんな、会いたかったよ?元気にしてた?
天津ちゃん、時津ちゃん!訓練しっかりやってた?
夕立は相変わらず無茶してなかった?
白雪さん、朝潮さんに、荒潮さん皆さん仲良いですね。また、みんなで集まっておやつ食べましょう!
浜風さん、磯風さんに、霞さん。来週、矢矧さんと陣形訓練ですよっ!
みんなで予習しませんか?矢矧さん怒ると怖そうって、ぴゃあ!や、矢矧さん居らしたんですか!!
酒匂さんのマネしても駄目ェですか?ごめんなさい(汗)あ、大和さーん、矢矧お姉さんがイジメまーす(笑)
一人芝居を演じるように、まるで道化の様に、コロコロ表情を変える。
彼女はひとしきり挨拶をして、部屋を後にする。
瓦礫を踏み越え、次に彼女が来たのは工廠だった。
既に炉に火の気配もなければ、大きなクレーンは途中で朽ち折れ、前衛モダンな美術作品と呼べなくも無い代物と化していた。
ただ、改修用レーンだけは比較的きれいに整備された跡が伺えた。使おうと思えば使えそう??
明石や工廠妖精が騒がしく作業していた場所も、隙間風が吹き抜ける音だけがしていた。
明石さーん、ただいま戻りましたー!
え、艤装ですか?ちゃんと、約束守りましたよ。無理したら、こまめに点検!しっかりやりました。
でも、途中で部品が足りなくなって、あちこち部品が継ぎ接ぎで・・・。
私や向こうの妖精さんだけじゃやっぱり不安でー、後で見てもらって良いですか?
ありがとうございます!!やっぱり明石さんの点検じゃないと。妖精さんもお願いしますね?!
みんなにお願いしますと一礼して、工廠を後にした。
そして、食堂へとやってきた。
薄っすらと、辛うじて暖簾の文字が読めた。
「食事処 間宮」「喫茶 伊良湖」だろう。
いつも炊きたてご飯の甘く暖かい香りはなくテーブルに上げられたままのイスにはクモの巣が貼り、カウンターは既に苔生した所さえある。
鏡の様に丹念に磨き上げられていた厨房は錆とホコリが溜まり、空の保冷庫の扉は風に揺られていた。
大所帯の鎮守府、ー食べ盛りの駆逐艦から大飯食らいの一航戦の赤い方まで。全ての艦娘に分け隔てなく美味しいご飯を出してくれた間宮さん。
味に煩い戦艦から騒がしい巡洋艦のお姉さんたちも、一口食べれば笑顔がキラキラになる和・洋菓子の逸品を用意してくれた伊良湖さん。
そんな二人に会えるのも久しぶり。流行る気持ちを抑え、引き戸を開けた。
お二人とも、ただいま帰りました。お久し振りです!
向こうのお料理やお菓子のお話いっぱいありますよ!
れしぴも厨房番のヒトにもらったのでー、また作ってください(笑)
ここでも、屈託のない笑顔で挨拶する彼女。
皆から愛される彼女の要因は、この笑顔だろうか。
ーー執務室からこちら、誰も居ない廃墟の鎮守府を歩き回り一人残らず挨拶したのでは?と思うほどだ。
そして彼女は最後に駆逐艦寮の自室に戻って来た。
ーー何故か、その部屋だけは清掃が行き届いており、生活感が今でも感じられた。
今まで巡った鎮守府内の施設は、あちこち荒れ果てていたにも関わらずだ。
ちゃんと在席者の掛札も磨いてあり、墨で書かれた艦名もクッキリ鮮明である。
部中に入ると、文机にちゃぶ台、座布団、私の布団。
衣装箪笥や長持など、どれ一つとっても埃がなく畳も青々としている。
そして、額に飾られ白黒ながらも更にセピアに褪せた写真たち。
屈託のない無邪気な笑顔の駆逐艦の同僚と入寮の記念撮影で敬礼も何だかぎこちない
巡洋艦のお姉さん達とふざけあって撮ったもの
大好きな司令官と頼れる戦艦の皆さんに囲まれ、この世のすべての脅威が襲ったとしても安心した表情で写る、まだあどけない顔の私。
パーンッ・・・!
と、言う音がしたかの様な鮮明なフラッシュバック。
・・・咄嗟に振り向いたそこには、部屋の扉を開け数名の妖精さんがビー玉のような涙を浮かべてフヨフヨ漂っていた。
かんちょう!!ようせいいちどう、おまちいたしておりました!・・・うわ〜〜ん、さみしかったよぉ!
かんちょう、よくぞごぶじでっ!
みんな、みなそこにしずんでしまいました。
ふかーい、うみのそこ・・ぐすん。
のこったかんむすも、たいはのおおケガばかりです。
かんばったかんむすも、クタクタで、もううごけません。
とおーいとおーい、おくににつれていかれて。
おともだちのようせいも、だんだんきえていって。
みんな、いなくなって。
みんな、ちんじゅふをまもってくれなくて。
それでも、かんちょうのおうちを、かえるばしょをまもるため、ゆいいつわたしたちだけがのこりました。
うんうんと、涙と笑顔で話を聞いて、妖精さんたち一人ひとりを抱き上げて撫でて、今までの苦労をねぎらった彼女。
ひとしきり、互いの無事を分かち合った後、ひとりの妖精さんが服を包んだ袋を2つ箪笥から取り出して来た。
しれいかんさまから、これをかんちょうにと、たくされました。
1つ包を開けると、懐かしいセーラー服艤装。
随分と小さいな。今の私が着ると恥ずかしい事になりそうだ。そもそもサイズ的に着れそうもないが。
暖かい懐かしさが込み上げ涙が溢れた。
大事に思い出を遺してくれたんだ。ありがとうございます、しれい!
そう込み上げる思いをいだきながらも、気になるもう1つの包を開ける。
そこには、まだ真新しい艤装服。
それと共に一通の手紙が入っていた。
お帰りなさい。
よく今まで頑張った!
遠い南の国で総旗艦を努めたんだな。
偉いぞ、立派だった!!
日の下じゃ長門や大和、司令部って言えば大淀だな。
誰よりも慕った、アイツ達と肩を並べたんだ。
しゃきっと胸を張るんだぞ。
しれいも鼻が高い!
今、この手紙を読んでいるなら服が入っていたはずだ。
それと今までの報告書を持って妖精さんと工廠の改修レーンに行ってくれないか?
しれいから、たくさん頑張った御褒美を渡したい。ぜひ受け取って欲しい。
これからの日の下には、まだまだお前のような沢山の人を救い・助けてきたーー国を護れる力が必要だ。
帰ってきた早々で悪いが、新しい任務がある。
その任務には、御褒美を活用して欲しい。
これからも妖精さんと仲良く元気でな!!
ーー司令よりーー
また、涙が溢れた。
しれいに会いたいな、会いたかった・・・。
ずっと仕舞われていただけの服を抱きしめる。
・・・寂しさは募るが心の中が暖かい。
色々な気持ちを一旦仕舞い込み、手紙に書かれたものを持ち、残った妖精さんと再び荒れ果てた工廠へ。
先程気になった改修レーンへ向かう。
改修レーンにはよく見ると床下収納が備えられていた。
そこには、改修用資材と図面が備えられていた。
そして、愛用していた高精度の双眼鏡ーー
ーー駆逐艦〇〇改ニ 設計図 及び艤装仕様書
・・・ああっ、しれいっ!
この資材に図面、どうやって確保されたのですか?
どんな思いで・・・
ながらくのにんむ、たいへんおつかれさまでした。
わたしたちが、ながいあいだをかけて、あつめたしげんです。
しれいかんさまから、たくされたしざいもありますが、わたしたちがおあずかりしてました。
そこへ、ポツポツとまた懐かしい顔ぶれが。
先程は居なかった工廠妖精さんだった。
さきほどは、すがたもみせず、ぶれいなマネを、もうしわけありません。
しれいかんさまからの、おてがみをよまれるまでは、でるにでられずでした。
ありがとう御座います!これだけの物、ご苦労もあったはずです。
そもそも、あの戦いの中に皆さんの頑張りがなければ艦娘は戦えず、皆さんをお守りできませんでした。
感謝してもし過ぎることはありませんよ!
さっそく、彼女は改修に必要な物を妖精さんと準備し改修レーンに入った。
彼女の艤装妖精も手伝い、手際よく改修がおこなわれていった。
やがて改修終了のブザーが鳴り、真新しい装備とセーラー艤装、懐かしい双眼鏡をセットした、改二姿の彼女が現れたーー。
やがて、彼女は生まれ変わった鎮守府、今は基地と言われています!の進水艦娘の第一号となった。
彼女を指揮する艦隊司令は、大好きだった司令の息子さんだ・・・。
大好きだった司令の面影がある。甘味が大好きで、笑顔がちょっとカワイイかなとおもう。
彼女が所属する基地の記念館の片隅に舵輪と綺麗にアレンジされた花が飾られている。
彼女がいつまでも、あの人とみんなを慕う気持ちを表す為に。
さあ、今日も皆さんをお守りします!
私が居れば、大丈夫。絶対!!
いかがだったでしょうか?
ちょっと重めな話になりそうでした。話の中盤戦、妖精さんを登場させるまではね。
過去と現実が区別つかない、病的な雰囲気がたっぷり過ぎたので(汗)
本来は彼女自身、祖国に戻って来てはないのですが(舵輪は返還式有りましたが)救いがあっての艦これですしね。
それにね僕がチキンハートでして・・・。
可哀相なままってのがムリなんです(泣)
それではっ、
今回もお読み頂きありがとうございました(◡ ω ◡)