ドラゴンボール・Z ありえたかもしれないもう1つの未来 作:Humiya
ではどうぞ
僕は悟飯さんを人造人間18号の気弾から助けた後、1人で18号と対峙した。ヤツは僕の力を甘く見ている。けど、実際その通りだ。僕は超サイヤ人になることが出来ず、修行がまだまだ足りていない。
僕は18号が悟飯さんの所に行かないように出来るだけ注意を引く戦いをしていた。
だけど少しの隙に連続で攻撃を叩き込まれ、最後の一撃で観覧車から落とされ痛みによって意識を奪われてしまった…。
そして今に至る。目を開けると18号から受けた傷が1つもなかった。起き上がり辺りを見渡すとそこには、
「悟飯さん…!?悟飯さん!しっかりして下さい!!!」
悟飯さんが倒れていた。左腕の部分から血が流れており、その他にも全身傷だらけの状態だ。悟飯さんが傷だらけで自分は無事ということは仙豆を僕に食べさせてくれたのだろう。最後の1粒だった仙豆を迷惑ばかり掛けている自分に使ってくれたのか…。
悟飯さんの気持ちを想うと、僕は自分自身の弱さや情けなさに怒りが湧いてきた。悟飯さんが救ってくれたこの命。必ず役に立ててみせる。
僕は悟飯の身体を持ち上げ、背中に担ぐ。そして自分のフルパワーのスピードでかあさんの元に急ぐ。
*
「かあさん!!!」
僕は家のことなんて考えずに勢いよくドアを開ける。僕のいつもと違う声色にかあさんは慌ててやってくる。
「――っ!悟飯君!?一体何があったの!?」
「人造人間達にやられて――って、それどころじゃないよ!かあさん、早く治療しないと!」
今は状況を説明してる場合じゃない。一刻も早く悟飯さんのことを治療して貰わなければ。僕はかあさんに言われ、悟飯さんをベッドまで運ぶ。
かあさんは医療箱を取ってくると倉庫まで走って行った。僕はかあさんが戻ってくるまで悟飯の手を握っていた。
(悟飯さん…!なんとか持ち堪えてください!!)
*
あれから少しして、かあさんが戻ってきた。僕は何もすることが出来ないのでリビングでかあさんの治療が終わるまで待っていた。
1時間ぐらい経ったであろう、かあさんが悟飯さんのいる部屋から出てきた。
「かあさん、悟飯さんは!?」
「なんとか大丈夫よ、トランクス。あなたが急いで運んでくれたおかげよ」
かあさんは大変だったであろうはずが、よくやったと褒めてくれた。でも全ては僕のせいだ……。僕がまだまだ弱いせいで悟飯さんは死にかけた。僕がもっと強くなっていれば――。
「トランクス、悟飯君に迷惑かけたと思ってる?」
「え?」
下を向いてた僕にかあさんは問いかけて来た。迷惑…。そう、僕は悟飯さんに迷惑をかけてしまったんだ。
「う、うん。僕が弱いせいで――」
「じゃあ、戦うのは辞める?もう…諦めるの?」
「そ、それは……」
本当は辞めることなんて出来ない。だって悟飯さんが救ってくれた命、みんなから託された想いがある。でも、僕では人造人間達には敵わない。
「だったらもっと強くなればいいでしょ?」
かあさんはそう言うが、簡単な話じゃない。サイヤ人として生まれてきた以上並大抵の人には負けないと思う。けど越えれない壁もある。それを越える為の手段である超サイヤ人に僕はなれない。
「孫君はね、いつも誰かの為に戦ってた。絶対負けない為、みんなを守る為に戦っていたのよ」
かあさんが悟空さんのことを話す。ベジータは勝つ為だったけどね――と、とおさんのことも話してくれた。
「いい、トランクス。あなたは自分が弱いと思ってるかもしれないけど、そんなことないわ。誰かの為に戦う人はどんな人より強いのよ」
「――!!」
だから自信を持ってーーと付け足すかあさん。そうだった。己の強さなんて関係ない。僕はただこの世界を、かあさんを、悟飯さんを、みんなを守るために戦うんだ。この想いがある限り僕は絶対に諦めない!
「ありがとう、かあさん」
「偶には親らしいことしてあげないとね」
かあさんの笑顔に僕も顔が緩んだ……。今日はゆっくり休んで明日から修行をもっと厳しくしよう。
翌日、今日も晴れ晴れした空で穏やかな空気が広がっている。僕は自分の部屋を出て、悟飯さんが眠っている部屋を訪れる。
まだ昨日から目を覚ましていないが、かあさんの治療のおかげで顔色もだいぶ良くなった。悟飯さんの顔を見ながら僕は心の中で改めて感謝をする。
どうやらかあさんはもう起きているみたいで研究室でタイムマシーンの燃料の問題に向かっているようだ。僕は朝ごはんを食べ、家から出発する。
いつ悟飯さんが目覚めるか分からない。その時までたくさん修行して悟飯さんを驚かせてみよう!その想いで修行に励んだ。
*
気がつくと自分の家にいた。母さんがいて、トランクスがいて、ブルマさんもいる。そして父さんもいた。なんて事ない日常が俺の視界に入ってきた。
きっとこれは夢なんだろう。俺が望んだ夢――。今はもう叶わない夢――。
*
ゆっくりと目を開く。すると見知った天井が映り込んでくる。すぐにここがブルマさんの家だとわかった。どうやら俺は助かったようだ。
身体を見て、包帯が巻かれているのを見るとブルマさんが治療してくれたんだな。感謝しなければ。
俺は視点を左に向ける。やはり俺の左腕は無かった。痛みによる幻覚かと思いもしたが、そんなことはなく現実に起こった事だった。
俺が自分の身体の調子を見ていると、ガチャっと扉が開く音がした。
「悟飯…さん!?」
「やぁトランクス。おはよう」
扉の開く音に反応して視線を移動するとトランクスが部屋に入って来ていた。起きていた俺にビックリしていたのだろうか、大声を出して立ち尽くしてしまっていたーー。かと思うと俺が挨拶を返し終わるのと同時に抱き締めてきた。
「悟飯さん…!!目が覚めて良かった……」
「痛いよ、トランクス…」
「ご、ごめんなさい。病み上がりだったよね」
トランクスは慌てて身体を離す。それほど痛くはないが如何せん抱き締められた状態ではまともに話が出来ない。そのためちょっとの嘘をつかせてもらった。
「いつ目覚めたんですか?」
「ついさっきさ。ありがとう、トランクス。俺を助けてくれて」
トランクスは首を横に振って、初めに助けてくれたのは俺の方だと、僕の方こそお礼を言いたいと言ってきた。
トランクスは涙ぐんだ目を拭き、ブルマさんを呼んでくると部屋を出ていった。
*
程なくしてブルマさんと共に帰ってきたトランクスにあの時の状況を話してもらった。話を聞くに、俺もトランクスも助かったのは奇跡と言えるだろう。俺もトランクスに仙豆を食わせてやるのが遅れていたら2人とも死んでいた。
「悟飯君。左腕は大丈夫?」
ブルマさんが左腕の心配をしてくれる。改めて左腕があった場所を見て動かそうとしてみるが、違和感しか感じられなかった。だが、俺は諦めない。例え左腕を失おうとも必ず人造人間達を破壊してみせる。
そう俺は意気込み、ブルマさんに食事を用意して欲しいと頼む。ブルマさんも嬉しそうに返事をし、準備をしてくれた。
あの時見た夢。叶わない夢―――――ではない。父さんは、死んでいったみんなはいないけど、みんなの想いを背負って夢を叶えてみせる…